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完成後は放置して (水月+サキヒコ・ハル・セイカ・ミタマ)

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少し気分が落ち込んでしまったが、作っているうちにまた気分が盛り上がってきた。

「あーもう彼岸花にしか見えない、天才じゃない俺」

完成した各パーツを組み立てながら呟くと、サキヒコはうんうんと頷きながら肯定し、俺を褒めてくれる。

「っしゃ出来た!」

「完成か?」

「うん、接着剤乾いたら完璧」

「そうか、もう少しミツキがそうやって支えていなければならないのだな。しかしよくやったぞミツキ、いい出来だ。見れば見るほど惚れ惚れする」

「うん……」

買っておいた簪の芯と、完成した彼岸花の飾りを接着し、接着剤が乾くのを待ちながらボーッと眺める。

「…………なんか、よく見ると彼岸花っぽくないな。なんだろう、みずみずしさ? 全然リアルじゃない。花びら少しよれてるのあった方がいいと思うし……ネットで出した参考画像のは、もっとこう」

「ミツキ! その癖は治した方がいい! 乾くまで持っているだけでいいんだ、余計なことは考えず完成したら少し時間を置いて、後で完成度を確認しよう。な?」

「……うん」

サキヒコの勧めた通り、俺は乾き終えた簪を置いて部屋を出た。

「ほら、セイカ殿達のげぇむとやらに参加しよう。ミツキはあの光っている遊戯が好きだろう?」

「うん、好き。ありがとう、そうするよ」

安心したように微笑んだサキヒコはすぅっと姿を消した。霊感のない俺には見えないだけで傍には居るのだろうだろ。

「ただいま~」

「あっおかえりみっつん。見て見て接戦!」

今ハルとセイカがプレイしているのは、二人のプレイヤーが順番に文字を盤面に置いていき、単語が完成したらポイントが入るというゲームだ。ポイントは単語の長さなどで変動する。
ちなみにプレイヤーの持つ文字は五十音を一つずつなので同じ文字を同じプレイヤーが使うことは出来ない。戦略と語彙が必要なゲームだ、異様に言語に強いセイカと、文系の秀才のハルはこのゲームに向いている。

「おー……すごいな。本当に接戦だ」

「せーか、すぐの効果は低めだけど後々効いてくる仕込み上手いんだよね~。マジ戦略~」

「霞染の語彙がヤバい……普段なんでこんなバカっぽいのか意味分かんない」

互いに認め合っているようだ。

「セイカちょっと口悪いよ。でも確かに、ハルは普段の言葉遣いからは考えられないほど文系の成績いいよな」

「え~? ん~……文語と口語は違くない? って感じかな~」

「あー……」

「マイナーな熟語使ってさ~、分かられなきゃ意味ないじゃ~ん? 独り善がりって言うかさ~。言葉ってコミュニケーションツールな訳だし~」

「聞いてるか鳴雷、独り善がりなコミュニケーションしやがって」

耳が痛い。

「え、みっつんってそうなの? それとも、夜の方に不満がある的な猥談~……?」

「いや、コイツ俺が知らない漫画とかのネタ堂々と振ってくるから」

「ごめんってぇ! もうしないからあんまり言いふらさないでくれよ」

「そっちか~。やー分かるよみっつん、読んでると思ってネタ振っちゃう時あるもんね~」

ハルの反応が好意的でよかった。間違っても俺が躾の悪いオタクだということはバレてはいけない。言葉なく牽制するため、俺はセイカをじっと見つめた。

「……?」

セイカは不思議そうに首を傾げて微笑んだ。可愛い。

「ん? 何せーか、みっつんが何……うわ、猫が仔猫舐めてるの見た時みたいな顔してる」

「なんか見てきたから何だろうと思ったんだけど」

「……何だっけ? 俺何言おうとしてたんだっけ。忘れた。可愛くって」

「急にノロケ~。ほらせーか、せーかのターン」

「あぁ、うん」

俺、何言おうとしてたんだっけ……本当に忘れちゃったな。

「ただいま、な~のじゃ。みっちゃんただいまぁー、特に何も問題なかったぞぃ」

「おかえりコンちゃん、お疲れ様。何もなかったんならよかったよ。ちょっと待ってて、買い置きの油揚げ出すから」

「あぶらげ! 隠しとるなんてみっちゃんも人が悪いのぅ」

「緊急時用の備えだよ、今みたいにコンちゃんに何か頼まなきゃならなくなるかもしれないから。稲荷寿司はほぼ毎日あげてるだろ。ほら、油揚げ」

「はぐっ!」

「うわっ!? う、受け取ってから食べてよ、びっくりしたなぁもう……」

皿に油揚げを一枚出して差し出すと、ミタマは皿を受け取ることなく突っ込んできた。犬のように手を使わず皿に顔を押し付けて油揚げを食べている、獣を感じる。

「ねぇ、コンちゃん?」

「はぐっ、んぐ、ん、む……」

「コンちゃん……もう少し、人間の形をしていることを意識して食べてもらっていい?」

「んっ、んん……はぁ、うまうまなのじゃ~……ん? なんじゃみっちゃん、なんか言っとったか」

「行儀が悪いよ」

「ぅぐ、す、すまん。あぶらげを見るとつい我を忘れてしもうて……」

「お皿洗ってね」

「ワシ一応神なんじゃが……」

今度こそ皿をミタマに受け取らせてリビングに戻った。

「コンちゃんどこ行ってたの~?」

「ノヴェムくんの様子見に行ってもらってた、ちょっと心配だったからさ」

「……コンちゃんって幽霊的な感じで壁すり抜けて、普段は人に見えないんだっけ……それで他人の家覗かせるとか、盗聴器仕掛けてたとかいうネイさんと五十歩百歩じゃな~い?」

「さ、先に仕掛けたのネイさんだし……俺はノヴェムくんが心配だっただけだし」

「ふーん、ま、責めるつもりはないけどね~。俺もみっつんの立場ならそうするんだろうし~」

ハルはそう言ってくれたけれど、覗かせたことに罪悪感はある。彼らの関係が俺が危惧してしまったようなものではなかったことがますますそれを煽る。ミタマが法で縛られる存在ではなく、俺はネイとは違い何が発覚したとしても何の罪にも問われないということも。

「する、よな。だよな、うん……」

けれど、杞憂とはいえ幼子のためだったのだから、やはり人道に反した行いではないはずだと自分を慰めた。
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