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僕のお兄ちゃんが世界一可愛い (水月+リュウ・ミタマ・カンナ・カミア・歌見)
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カミアにプロポーズされてしまった。嬉しくて愛おしくて、小指に残る小指の感覚がいつまでも消えなければいいのにと願ってしまう。
「……コンちゃんって指切りしたらホンマに指切りそうな雰囲気出してきそうで怖いなぁ」
「せんわそんなこと!」
「ホンマに切りそうやなくて、ホンマに切りそうな雰囲気出しそう、やで?」
「否定のしようがないではないか! 出んと言うたところで出ると言われればそれまで……卑怯じゃ卑怯じゃ!」
カミアとカンナは同じ服を着ている。黒いスラックスに白いシャツ、首元のリボンは色違いだ、深く落ち着いた赤と青、カミアが赤、カンナが青だ。
「カンナとお揃いなんだなぁ、カミア。似合ってるよ」
「ホントっ? えへへ、嬉しい……ほらほらお兄ちゃん! みぃくん似合ってるって!」
カンナはむすっとしている。
「……カンナ?」
「お兄ちゃん双子コーデ恥ずかしいから嫌だって言ってたんだ、無理言って着てもらったんだよ」
「そうだったのか……カンナ、嫌がることないだろ? 可愛いし似合ってるよ。せっかく双子なんだから、もっとお揃いとか色違い見せてくれ」
「……だっ、て」
カンナは俯いて黙り込んでしまった。俺はカンナを抱き締めて彼氏達から少し離れ、小さく丸まる彼の耳元で「何かちゃんとした理由があるなら聞かせて」と極力優しい声で尋ねた。
「ぼ、く……達、ふたご……で」
「……うん」
「…………同じ、かっこ……する、なら……ひと、で…………カミア、だけ……いい……って」
「カンナ……分かってないなぁ、カンナは……本当に」
同じ服装なら一人でいい? カミアだけでいい? カンナは何も分かっていない、全く分かっていない。
「カンナぁ、双子の良さって何か分かるか?」
「……? 分か、な……」
「同じなことだよ! お揃いのことが多ければ多いほどイイ……! そして差異もあればあるほどイイ! 分かるか?」
「ます、ます……分かん、な…………お、そろ……が、いーの? ちが、のが……いい、の?」
「はいはいはーい!」
二人だけで話していたつもりだったが、俺が興奮して大声を出したせいかカミアにも聞こえていたようだ。無邪気な笑顔で手を挙げている。
「はい、カミアさん。お答えください」
「お揃いの服着て、小物を色違いや同ブランドの別のヤツにします!」
「完全正答! 双子は基本同じ格好してて欲しいけど、髪の分け目とか小物とか細かい差異が欲しいよな。見分けとかじゃなくてこれは純粋に俺のヘキ」
「何、が……いいの。それの……」
「お兄ちゃん分かんないの? 双子ってそういうのが可愛いんじゃん」
「…………顔も、同じならね」
「お兄ちゃん……」
「……同じじゃ、ないんだ。双子の旨みなんか、もう、ない。はなして」
「あっ、お兄ちゃん……」
カンナはカミアに手を離させると、彼氏達の輪の中へ戻った。
「うた、さん……久しぶり」
「時雨。そういえば久しぶりだな、元気だったか?」
カミアはカンナを追うことなく、その場に佇み俯いた。俺の責任も重いと判断し、カミアを励ますため彼の傍に寄る。
「……みぃくん」
「ごめんカミア。俺のせいで、なんか……雰囲気悪くしちゃって」
「お兄ちゃん……お兄ちゃんね、すごいんだぁ。自分の魅せ方もね、僕の魅せ方もね、分かってる……だからお兄ちゃんが双子コーデの良さ分かってないはずない……なのに、嫌がるんなら……それなりの理由あったはずなのに、恥ずかしがってるだけだって思い込んじゃって……僕、僕のバカぁ……」
「カ、カミア? 泣かないで。すごく可愛いんだからカミアのコーデは間違ってないって。カンナが気にし過ぎなだけだよ」
「お兄ちゃん悪く言わないでよみぃくんのバカっ!」
歩幅の狭い足音が戻ってくる。カンナが慌てて戻ってきたらしい。よかった、俺をダシにカミアと仲直りしてくれれば──
「みぃくんになんてこと言うのバカカミア!」
──俺のせいで悪化してる!?
