冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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努力からはにげられない!

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今日の体育祭の練習は一、二時間目。内容は昨日とほぼ同じ、教師のサボり……いや、生徒の自主性に任せた形だ。教室に着いたら鞄を置いて体操服を持って更衣室へ走る。

「いやぁせーか居ったらエレベーター使えてええわぁ」

その道中、車椅子のセイカと介助者の俺はエレベーターを使うのだが、リュウとハルも着いてきた。

「ありがとね~」

「いや……乗っていいの介助一人までなんだけど」

「重量制限が理由とちゃうし、バレへんかったらええねん」

「扉の外にたまたま先生が居るリスク取ってまでする楽じゃないってシュカとカンナは階段使ってるけどな」

「そら副会長様は失うもんが俺らとはちゃうわ、俺らはしぐほどええ子ちゃんちゃうしな。水月はええんか? 委員長やのに」

「俺は正当な介助者だぞ。ダメって言ったのにお前らが強引に乗ってきたって言う」

「彼氏切り捨てる気満々じゃ~ん! ひっどぉ~!」

「事実だろ。ほら着いたぞ」

運良くエレベーターの前に教師は居なかった。この幸運がいつまで続くか見ものだな。



リレー参加者はリレーの練習優先、その他綱引き以外の練習は運動場の端で細々と。

「……俺の二人三脚の相手ハルだから、俺練習出来ないんだよな」

軍手が必要な綱引きの練習は今日行われないので、綱引きと二人三脚の二種目に参加している俺は二人三脚をするしかないのだが、相方のハルはリレー選手でもある。練習はリレーが最優先だ。暇な俺は日陰に居るセイカの隣に座っている。

「俺リレー見なきゃいけないから相手出来ないぞ」

「え~……」

「俺のアドバイス評判いいんだ。転入前は不安だったけど……結構、やってけそう。偏差値と金が高い学校は治安いいよな」

「ま、学校も地区も国も基本そうなるよな」

「…………天正のコンビ見てやったりしてくれば?」

「そんなに邪魔かなぁ! 一途で健気なくせに邪険にするんだからもう」

あまり長居して教師に目をつけられても嫌だ。俺はセイカのアドバイス通りリュウとカンナの元へ向かった。

「おぉ水月、暇そうやのぉ」

「ハルがリレー選手だからさぁ……」

「ぼく、と、する?」

「是非したいけど、練習にならないよ。アドバイスしてみたいからちょっとやってみてくれ」

「なんやせーかごっこか? まぁええわ、やったろやないかい」

目の前をバンドで足を繋がれたリュウとカンナが歩いていく。通り過ぎてすぐくらいが見どころだ、プリッとした尻とムチッとした尻がぷりぷりと二つ揺れていく。

「ふぅ……どないやった?」

「お尻がぷりぷりしてて最高だった」

「名アドバイザーへの道は遠いなぁ」

「まじ、めなの……な、の?」

「真面目なのないのかって? ん~……カンナの方がリュウに着いてってる感じあったから、もっと同時に動くの意識した方がいいぞ」

格ゲーやFPSで鍛えたコンマ一秒単位の動きを見る洞察力を披露してやった。

「……真っ当やな、分かっとることやし……つまらんわ」

「てん、くんっ……そんな、こと、言わな……の。みぃくん、ありが、と」

ゲームでは洞察力とかはあんまり鍛えられないみたい。



昨日と同じように一グループずつダンスルームを使う番が巡ってくる。

「実際の並びでやってみよ~。二列に分かれるんだよね」

「ええ、見た目のいい水月と霞染さんが前で……傷の目立つ私と近畿ダンス下手くそ選手権優勝選手が後ろなのは確定として」

「いや、普通に背低い方が前でいいんじゃないか?」

「近畿ダンス下手くそ選手権てなんやねん! 優勝選手て俺のことかふざけんなや!」

「ぼ、く……後ろ」

くいくいとカンナが俺の体操服の裾を引っ張り、小さな自己主張をした。可愛らしいが、その頼みは聞けない。

「いやいやいやしぐしぐは一番上手いしお手本になるから前だって~」

「二列だけど交互に並ぶから後ろならお客さんに見えないって訳でもないしな」

「でも……前、のが……めだ、つ」

「後ろでも上手けりゃ目立つって!」

「みん、ながっ……うまく、なっ……くれ、ば……ぼく、めだっ……な、の」

「……並び考えるのはまた今度にしよっか、練習時間なくなっちゃうよ」

どこででも話せるのだから、貴重なダンスルームの使用時間はダンスに充てるべきだ。まだまだダンスが不安な俺はそう提案した。

「そだね~」

「カンナ、この振り付けのとこちょっと教えて欲しいんだけど」

「りずむ、とるの」

「そうなんだけどどうにも追い付かないんだよ~」

超絶美形の顔のせいで多大な期待を寄せられがちな俺は、ダンスなんてイケメン御用達競技は絶対に平均以上に出来なければならない。平均以下では悪目立ちしてしまう。

「……ダンス中にマスクするってどう?」

「熱中症の危険性があるため、体調を理由としないマスクの着用は非推奨ですよ」

「…………ダメかぁ。ほら、俺顔がいいだろ? だからダンス下手だと……な?」

「あー、イケメンがダンス下手だとなんか幻滅するよね~」

「イケメン補正かからんのか?」

「俺的にはそんなとこも可愛い~、なんだけどね~……みっつんは、それじゃ嫌なの?」

「……指差されて笑われたら心が死ぬ」

「そ、そっかぁ~……そんなことされないとも言えないもんね~……頑張って練習しよっ」

頷くことしか出来ない。そう、俺は努力するしかないのだ。超絶美形でいるために努力は必須、絶対に逃げられない。
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