冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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昼ご飯まで三十分

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ネイの目の下に刻まれた濃いクマはやはり気になる。あまり眠れていないのだろうか。子供の面倒を見ると母と約束したそうだが、俺がノヴェムの世話をしてネイを休ませてやらなければ。

「お昼ご飯どうしましょうか」

俺が作ると言いかけて、その間ノヴェムは誰が見るのかと自分自身を詰めるような質問が頭に浮かぶ。アキに任せたとしても、父親が居るならそちらに行くだろう。ノヴェムに何か手伝わせるか?

《ノヴェム、何食べたい?》

「ぴつぁー」

ネイに何か聞かれたノヴェムは両手を上げて元気に答えた。機嫌はすっかり直ったらしい。

「ピッツァですか、ノヴェムはピッツァ好きですねぇ」

「ピザ! 出前取りますか」

元デブの習性か、ピザと聞くと興奮してしまう。

「そうしましょうか。秋風くんと百鬼丸ボーイもお呼びください、みんなでピッツァと付け合わせ決めましょう」

セイカはスマホを手に入れたばかりだ。気に入って使っているだろうからメッセージで呼び出そうかな。

『昼飯決めるからアキ連れてダイニング来てくれ』

ほどなくして窓が開き、二人が入ってくる。俺達はネイの隣や背後に集って彼のスマホを覗いた。

「苦手orアレルギーなピッツァの具、あります?」

「ピーマン……ピーマン自体は平気なんですけど、ピザに乗ってるとなんか嫌で」

《別に嫌いじゃねぇんだけど、トマトの果肉ガッツリ乗ってるピザはなんか嫌だ》

「百鬼丸ボーイは?」

「セイカです……ピザ、あんまり食べたことないから分かんない……けど、別に、嫌いなものとかないので」

「ネイさんは何か苦手なのあるんですか?」

「パイナップルっ……!」

力強い返事だ。相当嫌いなんだろうな。

「え……ピザってパイナップル乗ってることあるのか? トマトソースとチーズが基本なんだよな」

「俺も食べたことはないけど、チラシとか見るとあるみたいだぞ? どんな感じなのか気になるけど、試すのは勇気いるよなぁ」

《ぺぱろに! ぺぱろに! お父さんっ、ぺぱろに!》

「こらこら……乱暴しちゃダメだよ」

椅子に座っているネイの太腿をべちべちと叩いていたノヴェムを抱き上げる。

「ノヴェムはペパロニがあるのがいいみたいですね」

「あ、ペパロニ俺も好きです」

「そうですか、秋風くんと百鬼丸ボーイは?」

「セイカです。鳴雷、ペパロニって何……?」

「肉」

「ふふっ」

俺の雑な説明にネイが笑った。幸薄そうな美人の笑顔はイイものだ。

「肉なら秋風は好きだと思う」

「じゃあペパロニに……サラミはどうします?」

「俺は欲しいです」

「肉なら秋風好きだろうから、俺も賛成」

「ではペパロニとサラミの乗ったこれを……この人数なら二枚くらい要りますね、もう一枚はシンプルなマルゲリータで……サブメニューはどうしましょう。一枚につき一つのようなので、二つ決めてください」

抱き上げたノヴェムにスマホの画面を見せてやると「ぽてと!」と騒ぎ出した。はいはいと微笑みながらフライドポテトが選択される。

「秋風、肉が欲しいって」

「お肉大好きですね、秋風くん。ならナゲットよりチキンの方にしましょうか」

「すいません弟が……ネイさんの好きなのにしてください」

「ならチキンですね」

「……ありがとうございます」

気遣い力では勝てない。微笑んで礼を言って引き下がり、椅子に腰を下ろしノヴェムを膝に乗せた。

《あのガキまた俺の場所取りやがって……》

《お前は俺の椅子》

《それもそうだなお姫様!》

アキはセイカを抱えたまま俺の隣に座った。セイカを膝に乗せているのは俺の真似なのだろうか……

「ふふふ……お膝に乗るのは最近の流行りなんですか?」

「大流行中みたいですね。ノヴェムくんお兄ちゃんのお膝好き? ピザ来るまで少なくとも三十分くらいはかかるだろうから……遊ぼっか」

《ノヴェム、お兄ちゃんが遊んであげるって言ってるよ》

《……! 遊ぶ! 遊ぼっ、お兄ちゃん》

俺の膝の上から飛び降りたノヴェムは俺の手を掴み、引っ張る。行き先はリビングのようだ、ゲームがしたいのかな?

「どれしたいの?」

ノヴェムはテレビ台の戸を開けた。テレビ台の収納にはパッケージ版のゲームを入れてあるのだ。リビングで出来るような全年齢向けの、複数プレイが出来るゲーム。俺は最近までパーティゲームに手を出してこなかったのだが、彼氏が増えたからかアキと遊ぶためになのか、母が何本か買ってくれた。

《これ~》

「これ? いいよ。ちょっと待ってね」

ゲームの準備を整え、ソファに座る。ノヴェムは隣に座らせ、コントローラーを持たせる。ぱたぱたと足を揺らして楽しげにしている彼は愛らしい。用意しておいたヘアゴムで前髪を結んでやり、後ろ髪をくしゅくしゅ撫でた。

《ありがとう!》

「お、今のは分かったぞ~。ふふふ……でもどういたしましてが分かんな~い……」

可愛い。幼い頃からアキと一緒に居たら、こんなふうに世話を焼くこともあったのだろうか。一歳違いじゃろくに世話なんて出来ないかな、オモチャを取り合っての喧嘩が関の山だ。

「これ鳴雷が作ってくれたんだ」

「Ohハムさん、まるで職人のwork……今にも動き出しソーね……」

「だろ~。可愛いだろ~。へへへっ」

「ヒゲまで再現されていますね、これがジャパンの技術力」

「爪もあるんだぞ」

「Oh My God」

ローディング待ちにダイニングを横目で見ると、俺が作ったハムスターのぬいぐるみをセイカが嬉しそうに自慢していて、何だか照れくさくなった。
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