「だ、だって、みぃくんが……僕が悪いのにお兄ちゃんが気にし過ぎなんだとか言うからぁ……」
「みぃくんはカミア励ましてくれてるんだろ! バカとか言っちゃダメ!」
「ぅ……でも」
「でもじゃない! だってもなし! 謝れ!」
「…………ごめんなさい」
「ぼくじゃない」
「……みぃくん、ごめんなさい」
俺の服の裾を引き、小さな声で謝るカミアの頭を撫でる。気にしていないよと優しく言ってやり、頬に手を下ろし涙を拭う。
「…………カンナ、ちょっといいか?」
「……? な、に……?」
「カンナは、もう整形する気ないんだよな?」
「ぅん……みぃくん、気に……って、くれ、から」
「なら顔がどうとか言うなよ。目はそっくりだし、口元もそっくり。身長も同じだし声も似てる。双子の旨みはなくなってなんかいないよ。カンナもカミアも同じくらい可愛いし、お揃いのカッコして一緒に居たら更に可愛い」
「…………」
「弟泣かせちゃダメだろ?」
カンナは小さく頷いてカミアの服の裾を引いた。
「……ごめんね、カミア」
「お兄ちゃん……お兄ちゃん可愛い! 見たみぃくん今の見た!? めっちゃ可愛くない……!?」
「いやお前も同じことしてて可愛かったよ」
「今お兄ちゃんの話してるの!」
「……見てたよ。可愛かったよ」
「だよね~! えへへ……僕こそごめんねお兄ちゃん、お兄ちゃんが謝ることなんて何にもないよ。お兄ちゃんは何してもいいんだから、ね?」
ぽかんとしていたカンナの両手を両手で包むように握り、カミアは満面の笑みを浮かべる。仲直り出来たようで何よりだ、仲の良さの方向性は、まぁ、普通の兄弟とは少し違うようだが、仲がいいならそれでいいだろう。
「……コンちゃんって指切りしたらホンマに指切りそうな雰囲気出してきそうで怖いなぁ」
「せんわそんなこと!」
「ホンマに切りそうやなくて、ホンマに切りそうな雰囲気出しそう、やで?」
「否定のしようがないではないか! 出んと言うたところで出ると言われればそれまで……卑怯じゃ卑怯じゃ!」
カミアとカンナは同じ服を着ている。黒いスラックスに白いシャツ、首元のリボンは色違いだ、深く落ち着いた赤と青、カミアが赤、カンナが青だ。
「カンナとお揃いなんだなぁ、カミア。似合ってるよ」
「ホントっ? えへへ、嬉しい……ほらほらお兄ちゃん! みぃくん似合ってるって!」
カンナはむすっとしている。
「……カンナ?」
「お兄ちゃん双子コーデ恥ずかしいから嫌だって言ってたんだ、無理言って着てもらったんだよ」
「そうだったのか……カンナ、嫌がることないだろ? 可愛いし似合ってるよ。せっかく双子なんだから、もっとお揃いとか色違い見せてくれ」
「……だっ、て」
カンナは俯いて黙り込んでしまった。俺はカンナを抱き締めて彼氏達から少し離れ、小さく丸まる彼の耳元で「何かちゃんとした理由があるなら聞かせて」と極力優しい声で尋ねた。
「ぼ、く……達、ふたご……で」
「……うん」
「…………同じ、かっこ……する、なら……ひと、で…………カミア、だけ……いい……って」
「カンナ……分かってないなぁ、カンナは……本当に」
同じ服装なら一人でいい? カミアだけでいい? カンナは何も分かっていない、全く分かっていない。
「カンナぁ、双子の良さって何か分かるか?」
「……? 分か、な……」
「同じなことだよ! お揃いのことが多ければ多いほどイイ……! そして差異もあればあるほどイイ! 分かるか?」
「ます、ます……分かん、な…………お、そろ……が、いーの? ちが、のが……いい、の?」
「はいはいはーい!」
