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歌見の知らない世界 (〃)

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サキヒコについての詳細、彼と出会った時のことや彼が年積の人間であること、彼の死因に至るまであらゆることを話してみた。

「……なるほどな。お前が死体を見つけてちゃんと供養したから、もう安全な幽霊な訳だ。で、助けたようなもんだから好かれて、一緒に居ると……なるほどなぁ、つまり何だお前はサキヒコくんが誰にでも見える強い幽霊になるまでずっと隠してたってことか?」

「は、話しても信じてくれなかったでしょう!? 今だってギリギリだったのに……サキヒコくん秘密にしてたことは許してくだされ!」

「はぁ……まぁ、そうだな、信じてなかったと思う。許すよ。しかし、そうか……幽霊まで彼氏にね……ふふ……フィクションは顔だけにしとけよ」

「急に怒らないでくだされ! 情緒不安定ですな!」

「あんなグロいもんいきなり見せられりゃ情緒不安定にもなる!」

「それについては申し開きのしようもない……」

すまなさそうに眉尻を下げるサキヒコを見て歌見が慌てる。

「あっ、あぁいや、いいんだサキヒコくん……君に怒った訳じゃなくて」

「グロいって歌見パイセン、シコいの間違いでそ」

「コイツに怒ってんだこのド変態がリョナまでストライクゾーン内だとは恐れ入ったわふざけんな!」

どうしてちょっと人には言いにくい性癖を言っただけで胸ぐらを掴まれて揺さぶられなきゃならないんだ? そこまでされるようなことしたか?

「はぁ……あぁ、もう…………分かった、分かった、幽霊なんだな、うん……幽霊の存在すら半信半疑だったが、見ちゃったからな……これからは幽霊信じるよ。よろしくな、サキヒコくん。俺は歌見 七夜。名前がちょっと女の子っぽくて気に入ってないから苗字の方で呼んでくれ」

「よろしく頼む、歌見殿」

「さて、幽霊は分かった。だがミツキ……この子、いくつだ? 答えによっちゃぶっ叩くぞこのショタコンめ」

「サキヒコきゅんはミフユたんと同じく童顔なのでそ! こう見えてわたくしより歳上の十七歳でそ!」

「そうか、あの子も確かに幼く見えたが……同じ血筋なら、うーん……死んでる年数も含めての話じゃないな?」

「その年数含めりゃおじいちゃんでそ」

「信じておこう。お前はショタコンじゃない」

「ショタは二次元限定でそ」

歌見は恐る恐るサキヒコの頭に触れた。普通に触れることに安心したのかため息をつき、丸い頭を撫でている。

「……うん、別に普通の子じゃないか」

「頭じゃ分かりにくいかもですが全身ひんやりしてるんでそ」

「へぇ……?」

サキヒコが差し出した手を歌見は今度は躊躇なく握った。

「冷た……! 寒くないのか?」

「はい」

「ならいいけど……水月、生姜とか積極的に食わせてやるんだぞ。サキヒコくん、ちゃんと肩まで風呂に浸かるんだぞ」

冷え性とかじゃないんだけどな、と思いつつも歌見の優しさにほっこりする。サキヒコも同じ気持ちらしく穏やかな笑みをたたえている。

「サキヒコくん、今コンちゃん居る?」

「いや、居ない」

「セイカ送ったままか。歌見パイセン、もう一人人外の彼氏が居るんですが」

「……まぁお前の顔も人外みたいなもんだからな。ふふ……もう一人くらい、いや何なんだお前……あぁもういい、とりあえず言ってみろ」

「今はちょっと居ないのですが──」

ミタマについて簡単に説明した。やはり本人が居ないと説明が難しい、明日は一緒に来てもらおう。

「──という訳でそ」

「ふ、ふふ……なるほどな。狛犬ならぬ狛狐を修理したら、その化身がお前を気に入って着いてきたと…………うん、正直、サキヒコくんの馴れ初めよりはまだ分かる……そういう話たまにあるよなって。いや今まではそういう話全部フィクションだと思ってたんだけどな? はぁ、しかし……絵に描いたような狐顔の男子でうさんくささの塊となると、見たい……めちゃくちゃに見たいぞ」

やはりミタマはオタクの血を騒がせる見た目をしているようだ。彼の外見に興奮するのは俺だけではないのだ。

「明日一緒に来てくれないか聞いてみますね」

「あぁ、頼むよ。普通に挨拶もしたいしな。で……? 二人だけだな? もう居ないな?」

「人外は二人だけでそ」

「もう生きた人間以外口説くなよ、個々の人格とかはともかく……よくないだろ、多分」

「あと、大人もちょっと……増えたんですけど、誕生日会来るかも微妙だし、会えるか分からないんで……会った時でいいです?」

「しょうがないな。水月、そんなに怯えた顔しなくても、俺が嫌なのはお前が俺を騙そうとすることだ。誰かを守るための嘘とか、言い忘れていただけとかなら、そんなに怒ったりしない」

「……そうですか?」

「あぁ、面と向かって付き合ってください、はいOK、なんて言い合うような関係ばかりじゃないだろうし、どのタイミングで言うか迷ったりもするだろ? お前の顔ならないと思うが口説くの失敗するかもしれないしな。そんなにうるさく嘘ついただろなんて責めたりしないよ」

歌見が人並み以上に嘘を嫌うのは付き合い始めの頃に俺が彼を傷付けたのが原因だ、けれど歌見は事情を汲む優しさを見せてくれた。

「……ありがとうございます」

歌見からの愛情を噛み締め、改めて礼を述べた。
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