冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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父との遭遇 (水月+カサネ・ネザメ・ミフユ・アキ・歌見)

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カサネの自己紹介は名前を言うだけの簡単なものだったが、それでも一人に慣れた彼に大人数に注目されるのは酷い苦痛だったらしい。

(来なきゃよかったなんて思って欲しくないでそ、どうにかなりませんか……うぅむ)

とりあえず背を撫でているが、これでいいのだろうか。呼吸は落ち着き始めたように思える。

「改めてよろしくね、繰言くん。彼で最後かな? 水月くん」

「あ、はい」

ミタマとサキヒコは彼らの特殊性から紹介を積極的に行ってきたので、今更自己紹介の必要はないだろう。

「新しい子か、先輩って呼んでるみたいだが二年生か?」

空になった皿を片手に立ち上がった歌見は、料理を物色しに行く前に俺の元に寄ってカサネを覗いた。

「はい、ネザメさん達と同じクラスだそうです」

「……滅多に出席せんがな」

「こら、ミフユ。その話は今日はしないという約束だろう」

ボヤいたミフユがネザメに叱られる。拗ねたような態度の彼は大変可愛らしい。

「………………鳴雷くん」

「はい?」

「何、か……言ってくれたの、年積……に」

「……ええ、今日はお説教はやめてくださいねって。お願いしておきました」

「そう…………前、も……逃げるの、手伝ってくれたり……何も、言うなって言っといてくれてたり……」

「気にしないでください。俺のためです」

「…………鳴雷くん、の? どういう意味……?」

「ミフユさんにもカサネたんにも一緒に居て欲しいって、ワガママなだけです」

カサネにしか聞こえないように話しているのだからいいかと、二人きりの時にだけ使うと約束した呼び方をしてみた。

「み、水月くん……は、そんなにっ……俺の、何がいいの」

カサネもそういうタイプか。こういうタイプには好きだからとか可愛いからとか素直に言っても効き目が薄い、自己肯定感が低いから俺の愛情を信用してくれないのだ。もっと論理的に説明しないと。

「……あんな、顔良くて……明るいの、ばっか……集めてるくせに、なんで、俺……気に入ったの」

「…………ハーレムものでヒロインが巨乳しか居ないとバランス悪いと思いませんか?」

「はっ……?」

「編集は絶対、貧乳キャラも入れろって言うと思うんですよ……そういうことです」

「いや分かんねぇよ?」

「陰キャも欲しい」

「しょっ、正直に陰キャって言いやがったなお前ぇっ……! その通りだけどっ、陰キャは陽キャをバカだと見下してるフリして羨んでるだけなんだからあんまり自分以外が陰キャジャッジするのはよくないと思うっ……! ぅう……クソ、でも納得したぞ。昨今のアニメやゲームだと、メインキャラに一人はギーク枠が居る……オタクってほどじゃなくても暗いヤツは、居る。俺はなんか胸が痒くなるからああいうキャラ嫌いなんだけど……お前は、好きなんだな」

いやそうでもない。萌えより同族嫌悪が勝つ。けれどそのキャラが持つオタク要素以外の要素によっては推しキャラになることもしばしば。

「……そうか。十七人も居りゃ、変なのも欲しくなるか」

「そういうことです。やっと分かってくれましたか。んもぅ疑り深いんだからン、でもそんなところもかわゆい……! イチャイチャしようねカサネたんちゅっちゅっ」

「ホント残念だなお前」

元気を取り戻してきた、かな? 

「はぁ……」

ため息をつきながら顔を上げ、用意されている水を飲んだ。

「ジュースもありますよ、カサネ先輩」

「いらない」

「そうですか……俺、料理取ってきますね」

席を立つ。ステーキを頼もうかとグリルへ向かうとアキに腕を掴まれた。

「にーにぃ、にーに、お肉食べるするです?」

「あぁ、アキもか?」

そういえばアキはさっき一切れ頼んでいたっけ? 焼き上がった肉を取りに行くのかな。

「セイカは置いてきたのか」

「すぇかーちか? すぇかーちか、お肉、ぼくもらう……ぅー……すぇかーちか、あげるするです」

「……? えっと……あっ、セイカの代わりに受け取ってあげるのか? 優しいなぁ」

右手で皿を持ち、左腕はアキに組まれているため何も出来ないが、頭を撫でたい。ふわふわ揺れる白髪を眺めるだけに留め、グリルの前に立つ。

「どうぞ」

「ありがとー、です。にーに、ばいばい」

焼き上がった肉を二人分受け取り、アキは机に戻っていく。

「量と部位、焼き加減をお申し付けください」

「あ、えっと……一人前、ぇー……フィレかな、やっぱり。焼き加減はレアで」

大きな肉の塊の赤と白、切り分けられる様をボーッと眺める。焼き目がついていく姿に、音と匂いが食欲を誘う。

「ぉー……」

「お待たせしました」

「ありがとうございます! わー、美味しそう……ぁ、ステーキソースってどこです?」

焼き上がったステーキを皿に乗せてもらった。

「こちらに」

「色々ありますね……どれにしようかな」

「弟さんはこちらにされていましたよ」

「へー、和風ソースかぁ……」

海外育ちの割に、味覚が割と日本寄りだよな、あの子。葉子さんは料理が下手らしいから、美味しいものイコール日本での食事、と学習したのかな?

「…………鳴雷 水月さんですよね」

「はい……? そうです、けど」

紅葉家に仕える年積家の人達は、ミフユ以外誰とも業務外での話をしたことがない。言っては何だがNPCのように思っていたので、話しかけられて少し驚いた。

「ミフユと交際中だそうで」

「ぁ……は、はい」

「……あぁ、私、ミフユの父です」

「…………お義父様ァ!? えっ、ぇ、あっ、えとっ……な、何の手土産もございませんで……」

「お気になさらず」

なさるよ! どうしよう、お義父様に肉を焼かせてしまった……本来なら俺がお焼きすべき立場では? いや今日はネザメの誕生日パーティで、ミフユの親への挨拶に来た訳じゃ……訳じゃなくても会っちゃったんだから挨拶しなきゃダメだろ!

「わ……わたくし、鳴雷 水月と申します……」

「……? はい、存じております」

「本日は、お日柄もよく……?」

何を言っているのか分からなくなってきた。混乱し始めた俺の肩を小さな手が叩く。

「何をしている鳴雷一年生、肉を受け取ったなら早く席に戻れ。邪魔だ。それに、肉は冷めれば固くなり味が落ちる」

「あっ、ミ、ミフユさんっ、ぉ、お義父様……」

「席に戻れ。コック長、私語は慎んでください。全く……昔からあなたは家を飛び出したりと年積の者としての自覚が足りない」

父親に説教だと!?

「……ちゃんと戻ってきてお前仕込んだだろ」

「仕込んっ……下品な物言いも控えなさい! 全く……! 鳴雷一年生何をしている早く席に戻れ!」

バシバシと背中を叩かれ、仕方なく席に戻る……俺が先程まで座っていた席にはアキが座っていたので、先程アキが座っていた席に座ることにした。
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