二人だけで話していたつもりだったが、俺が興奮して大声を出したせいかカミアにも聞こえていたようだ。無邪気な笑顔で手を挙げている。
「はい、カミアさん。お答えください」
「お揃いの服着て、小物を色違いや同ブランドの別のヤツにします!」
「完全正答! 双子は基本同じ格好してて欲しいけど、髪の分け目とか小物とか細かい差異が欲しいよな。見分けとかじゃなくてこれは純粋に俺のヘキ」
「何、が……いいの。それの……」
「お兄ちゃん分かんないの? 双子ってそういうのが可愛いんじゃん」
「…………顔も、同じならね」
「お兄ちゃん……」
「……同じじゃ、ないんだ。双子の旨みなんか、もう、ない。はなして」
「あっ、お兄ちゃん……」
カンナはカミアに手を離させると、彼氏達の輪の中へ戻った。
「うた、さん……久しぶり」
「時雨。そういえば久しぶりだな、元気だったか?」
カミアはカンナを追うことなく、その場に佇み俯いた。俺の責任も重いと判断し、カミアを励ますため彼の傍に寄る。
「……みぃくん」
「ごめんカミア。俺のせいで、なんか……雰囲気悪くしちゃって」
「お兄ちゃん……お兄ちゃんね、すごいんだぁ。自分の魅せ方もね、僕の魅せ方もね、分かってる……だからお兄ちゃんが双子コーデの良さ分かってないはずない……なのに、嫌がるんなら……それなりの理由あったはずなのに、恥ずかしがってるだけだって思い込んじゃって……僕、僕のバカぁ……」
「カ、カミア? 泣かないで。すごく可愛いんだからカミアのコーデは間違ってないって。カンナが気にし過ぎなだけだよ」
「お兄ちゃん悪く言わないでよみぃくんのバカっ!」
歩幅の狭い足音が戻ってくる。カンナが慌てて戻ってきたらしい。よかった、俺をダシにカミアと仲直りしてくれれば──
「みぃくんになんてこと言うのバカカミア!」
──俺のせいで悪化してる!?
「だ、だって、みぃくんが……僕が悪いのにお兄ちゃんが気にし過ぎなんだとか言うからぁ……」
「みぃくんはカミア励ましてくれてるんだろ! バカとか言っちゃダメ!」
「ぅ……でも」
「でもじゃない! だってもなし! 謝れ!」
「…………ごめんなさい」
「ぼくじゃない」
「……みぃくん、ごめんなさい」
俺の服の裾を引き、小さな声で謝るカミアの頭を撫でる。気にしていないよと優しく言ってやり、頬に手を下ろし涙を拭う。
「…………カンナ、ちょっといいか?」
「……? な、に……?」
「カンナは、もう整形する気ないんだよな?」
「ぅん……みぃくん、気に……って、くれ、から」
「なら顔がどうとか言うなよ。目はそっくりだし、口元もそっくり。身長も同じだし声も似てる。双子の旨みはなくなってなんかいないよ。カンナもカミアも同じくらい可愛いし、お揃いのカッコして一緒に居たら更に可愛い」
「…………」
「弟泣かせちゃダメだろ?」
カンナは小さく頷いてカミアの服の裾を引いた。
「……ごめんね、カミア」
「お兄ちゃん……お兄ちゃん可愛い! 見たみぃくん今の見た!? めっちゃ可愛くない……!?」
「いやお前も同じことしてて可愛かったよ」
「今お兄ちゃんの話してるの!」
「……見てたよ。可愛かったよ」
「だよね~! えへへ……僕こそごめんねお兄ちゃん、お兄ちゃんが謝ることなんて何にもないよ。お兄ちゃんは何してもいいんだから、ね?」
ぽかんとしていたカンナの両手を両手で包むように握り、カミアは満面の笑みを浮かべる。仲直り出来たようで何よりだ、仲の良さの方向性は、まぁ、普通の兄弟とは少し違うようだが、仲がいいならそれでいいだろう。
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