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お風呂も一緒に

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狐のぬいぐるみに変化したミタマを連れてホテル最上階のレストランへと向かう。

「昨日寝る前調べたんだけど、あのいっぱいあるフォークとかって一品ごとに変えていくらしいんだよな。いやぁ昨日は恥かいた……母さんフルコース頼んだならそう言って欲しいよなぁ、マナーとか事前に調べなきゃなんだからさ」

エレベーターでは三人だけ、いや正確には五人だが……俺と彼氏達だけになったので少々愚痴を話した。

「そのぬいぐるみ何? 買ったの? いつの間に……」

しかしセイカは俺の愚痴なんて聞かず、狐のぬいぐるみことミタマに興味津々だ。

「見せて」

断るのも妙なのでぬいぐるみをそっとセイカに渡した。テディベアをアキに渡したセイカは右腕でぬいぐるみを抱き、左手で手触りを確かめた。

「ふわふわ……すごい触り心地いいな」

「だろ」

「可愛い。お前ぬいぐるみ飾ってばっかりだけど、ちゃんと大事にしてやれよ」

手の中に帰ってきたぬいぐるみを見下ろし、撫で、セイカの言う飾ってあるぬいぐるみとは数々の推しぬいのことだろうなと自室を思い返す。しかし、ちゃんと飾ってあるのに「大事にしてやれ」とはこれ如何に。

「大事にしてるぞ……?」

アキからテディベアを返してもらい、両腕で強く抱き締めているセイカに向かって半ば独り言のように呟いた。



ぬいぐるみに化けたミタマはテディベアに抱かれるように置かれ、俺は彼を気にしつつもフルコース料理を楽しんだ。昨日よりは緊張せず味を楽しめたと思う、けれどサラダはやっぱり草の味がした。昨日とは違う野菜が使われていたのに。

「サラダって金積んでも美味しくならないもんなのかな」

食事を終え、エレベーターの中、そう呟く。

「気に入らなかったか?」

「草の味したじゃん……」

「まぁ、草だし……ドレッシングちゃんとかかってたろ? 野菜に合ってたし」

「ドレッシング美味しかったし合ってたんだけど、量がさ……寿司に対するワサビじゃないんだからさぁ……もっとこう、野菜がひたひたになるくらい欲しいよ、俺」

「シャキシャキ感なくなっちゃうぞ」

「いらないんだよ野菜のシャキシャキ感なんか……! あるから草臭いんじゃん。俺野菜の素の味も食感も好きじゃないからさ、素材の味を楽しもうみたいなコンセプト嫌なのよ……」

「ふぅん……野菜嫌いとか子供みたいなこと言ってんなぁ」

セイカは特にあのサラダに不満はなかったようだ。俺は野菜の美味しさを引き出したサラダではなく、野菜らしさを感じず食べられるサラダが食べたい。

《……? 一階? 部屋帰るんじゃねぇのか?》

《お土産買うんだってさ。人間関係を円滑に保つためにはこういうのが必要なんだよ、まともな人間は大変だな。まともじゃない方が楽でいい、そうだろ秋風》

《だな》

「八つ橋は定番だよな、後は……っていうか何箱買えばいいんだっけ。何個入りだこれ……なぁセイカ、アキ、お前らお土産でもらうならどれ欲しい?」

ロシア語で会話しながら後を着いてくるだけとなっていた二人にも意見を要求しながら、様々な和菓子を買っていった。

「よし、部屋帰ろっか。そろそろチェックアウトだからな。俺シャワー浴びるからその間に荷物の準備しとけよ。ってアキにも言っといてくれ、セイカ」

「分かった」

着替えは事前に準備しておいたので、俺は部屋に戻ってすぐにシャワールームへ入った。家とは違う水圧のシャワーを浴びるのも今日で最後かと思うと少し名残惜しくなった。

「だーぁーりん、お背中お流しいたしますのじゃ~」

一緒にシャワールームに入った訳ではないのに、扉を開けることなくいつの間にか背後に立っていたミタマが鏡越しに俺に笑いかけた。

「コンちゃん……! それ……着たまま?」

「裸はまだまだ恥ずかしいのじゃ、着たままで失礼させていただいとるんじゃが……気に入らんかの? 化けとるだけじゃから湯船に繊維を落としたりせんぞぃ」

バスローブと浴衣を混ぜたような白い服だ。濡れた布がミタマの肌に張り付いて、白が透けて淡く橙に色付いた肌が薄らと見えている。股間の方は布が重なっているのかよく見えないけれど、胸には肌よりも赤みが濃い突起が二つ伺えた。

(濡れ透けてぃくび様!?)

それに気付いてしまったらもう、あっという間にギンギンだ。

「痒いところございましたら遠慮なく申すのじゃよ」

ミタマは俺の興奮に気付いているのかいないのか、若干不自然な言葉遣いで美容師のモノマネをし、俺の背中をボディウォッシュで優しく擦ってくれている。

「みっちゃん、ええ身体しとるのぅ。身体を動かす、えぇと……すぽーつ、じゃったか。うむ、何かすぽーつやっとるのか?」

「いや、運動とかは嫌いで……これは筋トレで頑張ってつけた、見た目重視の筋肉だよ。でも彼氏抱っこして運ぶくらいは出来るんだよ」

「ほぅ、ワシのことも運べるかの?」

「多分大丈夫だと思うけど……」

痩せているのか筋肉質なのか、体型はまだハッキリとは分からないが、身長は俺より少し低いくらいだから頑張ればお姫様抱っこも出来ると思う。

「三百きろぐらむ、じゃったか……いや、二百……八十くらいじゃったか?」

「本体の話なら無理だよ」

「カカカッ! 重さが決まっとるのは石像としてだけじゃ、今ここに居るワシは……」

ぴょん、と軽く跳んだかと思えばミタマは俺の左肩に座っていた。鏡を見ても左肩を直接見ても信じられない、重さはほとんど感じない、濡れたタオルをかけた方がまだ重いくらいだ。

「……重さなど、自由自在じゃからの」

かと思えばズンッと重くなる、とはいえ五キロくらいだ。体勢を崩すほどではない。

「はは……アキが喜びそうな特技だね」

床に降りたミタマは自慢げな笑みをたたえている。

「ほぅ? 何故かはまた後で聞くとしよう、今はそれよりも……こちらの方が気になるでな」

糸目は視線が読みにくいけれど、そそり立つ陰茎に注目されて気付かない男は居ない。恥ずかしさとほんの少しの誇らしさが先走りの汁へと変わる。

「流石、若いもんは元気じゃのぅ。クククッ……のぅ、して欲しいことがあるんじゃったら言うてみぃ。なぁーんでも叶えてやろうぞ」

つぅっと足の付け根を撫でながら淫靡な声でそう囁かれては、紡ぐ言葉は一つしかない。
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