冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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保健室で一騒ぎ

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頭を綺麗に真っ二つに分けて、左側の髪だけを白色に染めて、右側の黒は……地毛そのままなのかな? とにかく奇抜な髪色だ。

(何なんですかこの陰キャは。ずーっとゲームの話して、ぶつぶつ話して、わたくしという顔のいい男とは目も合わせられないこのド陰キャは! 無免許外科医に憧れでもしてるんですか? 陰キャがそんな目立つ髪してんじゃねぇでそ! わたくしのセイカ様の隣にピッタリ座りやがってぇ~!)

体調不良でただでさえ機嫌が悪いのに、嫉妬と同族嫌悪で苛立ちが止まらない。

「先輩、こいつは鳴雷、同級生。さっき言ってた知り合い。あっそうだ、鳴雷もこのソフト持ってるから、さっき言ってた……えっと、マルチプレイ中じゃなきゃ進化しないモンスター? 進化させられるよ。なぁ鳴雷、今度ゲーム持ってくるか先輩と放課後集まるかして、マルチプレイしてやれよ」

「……お名前は?」

「あぁ、繰言くりことだよ」

自分で名乗れよ、セイカに説明させてんじゃねぇぞ。

「そういえばお前はそのモンスター進化させられたのか? なんか、マルチプレイじゃないとダメってヤツ居るらしいんだけど」

「……レイドで出たよ」

「はぁ……!? 俺何十回も何百回もレイド回って出なかったんですけど、顔が良いヤツは運もいいのかよっ……何をやっても上手くいく勝ち組様って訳ですかそうですか」

セイカの隣、繰言というらしい少年はまたぶつぶつと早口で呟いた。あぁ、胸が痒い。

「へー、よかったな」

「……っていうかレイも歌見先輩もそのゲーム持ってるから、俺はマルチプレイ出来るし」

「あっそっか……へへ、お前ぼっちじゃなかったな。ま、とにかく、先輩とやってやってくれよ」

「俺は別にいいけど……」

「だってさ。よかったな先輩、進化出来るぞ」

「あ……う、うん、ありがと早苗ちゃん……えと…………ろ、しく、お願いします……鳴雷、くん?」

「ええ……どうぞよろしくお願いします、繰言先輩」

あえて目線は揃えず、あくまで彼を見下ろして、声を低くしてゆっくりと話してみた。

「…………っ、ぅうぅ……威圧的っ、これだからイケメンは……!」

威圧的? 当然だ、威圧してるんだから。

「鳴雷、熱中症って言ってたけど立ってていいのか? 寝るか座るかしてろよ、目眩起こしたら危ないぞ」

「……あぁ、そうだな。座っとくよ」

ベッドに腰を下ろし、スポーツドリンクを飲みながらも繰言からは目を離さず、ずっと見つめ続ける。睨むと言ってもいい。

「なんかこっち見てるんですけどぉ……」

「鳴雷面食いだから」

カンナやノヴェムほどではないが、前髪が目にかかっているため少し分かりにくいけれど、繰言は確かに可愛らしい顔をしている。まぁ、正直、顔は好みだ。

「えぇ……? さ、早苗ちゃんそれ俺のことイケメンって言ってる? 上手だなぁ、もう、へへ……」

「……? 別にお世辞とかじゃ」

「セーイカ! こっち来いよ」

ぽんぽんとベッドを叩く。隣に座れと仕草で示す。

「えー、俺ゲーム見たい」

「いつの間にそんなゲーム鑑賞の趣味作ったんだよ、帰ったら俺の見せてやるから」

「いいよ、鳴雷は好きなゲームやれば……俺は俺で勝手に追うから」

「……っ、いいから来いよ!」

セイカの左腕を掴んで力任せに引っ張る。軽い彼の身体は俺の想像以上に簡単に浮き上がり、俺の胸の中へ飛び込んできた。頼りない身体を抱きとめて俺はようやく安心し、苛立ちが治まり始めた。

「さ、早苗ちゃっ……」

「ちょっと! 保健室で騒がな……あっ! 繰言くんまた学校にゲーム機持ち込んで! 没収です!」

「へぁっ!? ままま待ってぇ先生っ、セーブ、セーブまだぁっ」

「さっさとしなさい!」

繰言は保健医の見守る中セーブを済ませ、電源を切ったゲームを渡した。十二薔薇ではスマホの持ち込みは許可されているし、電話やメッセージアプリなど連絡ツールとしてなら使用も許可されている。しかし、ゲーム機の持ち込みやスマホでのゲームは禁止だ、見つかれば没収となる。セーブを待ってくれるのは優しい方だ。

「担任の先生に渡しておくので、放課後取りに行きなさい」

「はぁい……お、お前が騒ぐからだぞっ」

しゅんと落ち込んでいたかと思えば、前髪の隙間から俺を睨む。

「後輩に当たらない!」

「……っ、だっ……だって、先生、コ、コイツ、コイツっ、早苗ちゃんに乱暴を!」

「……どういうことですか?」

保健医の目付きが変わる。なんて面倒を引き起こしてくれるんだこの陰キャ。

「横暴なんですこのイケメンっ、顔がいいからって何でも思い通りになるって思い込んでやがってちょっと口答えされたらキレて大声と暴力をっ……」

「誤解です、俺はセイカ……早苗さんを立たせてあげただけですよ。思ったより軽かったから、引っ張る力が強過ぎちゃってよろけちゃっただけで」

「……どうなんですか? 早苗さん」

「え、ゃ……別に乱暴なことはされてない……です」

「そうですか…………三人とも、もう寝てなくていいのならベッド空けてください。ソファに座って自習でもして大人しくしていなさい」

三人揃ってベッドから追い出されてしまった。俺の言い訳は完全には信用されていないのだろう、繰言の告げ口も多分そこまで信用されていない、ゲーム機の持ち込みという不正が告げ口の説得力に響いていると見た。
そう、俺も繰言も信用されていないのだ。だからベッドよりも格段に保健医の目につきやすいソファに移されたのだ。

「はぁ……誰かさんのせいでゲーム機バレちゃって取られちゃったから超暇なんですけど。自習道具なんか持ってきてないんですけど」

ボヤく繰言には返事をせず、セイカはパソコンを開いて自習を始めた。俺も繰言と同じく暇を潰せるような物なんて持っていない、スマホは制服のポケットに入れっぱなしだ。

「…………ねぇ、繰言先輩」

「なっ、な、なに、ちがっ、さ、さっきの、今のはっ、嫌味とかそんなんじゃないんですけどっ」

「他、ゲーム……何やってます?」

暇を持て余した俺は繰言と話が合う希望に賭けてみた。
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