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真偽不明 (水月+ネイ・ノヴェム・ハル・ミタマ)
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どうやらネイを怒らせてしまったようだ。だが、これでようやく彼の本心が少しは知れるかもしれない。
「私は……! いえ、ありがとうございます水月くん。ノヴェムのために本気になってくれて。ご心配なく、腰痛を理由にしていたのはあなた達の前でだけ……家ではちゃんと抱っこしていましたよ。ねぇ、ノヴェム」
ダメか。堪えたな。もう少し煽るか? いや、ノヴェムの前でそれは教育に悪いな。
「…………ハル、聞いてみてくれないか?」
俺とネイの間で戸惑っている様子のノヴェムにハルが尋ねる。こんな状況でちゃんと答えられるだろうか。
《ノヴェムくん、お家でお父さん抱っこしてくれる?》
ノヴェムは小さな声だがちゃんと返事をした、ようだ。俺には上手く聞き取れなかったけれど。
「……抱っこされてるって。よく膝の上でご飯食べるし、一緒に寝てるって」
「え、ぁ……そっ、か。そうなんだ……」
「私はそんなにノヴェムに冷たく見えましたか?」
「……いえ、そんなことはないんですけど、言いにくいんですけど……その、今のネイさんは正直、何も信用出来なくて……今までのどこまでが嘘だったのか、分からなくて……不信感でいっぱいの中、急いでノヴェムくん連れて帰ろうとするから、ちょっと過敏になっちゃって」
「そうですか……私の責任ですね。申し訳ない……でも、水月くん。私は…………何も嘘なんてついていませんよ」
嘘だな。
「……それでは、帰りますね?」
「ノヴェムくん嫌がってますけど……」
《ノヴェム、帰りましょう。ね? ワガママ言わないで》
《……やだ》
《ノヴェム》
《…………》
ノヴェムは俺にしがみつくのをやめた。
《お兄ちゃん……ぼく、帰るね。お兄ちゃん元気ないから、ゆっくり休んでね。ハルお兄ちゃん達とあんまり遊んでちゃダメだよ》
「みっつん……ノヴェムくん帰るって。みっつん元気ないから遊んでないでゆっくり休めってさ」
「……気を遣わせちゃったかな」
「っていうか子供の自分以上に騒いで喧嘩してる大人見て駄々捏ねる気が冷めたって感じじゃない?」
「そっか。無理してたりする訳じゃないんだな? じゃあ……うん、すいませんネイさん」
ノヴェムをネイに抱かせ、手を離す。ノヴェムはネイに抱きつきはしなかったが俺を求めて泣いたりはしなかった。少し寂しい。
「えっと……これからもノヴェムくん預かったり、遊びに来てくれたりはしてきてもらっていいんですけど…………ネイさんはしばらく出禁でいいですか。ちょっと、流石に……その」
「…………分かりました。失礼します」
ネイはノヴェムを抱いたまま深々と頭を下げ、去っていった。
「……サキヒコくん、コンちゃん、盗聴器探してくれない? 出来る? ほら、フタさんとこの猫ちゃん達すぐ見つけてくれたじゃん、あんな感じのこと」
玄関扉の覗き窓からネイが帰っていくのを見届けて、二人に向かって呟いた。
「アレは師匠達が妖怪だから出来たことだと思う……あの時私には何も見えなかった」
「そうじゃのう、あの仔達のアレは素では出来ん。しかしワシには占いがある! だいたい何でも分かるぞぃ。みっちゃん盗聴器一個貸しとくれ、実物がありゃ簡単じゃ」
「え、全部ネイさんに返しちゃったよ。結構高そうだし、家にあるの嫌だし」
「……じゃったらその分高めの稲荷寿司を多めに寄越すんじゃよ」
そう言うとミタマは目を閉じ集中し始めた。耳がピクピクと震えている。数十秒後、細い目をカッと目を見開き、大声で叫んだ。
「ない!」
「……そ、そっか」
「うむ、何もないぞぃ」
「よかった……後さ、ちょっとノヴェムくんの様子見てきてくれない?」
「狐使いが荒いのぅ。ま、祠を建ててもらうんじゃからこんくらいの扱いでもいいんじゃがな」
