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まずは競技
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参加種目決めは想像以上にスムーズに決まった。なので残りの時間は創作ダンスのグループに分かれての相談会の時間という名目の自由時間となった。
「しぐがダンスの振り付け考えてくれはったんやっけ」
「一学期にちょろっと練習したよね~。だいぶ忘れちゃったけど」
「ぅん。でも、おと……さ、とも話し……ちょ、と……かいりょ……した、から」
「え~楽しみ~! 三、四時間目だっけ~」
「あぁ、体育祭の練習だな。基本運動場だけど、ダンスルームを一グループずつローテーションで使うんだってさ」
「んじゃ未完成のダンス見られて恥ずかし~とかないんだ~。よかった~」
二時間目のつまらない数学の時間を越え、ハルが楽しみにしていた体育祭の練習の時間がやってきた。俺は楽しみにしてなかったのかって? してないよ、運動嫌いだもん。
「まずは運動場で練習か~、二人三脚しよっ、みっつん!」
「あぁ、バンド配るから待ってくれ」
足を固定するためのバンドを配る役目を負っている、委員長なので。その役目を済ませ、ハルの元へ戻る。
「ハル足細いなぁ……」
「え~、ちょっと太くなってきたよ~?」
「カミアのライブ前の栄養失調寸前みたいな体型と比べての話か? あんなもん比べる対象じゃない。痩せ過ぎだよハルは」
「俺は健康的です~。ねっしぐ」
リュウの隣に立ち、バンドを付けている真っ最中のカンナはビクッと身体を跳ねさせる。
「俺じゃ~ん、そんなびっくりしないでよ~」
「す、するよっ。きゅ、に……話しかけ、ら……たら」
「よっしゃしぐ、バンドOKや。ええか、一で右、二ぃで左の足出すんやで」
「リュウ、分かってると思うけど縛った方の足を一緒に動かすんだから、動かす足は二人左右逆になるからな」
「…………一でしぐが右、俺が左で……」
俺達もバンドの装着が終わった、練習を始めよう。
「ハル、手回すよ」
「うんっ、俺もやるね~」
俺はハルの肩を抱き、ハルは俺の腰に腕を回す。
「じゃ、一歩目は縛ってない方ね~……せーの、一! よしよし……せーの、二! うん行けそう、一、二、一……ちょっみっつん歩幅合わせて! 広過ぎ!」
「ご、ごめん。大股で歩いた方が早いかと思って」
「みっつん普段ちょっとカッコ悪いレベルで歩幅狭いんだから~、慣れないことしない方がいいよ~。まずはタイム気にせず普通に歩いてみよっ」
カッコ悪いのか、普段の俺。背筋を伸ばす意識はしていたが、歩幅に気を配ったことはなかったな。ダンスルームは一面が鏡だから丁度いい、順番が回ってきたら自分の歩き姿を確認しなければ。
「鳥待はリードが早すぎてトップスピードで受け取れてなかった、次は走り始めを一秒の半分くらい遅らせてくれ。で、次のヤツ……お前はバトン渡す時先っぽじゃなく真ん中の方しっかり握らせろ、お前の次のヤツ落としてたんだからな。その落としたお前、お前は焦るな、バトン拾ゃあいいだけなのに焦るからトラックの外まで蹴っ飛ばしたりするんだ」
シュカが担当するリレーの方では、ストップウォッチを首から下げたセイカがリレー参加者達に説教をしていた。内容はよく聞こえないが、反発されている様子はないので真っ当な指摘なのだろう。
「……セイカ、何か話してるな……大丈夫かな」
「アイツ観察眼すごいもんね~、結構いいアドバイスくれるんじゃない? 俺らももうちょい慣れたらアドバイスもらいに行こっ」
「あぁ、セイカがアドバイス上手いのは分かってるんだけど、口悪いから」
「……あ~、なんか刺々しかったりしたね~。一学期のテスト前だっけ、教えてもらった時さ~……マシになってないの?」
「いや、そんなセイカにアドバイスもらう機会ないから分かんない」
仲のいい友人なんて作って欲しくはないけれど、孤立したり嫌われたりもして欲しくない。面倒な願望を持ったものだ。
「しぐぅ、もうちょい歩幅広げられへん?」
「がんばる……」
「後でせーかにストップウォッチ係やってもろて、どの歩幅が一番はよぉ走れるかやってみよな。左右交代もやろか。最高効率出すんやったらやっぱりデータは数取らななぁ」
「う、ぅん……」
リュウとカンナの二人三脚も順調、かな?
