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騎乗位は一日二回まで

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タオルケットを肩から被ったまま、歌見は深くため息をついた。

「悪かった……途中で失神するなんて」

「いえいえ、お気になさらず。騎乗位頑張ってるパイセンお可愛らしかったですし、わたくしも気持ちよかったので……まぁ、物足りなくはありますが」

「頭がふわふわしてよく覚えてないんだが、なんかすごく恥ずかしいこと言ってた気がするんだよなぁ……ん? 物足りない? 何発出したと思ってるんだお前」

「あのくらいじゃ足りませぬ! 何日パイセンに会えなかったと思ってるんですか! パイセン、まだ夕飯までは結構ありますし、もう一回しましょ」

歌見は呆れたようにため息をつくと、眉尻を下げたままふっと微笑んだ。

「仕方ないな。明日は力仕事はそんなにないし……いいぞ。俺もあんまり覚えてないからもったいないと思ってたところだ。今からか?」

「はい!」

「よし、じゃあ仰向けになってくれ」

「ぁ……パイセン、言い辛いのですが」

「ん?」

「……パイセン、重くて……騎乗位は一日に二発分くらいまでと制限をかけさせていただきたいでそ。腰、痛ぇので」

歌見は目を丸くして、軽度の三白眼の目つきの悪さを強調させた。改めて見ると強面だ、銀髪で日焼けしていて大柄で……そりゃ大学で友人なんか出来ないだろう。本当は太陽みたいに明るく笑う、可愛い人なのに。

「そ、そうか……そうだよな……俺、結構……重いよな」

綺麗に割れた腹筋、むっちりとした尻に触れ、歌見は複雑そうな表情へと変わる。

「…………ごめん、最初に気付けなくて」

「いえいえいえいえ! わたくしも途中までよく分かってなかったので! ほんと、ちょっとくらいなら大丈夫なんです! ただ今日はもう、ほんと、骨抜けそうで……騎乗位はまた今度、でお願い致したいと存じますゆえ」

「そうか……いつもお前にされてばかりだから、復讐と……あと、何より……楽に気持ちよくなって欲しくて今日は俺がやるって言ってたんだ。負担かけるならワガママは言わないよ。そうだな、腰に負担をかけた上に途中で失神したお詫びに……次は水月がプレイを決めてくれ、絶対断らないと約束する」

「ほんとでござりますか!?」

俺は失神した歌見の身体を濡れタオルなどで清めていた間に話し合ったアキの方を振り返る。

「4Pの許可が下りましたぞアキきゅん!」

「待て待て待て待て……よん、ぴー?」

「はい、アキきゅんとセイカ様も交えて。断らないんですよな?」

「ぉ、男に二言はない」

言わなきゃよかった、って顔してる。俺はその顔に気付かなかったフリをしよう。

「待てよ鳴雷、嫌そうじゃんか。歌見、俺は……無理にとは言わないから、三人で楽しんで……」

「あぁ違うんだ狭雲、お前が嫌とかじゃない。そんなことは絶対にない、いいな? お前すぐ自分が嫌われてると思い込むだろ、悪い癖だぞ。ちゃんと人の話を聞け」

「う、うん……ごめんなさい」

俺が今までハッキリ言えなかったことを歌見はあっさりと言ってしまった。これが年の功か。

「水月はもちろん、アキくんもなかなかの性欲と変態性の持ち主だろ? だからアキくんが参加したがるなら分かるんだが……狭雲もってのは、なんかイメージと違ってな」

手招きをされたセイカが恐る恐るベッドの前に立つと、歌見は重い腰を上げて彼の頭を撫でた。

「ひっ……」

セイカは反射的に縮こまり、ぎゅっと目を閉じた。殴られ慣れた子供の仕草だ。胸が痛い。

「…………狭雲」

「は、はい……」

「参加したいくらい、お前は俺に好感を持ってるのか? 水月とアキくんに誘われて仕方なく……とかなら、ちゃんと言った方がいいぞ。あぁ、俺はもちろん4Pでも構わない。狭雲とはちゃんと交流したいしな」

「ぁ……あの、俺……」

「うん」

「自分の、その……せ、性欲とか……あんまり、よく分かんなくて。何かしたいって思うこと、ほとんどなくて。けど、その……鳴雷と秋風の楽しそうな顔とか、興奮してる顔……気持ちよくなってる顔は好きで、あと……スキンシップ、も、好き……だから、傍に……居たくて」

「……よく言ったな」

歌見は身を屈めてセイカを優しく抱き締めた。チャームポイントのジトっとした目が見開かれ、すぐに細められ、涙が溢れた。

「ぁ、ごっ、ごめ、ごめんなさいっ、俺、俺ぇ……事故で頭打ってからっ、涙とか言うこととかなんか抑えらんなくてっ、勝手に出ちゃって、だから、えとっ、ぁ、きっ、気にしないで……」

「ぁー……俺の妹もそうなんだよ、感情昂ると泣いちゃうんだよな。悲しくなくても、嬉しくても怒ってても……大丈夫、狭雲がどうなってるのか分かるよ。妹と一緒だからな、深くは気にしないさ。でも寄り添うのはやめないぞ、水月もアキくんもな」

セイカが泣き出してしまったのに驚いて、俺とアキは彼の傍でオロオロしていた。そんな俺達を歌見が指し、セイカが見た。

「…………ふはっ、ぁははっ……ほんとだ、集まってる……鳴雷、お前さっきまで歌見の身体ジロジロ見るのに忙しそうだったじゃないか。秋風は懸垂してたろ? ふふ……ありがとう、二人ともだいすき……очень нравится」

《同じ気持ちだスェカーチカぁ!》

「萌えぇ~!」

「可愛いなぁお前ら……ふふ、で? 4Pってどんなことしたいんだ? アキくん、狭雲……いや、セイカ、ちゃんと綺麗にしてるか? してるんだったら口でしてやってもいいぞ」

そう言って歌見はイタズラっぽく笑う。最近俺には見せてくれないタイプの笑顔だ。

「年近めのおねロリじゃんそんなの……」

「水月、水月、おねもロリも居ない。俺はお兄さんだし、二人はショタ……いや違う違うショタ居ない居ない。はぁ……お前と話してると頭おかしくなってくる」

「分かる」

「力強いお返事ねぇセイカちゃん! いつもそれくらいでお話してくれるぅ!?」

「やだ」

「はぁ……話してると時間なくなるな。さっさとヤるぞほら、何したいんだ」

「さっさとヤるぅ!? パイセン……えっちですな! いいですぞいいですぞその投げやりだけど積極的な感じ! たまりませんぞぉ!」

「変なスイッチ押しちまった。さくっ……セイカ、したいことあるか?」

「ぁ……じゃあ、抱っこ」

「そういうのじゃ……いや、ふふっ、いいぞ。抱っこな。はぁー……癒されるなぁお前」

「恋人との交流では癒されないと言うのですかパイセン!」

なんだかみんな俺の扱いが雑じゃないか? 興奮するからもっとやってくれ、3Pを眺めさせられる役でも俺は一向に構わない。
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