ぶつぶつと呟きながらミタマは姿を消した。透明になり、扉をすり抜けてネイの家に向かったのだろう。ミタマの帰還を待つ間、先程ずっと困惑していたハルに事情説明でもしておこう。
「あ、みっつん……二人、帰った?」
「あぁ、ごめんななんか巻き込んで。ちょっと事情説明するよ」
「…………うん」
俺はネイと起こったことを包み隠さず全て話した。
「みっつんちょろくない?」
「ギリギリセーフだろ! 一番にツッコむとこそこじゃないだろ……?」
「やーだって俺ネイさん初見だし、みっつんが好きで盗聴器仕掛けてたとしても、別目的でみっつんが好きってのが嘘でも、どっちでも別に……っていうかみっつん随分警戒してるみたいだけど、みっつん盗聴する目的なんか好き以外なくない? みっつん顔と性欲以外ただの高校生じゃん。普通にこのめんタイプのイカレ美人だと俺は思うけどな~」
「……どうかな」
ネイが嘘つきだという根拠はサキヒコの発言のみ。まぁ、ネイの態度にも不審な点は多いけれど。
(サキヒコくんは嘘つかないと思いますが、サキヒコくんの謎能力がどこまで信用出来るかは微妙なんですよな……なんでしたっけ、霊力を操れてない霊感の低い人間なら、漏れ出ている霊力の色で簡単な喜怒哀楽程度なら何となく分かる……でしたっけ? 喜怒哀楽が何となく分かる程度で嘘をついてるかどうかって分かりますかね……いえ、あの説明を聞いてからサキヒコくん結構成長しましたし、もう少し細かく分かるようになったのかも。うーむ)
考えているだけじゃ真相は不明、だな。ネイが独り言の激しいタイプならミタマが何か掴んできてくれるかもしれないけど。
「……ってかさぁ、ノヴェムくんにプロポーズされてるって」
「あぁ、モールで指輪作ってくれたんだよ。前。可愛いだろ」
「犯罪……」
「何でだよ何もしてないよ! ノヴェムくんが勝手に惚れたんだし!」
「みっつぅーん……成人するまで手ぇ出さなくてもね、グルーミングってのがあってね」
「俺は普通に世話してるだけなんだよぉ!」
またもやあらぬ疑いをかけられてしまった。ハルはふざけ半分のようだが十分心臓に悪く冗談になっていないので、強く抗議した。
「私は……! いえ、ありがとうございます水月くん。ノヴェムのために本気になってくれて。ご心配なく、腰痛を理由にしていたのはあなた達の前でだけ……家ではちゃんと抱っこしていましたよ。ねぇ、ノヴェム」
ダメか。堪えたな。もう少し煽るか? いや、ノヴェムの前でそれは教育に悪いな。
「…………ハル、聞いてみてくれないか?」
俺とネイの間で戸惑っている様子のノヴェムにハルが尋ねる。こんな状況でちゃんと答えられるだろうか。
《ノヴェムくん、お家でお父さん抱っこしてくれる?》
ノヴェムは小さな声だがちゃんと返事をした、ようだ。俺には上手く聞き取れなかったけれど。
「……抱っこされてるって。よく膝の上でご飯食べるし、一緒に寝てるって」
「え、ぁ……そっ、か。そうなんだ……」
「私はそんなにノヴェムに冷たく見えましたか?」
「……いえ、そんなことはないんですけど、言いにくいんですけど……その、今のネイさんは正直、何も信用出来なくて……今までのどこまでが嘘だったのか、分からなくて……不信感でいっぱいの中、急いでノヴェムくん連れて帰ろうとするから、ちょっと過敏になっちゃって」
「そうですか……私の責任ですね。申し訳ない……でも、水月くん。私は…………何も嘘なんてついていませんよ」
嘘だな。
「……それでは、帰りますね?」
「ノヴェムくん嫌がってますけど……」
《ノヴェム、帰りましょう。ね? ワガママ言わないで》
《……やだ》
《ノヴェム》
《…………》
ノヴェムは俺にしがみつくのをやめた。
《お兄ちゃん……ぼく、帰るね。お兄ちゃん元気ないから、ゆっくり休んでね。ハルお兄ちゃん達とあんまり遊んでちゃダメだよ》
「みっつん……ノヴェムくん帰るって。みっつん元気ないから遊んでないでゆっくり休めってさ」
「……気を遣わせちゃったかな」
