冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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来ちゃった♡

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汗をかいてしまって気持ち悪いからと、アキとセイカは部屋に戻ってすぐシャワーを浴びに行った。あまり時間がないし俺は食事の後にしようかな、今はシートで身体を拭うだけに留めるか。

「お土産買うのは夕飯の後でも間に合うか……食べて、買って、部屋戻ってお風呂入ってチェックアウト……で、大阪戻って寝台列車に……んー、キツキツ。荷物は今のうちに見ておくか」

散らかしているアキと、片腕のためどうしても片付けるのが遅くなるセイカは、食事の後に部屋に戻らせて荷物を片付けさせておくか。土産選びは一人で出来るし……いや、その後で俺はシャワーを浴びるのだからその時間で足りるかな。旅行最後の買い物は三人で楽しもう。

「俺はダンドリ免許皆伝……」

ぶつぶつ考えながら部屋の各所に置いた私物を一箇所に集めて、詰めるために鞄を開けた。リュウが作ってくれた身代わり人形を持ち歩くため昨日も今日も肌身離さず持っていた、大きな鞄を。

「……っ、うわぁっ!?」

中に手を入れると柔らかい毛の塊が手に触れた。温かいそれに心当たりがなく驚いて手を引くと、その正体は自らひょっこりと顔を出した。犬のようだが犬よりはシュッと細い顔をした、金色の毛並みが美しい小さな動物──仔狐だ。

「エキノコックス!」

ぴょんと鞄から飛び出した可愛らしい仔狐はつぶらな瞳に俺だけを映して俺の膝に登ろうとしてくる。

「待って待って待って待って消毒を先にっ! 消毒如きでいいの!? いや動物病院動物病院……」

「…………ワシじゃ! 病原菌扱いするでない! 泣くぞ!」

ポンっ、と軽い音を立てて仔狐はミタマへと姿を変えた。細い目の端は確かに涙の粒で煌めいていた。

「ご、ごめん……狐見ると、つい。そうだよね、鞄に普通の狐入ってる訳…………コンちゃんエキノコックス持ってないよね? 狂犬病ワクチン打ってる?」

「ワシは妖怪! そんなもん罹らん!」

「妖怪ってそうなの……? っていうか、妖怪って神社に居ていいの? なんか、属性真逆じゃない? 妖怪が狛犬ならぬ狛狐やってたってなんかサキュバスがシスターやってるみたいで興奮するなぁ」

「…………付喪神、分かるかの?」

「あぁ、うん。ゲームで学んだ、日本刀の付喪神と歴史守るゲーム……」

「なんじゃそのゲーム。ワシは実は霊狐ではなくてな……像そのものなんじゃよ、付喪神なんじゃ。昔は宮司だけでなく参拝客にも可愛がられておったからのぅ……じゃから、ワシの正体は正確には狐の石像じゃ。構わんか?」

「うん、スタチュー系も余裕だから俺!」

命を持った動く石像でも人間の石像化でも抜ける。ただ石像化するだけのイラストなら年齢制限がかかっていないこともあるのでいいオカズになっている。

「……よく分からんが、ええならええんじゃ」

「付喪神ならやっぱり妖怪じゃなくて神様じゃない?」

「む……その辺は曖昧じゃからのぉ、みっちゃんに任せるぞぃ。こういうのはワシ自身よりワシを知る人間の認識が大事じゃったりするんじゃ」

「じゃあ神様で。コンちゃん居なくて神社大丈夫? せっかく直った像なくなったら宮司さんびっくりしてないかな?」

「石像はあるぞぃ、実体化しとるだけで本体は動いとらんからの。分霊……分け火みたいなもんじゃな」

「あー……それぞれの本丸に同じ刀が居る感じのアレだね、分かる分かる」

「何の話をしとるか知らんが……何の話しとったんじゃ? ワシが、えぇと……そうじゃ、ワシは病魔になど侵されんぞ! という話じゃったな。ワシが神か妖怪かは好きにせい、どちらでも大して変わらんわぃ」

元が石像なら寄生虫やウイルスの心配はないな。狐顔の美少年と恋愛を楽しめるだけでなく、何の心配もなく狐をモフれるとは……ミタマは一粒で二度美味しいな。

「……コンちゃん、俺と一緒に東京来るの? 本体……? から離れても大丈夫?」

「問題ないじゃろ、国内くらい」

「そっか、嬉しい。一緒に居られるんだね…………ちなみに食費とかって月どれくらいかかりますかね、いや全然食べてもらって構わないんですけど」

「衣食住など気にせずともよい。衣装はこれこの通り」

ミタマが指を鳴らすと彼の着物があっという間に洋装へ変わった、と言うより……俺が今着ているのと全く同じ服だ。マフラーだけは服装が変わる前からそのまま残っているけれど。

「変化の術には自信がある、先程の仔狐の姿になれば場所を取らん」

「衣、住に心配は要らなさそうなのは分かったけど、食は……?」

「……まぁ、実体化しとるだけじゃし、付喪神じゃし、石像じゃし……要らんのじゃが…………あぶらげ、食べたいのぅ」

「…………ふふふふ、ごめんごめん。そんな悲しそうに言わなくても俺そこまでケチじゃないよ、コンちゃんのおかげで百万も当たっちゃったし、油揚げくらいいつでも買ってあげる」

「本当かっ? ぁ、いや……あの百万はワシを修理してくれたお礼じゃし、本当なら一千万くらい当てるつもりじゃったし……あの金はみっちゃんがみっちゃんのためだけに使って欲しいのぅ」

「コンちゃんが油揚げ食べてる時の顔すごく可愛かったから、また見たいなぁって思って買うのは俺が俺のために使ってるってことじゃないかな?」

「…………ヌシが十六人も口説き落とせた訳が分かった」

呆れたようにため息をついたミタマは俺の首に腕を絡め、俺の頬に頬を擦り付けながら俺の膝に尻を乗せた。

「……コ、コンちゃんっ」

俺の膝に座り身体を捻って俺に抱きついてくれたミタマを抱き締め返そうと腕を動かすも、俺の腕は何にも触れなかった。

「あれっ……?」

膝の上で仔狐が丸まっている。

「…………コンちゃん、このホテルペット禁止だから……動物もダメなんだよね」

ポン、と軽い音がして仔狐は同じ大きさのぬいぐるみへと姿を変えた。
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