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一割くらいは可能性あるはず
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ハルと待ち合わせをした人気のない小さな公園にミタマが現れた。
「ぁ、ハル、この子は……」
何故ここが分かったのか、やはり俺を尾行しているのか、それとも──いや、そんなことはどうでもいい。とりあえず紹介しなくては。
「昨日ナンパされたんだ」
「したんじゃなくて~?」
「されたの」
「分野 魅魂じゃ、どうぞよしなに。コンちゃんと呼んどくれ」
「……何~? 昨日ナンパしてきたヤツともうデキてる訳? みっつん」
不機嫌そうな声と共にハルは俺を睨む。デキてるのかと聞かれても、まだよく分からない。ミタマは俺に声をかけてきてくれたし、好意は確かにあると思うけれど、付き合っているのかと聞かれると……困る。
(交際は婚姻とは違って別に契約書も何も要りませんからな~、わたくしは付き合いたいと言いましたがコンちゃんからの返事は聞いてない訳で……でもその前にコンちゃんがホテルに連れ込めとか言ってたから、アレはもうコンちゃん的には告白で、わたくしが付き合いたいとか言ってたのが返事になって既に付き合っていると解釈も出来なくもなく……)
一言確認すればいいだけの話なのに、俺はぐだぐだと考え込んでハルへの返事を疎かにした。
「ヌシは……ふむ…………そうカッカするでない、ワシはヌシとも仲良くしたいと思うておるんじゃ。そんな怖い目をしておったら可愛らしい顔が台無しじゃぞ?」
「なっ、何なの……んなこと言ったって何にもあげないからね!」
「……嫌われてしもうたかの」
「照れてるだけだよ。な、ハル。ぁ……コンちゃん、ちょっと話いい? ごめん三人とも、ちょっと席外す。コンちゃん、こっちに……」
ミタマの肩に手を添え、三人に会話が聞かれないよう公園の端へと彼を連れて行く。
「…………何さ。みっつんのバカ、次から次に新しい男捕まえてさ」
その途中、ハルの拗ねた声に後ろ髪を引かれた。
「話とは何じゃ?」
「あ……もう一人紹介しとこうと思って。サキヒコくん……視えてるんだよね?」
「みえている、とは?」
「はぐらかさなくていいよ、おかっぱ頭の着物の男の子……で分かるかな? 俺の大事な子だから、祓ったりとかしないで欲しくて……ちゃんと説明しておこうと思ってさ」
「ふ……確認も取らず祓うなどするものか、わざわざ身代わりを持ち歩き霊障を軽減してまで侍らせておるようなモノ」
鞄に入れている身代わり人形のことも分かっているのか……やはり、結構な霊能力者なんだな。
「よかった、サキヒコくん祓われるんじゃないかって怖がってたから。聞いてたよねサキヒコくん、大丈夫そうだよ」
「うん……」
「コンちゃん、俺……その、サキヒコくん入れて今十五人彼氏が居るんだ。それでもよければ付き合って欲しい、十六人目になって欲しい……全員に本気なんだ、絶対寂しがらせたりしないから」
線のように細い瞳が僅かに開き、暗い瞳が俺を見つめる。
「…………寂しがらせない、とな」
「うん、出来る限り頑張る。コンちゃんここの子だよね? 俺東京に住んでて、ここには旅行に来てるだけだから……遠距離になっちゃうけど、でも、電話とかは欠かさないし、ぁ、連絡先交換まだだったよね、しよっ?」
「悪いが電話は持っとらん」
「えっ」
見たところ俺と同い年くらいだろうにそんなことありえるのか? フラれているのだろうか、いや、セイカもスマホを持っていないし……ありえなくはない、のか?
「じゃあ、えっと……俺の電話番号メモして渡すよ。今書くもの持ってないから後で……」
「それより」
「は、はい!」
「本当にワシを寂しがらせんのじゃな?」
「は、はい……頑張り、ます」
妙な圧を感じる、何となく敬語になってしまった。
「……謀れば、それなりの報いがあると心得よ。ずっと宮司の顔くらいしか見るもんがなかった、昔は賑わうこともあったのにここ何十年かはとんと……ふふ、この孤独、癒してもらうぞ」
「は、はい……」
もうこれ白状だろふざけんなよ気ぃ遣ってやってるのに。それとも何だ? 異類婚姻譚システムじゃないのか? 正体見破っても逃げたりしないのか?
