冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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自由研究の発表

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三人の喧嘩はあっさりと止まった。理由は俺の顔色が悪いから、だそうだ。くだらない喧嘩だからくだらない理由で止まるんだな。

「朝から体調悪い言うてたもんなぁ」

「えっマジ俺それ知らないんだけど!」

「席はもう決まったんですから、保健室に行ってきては?」

「大丈夫だよ。そんなに顔色悪いのか? はは……唯一の取り柄の顔なのにな」

「ううんみっつんの取り柄顔だけなんかじゃない! もっといっぱいあるもん、性格とかもいい!」

「一生懸命Sやるところが好っきゃねん、語彙力なんかどうでもええわ」

「水月の長所は顔以外にもありますよ、立派なモノをぶら下げてるでしょう?」

三分の二下ネタじゃねぇか。

「散々顔だけって言ったくせに……ま、ありがと。体調不良の俺に免じて喧嘩せず、大人しく席替えやってくれよ。もうジャンケンで決めろ」

ジャンケンの掛け声が時折聞こえてくる。他の班が席順を決めているのだろう。

「……それが一番遺恨ないかもなぁ。行くで、最っ初はグー……いんじゃんほいっ! あいこでしょ! しょ! しょ! しょっ……ぁあクソっ!」

「っしゃいどんなもんじゃオラァ! 先生、私が時雨さんの隣です」

「あ、あぁ……」

担任はシュカの本性に戸惑い気味のようだ。

「随分喜んでるなぁ……シュカ、そんなにカンナと仲良かったか?」

「私、授業はちゃんと受けたいので隣は静かな方がいいんですよ」

シュカと共に騒がしい二人の様子を眺める。

「左右決めよかぁ……いーんじゃんほい、あーいこーでしょ、しょ、しょ、しょ、しょ、決まれへんな、しょ、しょっ」

「うわ何この無駄奇跡。あっ、勝った。いぇーい……はぁ~、左右とかクソどうでもいいんだけど~。んー……しゅープリント回すの雑そうだから俺しぐの後ろで」

「誰が雑ですって?」

この三人の席を近所にするのはとんでもなく悪手なのではないだろうか、と、席が決まってもなお争う彼らを見て思った。



さて、一悶着あったが席替えは終わった。右端の列はセイカ、カンナ、ハル、以下モブ共。その隣が俺、シュカ、リュウ、以下モブ共。の並びとなっている。

「改めてよろしくな、セイカ」

「うん……」

夏休み中に運び込まれたのだろうセイカの分の机と椅子は、今は机しか使われていない。椅子は教室の隅に置かれている。セイカが車椅子を必要としない時が来れば、あの椅子は日の目を見るだろう。

「色々迷惑かけると思う……ごめんな」

「気にするなって」

その後、課題の回収や手紙の配布など新学期の初めらしい時間を過ごし、またチャイムが鳴った。

「自由研究は発表の形式を取ろうと思う。分厚い論文作ってきた者も居るだろうから、軽くタイトルだけ……一人持ち時間一分くらいで」

発表か、苦手だ。人目を集めるのも、人前で話すのも。

「じゃあ、端から……早苗は今日からだから、鳥待が一番手だな」

「はい。私の自由研究は交通量の調査です、日にち、時間、車種、その他から色々と自分なりの分析と考察を書いておきました」

「うん、後でじっくり読ませてもらうよ。次、天正」

「はーい。俺はぁ、幼稚園児でも四色定理理解出来る紙芝居作りましたぁ」

「興味深いなぁ、後で数学の先生にも見せてみるよ」

後三人発表を終えたら次は俺だ、文章を考えておかなければ。あぁ、緊張で胃が痛い。

「では次、鳴雷」

「はっい!」

声が裏返った。消え去りたい。

「俺は、工作で……えと、ぬいぐるみを、作りました。これ、狼の着ぐるみを着て驚かしている羊と、羊の着ぐるみを着て驚いた振りをしている狼……の、ぬいぐるみ、です」

「へぇー、可愛いなぁ! 作りも細かそうだ、後でじっくり見させてもらうよ。次、時雨」

「……ペ、トの……うさ…………かん、つ……しま、た」

「ペットのウサギの観察か、飼い主しか見られない行動とかもあるのかもな。後で見るのが楽しみだよ。次、霞染」

「はーい、俺は最近の本の流行りとぉ、前までの流行りとか調べて~、色々分析してみました~!」

「お、おぉ……分厚い冊子だな、読み応えがありそうだ」

彼氏達の発表が終わった。声が裏返った上に上手く話せなかった俺はもう、一刻も早くこの場を去りたい気持ちでいっぱいだ、その他のクラスメイトの話を聞く気になれない。

「鳴雷、鳴雷……」

「……ん?」

「それ、見せて」

「あぁ、着ぐるみコンビ……? はい」

狼の着ぐるみを着た羊と、羊の着ぐるみを着た狼のぬいぐるみを渡す。

「可愛いなぁこれ。狼の着ぐるみの口の中から羊の顔見えてるし……ふふ、羊の着ぐるみもこもこしてる」

「一応脱着出来るぞ」

「えっマジで!? あっ……すいません」

大声を上げ人目を引いたセイカは縮こまって謝罪した後、ぬいぐるみとその着ぐるみの隙間に指を入れて「うぉお……」と小さく唸った。

「本当に脱がせられそう……フード取れるとかそんなもんじゃないんだよな?」

「すっぽり脱げる。布と綿で基礎作ってるから、公次ほど丁寧に扱わなくても壊れないし」

「すご……」

「公次に着せたい服あったら言ってくれたら作るぞ。汚れ防止にもなるし、可愛いと思うけどどうだ?」

「え、欲しいかも……」

「ねぇみっつん、俺の髪飾りは~?」

カンナの後ろからハルが声をかけてくる。肩の上に顎を置かれたカンナは少し迷惑そうだ。

「もちろん作るよ、今度家来てくれ」

「夏祭りまでには欲しいな~……みっつんバイトだし、俺習い事あるし、日曜かな~」

「準備しとくよ」

「ありがと~!」

「水月、水曜日はバイト休みでしたよね。次の水曜日は空けておいてください」

「珍しいなぁシュカ。もちろんいいぞ」

今は一応授業時間だ、あまり後ろを向いて話すのはよくない。俺は一旦振り向くのをやめ、真面目な顔を取り繕った。
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