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観光の相談
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今日の夕方頃に俺達は京都に移動、別の彼氏の実家へ行くのだとヒトに話した。
「京都ですか……」
顔を洗い終えたヒトは持参したワックスで髪型をいつも通りのオールバックへと変え始めた。
「ヒトさん達も来ます?」
「京都にも誘われているとサンが話していました、京都は観光地ばかりだからあまり行く気が湧かないとも」
「えー……グルメありますよ? 八つ橋とか」
「ですよねぇ。芸術家ならあの歴史ある街並みに触れておくのも大切だと思います。もう一度説得してみますよ」
「待ってます。京都にもあんまり長居しないけど……」
「しっかりとした交流は東京に帰ってからですかね。また連絡しますので、部屋に来てください。来なかったら、んっ?」
ヒトの唇に人差し指を押し付けて黙らせる。
「脅迫はなしですよ?」
「…………来て、くれますか? 来なくてもデメリットは……ない、です。メリットも」
「行きます。ヒトさんに会えるんですから、それがメリットですよ。俺にも予定はあるので絶対行けるって訳じゃなさそうですけど……」
「夏休みでしょう?」
「まぁ、もう旅行はしないでしょうし……コミケも終わったし……予定ないかもです!」
「じゃあ私の都合のつく日に呼ばせていただきます。お待ちしていますよ」
話が一区切り付くのとほぼ同時にヒトのオールバックヘアが完成した。ヒトと共に何食わぬ顔でみんなの元へ戻り、ヒトとフタは二日酔いに効くらしい特製の味噌汁を飲んだ。
「はぁー……ホッとするぅ」
「頭痛はどうですか? フタさん」
「痛ぁい」
「おいリュウ効いてないぞ」
「んな即効性あるかいな、薬でももっと時間かかるわ」
痛がるフタのこめかみを軽く揉んでやると、向かいに座っているヒトからの視線が厳しくなった気がした。
「……リュウ、今日はどこ案内してくれるんだ?」
「おー……どこ行こ。水月今日の晩出発やんな」
「日の出てる内に行くつもりだよ」
「昼間遊べるとこかぁ……どこやろ」
リュウ、案内してやるとか言ってる割にはそんなに大阪に詳しくないよな……まぁ俺も東京の名所を案内しろとか言われたら困るけど、俺は案内するとか言い出さないし……俺はともかくサンは本心から見知らぬ土地を楽しみに来ている訳だから、ちょっとモヤモヤするんだよな。いや、でも昨日はちゃんと楽しんだし、サンも満足そうだったし、俺がモヤモヤする必要なんてどこにもないか。
「大阪にはジンベイザメの居る水族館がありませんでしたか?」
グダグダ考えているとヒトがそう提案した。
「水族館とかボク何も楽しめないんだけど……」
「動物園もありまっせ」
「触れるならいいけどさ~……見えないもんボク。まぁ動物園なら匂いとか鳴き声とかあるからまだいいけど、水族館とか本当にやることないし」
「イルカショーで水かけてもらうとか……?」
「あーはいはいすいませんね役に立たない提案をして!」
拗ねてら。可愛い。
(昨日までなら「んもー空気悪いなぁ」って感じでしたが、今日は可愛く見えまそ。不思議なもんですな)
恋人ならどんな態度も可愛く見えてしまうものなんだなぁ、としみじみ思いながらヒトを眺める。
「サンちゃんは何しぃたいんや?」
「美味しいもの食べたい」
「もっと画家として糧になることをしたらどうです?」
「……美味しいもの食べたい!」
「二秒考えた結果がそれならもうそれでいいです、お願いします天正さん」
その土地特有の物を触らせてくれる施設、なんてものはないのだし、雑踏を聞いてその土地らしさを感じつつご当地グルメを楽しむというのは盲目のサンにとっては正しいのかもしれない。
「おー……粉もんは昨日食うたし、てっちりも食うた……大阪っぽいもんなぁ、他何あるやろ」
《暇だな、スェカーチカでも愛でるか》
「は?」
「なんやせーか、地元民が地元のええもん知らんからってそないキレることないやんか」
「えっ、ぁ、いやごめん、秋風が急に変なこと言ったからびっくりして」
何言ったんだろ……
「鳴雷さんは何かアイディアありますか?」
《寝癖ついてるな、可愛いぜ。名残惜しいが直してやるよ》
「えっ、うーん……商店街で食べ歩きします? 昨日は二店でお昼ご飯しっかり食べた感じだったんで、もっとちょっとずつ、それこそたい焼き一個買って食べながら次のお店探すみたいな……?」
《この家のシャンプーはどうだった? 香りの違うスェカーチカもイイ……》
「いいねぇ、流石水月」
《昨日買ったぬいぐるみも赤くてモコモコした髪生えてるみたいに見えるな。だから可愛く見えたのかもな?》
「えっと、セイカ……さん? 弟さん何か言ってますけど、観光の要望とかではないんですか?」
「……戯言です、お気になさらず。もう少し小声で話すよう言っておきますから」
そう言った後すぐにセイカはロシア語でアキに何かを伝え、アキはそれから小声で話すようになった。しかしずっとセイカに何か話し続けている。セイカがほとんど返事をしていないのが気になる、アキは一体何を話しているのだろう。
「今日は水月ら帰るみたいやし、はよ行かなな。俺準備してくるわ、水月らもサンちゃんらも準備しといてな」
「は~い。行こ~兄貴ぃ」
