冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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頻繁に貰う十一桁 (水月+歌見・セイカ)

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放課後のバイト中、倉庫での作業を終えて倉庫の扉の前で腰を叩いていると客に声を掛けられた。

「あのー……」

「は、はい!」

「セルフレジの使い方よく分からなくて……」

「あー、レジ、はい、すぐ行きます!」

セルフレジなので楽なものだとバイトを始めた当初は思っていたが、こういう客も案外多い。商品のバーコードを読み込ませて電子決済するだけ、もしくは表示された分の現金を入れるだけなのに。

(お若い方ですのに……早く慣れないと東京じゃ生きていけませんぞ)

実演しつつ説明し、決済を見届ける。

「ありがとうございました。あの、これ……」

「いえ……はい?」

折り畳まれた小さな白い紙を手渡され、思わず受け取る。レシートを処分しておけということかと納得しかけて、その手触りがレシートのものではなくただのメモ帳か何かだと察する。

(まずい!)

すぐに返さなければ!

「あのっ」

瞬きの思考の間に女性客は走り出していた。何も言わず、買った本を抱き締めて店外へと逃げていった彼女の背に俺はため息をついた。

「やられた……」

メモを開き、十一桁の数列を確認し、頭を抱える。

「電話番号受け取っちゃいました……」

バイト終わり、バックヤードでそのメモを歌見に見せた。

「可愛い男の子だったのか?」

「量産型女子大生的な方でそ……パッと渡されて、思わず手ぇ出して、持った瞬間返そうとしたのに……逃げやがったあの女」

「あーぁ、捨てとけ捨てとけ」

「前はエプロンのポケットに突っ込まれたし……その前はズボンのケツポケにいつの間にか入ってたし…………はぁあぁ……鬱陶しい」

「ムカつくなぁお前」

「なんでですかわたくしは困っているというのに! 捨てりゃいいだけの話っちゃそうなんですけどなんか気まずいじゃないですか! 逆恨みされたりストーカー化したりしたらどうすんですか、もうわたくし店立つのヤダー! 倉庫作業だけやるー!」

「女の子にしょっちゅう電話番号もらっといてその態度。ほんとムカつく」

「ビエーン! 恋人の態度とは思えない~! 恋人がモテてヤキモチ、とかいう可愛いムカつきじゃないでしょそれ! モテるイケメンへのやっかみでしょ!」

「その通りだ」

「……パイセン一応元ノンケでしたよな。じゃあ! 男にモテてめっちゃモーションかけられたらどうですか!」

「嫌だな」

「それを相談したらやっかみでムカつかれたらどうですか! しかも恋人に!」

「それも嫌だな、ちょっと傷付くし」

「分かってるならわたくしに優しくしろぉ~! でそ!」

叫びながら歌見の胸に飛び込む。汗の匂いが鼻腔を埋め、鼻から脳へと快感を送る。

「スーハッ、スーハッ、たっまんねぇグッドスメル。ノーハンド射精余裕パイセンに着床確認二人で育てようね……」

「本気でキモい。イケメンになら痴漢されても喜ぶんだろ的な意見が間違ってることを感覚で分からせてくれてありがとう。お前レベルのイケメンで、なおかつ恋人でもこんなにもキモいんなら、イケメン無罪なんて非モテのひねくれ幻想でしかない」

「ひ、酷い! パイセンが嘘つくなとか素のお前が好きだよとか言うから素直に思ったこと感じたことそのまま言ってるだけなのにぃぃ!」

「あぁ、俺は素のお前が好きだぞ。圧倒的ビジュから繰り出されるキモい言動の数々……愛されていると感じられて好きだ。それはそれとしてキモいのはキモいけど」

「今日だけでパイセン何回キモいって言いました!? 人間が一番傷付く言葉なのに! グレてやる! グレてやりまそ! こんちくせう!」

「悪かったって、好きだよ水月」

「わたくしもパイセン大好きでそ~!」

「ちょっろ」

「弄ばれてまそ! でもそれがまた気持ちいい……!」

と言った具合でバイト終わりを楽しく過ごし、家に帰った。歌見の香りを思い出しながらトイレで一発抜き、夕飯に急ぐ。

「いただきまーす」

俺が長くトイレにこもっていたせいか、ノヴェムは少し不機嫌だったが夕飯を食べ終える頃にはすっかり上機嫌に戻り、俺の膝の上で楽しそうにゲームをし始めた。

「なぁ、鳴雷」

パーティゲームをプレイ中、俺の膝に座るノヴェムのようにアキの膝に座っているセイカが話しかけてきた。

「ん?」

「庭にさ、分野の祠建ててるだろ?」

「あぁ、ヒトさんとこに頼んで……えっ? 建ててるって、もう?」

「なんだよ知らなかったのか? 昨日から作業してるみたいだぞ、昨日も今日も帰ったらなんか居た。秋風に聞いた感じ、正午前くらいに来るらしい」

「へぇ……注文したばっかなのに早いなぁ」

「資材がまだとかで、今やってるのは場所決めとその場所の片付けだけらしいけどな。ちっちゃい祠とはいえ地面にポンと置くだけじゃダメで、ちょっと掘らないととか言ってたかな……」

セイカは説明を代わりに聞いてくれたのか、ありがたいな。

「……でさ、フタ? だっけ。あのくせっ毛の、腕に桜柄の刺青入ってる人」

「フタさんだな。フタさんも来てたのか」

「うん。あの人「みつき居る?」って何回もめっちゃ聞いてきてたぞ」

「あー、フタさん忘れっぽいからなぁ」

「何か用事なら伝えるって言ったんだけど、居ないならいいやって。直接会いたいみたいに感じたけど」

「……? まぁ、恋人だし会いたいだろ、俺も会いたいし。用事とかじゃなかったんだな」

「用事ありそうな雰囲気だったんだけどなぁ……」

セイカは納得していないように首を捻る。何がそんなに気になるのか、フタの様子を見ていない俺には分からない。

「……あの人じゃ用事あっても次聞けるか分かんないよな、んー……モヤモヤする」

「はは、確かに。でもフタさん大事なことはメモってるから、メモ見せてもらえば分かるよ。大事なことで、俺が分かって、二人の秘密にしなくていいことだったら教えるよ」

「ん、そうしてくれ」

ようやくセイカの中で折り合いがついた様子で、ゲームに集中し始めた彼は凄まじい巻き上げを見せた。
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