「っていうか子供の自分以上に騒いで喧嘩してる大人見て駄々捏ねる気が冷めたって感じじゃない?」
「そっか。無理してたりする訳じゃないんだな? じゃあ……うん、すいませんネイさん」
ノヴェムをネイに抱かせ、手を離す。ノヴェムはネイに抱きつきはしなかったが俺を求めて泣いたりはしなかった。少し寂しい。
「えっと……これからもノヴェムくん預かったり、遊びに来てくれたりはしてきてもらっていいんですけど…………ネイさんはしばらく出禁でいいですか。ちょっと、流石に……その」
「…………分かりました。失礼します」
ネイはノヴェムを抱いたまま深々と頭を下げ、去っていった。
「……サキヒコくん、コンちゃん、盗聴器探してくれない? 出来る? ほら、フタさんとこの猫ちゃん達すぐ見つけてくれたじゃん、あんな感じのこと」
玄関扉の覗き窓からネイが帰っていくのを見届けて、二人に向かって呟いた。
「アレは師匠達が妖怪だから出来たことだと思う……あの時私には何も見えなかった」
「そうじゃのう、あの仔達のアレは素では出来ん。しかしワシには占いがある! だいたい何でも分かるぞぃ。みっちゃん盗聴器一個貸しとくれ、実物がありゃ簡単じゃ」
「え、全部ネイさんに返しちゃったよ。結構高そうだし、家にあるの嫌だし」
「……じゃったらその分高めの稲荷寿司を多めに寄越すんじゃよ」
そう言うとミタマは目を閉じ集中し始めた。耳がピクピクと震えている。数十秒後、細い目をカッと目を見開き、大声で叫んだ。
「ない!」
「……そ、そっか」
「うむ、何もないぞぃ」
「よかった……後さ、ちょっとノヴェムくんの様子見てきてくれない?」
「狐使いが荒いのぅ。ま、祠を建ててもらうんじゃからこんくらいの扱いでもいいんじゃがな」
ぶつぶつと呟きながらミタマは姿を消した。透明になり、扉をすり抜けてネイの家に向かったのだろう。ミタマの帰還を待つ間、先程ずっと困惑していたハルに事情説明でもしておこう。
「あ、みっつん……二人、帰った?」
「あぁ、ごめんななんか巻き込んで。ちょっと事情説明するよ」
「…………うん」
俺はネイと起こったことを包み隠さず全て話した。
「みっつんちょろくない?」
「ギリギリセーフだろ! 一番にツッコむとこそこじゃないだろ……?」
「やーだって俺ネイさん初見だし、みっつんが好きで盗聴器仕掛けてたとしても、別目的でみっつんが好きってのが嘘でも、どっちでも別に……っていうかみっつん随分警戒してるみたいだけど、みっつん盗聴する目的なんか好き以外なくない? みっつん顔と性欲以外ただの高校生じゃん。普通にこのめんタイプのイカレ美人だと俺は思うけどな~」
「……どうかな」
ネイが嘘つきだという根拠はサキヒコの発言のみ。まぁ、ネイの態度にも不審な点は多いけれど。
(サキヒコくんは嘘つかないと思いますが、サキヒコくんの謎能力がどこまで信用出来るかは微妙なんですよな……なんでしたっけ、霊力を操れてない霊感の低い人間なら、漏れ出ている霊力の色で簡単な喜怒哀楽程度なら何となく分かる……でしたっけ? 喜怒哀楽が何となく分かる程度で嘘をついてるかどうかって分かりますかね……いえ、あの説明を聞いてからサキヒコくん結構成長しましたし、もう少し細かく分かるようになったのかも。うーむ)
考えているだけじゃ真相は不明、だな。ネイが独り言の激しいタイプならミタマが何か掴んできてくれるかもしれないけど。
「……ってかさぁ、ノヴェムくんにプロポーズされてるって」
「あぁ、モールで指輪作ってくれたんだよ。前。可愛いだろ」
「犯罪……」
「何でだよ何もしてないよ! ノヴェムくんが勝手に惚れたんだし!」
「みっつぅーん……成人するまで手ぇ出さなくてもね、グルーミングってのがあってね」
「俺は普通に世話してるだけなんだよぉ!」
またもやあらぬ疑いをかけられてしまった。ハルはふざけ半分のようだが十分心臓に悪く冗談になっていないので、強く抗議した。
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