冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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ひとまず着替えて

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買い物を終え、ヒトの車に揺られて帰宅。

「じゃあ、ヒトさん。あっちの方に確かコインパーキングあったと思うんで、そっちに……すいませんウチの車庫一台分しかなくて」

母のあまり乗っていない車で埋められた車庫にヒトの車を停める隙間はないので、俺達は先に荷物を持って降りた。

「ただいまー……って返事する人居ないんだけど言っちゃうよなぁ」

「その感覚はよく分かんないっすね」

「あれ、そう?」

鍵を開け、靴を脱ぎ、話しながら廊下を進む。そんな俺の背後で扉を開ける音が響いた。

「……?」

振り向けば靴を脱ぎながら鍵をかけているヒトが居た。とても俺が教えたコインパーキングに停めてきたとは思えない。まさか、道の端に寄せただけでは……いや、まぁ、うん……ヤクザだしな……いや、ヤクザだからこそくだらないことで警察と関わらないように罰金程度の違法行為は控えるのでは?

「ローストビーフはご飯出来るまで冷蔵庫入れとくっすか」

「そうだな……」

まぁあんなヤクザ丸出しの車が停まっていても、違法駐車だと通報するヤツはあんまり居ないよなぁ。夜中の住宅地で邪魔な位置に停めていてもあまり迷惑に思う人は居なさそうだなぁ。そう自分を無理矢理納得させ、脆い遵法精神を押し潰し、ヒトを笑顔で出迎えた。

「おかえりなさい。さっきぶりですねヒトさん」

「はい。あ、ただいま……ですかね? ふふ……鳴雷さんと住んでいるみたいで嬉しいです」

「こんな挨拶一つで喜んでくれるなんて……」

可愛い人だ。

《着替えてくるぜ、兄貴》

「鳴雷、秋風が着替えるって。俺も着替えてくる」

「ん、そうだな。暑かったし汗かいたろ。レイも着替えてきたらどうだ? アキのなら大きさそんなに変わらないと思うし、貸してもらえよ」

「いいっすか? じゃ、お言葉に甘えて。アキくーん!」

着替えのため部屋へと戻るアキとセイカを追い、レイも窓から庭へと出ていく。

「あちらが我々穂張興業が建てた弟さんのお部屋ですね」

「はい。その節はありがとうございました」

「いえ、仕事でしたから……それにしても、ふふ、この家にまた来ることになるなんて思ってもみませんでした」

「俺もヒトさんを呼べるなんて夢のまた夢だと……ぁ、ヒトさんも着替えます? 俺のなら入りますよね。俺も着替えるので一緒にどうです?」

「……そうですね、汗でシャツが貼り付いてしまって、不愉快だったところです。お願いします」

「俺の部屋こっちです」

ヒトを自室に連れて行き、部屋着を漁る。ヒトは俺より背が高いけれど、その差は十センチ以下、服の貸し借りに問題はないはずだ。

「あっ、ジャケットかけておきます? シャツとかは洗濯出来ますけど、ジャケットはダメですよね……」

「そうですね、ありがとうございます」

ハンガーを渡し、部屋着漁りを再開する。太っていた頃に着ていた物が出てきた。これは流石に大き過ぎる、ヒトが二人、いや詰めれば三人は入るウエスト……不審がられそうだからタンスの奥に押し込んでおこう。

「ヒトさん、これとこれならどっちが……」

振り返り、声を飲み込む。ヒトはハンガーにジャケットをかけ、俺に背を向けてハンガーをかける場所を探していた。そんな彼の背中にはフタやサン同様刺青がある。汗で濡れたシャツが不動明王を透かしていた。フタとサンで慣れたつもりだったが、やはり広範囲の見事な和彫りには心拍が乱れる。

