冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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見えない過保護 (水月+サキヒコ・ミタマ・レイ)

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こっそりと家に帰ってきた俺は自室のベッドで一人天井を見つめていた。ネイが話した内容を頭の中で噛み砕き、反芻しているのだ。

「協力……」

一方的に騙すのでも盗むのでもなく、協力。これこそネイが本来取るべきだった手段だ。法治国家にあるべき情報の手に入れ方だ。

「ねぇサキヒコくん、コンちゃん」

「何だ?」

「なんじゃみっちゃん」

ベッドの隣に二人が立つ。二人に見下ろされていると、何かこう……何か、居心地が悪い。

「いい情報手に入れられたらさぁ……ネイさんとヤれるかな」

「……やれる、とは? 何を?」

「交尾じゃ交尾」

ミタマは左手人差し指と親指で輪を作り、右手人差し指をその輪にズボズボ抜き挿しした。下品だ。

「愛想が尽きたのではなかったのか?」

「嘘つきと分かってからのみっちゃんの拗ねようはすごかったのぅ。さっちゃんよ、拗ねてあんな態度を取るということは、自分は好きなのにという気持ちが現れておるんじゃ。そりゃヤれるもんならヤりたい、それが男ってもんじゃ」

「石が男語ってるよ……」

「酷いぞみっちゃん!」

「いや結構当たってるからいいんだけどさ、よく考えたらコンちゃんって性別ないよね?」

「突き詰めればない。だがこの分霊はみっちゃんに恩返し出来るように作ったから雄じゃ。生殖能力はないがな」

「ふーん……?」

俺専用、という訳だ。見た目だとかも俺の好みを占って作ったとか言ってたし……自尊心が満たされてきた。ミタマに向かって手を伸ばすと、白い手がその手を掴んだ。床に膝立ちになったミタマは俺の手のひらに頬を擦り寄せ、狐の耳をぷるぷるっと揺らした。

「……十人以上好きに出来る男が居ても、ミツキはまだ男に惚れるんだな。その感覚はよく分からん」

「好きになるのは止めらんないよ」

「そうじゃのう。止まらんでええ止まらんでええ。みっちゃんは好きに生きりゃあええ、最悪の事態だけはワシが避けさせちゃるからのぅ」

「ありがとうコンちゃん、頼りにしてるよ」

「……あまりミツキを甘やかさないでください」

むっとした様子でミタマを窘めるサキヒコの姿がミフユに被って見える。同じ血筋の同じ立場だった彼らの考え方などはやはり似ているのだろう。

「何を言うとる、ミツキを甘やかそうとしとるのはさっちゃんの方じゃ」

「そうなの?」

「そ、そんなことあるはずないだろう!」

「ほれ、ワシらの普段の会話はみっちゃんに聞こえとらんじゃろ?」

「あぁ……俺に聞かせようって力込めないと俺には聞こえないんだよね、俺霊感ないから……」

「うむ。その際のことじゃ。さっちゃんはみっちゃんがちょっとぴんちになる度、ミタマ殿ミタマ殿、ミツキに幸運を……と、よう頼んでおるのじゃ。みっちゃんがちょっと電車に遅れそうな時、みっちゃんが問題を解けずに悩んどる時、みっちゃんが彼氏に贈る粋な言葉が思いつかん時……そんな些細なことですら、さっちゃんはすぐワシに助けてやってくれと言いよる」

「……へぇ~?」

サキヒコは顔を真っ赤にし、ぎゅっと口を閉じたまますぅっと姿を透かして消えていった。

「あっ消えた」

「しかも逃げたぞぃ」

「……からかうような態度取ってごめんね。サキヒコくんが俺に過保護なのすごく嬉しいし、ありがたいよ。愛してる。ってサキヒコくんが帰ってきたら言っといてくれる?」

「あい分かった。じゃが、聞こえとったとワシは思うぞ。扉のすぐ向こうくらいに居るんじゃないかとのぅ」

「そうなの? ふふ……好きな時に戻ってきなね、サキヒコくん」

どこかに居るはずのサキヒコに、聞こえているか分からないけれど声をかけ、目を閉じた。ハッとして目を開けるともう夜は明けていた、どうやら瞬きの間に感じられるほど深い眠りに落ちていたらしい。脳も身体もすっきりしているが、心はそうでもない、損をした気分だ。

「…………寝顔を見るのは幸せなことだ、お前の気持ちは分かる。でもな、起きてすぐ目の前にあったらいくら愛しい恋人の顔でもびっくりするんだ」

目を開けた瞬間、見開かれた光のない目と目が合った。なので俺は桃色の髪が愛らしい彼に向かって軽い説教をした。

「今日はびっくりしてなかったじゃないすか。お久しぶりっすね、せんぱい」

「慣れたよ……久しぶり、久しぶりか? まぁそうか……」

「サキヒコくん実体化出来るようになったんすよね! 俺直接は一瞬しか見てないっすよ~、どこっすかどこっすか、今居るっすか~?」

「……あぁ、レイはカメラでだいたい見てたのか。説明いらないな?」

「はいっす、せんぱいよくカメラに向かって色々話してくれるっすし……話したこと覚えてないんすか? 彼氏いっぱい居るからごっちゃになっちゃったっすか?」

「ん……いや、まだちょっと頭がボーッとしててな。話したって言っても、ほぼ独り言だ、会話じゃないからなぁ……メッセで話したことは多分忘れてないはずだ」

レイは目を丸くして俺を見つめた後、申し訳なさそうに言った。

「…………試していいっすか?」

「え? まぁ、いいけど。顔洗ってからな」

レイは洗面所にぴったり着いてきた。顔を洗い終えるとタオルを渡してくれた。

「ありがとう」

「問題っす!」

「お、おう。どんとこい」

「俺が最近後悔したことは?」

「最近ちゃんとした飯を食べるようにしたのに、まともに食ってなかった頃の名残でゴミ捨て間隔空けて、生ゴミに虫が湧いたこと」

「俺の直近の外食は?」

「回転寿司。ケーキを全種食べた。ガチャでピンバッジが当たった」

「俺が最近イラついたことは?」

「SNSで絵をアップしたところ、生成AIを使ったと見知らぬアカウントにしつこく絡まれたこと。メイキング動画を上げたら絡んできたヤツがぬるっとアカ消ししたこと」

「一言くらい謝れってんだって話っすよ! ふふ……せんぱいちゃんと俺がメッセで送った近況覚えててくれたんすね」

レイはようやく屈託のない笑顔を見せてくれた。これだ、この顔が見たかったのだ。俺は思わず彼を抱き寄せ、唇を重ねた。
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