「はいはい……」
ヒトの二の腕を引っ張ってサンは兄弟で使っている空き部屋へ向かった。置いて行かれたフタは特に何も考えていなさそうな顔でのんびりお茶を飲んでいた。
「京都ですか……」
顔を洗い終えたヒトは持参したワックスで髪型をいつも通りのオールバックへと変え始めた。
「ヒトさん達も来ます?」
「京都にも誘われているとサンが話していました、京都は観光地ばかりだからあまり行く気が湧かないとも」
「えー……グルメありますよ? 八つ橋とか」
「ですよねぇ。芸術家ならあの歴史ある街並みに触れておくのも大切だと思います。もう一度説得してみますよ」
「待ってます。京都にもあんまり長居しないけど……」
「しっかりとした交流は東京に帰ってからですかね。また連絡しますので、部屋に来てください。来なかったら、んっ?」
ヒトの唇に人差し指を押し付けて黙らせる。
「脅迫はなしですよ?」
「…………来て、くれますか? 来なくてもデメリットは……ない、です。メリットも」
「行きます。ヒトさんに会えるんですから、それがメリットですよ。俺にも予定はあるので絶対行けるって訳じゃなさそうですけど……」
「夏休みでしょう?」
「まぁ、もう旅行はしないでしょうし……コミケも終わったし……予定ないかもです!」
「じゃあ私の都合のつく日に呼ばせていただきます。お待ちしていますよ」
話が一区切り付くのとほぼ同時にヒトのオールバックヘアが完成した。ヒトと共に何食わぬ顔でみんなの元へ戻り、ヒトとフタは二日酔いに効くらしい特製の味噌汁を飲んだ。
「はぁー……ホッとするぅ」
「頭痛はどうですか? フタさん」
「痛ぁい」
「おいリュウ効いてないぞ」
「んな即効性あるかいな、薬でももっと時間かかるわ」
痛がるフタのこめかみを軽く揉んでやると、向かいに座っているヒトからの視線が厳しくなった気がした。
「……リュウ、今日はどこ案内してくれるんだ?」
「おー……どこ行こ。水月今日の晩出発やんな」
「日の出てる内に行くつもりだよ」
「昼間遊べるとこかぁ……どこやろ」
リュウ、案内してやるとか言ってる割にはそんなに大阪に詳しくないよな……まぁ俺も東京の名所を案内しろとか言われたら困るけど、俺は案内するとか言い出さないし……俺はともかくサンは本心から見知らぬ土地を楽しみに来ている訳だから、ちょっとモヤモヤするんだよな。いや、でも昨日はちゃんと楽しんだし、サンも満足そうだったし、俺がモヤモヤする必要なんてどこにもないか。
「大阪にはジンベイザメの居る水族館がありませんでしたか?」
グダグダ考えているとヒトがそう提案した。
「水族館とかボク何も楽しめないんだけど……」
「動物園もありまっせ」
「触れるならいいけどさ~……見えないもんボク。まぁ動物園なら匂いとか鳴き声とかあるからまだいいけど、水族館とか本当にやることないし」
「イルカショーで水かけてもらうとか……?」
「あーはいはいすいませんね役に立たない提案をして!」
拗ねてら。可愛い。
(昨日までなら「んもー空気悪いなぁ」って感じでしたが、今日は可愛く見えまそ。不思議なもんですな)
恋人ならどんな態度も可愛く見えてしまうものなんだなぁ、としみじみ思いながらヒトを眺める。
「サンちゃんは何しぃたいんや?」
「美味しいもの食べたい」
「もっと画家として糧になることをしたらどうです?」
「……美味しいもの食べたい!」
「二秒考えた結果がそれならもうそれでいいです、お願いします天正さん」
その土地特有の物を触らせてくれる施設、なんてものはないのだし、雑踏を聞いてその土地らしさを感じつつご当地グルメを楽しむというのは盲目のサンにとっては正しいのかもしれない。
「おー……粉もんは昨日食うたし、てっちりも食うた……大阪っぽいもんなぁ、他何あるやろ」
《暇だな、スェカーチカでも愛でるか》
「は?」
「なんやせーか、地元民が地元のええもん知らんからってそないキレることないやんか」
「えっ、ぁ、いやごめん、秋風が急に変なこと言ったからびっくりして」
何言ったんだろ……
「鳴雷さんは何かアイディアありますか?」
《寝癖ついてるな、可愛いぜ。名残惜しいが直してやるよ》
「えっ、うーん……商店街で食べ歩きします? 昨日は二店でお昼ご飯しっかり食べた感じだったんで、もっとちょっとずつ、それこそたい焼き一個買って食べながら次のお店探すみたいな……?」
《この家のシャンプーはどうだった? 香りの違うスェカーチカもイイ……》
「いいねぇ、流石水月」
《昨日買ったぬいぐるみも赤くてモコモコした髪生えてるみたいに見えるな。だから可愛く見えたのかもな?》
「えっと、セイカ……さん? 弟さん何か言ってますけど、観光の要望とかではないんですか?」
「……戯言です、お気になさらず。もう少し小声で話すよう言っておきますから」
そう言った後すぐにセイカはロシア語でアキに何かを伝え、アキはそれから小声で話すようになった。しかしずっとセイカに何か話し続けている。セイカがほとんど返事をしていないのが気になる、アキは一体何を話しているのだろう。
「今日は水月ら帰るみたいやし、はよ行かなな。俺準備してくるわ、水月らもサンちゃんらも準備しといてな」
「は~い。行こ~兄貴ぃ」
「はいはい……」
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