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協力って何? (水月+サキヒコ)

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サキヒコの師匠とは、フタが昔飼っていた猫達の霊のことだ。もはや化け猫とも呼べる彼ら……彼女ら? 性別は聞いてないな。でも猫って雌でも雄でも「彼女」って感じしない? 話が逸れたな。そう、化け猫達に師事を受けサキヒコは俺に自由に話しかけられるようになった。より強い霊になれば俺の前に姿を現すことも出来るはずなのだ。サキヒコには是非強くなって欲しい。俺は人類初の幽霊とセックスした男になるのだ。

(初……じゃ、ないかもしれませんな)

俺の協力が必要不可欠とサキヒコは言った。何をすればいいのだろう。血や肉を捧げろなんて邪教っぽいこと言い出したらどうしよう、血ならまだしも肉はキツいぞ。

「いわゆる心霊すぽーとに肝試しに行って欲しいんだ」

難易度低っ。

「そんなことでいいの? それでサキヒコくんどうなるの?」

「私はミツキの家の周囲に居た浮遊霊を全て食ってしまった。この辺りのも師匠が片付けている。私の成長が伸び悩んでいるのはもう食べられる浮遊霊が居ないからだ」

浮遊霊を食べる、という表現。いつ聞いても食人を想起させて嫌だな。実際浮遊霊のほとんどは魂を持たず、残留思念が画面の焼き付きのように現世に残っているだけらしく、食事というのもその残留思念を構成しているエネルギーを吸い取るという至って健全な行為らしいが……幽霊に健全もクソもないか。

「毎日何体も新しい浮遊霊が現れる訳でもないからな……心霊すぽーとという溜まり場があるそうなので、そこに行きたい。当代の生者は巡りが悪く霊が溜まった場に行くことを肝試しと呼ぶらしいではないか、ミツキにはそれをして欲しいのだ」

「なるほどねー……それサキヒコくんだけで行くのはダメなの?」

「私はミツキに取り憑いた霊だからミツキから離れるとえねるぎぃ消費が多くなるのだ」

普段は俺から生気を吸っているから、俺から離れるとその分を自分で賄わなければならなくなるんだな。

「一人で行っちゃあプラマイゼロ、と。なるほどね」

サキヒコが気に病むといけないから彼には伝えていないが、本来サキヒコと共に居ると俺は生気を吸われてとても体調が悪くなる。リュウが身代わり人形を作りクッションとすることで症状は軽くなり、ミタマがその人形に力を込めることで俺はサキヒコに取り憑かれるデメリットから完全に解放された訳だが。

(だからまぁ、サキヒコくんに身代わり人形渡せば一人で行けるし……ゃ、持てないんでしょうか。じゃあコンちゃんと一緒に行けばいいんですけど……ま、彼氏を一人で行かせるなんて、ハーレム主として、ねぇ? サキヒコきゅんはわたくしと肝試しデートしたいらしいですし)

夏休みは終わったとはいえまだまだ暑い、肝試しをするにはいい季節だ。

「分かった、やろう肝試し。学生の遊びの定番だしね、肝試しで仲を深めてムフフってのはよくある展開だ」

「ありがとう、ミツキ」

「場所は決めてあるの? 俺が調べた方がいい感じ?」

「師匠にいくつか聞いておいたが、どれもこの町のすぽーとだ。その中から選んでくれてもいいが、別にいいすぽーとがあるのならそちらでもいいぞ」

「……サキヒコくん」

「なんだミツキ」

「心霊、スポット」

「心霊、すぽーと」

「スポット」

「すぽぉと」

「……なんか違うなぁ、まぁいいか可愛いし。肝試しね……明日はハルとお家デートだし、来週はパーティとお祭り……予定詰まってるんだよね。ぁ、でも肝試しって暗くなってからやるから、別に平日でもいいのか」

アキの部屋で眠ることも多い俺には、夜中に家をこっそり抜け出すなんて簡単なことだ。

「さっさとサキヒコくんのご尊顔拝みたいし、早めに行こうね。サキヒコくんが幽霊食べるんだし、何にも怖がることないし……暗いだけでピクニックみたいなもんだよね」

「乗り気なようでよかった」

「師匠に聞いた心霊スポット教えてくれる? メモっておくよ」

「分かった。三丁目の廃びる、五丁目の病院跡、六丁目の墓地、の三つだ」

「……サキヒコくん。幽霊はサキヒコくんが食べてくれるから平気って言ったね……でもその三つは怖過ぎない!? 名前だけでもう嫌! ゲームならましもリアル肝試しとか……! 美少年が腕に抱きついてないと耐えられない、サキヒコくん抱きついててよぉ」

「ミツキに触れるため、力をつけるために肝試しが必要なのだ」

「はぁ~パラドックスぅ……」

「ミタマ殿に同行を願おう、彼以上に頼りになる者は居ない」

「そだね……もう誰でもいいから来て欲し、ぁいや、もし危ない目に遭わせたら……」

「私に仕留められない霊が居てもミタマ殿が居れば問題ない」

「心霊スポットってのは幽霊以上に不良半グレヤクザの溜まり場なんだよ……だからいざとなったら透けられる二人以外は危なっかしくてダメ、かな」

「……それを言うならミツキも生身の人間だろう?」

「あぁ、俺勘定に入れてなかったや」

「全く……」

サキヒコの呆れ顔が目に浮かぶ。

「……あっ、フタさんに着いてきてもらう? 半グレに強いし幽霊も見える、師匠達の飼い主。ここで待って頼んでみようか」

「いい案だな」

フタが仕事を終えて戻ってくるのを待つ間は、まだ会話しか出来ないサキヒコと今までや今後の話をしていよう。
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