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呼び出しは無視したい (水月+リュウ・セイカ)
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後片付けを終えたのでアキの部屋に戻り、ベッドで一人眠るリュウの隣に身を横たえた。
「水月ぃ……?」
リュウの身を包んだ毛布に俺も包まろうとモゾモゾしていたらリュウが目を覚ましてしまった。
「起こしちゃったか、ごめんな」
「水月が帰ってくるまで待と思ててん。せやけど眠たぁて……起きれてよかったわ、おかえり水月ぃ。お疲れ様」
「……殊勝な心がけで大変結構なんだが、俺が寝ろと言ったら寝るんだ。いいな?」
「はぁい……すんまへん」
「ん。腕枕するか?」
「ええのん? 頼むわ。へへ……」
腕枕をしてやるとリュウは俺の背に腕を回し、ほどなくして寝息を立て始めた。リュウの頭や背を撫でながら目を閉じ、俺も眠った。
アラームで目を覚まし、リュウの頭の下から腕を抜いて枕を差し込む。
「ん……ぅ?」
目を擦るリュウの手を止めさせ、頭を撫で、背を優しく叩き、寝かしつける。
「…………よし」
再び落ち着いた寝息が聞こえ始めたので手を離し、静かに部屋を出た。今日はネザメの誕生日パーティがある、プレゼントの準備は当然、あの豪邸に行くのだからそれなりの服も必要だ。
「おはようございまーす……」
声帯は震わせず、息だけを吐きながら唇の形を変える。そうやって一応の挨拶をしつつ自室の扉を開けると、赤い瞳が俺を捉えた。
「……寝てていいぞ。ごめんな、起こして」
静かに開けたつもりなのに、アキは敏感に目を覚ました。頭を撫でてやると目を閉じ、テディベアを抱いているセイカを抱き締め直した。
(荷物の準備は出来てますな。服も用意しておいたのでこれを……ゃ、先に髪ですかな)
前日に用意し、目立つところに置いておいた鞄と服。そしてとても小さなリボン。俺はそのリボンを、机に置かれていたハムスターのぬいぐるみの首に巻き、ネクタイを作った。
「よし、ハム……えーっと、コウジ? だっけ。正装完了だな。ドレスコードないけどあるようなもんだからな、あの家……」
ついでに作っておいたシルクハットも被せておくか。こうなってくるとモノクルも欲しいな、今度作ろうかな。となるとジャケットも……コートの方がいいか?
(おっと、早く髪をセットせねば)
ぬいぐるみの着せ替えを考えている場合じゃない。俺は着替えを持って洗面所に向かった。いつも以上に気合いを入れて髪をセットするのだ。
「サキヒコくーん……もう少し右、行き過ぎ……ありがと」
サキヒコに手鏡を持ってもらい、後頭部までしっかりと髪を整えた。自分で言うのも何だが、なかなかキマっている。というか超絶美形なのでどんな髪型でも似合う。
朝食の準備を手伝い、起きてきた三人と挨拶を交わす。
「鳴雷、公次が紳士になってた」
「今日は豪華な家に行くからなぁ、ちょっとおめかししたんだろ」
「そうなんだ……」
席に着いたセイカはハムスターを机の隅に置いた。いつもの位置だ、小さな机でも用意してやったら喜ぶかな? 食玩でたまに売っているお子様プレートのミニチュアなんかも買ってやったらセイカはどんな反応を見せるだろう。素直に喜ぶかな、子供扱いし過ぎだと怒るかな? どっちでもいい、きっと可愛い。
「……あの帽子水月作ったったんやんな? 器用やなぁ」
昨晩はぐったりとしていたから心配だったが今は元気そうだ、少しダルそうにもしているけれど。
「水月、今日は遊びに行くのよね?」
「ええ、誕生日パーティです」
「困ったわねぇ……真尋くんにね、今日はアンタ連れてきて欲しいって言われてるのよ」
「え、マジですか……」
「明日でもいいって言ってたけど」
「うーん……明日はみんなでお祭り行く約束が……まぁ、夜からだから、昼過ぎくらいまでに帰れるなら。コンちゃんも呼んでる感じ?」
「特に言ってなかったわね」
付喪神が妖狐ぶって人間に憑いているのはとても珍しいことらしく、母が勤める会社の秘書はミタマを調べたがっている。ミタマが憑いている以外に俺を呼ぶ理由はない、言っていなくとも目当てはミタマと分かる。
「気が向かないなぁ~……なんか用事出来ないかなぁ~……リュウ、俺の明日の午前潰さないか?」
「特に用事あれへんから別にええけど……」
「暇だから遊ぶなんて理由じゃダメよ、私がぐちぐち言われるんだから」
「社員を休日に呼びつけるのですらどうかと思うのに、その息子まで呼びつけるなんて正当性ないでしょ」
「それで引き下がる社会人は居ないわ……」
母も気乗りしない様子だ。いくら母が完璧超人とはいえ上の立場の者に圧をかけられ続けるのは可哀想だし、俺がそれを解決出来るならやってあげたい。でも、ヤツの目当てはミタマだからなぁ。
「向こうに用事出来ないかなぁ。あ、ごちそうさま~」
深いため息をついて、手を合わせる。
「とりあえず、今日は誕生日パーティを全力で楽しむ、ネザメさんに楽しませる。明日のことはパーティ終わってから考えよう。もしかしたらパーティが明日まで長引くかもしれない」
「往生際悪いのぅ……なんか用事あるんやったら行ったったらどうや」
「当事者じゃないヤツは気楽でいいよなぁ」