「霞染~! 霞染~! リレー参加するんだろ~! そろそろこっち来てくれ~!」
セイカが苦手だろう大声を張り上げてブンブン手を振っている。かと思えばバランスを崩してフラついて、シュカに首根っこを掴まれて無理矢理立たされていた。
「あっ俺リレーもやんなきゃだった。一通り出来たし、ちょっとあっち行ってくるね~」
ハルに手を振り、バンドを所定の位置に戻してすぐ、シュカに呼ばれた。
「水月、時雨さん。綱引き参加者は集まれとのお達しですよ」
「分かった。カンナ、行こう」
「ぅ、んっ」
「え~……ほな俺八百やろかな。中途半端な距離走るだけやけど」
三人で向かった先には綱引きに使われるあの太い綱は見当たらなかった。どうやら軍手がないので今日は綱を使った練習は行わないそうだ。
「ルール説明だけですか……つまらない。紐なんかで剥けるようなヤワな皮膚してませんよ」
「紐ってシュカ……綱引きの綱は結構手ぇ痛めるぞ? あ、そういえばシュカ、セイカどうだった? なんかリレー参加者集めて話してたろ、敵作りそうなこと言ってなかったか?」
「特には。真っ当なご指摘をくださっただけ、と私は捉えていますよ」
「るー、る……聞こー……よぉ……」
綱を引っ張り合うだけの競技に大したルールはないと高を括ってシュカとコソコソ話していたら、カンナに叱られてしまった。不真面目な生徒を注意する仕草はとても可愛い、カンナに叱ってもらえるのなら俺はいくらでも非行に走るだろう。
「しぐがダンスの振り付け考えてくれはったんやっけ」
「一学期にちょろっと練習したよね~。だいぶ忘れちゃったけど」
「ぅん。でも、おと……さ、とも話し……ちょ、と……かいりょ……した、から」
「え~楽しみ~! 三、四時間目だっけ~」
「あぁ、体育祭の練習だな。基本運動場だけど、ダンスルームを一グループずつローテーションで使うんだってさ」
「んじゃ未完成のダンス見られて恥ずかし~とかないんだ~。よかった~」
二時間目のつまらない数学の時間を越え、ハルが楽しみにしていた体育祭の練習の時間がやってきた。俺は楽しみにしてなかったのかって? してないよ、運動嫌いだもん。
「まずは運動場で練習か~、二人三脚しよっ、みっつん!」
「あぁ、バンド配るから待ってくれ」
足を固定するためのバンドを配る役目を負っている、委員長なので。その役目を済ませ、ハルの元へ戻る。
「ハル足細いなぁ……」
「え~、ちょっと太くなってきたよ~?」
「カミアのライブ前の栄養失調寸前みたいな体型と比べての話か? あんなもん比べる対象じゃない。痩せ過ぎだよハルは」
「俺は健康的です~。ねっしぐ」
リュウの隣に立ち、バンドを付けている真っ最中のカンナはビクッと身体を跳ねさせる。
「俺じゃ~ん、そんなびっくりしないでよ~」
「す、するよっ。きゅ、に……話しかけ、ら……たら」
「よっしゃしぐ、バンドOKや。ええか、一で右、二ぃで左の足出すんやで」
「リュウ、分かってると思うけど縛った方の足を一緒に動かすんだから、動かす足は二人左右逆になるからな」
「…………一でしぐが右、俺が左で……」
俺達もバンドの装着が終わった、練習を始めよう。
「ハル、手回すよ」
「うんっ、俺もやるね~」
俺はハルの肩を抱き、ハルは俺の腰に腕を回す。
「じゃ、一歩目は縛ってない方ね~……せーの、一! よしよし……せーの、二! うん行けそう、一、二、一……ちょっみっつん歩幅合わせて! 広過ぎ!」
「ご、ごめん。大股で歩いた方が早いかと思って」