「ふふふ…………あっ、何十年、というのはアレじゃぞ。冗談じゃ。キャベツ一玉百万円とか言ったりするじゃろ、アレじゃぞ。何十年と言いたくなるくらい寂しかったんじゃワシは! 寂しがらせたら承知せんからの!」
正体、一応隠してるんだ……
「ふぅ……危なかった、何とか誤魔化せたぞぃ…………話は終わりじゃな? では戻ろうではないか。知らん童共の紹介をしてもらわんとのぅ」
腕を引っ張られ、皆の元へ戻る。ハルはご機嫌ナナメなままで、目が合うとぷいっと顔を背けられた。
「何の話してたんだ?」
「ハーレムについてちゃんと説明を……」
「そんなこと~? じゃあ別に離れなくてもよかったじゃん」
「いや、ほら……もし受け入れてもらえなくて、暴言とか吐いたりする時……俺だけの方がいいだろ?」
「…………そ」
短い返事だったが、確かにハルの機嫌が良くなり始めた。
「ヌシらもみっちゃんの彼氏とやらか?」
「あ、うん……俺、セイカ。こっちは秋風、秋風は海外育ちで日本語苦手だから話す時は俺通して。あと、色素薄くて太陽が苦手だからこのカッコしてる。傘とかサングラス絶対取らないで」
「ふむふむ……せーちゃんとあーちゃんじゃな」
「……ねぇ~、俺のがそいつらよりみっつんの彼氏として先輩なんですけど~」
「おっと、それはすまんの。しかし挨拶なら先程済ませたじゃろ? ワシはミタマじゃ、気軽にコンちゃんと呼んどくれ」
「俺の自己紹介の話~! 俺はね~」
「知っとるよ、初春じゃろ? はーちゃんじゃの。今は気が立っとるようじゃが、素直で優しい可愛ええ子じゃと分かっとる。ワシはヌシのことも好きじゃよ」
「…………そ、そぉ? なんかごめんね~? キツく当たっちゃってさ~」
誰も「初春」とは呼んでいなのに名前が知れていることに疑問はないのか? この辺りでは有名な家の生まれだから初対面の人間に名が知られていても違和感がないのだろうか。
(ハルどのへの好感度高めなのってやっぱり……一緒に像の修理したからなんでしょうか)
いやいや、まだ昨日修理を手伝った狐の像の精とか妖怪とか神様的な何かがミタマだと決まった訳ではない。もしそうなら正体を言い当てたら消えてしまいそうだから確認することは永遠にないだろうけど、ミタマが普通に人間という可能性だって十二分にあるのだ。
「はぁ……ええのう久々の若い人間、めんこいのぅ」
もう一度言う。ミタマが人間だという可能性だって! まだまだ消えていないはずなんだ!
「ぁ、ハル、この子は……」
何故ここが分かったのか、やはり俺を尾行しているのか、それとも──いや、そんなことはどうでもいい。とりあえず紹介しなくては。
「昨日ナンパされたんだ」
「したんじゃなくて~?」
「されたの」
「分野 魅魂じゃ、どうぞよしなに。コンちゃんと呼んどくれ」
「……何~? 昨日ナンパしてきたヤツともうデキてる訳? みっつん」
不機嫌そうな声と共にハルは俺を睨む。デキてるのかと聞かれても、まだよく分からない。ミタマは俺に声をかけてきてくれたし、好意は確かにあると思うけれど、付き合っているのかと聞かれると……困る。
(交際は婚姻とは違って別に契約書も何も要りませんからな~、わたくしは付き合いたいと言いましたがコンちゃんからの返事は聞いてない訳で……でもその前にコンちゃんがホテルに連れ込めとか言ってたから、アレはもうコンちゃん的には告白で、わたくしが付き合いたいとか言ってたのが返事になって既に付き合っていると解釈も出来なくもなく……)
一言確認すればいいだけの話なのに、俺はぐだぐだと考え込んでハルへの返事を疎かにした。
「ヌシは……ふむ…………そうカッカするでない、ワシはヌシとも仲良くしたいと思うておるんじゃ。そんな怖い目をしておったら可愛らしい顔が台無しじゃぞ?」
「なっ、何なの……んなこと言ったって何にもあげないからね!」
「……嫌われてしもうたかの」
「照れてるだけだよ。な、ハル。ぁ……コンちゃん、ちょっと話いい? ごめん三人とも、ちょっと席外す。コンちゃん、こっちに……」
ミタマの肩に手を添え、三人に会話が聞かれないよう公園の端へと彼を連れて行く。
「…………何さ。みっつんのバカ、次から次に新しい男捕まえてさ」
その途中、ハルの拗ねた声に後ろ髪を引かれた。
「話とは何じゃ?」
「あ……もう一人紹介しとこうと思って。サキヒコくん……視えてるんだよね?」
「みえている、とは?」
「はぐらかさなくていいよ、おかっぱ頭の着物の男の子……で分かるかな? 俺の大事な子だから、祓ったりとかしないで欲しくて……ちゃんと説明しておこうと思ってさ」
「ふ……確認も取らず祓うなどするものか、わざわざ身代わりを持ち歩き霊障を軽減してまで侍らせておるようなモノ」
鞄に入れている身代わり人形のことも分かっているのか……やはり、結構な霊能力者なんだな。
「よかった、サキヒコくん祓われるんじゃないかって怖がってたから。聞いてたよねサキヒコくん、大丈夫そうだよ」
「うん……」
「コンちゃん、俺……その、サキヒコくん入れて今十五人彼氏が居るんだ。それでもよければ付き合って欲しい、十六人目になって欲しい……全員に本気なんだ、絶対寂しがらせたりしないから」
線のように細い瞳が僅かに開き、暗い瞳が俺を見つめる。
「…………寂しがらせない、とな」
「うん、出来る限り頑張る。コンちゃんここの子だよね? 俺東京に住んでて、ここには旅行に来てるだけだから……遠距離になっちゃうけど、でも、電話とかは欠かさないし、ぁ、連絡先交換まだだったよね、しよっ?」
「悪いが電話は持っとらん」
「えっ」
見たところ俺と同い年くらいだろうにそんなことありえるのか? フラれているのだろうか、いや、セイカもスマホを持っていないし……ありえなくはない、のか?