何度でも言うがヤツの目当てはミタマなのだ。俺のことなら往生際良くもなれたかもしれない、しかし大切な彼氏に用事となれば警戒もするしみっともない駄々もこねる。
「水月ぃ……?」
リュウの身を包んだ毛布に俺も包まろうとモゾモゾしていたらリュウが目を覚ましてしまった。
「起こしちゃったか、ごめんな」
「水月が帰ってくるまで待と思ててん。せやけど眠たぁて……起きれてよかったわ、おかえり水月ぃ。お疲れ様」
「……殊勝な心がけで大変結構なんだが、俺が寝ろと言ったら寝るんだ。いいな?」
「はぁい……すんまへん」
「ん。腕枕するか?」
「ええのん? 頼むわ。へへ……」
腕枕をしてやるとリュウは俺の背に腕を回し、ほどなくして寝息を立て始めた。リュウの頭や背を撫でながら目を閉じ、俺も眠った。
アラームで目を覚まし、リュウの頭の下から腕を抜いて枕を差し込む。
「ん……ぅ?」
目を擦るリュウの手を止めさせ、頭を撫で、背を優しく叩き、寝かしつける。
「…………よし」
再び落ち着いた寝息が聞こえ始めたので手を離し、静かに部屋を出た。今日はネザメの誕生日パーティがある、プレゼントの準備は当然、あの豪邸に行くのだからそれなりの服も必要だ。
「おはようございまーす……」
声帯は震わせず、息だけを吐きながら唇の形を変える。そうやって一応の挨拶をしつつ自室の扉を開けると、赤い瞳が俺を捉えた。
「……寝てていいぞ。ごめんな、起こして」
静かに開けたつもりなのに、アキは敏感に目を覚ました。頭を撫でてやると目を閉じ、テディベアを抱いているセイカを抱き締め直した。
(荷物の準備は出来てますな。服も用意しておいたのでこれを……ゃ、先に髪ですかな)
前日に用意し、目立つところに置いておいた鞄と服。そしてとても小さなリボン。俺はそのリボンを、机に置かれていたハムスターのぬいぐるみの首に巻き、ネクタイを作った。
「よし、ハム……えーっと、コウジ? だっけ。正装完了だな。ドレスコードないけどあるようなもんだからな、あの家……」
ついでに作っておいたシルクハットも被せておくか。こうなってくるとモノクルも欲しいな、今度作ろうかな。となるとジャケットも……コートの方がいいか?
(おっと、早く髪をセットせねば)
ぬいぐるみの着せ替えを考えている場合じゃない。俺は着替えを持って洗面所に向かった。いつも以上に気合いを入れて髪をセットするのだ。
「サキヒコくーん……もう少し右、行き過ぎ……ありがと」
サキヒコに手鏡を持ってもらい、後頭部までしっかりと髪を整えた。自分で言うのも何だが、なかなかキマっている。というか超絶美形なのでどんな髪型でも似合う。
朝食の準備を手伝い、起きてきた三人と挨拶を交わす。
「鳴雷、公次が紳士になってた」
「今日は豪華な家に行くからなぁ、ちょっとおめかししたんだろ」
「そうなんだ……」
席に着いたセイカはハムスターを机の隅に置いた。いつもの位置だ、小さな机でも用意してやったら喜ぶかな? 食玩でたまに売っているお子様プレートのミニチュアなんかも買ってやったらセイカはどんな反応を見せるだろう。素直に喜ぶかな、子供扱いし過ぎだと怒るかな? どっちでもいい、きっと可愛い。
「……あの帽子水月作ったったんやんな? 器用やなぁ」
昨晩はぐったりとしていたから心配だったが今は元気そうだ、少しダルそうにもしているけれど。
「水月、今日は遊びに行くのよね?」
「ええ、誕生日パーティです」
「困ったわねぇ……真尋くんにね、今日はアンタ連れてきて欲しいって言われてるのよ」
「え、マジですか……」
「明日でもいいって言ってたけど」
「うーん……明日はみんなでお祭り行く約束が……まぁ、夜からだから、昼過ぎくらいまでに帰れるなら。コンちゃんも呼んでる感じ?」
「特に言ってなかったわね」
付喪神が妖狐ぶって人間に憑いているのはとても珍しいことらしく、母が勤める会社の秘書はミタマを調べたがっている。ミタマが憑いている以外に俺を呼ぶ理由はない、言っていなくとも目当てはミタマと分かる。
「気が向かないなぁ~……なんか用事出来ないかなぁ~……リュウ、俺の明日の午前潰さないか?」
「特に用事あれへんから別にええけど……」
「暇だから遊ぶなんて理由じゃダメよ、私がぐちぐち言われるんだから」
「社員を休日に呼びつけるのですらどうかと思うのに、その息子まで呼びつけるなんて正当性ないでしょ」
「それで引き下がる社会人は居ないわ……」
母も気乗りしない様子だ。いくら母が完璧超人とはいえ上の立場の者に圧をかけられ続けるのは可哀想だし、俺がそれを解決出来るならやってあげたい。でも、ヤツの目当てはミタマだからなぁ。
「向こうに用事出来ないかなぁ。あ、ごちそうさま~」
深いため息をついて、手を合わせる。
「とりあえず、今日は誕生日パーティを全力で楽しむ、ネザメさんに楽しませる。明日のことはパーティ終わってから考えよう。もしかしたらパーティが明日まで長引くかもしれない」
「往生際悪いのぅ……なんか用事あるんやったら行ったったらどうや」
「当事者じゃないヤツは気楽でいいよなぁ」
何度でも言うがヤツの目当てはミタマなのだ。俺のことなら往生際良くもなれたかもしれない、しかし大切な彼氏に用事となれば警戒もするしみっともない駄々もこねる。
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