「はい? あっ、着替えありましたか? ありがとうございます」

「……ぁ、はい。どっちにします? こっちの方が気持ち大きいかなって感じで、でも結構着てるのでちょっと毛玉があって」

「構いませんよ。そちらをください」

「そうですか?  じゃあ……ぁ、ジャケット貸してください。かけておきます」

本棚にハンガーを引っ掛けて、部屋着を受け取ったヒトを見つめる。可愛いところの多い人だけれど、やはり反社会的勢力の方であることは間違いないのだ。付き合い方は考えなければな。

「……鳴雷さん?」

「は、はい?」

「今から着替えるのに……そんなに見ないでください」

「あっ、はい! ごめんなさい!」

慌てて後ろを向き、羞恥に色付いたヒトの顔を見て激しくなった鼓動を胸に手を当てて抑えながら、俺も着替え始める。まずシャツを脱いだところで背中にヒトの手が触れた。

「ひゃっ!? な、何ですか?」

「……すいません。少し、気になって」

振り返るとシャツを脱ぎ、ベルトを外した中途半端なヒトが居た。上半身裸にチラリと見える下着……こんなにも悶々としているのに、俺の陰茎はピクリともしない。これ本当に明後日には勃つようになるんだよな?

「アザが……」

「アザ?」

「はい。ここと、ここと、こことここ……それからここにも」

「ぁー……アキのお父さんに踏まれちゃった時のですかね」

「痛くありませんか?」

「痛いですけど、まぁ日常生活に支障はないって感じですかね」

「そうですか……」

心を痛めたような顔をしているけれど、この程度のアザを彼はフタに今まで何百とつけさせてきただろう。指を折りまでしたんだ。ヒトは危険人物なのだと肝に銘じておこう、怒らせないように気を付けなければ。俺と約束したとはいえフタに八つ当たりをする可能性は低くないし、俺だって出来れば暴力を振るわれたくない。

「ほらそんなこと気にしてないで、早く着替えないと。そんなえっちなカッコしてちゃ襲っちゃいますよ~?」

「ぁ……」

両手を顔の斜め下に挙げてワキワキと下品に動かしてみると、ヒトは頬を赤らめて俯き、満更でもなさそうに口角を僅かに上げた。

「ンンッ!」

「な、鳴雷さん? どうされました?」

「勃たないのに、勃たないのにぃ……ムラムラが止まんない……お願いですから早く服着てください、勃たないんです俺今。発散のしようがないんです……」

ヤバい、めちゃくちゃ辛い。陰茎は何ともないのに身体の熱だけは高まっていく。どうしてミタマは精力なんて啜ったんだ、これなら血でも使われて貧血にでもなった方がマシだった。

「ご、ごめんなさい……すぐ着ますね」

「えっちなカッコでちんちんムラムラさせてごめんなさいって言い直してくれませんか?」

「えっ? は、はい……えっちな格好で」

「あーっ! ごめんなさいごめんなさいつい癖でセクハラを! そんなことされたらちんちんの代わりに下腹が破裂する……! ごめんなさい」

「……言わない方がいいんですね? 分かりました。着替えます……ね?」

しゃがみ込んで真下を向き、布擦れの音を聞きながら考える。ヒト、俺には従順なのか? と。あんな恥ずかしいセリフをすぐに言おうとしてくれるなんて、彼氏の中でトップクラスの従順さでは? と。

「三十手前妻子持ちエグ和彫りオールバック美人が俺の言いなり肉便器……!?」

何だそれ、エロ九割本のタイトルか?

「あのー……鳴雷さん、着ました、けど……鳴雷さんも早く着替えなさらないと風邪を引きますよ」

「あっ、はい。すいませんなんか……着ます着まっ、ぁ、あ……うぁあ……彼シャツもエロいよぉお! 俺の普段着彼氏が着てる! 無理! エロい! 押し倒す! クッソなんで勃たないんだよ! ここで勃たなきゃ何のためにあるんだよコレぇ! うっ、ぅ、うぅ……」

「…………泣いてます?」

「明後日までコレとか俺死にましたわ」

本当に、どうして、ミタマは俺の精力を吸い取ったんだ。こんなの辛過ぎる。
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