「みっつん普段ちょっとカッコ悪いレベルで歩幅狭いんだから~、慣れないことしない方がいいよ~。まずはタイム気にせず普通に歩いてみよっ」
カッコ悪いのか、普段の俺。背筋を伸ばす意識はしていたが、歩幅に気を配ったことはなかったな。ダンスルームは一面が鏡だから丁度いい、順番が回ってきたら自分の歩き姿を確認しなければ。
「鳥待はリードが早すぎてトップスピードで受け取れてなかった、次は走り始めを一秒の半分くらい遅らせてくれ。で、次のヤツ……お前はバトン渡す時先っぽじゃなく真ん中の方しっかり握らせろ、お前の次のヤツ落としてたんだからな。その落としたお前、お前は焦るな、バトン拾ゃあいいだけなのに焦るからトラックの外まで蹴っ飛ばしたりするんだ」
シュカが担当するリレーの方では、ストップウォッチを首から下げたセイカがリレー参加者達に説教をしていた。内容はよく聞こえないが、反発されている様子はないので真っ当な指摘なのだろう。
「……セイカ、何か話してるな……大丈夫かな」
「アイツ観察眼すごいもんね~、結構いいアドバイスくれるんじゃない? 俺らももうちょい慣れたらアドバイスもらいに行こっ」
「あぁ、セイカがアドバイス上手いのは分かってるんだけど、口悪いから」
「……あ~、なんか刺々しかったりしたね~。一学期のテスト前だっけ、教えてもらった時さ~……マシになってないの?」
「いや、そんなセイカにアドバイスもらう機会ないから分かんない」
仲のいい友人なんて作って欲しくはないけれど、孤立したり嫌われたりもして欲しくない。面倒な願望を持ったものだ。
「しぐぅ、もうちょい歩幅広げられへん?」
「がんばる……」
「後でせーかにストップウォッチ係やってもろて、どの歩幅が一番はよぉ走れるかやってみよな。左右交代もやろか。最高効率出すんやったらやっぱりデータは数取らななぁ」
「う、ぅん……」
リュウとカンナの二人三脚も順調、かな?
「霞染~! 霞染~! リレー参加するんだろ~! そろそろこっち来てくれ~!」
セイカが苦手だろう大声を張り上げてブンブン手を振っている。かと思えばバランスを崩してフラついて、シュカに首根っこを掴まれて無理矢理立たされていた。
「あっ俺リレーもやんなきゃだった。一通り出来たし、ちょっとあっち行ってくるね~」
ハルに手を振り、バンドを所定の位置に戻してすぐ、シュカに呼ばれた。
「水月、時雨さん。綱引き参加者は集まれとのお達しですよ」
「分かった。カンナ、行こう」
「ぅ、んっ」
「え~……ほな俺八百やろかな。中途半端な距離走るだけやけど」
三人で向かった先には綱引きに使われるあの太い綱は見当たらなかった。どうやら軍手がないので今日は綱を使った練習は行わないそうだ。
「ルール説明だけですか……つまらない。紐なんかで剥けるようなヤワな皮膚してませんよ」
「紐ってシュカ……綱引きの綱は結構手ぇ痛めるぞ? あ、そういえばシュカ、セイカどうだった? なんかリレー参加者集めて話してたろ、敵作りそうなこと言ってなかったか?」
「特には。真っ当なご指摘をくださっただけ、と私は捉えていますよ」
「るー、る……聞こー……よぉ……」
綱を引っ張り合うだけの競技に大したルールはないと高を括ってシュカとコソコソ話していたら、カンナに叱られてしまった。不真面目な生徒を注意する仕草はとても可愛い、カンナに叱ってもらえるのなら俺はいくらでも非行に走るだろう。
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