冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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身体が欲しがっているのは (水月+フタ・アキ・セイカ)

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鎖骨が折れた。絶対折れた。折れてなかったら俺の骨はダイヤモンドか何か……いや純粋なダイヤは以外と割れやすい、硬度だけの話でなく丈夫なのは、翡翠とかその辺? 骨が翡翠って何それ素敵、まぁ超絶美形だからそのくらいの素敵不思議があっても不思議ではないんだが? だが?

「もっ、げ……た。肩、から……全て、が」

崩れ落ちた俺を見下ろし、呆れたようにため息をついたアキはジロっと形州を睨み付ける。

《兄貴倒れちゃったじゃんか!》

「…………チッ、まだ痛む……ふざけた起こし方しやがって。何なんだ……まだ五時過ぎじゃないか、早く帰れとでも言いたいのか?」

「にーに! 痛いする、すごくです! にーに、あなた、叩くする、強いです、過ぎるする、しないです、でした! 仕返しする、超えるするです!」

「…………筋力と力加減の割合で考えれば同じくらいのはずだ。このバカは力いっぱい叩いてきた」

《何言ってんのか分かんねぇよ陰湿ゴリラ!》

「……………………よく分からんが、多分悪口だな。はぁ……嫌いだ、お前ら兄弟…………早く俺だけの歳下金髪ピアス開け放題オナっ……恋人、候補……が、現れないものか……」

今オナホって言おうとしたなコイツ。理想の相手が見つかってもろくな扱いせず愛想を尽かされるんだろうな、レイの時みたいに。

「痛てて……お部屋に帰りませうアキくん」

俺には顔以外で形州に勝っている要素はないと落ち込んでいたが、冷静になって考えてみるとヤツは愛情深さとか愛情表現の仕方とか、その他諸々が欠落している。

「ふぅぅ…………俺の勝ちだ!」

恋愛において一番大切なのは、愛情の深さとその伝え方。決して身長や喧嘩の強さなどではない。そう思い至った俺はもう形州に劣等感を覚えることはない。勝利宣言をして部屋を出た。

「………………何が?」

負けを認められる敗者は少ない。閉じていく扉の向こうから聞こえた疑問にすら俺は勝ち誇った。

「すぇかーちかぁ~!」

「ぅぐっ……」

「こらアキ! まだセイカは寝てていいんだから無茶しない!」

部屋に戻ってすぐ、アキはベッドに飛び込みセイカに抱きついた。セイカは寝苦しそうに声を漏らし、アキから逃げようともがいた。しかしアキから逃げられる訳もなく、隣に寝転がって姿勢を整えた彼にガッチリとホールドを決められた。

「予定より遅れちゃった……ごめんなさいフタさん、今ほどきますね。痛っ……ぅう、肩痛い……ちくしょう」

形州にチョップし返された肩がまだ痛い、腕が上がらない。今日も体育祭の練習があるのにあの野郎とボヤきながらフタの身体を縛った赤い麻縄をほどいていく。胸に貼ったローターとガーゼも外し、ディルド付きマスクも外した。その過程でフタは目を覚まし、咳き込みながらゆっくりと身体を持ち上げた。床についた手は震えている。

「……フ、フタ、さん?」

ミタマが血を流していた光景がフラッシュバックする。フタは俺を殺しても旨味がないと理解してくれたし、メモにも記した。だがフタが俺を殺さないという保証はどこにもない。
フタがまた俺の殺害を思い付いても、その場に俺が居ないからメモに残そうとして、殺さないと決めたメモを見れば、あぁ殺しちゃダメなんだなと理解し直してくれるだろう。
だが、思い付いた時に俺が傍に居たら? メモを見る必要はない。今この瞬間飛びかかってくるかもしれないのだ。

「フタ……さん、あの……」

彼氏達みんながミタマに願ってくれた。ミタマの神通力で俺の命が続くことは保証されているのかもしれない、けれど、死なないとしても、怪我すらしないのだとしても、フタに殺意を向けられるのはそれだけで恐怖だ。その恐怖の可能性に恐怖して声が詰まる。俺はどれだけ情けないんだ……

「みつきぃ……?」

顔を上げたフタは潤んだ目で俺を捉えた。眉尻を下げ、真っ赤な顔をして、口で息をしていた。恐怖が萎み、興奮が始まる。

「みつきぃ……! みつき、みつきぃ……」

一晩縛られていたことなんて覚えていないはずなのに、フタは心細かったとでも言うように俺の首に腕を回す。俺は膝立ちをやめ、正座を崩した姿勢になってフタを抱き返すことにした。

「フタさん……ごめんなさい……」

そう呟きながらフタの背に回そうとした俺の手を、フタが掴んだ。ぽろぽろ涙を零しながら、俺の首に巻いたままのもう片方の腕を離して膝立ちになり、俺を見下ろしながら俺の手のひらを自身の胸に押し付けた。

「んぁっ……ぁ、ふ…………みつき、ねぇみつきぃ……触って、触ってぇ……お願い、なんかジンジンすんの、胸ぇ……お腹はじくじくして痛いし、お尻もなんかさみしいしぃ……」

柔らかい胸筋に指が沈む。硬く尖った乳首がタンクトップ越しに俺の手のひらをくすぐる。

「たすけて、みつき……俺どうすればいいか分かんない、分かんないけど、なんか……みつきにすごく触って欲しい。色んなとこいっぱい……体熱いよぉ…………ぁ、これ、熱? なんかビョーキなのかなぁ……あっ、じゃあダメじゃん! みつきごめん離れてっ、うつっちゃう……ごめんなさい、分かんなくて、俺ぜんぜんなんにも分かんなくてぇ……ごめんなさいぃ……」

俺の手を離し、ずりずりと後ずさっていくフタを慌てて抱き締めた。

「病気じゃありません!」

「……ちがうの?」

「はい、フタさんに今起こっていることは、普通のことです」

「…………俺いつもこんなんなってんの? 覚えてないけどさぁ……覚えてないけど、なんか……なんか、慣れがないよ。俺歯磨きとか、どうすればいいか分かるもん。でもこれどうすればいいか分かんない」

「それはフタさんは初めて経験することだからです。恋人が出来て、しばらくしたら起こることなんです」

フタは不思議そうな顔をしながらも頷いた。分かってくれたのだろうか、分かっているフリをしているだけか? フタは案外と嘘をつくからなぁ。

「いいですか、フタさん。フタさんが今感じている体の変な感じは、全部……俺とえっちなことがしたいっていう体の訴えです! 水が欲しい時に喉が渇くように、食べ物が欲しい時にお腹がすくように、俺が欲しいと身体が熱くなったり全身がうずうずしたりするんです!」

「えっ……とぉ…………早くて、長くてぇ……よく分かんなかった。もっと短くなんない? メモも取りたいからぁ……ゆっくりも言ってね」

力説は空振りだった。だが、メモをするとフタから言ってくれたのは助かる。今後フタが一人の時にムラムラして、その感覚の原因や対処法を求めた時、答えが彼の手元にあるというのは非常にイイ。

(今後フタさんから急に電話で「みつきぃ、えっちしたいよぉ……」とかって来るとか!? ふぉお……ウオォオオオオッ!)

心の中で叫びながら、俺は簡潔にまとめた演説をゆっくりと言い、フタにメモを取らせた。
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