冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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食い違う過去 (〃)

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四回のレースが終わった。総合成績は俺が一位、ノヴェムが二位だ。途中心を乱されまくったハルは三位となり、ゲームに不慣れなアキが最下位となった。

「三位かぁ~……残念。ってかさぁ、それより……せーか、そんなアキくんに口説かれてんの?」

「いや、四割くらい冗談だと思う」

「卑下癖のあるアンタの判定で半分以下だったらもう十中八九本気じゃん」

「セイカ、百合イチャラブはいいけど浮気はダメだぞ」

「浮気なんかしてない……」

セイカは呆れたように俺をジトっとした目で睨む。

「奥さん好きだけど風俗行きたい的な?」

「その感覚知らないけど多分違う! 秋風は……秋風は、そういうのじゃない……」

「アンタはそうでもアキくんはどうなの? そんな可愛い可愛い言って、お姫様扱いしてるんだったら……アキくんの方は、そういう意味で好きなんじゃないの?」

目つきそのままセイカの視線はハルに向く。

「違う」

「違うって、そうだろうとは俺も思うけどさ~……みっつんと付き合っといて目移りする訳ないし、でもアンタが即答出来ることじゃなくない?」

「秋風がそういう意味で俺を好きならっ、俺……こんなに安心出来ない。秋風……秋風の、腕の中が、膝の上が……こんなに、居心地いいのは、秋風がそんな感情俺に向けてないからだもん……」

セイカの声は次第に涙混じりになっていき、セイカを泣かせたと判断したのかアキはハルからセイカを隠すように身体をひねった。

「だ、だもんってアンタ、そんなキャラじゃないでしょ……ゃ、ごめん、なんか……変なとこツッコんじゃって」

「変なとこツッコむってなんか」

「空気読んで」

「はい。あの、一つ質問よろしいでしょうか」

「……許可!」

ハルからの許可を得た。空気読んでとか言われたけど、ハルもちょっとふざけてない?

「セイカ、一個答えてくれないかな」

「ん……」

アキの身体の影からセイカが片目を覗かせる。

「……そういう感情ガンガン向けてる俺のお膝の上はすっごく居心地悪いの?」

「ゃ……リラックス出来ないだけ」

「それ嫌ってことじゃん!」

「ち、違う……」

《大声出すなバカ兄貴スェカーチカが怯えんだろうが!》

《俺そんな繊細じゃない!》

俺に怒ったアキがセイカに怒られた、のかな?

「リラックス出来ないってのは嫌ってことじゃなくて、その……ド、ドキドキ……する、から」

「セイカぁーっ!」

「わっ!? きゅっ、急に隣で叫ぶなぁ! もぉ! みっつんのばか! はぁ……ぁーでも分かるなぁ、みっつんの傍リラックス出来ないって……俺は割と出来るけど。アレだね、家族だね家族。それもう家族!」

「…………うん、それ……いい」

「あー、やっ……と笑ってくれたぁ、なんか俺泣かせたりしてばっかりでさぁ~……はぁ、これでやっと目覚め悪くなくなったぁ」

ハルとセイカの確執は、少なくとも今日出来た分は今日消えたようだ。

「……あれ、ネイは?」

赤い目を擦ったセイカが不意にダイニングの方を見た。そこにネイの姿はない。

「居ないね~。トイレとかじゃない?」

「……せっかく来てくれたのに暇させちゃったなぁ」

「いいんじゃない? 子供の面倒見てるだけで十分っしょ。ゆっくり休めるだけでもありがたいと思うな~」

「そういうもんかな」

金色のくりくりとした髪を指に絡める。ただの手慰みだったがノヴェムにとっては愛撫だったらしく、彼は嬉しそうに微笑んだ。

《ねぇ、ノヴェムくんって引っ越してくる前はどこに住んでたの?》

《アメリカー》

《やっぱり日本とは違う?》

《うん。日本、地面にいっぱい棒生えてて、空にいっぱい線引いてある》

ノヴェムと英語で会話していたハルは興味深そうに頷いている。一体何を話しているのか興味が湧いて、翻訳を頼んだ。

「電柱とか電線、アメリカにはあんまりないから新鮮みたい」

「アメリカって電線ないのか? あぁ……洋画見てる感じ、地下に発電機とか置いてるんだよな」

「地中地中。埋めてんの」

「あっ……あぁ、そっか。なるほど」

恥を晒してしまった。

《日本に引っ越してきたのはどうして?》

《……お母さん、死んじゃったから》

「えっ」

「ハル?」

「……ノヴェムくん、お母さん死んでるんだ。ぁー俺本当無神経」

「あっ、悪い、言ってなくて」

子供との世間話で母親の話題になるのは当然だ。俺が事前に伝えておかなければならなかった、俺の落ち度だ。

《お母さん、死んじゃって……お母さんの彼氏、ぼくの面倒は見ないって、施設……預けられて、でも、すぐにお父さん迎えに来てくれて……お父さん会ったの初めてだったけど、いっぱいぎゅーしてくれたから、大好きなの》

《……そっか》

ハルは慈愛に満ちた笑顔を浮かべ、ノヴェムの頭を撫でている。

「…………なんかおかしくないか今の話」

「何が?」

「前ネイから聞いた話じゃ、向こうで親子三人で住んでて母親が死んだから、ネイの生まれ故郷の日本に帰ってきたって……でも、母親の彼氏とか言ってなかったか? 迎えに来た時に初めて会ったって……どういうことだ?」

「え? 俺そっちの話は知らないから……みっつん?」

「……俺も、セイカと同じ話聞いたよ。妻を亡くして、一人で育てなきゃならないから……故郷で、治安のいい日本に来たって。銃が流通してないからとも言ってたな……ほら、ネイさん顔がいいだろ? 近所付き合いしてるだけで他所の奥さん落としちゃって、その旦那さんに撃たれたとか……前銃創見せてくれたよ」

「んー? じゃあノヴェムくんが勘違いしてるのかな」

「……ネイが嘘ついてるって方が有力じゃないか」

「え~……やっぱそっちぃ? ノヴェムくんの勘違いの方が平和なんだけど~……確かに勘違いって言うには無理のある話だしな~」

結論が出ない。ネイに直接聞くべきだろうか。いや……と考え込んでいるとスマホが鳴った。レイからのメッセージの通知だ。今は返信していられないだろうから、とりあえず用件だけ確認するかと通知バナーを見る。

『せんぱいのお部屋家探し……』

バナーでは途中までしか読めない。続けて動画が送られ、内容が気になった俺は仕方なく既読を付けた。

『せんぱいのお部屋家探ししてる金髪美人さんは新しい彼氏っすか?』
『動画を送信しました』
『なんか動きが不審に見えちゃって心配になったっす』

動画はおそらくテディベアからの盗撮写真だ。俺の部屋にネイが居るように見えるが……何だか嫌な予感がして、再生ボタンをタップするのを躊躇った。
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