「じゃあ、えっと……俺の電話番号メモして渡すよ。今書くもの持ってないから後で……」
「それより」
「は、はい!」
「本当にワシを寂しがらせんのじゃな?」
「は、はい……頑張り、ます」
妙な圧を感じる、何となく敬語になってしまった。
「……謀れば、それなりの報いがあると心得よ。ずっと宮司の顔くらいしか見るもんがなかった、昔は賑わうこともあったのにここ何十年かはとんと……ふふ、この孤独、癒してもらうぞ」
「は、はい……」
もうこれ白状だろふざけんなよ気ぃ遣ってやってるのに。それとも何だ? 異類婚姻譚システムじゃないのか? 正体見破っても逃げたりしないのか?
「ふふふ…………あっ、何十年、というのはアレじゃぞ。冗談じゃ。キャベツ一玉百万円とか言ったりするじゃろ、アレじゃぞ。何十年と言いたくなるくらい寂しかったんじゃワシは! 寂しがらせたら承知せんからの!」
正体、一応隠してるんだ……
「ふぅ……危なかった、何とか誤魔化せたぞぃ…………話は終わりじゃな? では戻ろうではないか。知らん童共の紹介をしてもらわんとのぅ」
腕を引っ張られ、皆の元へ戻る。ハルはご機嫌ナナメなままで、目が合うとぷいっと顔を背けられた。
「何の話してたんだ?」
「ハーレムについてちゃんと説明を……」
「そんなこと~? じゃあ別に離れなくてもよかったじゃん」
「いや、ほら……もし受け入れてもらえなくて、暴言とか吐いたりする時……俺だけの方がいいだろ?」
「…………そ」
短い返事だったが、確かにハルの機嫌が良くなり始めた。
「ヌシらもみっちゃんの彼氏とやらか?」
「あ、うん……俺、セイカ。こっちは秋風、秋風は海外育ちで日本語苦手だから話す時は俺通して。あと、色素薄くて太陽が苦手だからこのカッコしてる。傘とかサングラス絶対取らないで」
「ふむふむ……せーちゃんとあーちゃんじゃな」
「……ねぇ~、俺のがそいつらよりみっつんの彼氏として先輩なんですけど~」
「おっと、それはすまんの。しかし挨拶なら先程済ませたじゃろ? ワシはミタマじゃ、気軽にコンちゃんと呼んどくれ」
「俺の自己紹介の話~! 俺はね~」
「知っとるよ、初春じゃろ? はーちゃんじゃの。今は気が立っとるようじゃが、素直で優しい可愛ええ子じゃと分かっとる。ワシはヌシのことも好きじゃよ」
「…………そ、そぉ? なんかごめんね~? キツく当たっちゃってさ~」
誰も「初春」とは呼んでいなのに名前が知れていることに疑問はないのか? この辺りでは有名な家の生まれだから初対面の人間に名が知られていても違和感がないのだろうか。
(ハルどのへの好感度高めなのってやっぱり……一緒に像の修理したからなんでしょうか)
いやいや、まだ昨日修理を手伝った狐の像の精とか妖怪とか神様的な何かがミタマだと決まった訳ではない。もしそうなら正体を言い当てたら消えてしまいそうだから確認することは永遠にないだろうけど、ミタマが普通に人間という可能性だって十二分にあるのだ。
「はぁ……ええのう久々の若い人間、めんこいのぅ」
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