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お酒は苦手
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雑炊も食べ終え、満腹になった俺は後片付けを手伝った後和室の隅でくつろいでいた。リュウの祖父と父、そしてサン達三兄弟は晩酌の準備をしている。
「……フタさんとヒトさん飲めないんじゃなかったっけ」
サンから聞いた情報をボーッと思い出していると、ヒトがこっそり水道水を汲んでくるところを目撃した。フタはサンが「兄貴はお酒ダメなんだ」とちゃんと断り、梅ソーダジュースをもらっていた。
「サン……晩ご飯の時もヒレ酒飲んでたなぁ、大丈夫かな」
いくら酒に強いからと言って大量に飲んでいい訳はない。注意しておこうかなと悩む俺の元にアキがやってきた。
「アキ? どうした?」
「……にーにぃ」
「ん?」
「えっちするです」
「ちょっ……! だ、大丈夫か……しーっ、な。しー……」
人差し指を立てて口に当てつつリュウの家族の様子を確認し、今のアキの発言が誰にも聞かれていないことを確認する。
「ふぅ……どこでしようか? 防音性の欠片もない造りの家だから青姦かなって思ってたけど、蚊に刺されそうだし……家広いし、空き部屋借りよっかな。リュウ呼んできてくれ、場所探してもらおう」
リュウを呼び付け、誰も来ないだろう空き部屋に案内してもらった。少々ホコリっぽかったが、障子を開け放って風を通すと随分マシになった。
「ほな、俺おとんらにお酌してくるわ」
「……俺は通訳係として残るぞ」
「その心は?」
「酔っ払い苦手……」
酔いを深めていく大人達と同じ空間に居るのは嫌だったらしいセイカを残し、リュウは彼らの元へ戻って行った。彼のコミュ力なら酔っ払いの相手もなんのその、なのだろう。
「いやぁ……尊敬するわぁ」
「にーにぃ、ぼくー……お尻? うずーうず、するです。にーにぃ、治すする、早くするです」
「すぐさま治療に移らせていただきますぅ!」
ローターを長時間入れっぱなしにしてあった後孔は普段以上に熱く、キツく、うねっていた。彼氏の実家の片隅で、別の彼氏と、それも弟と野性的なセックスに耽る。それは酷く背徳的な時間で、目の前のこと以外全て忘れてしまうような快楽に酔った。
アキの中に何発出したのだろう。浴室のタイルを汚す白濁液の量を見て思わず笑いそうになった。
「んっ……ん、ぅうっ…………はぁ……」
後孔をヒクヒクと震わせて精液を吐き出したアキはくったりと俺にもたれ、目を閉じた。流石のアキもあれだけイけば体力が尽きるのかな? なんて思っていた俺はやっぱりまだまだアキのことを理解出来ていない、そう思ったのは風呂を上がり用意された寝室に入るなりセイカを背に乗せて腕立て伏せを始めたアキの姿を見た時だった。
「……筋トレすんの? マジ? あんなにヤったのに? 俺下半身周り力入れるとプルプルするんだけど」
「筋トレしないと寝れないって……風呂は俺が入る時に一緒に軽くシャワー浴びるってさ」
「そ、そうか……ちゃんと髪乾かせって言ってやってくれ。俺ちょっとリュウとかの様子見てくるから」
もう眠ってもいい時間帯だが、せっかくの旅行だしアキはまだ眠らないみたいだ。俺も酔っ払いの相手は苦手だが、リュウとサンとフタの様子を見たい。
「失礼しま~す……」
もしリュウが眠がっていたら連れ出してやらないとな、なんて考えていたけれど大人達に囲まれたリュウは楽しそうに笑っていた。眠そうになんてしていないし、酔っ払いの相手を苦痛にしている様子もない。
「……フタさん? 大丈夫ですか?」
二つ折りにした座布団を枕にしてフタは横になっていた。眠りはしていないようだ。時折苦しそうに唸りながら寝返りを打っている。
「なぁ……サン、フタさんどうしたんだ?」
「梅ジュースと梅酒間違えちゃったんだよ。フタ兄貴は飲むとすぐ吐くからなぁ……ぁ、でも今日は吐いてないや。寝込んでるだけ」
「苦しそう……何杯飲んだの?」
「一口」
「一口でこれ!?」
フタの一口がどれほどの大きさかは知らないし、酒をどれくらい飲めば人間がどうなるのかなんで全く知らないけれど、たった一口で寝込むなんて物理的におかしいと思う。
「なんか、酒が? 酔いが? 回るって言うじゃん。一定量飲まないと身体に回らなくない? 毒とか麻酔とかそうじゃん」
「んなこと言われてもなぁ~」
「なっとるやろがい、って訳だ。まぁ確かにこの上ない証拠だね」
酔い潰れた恋人を介抱する、一度体験してみたかったシチュエーションだ。俺はフタの隣にそっと正座をした。
「フタさん、大丈夫ですか?」
とはいえ、リュウの家族が居るこの部屋ではあまり恋人らしいことは出来ない。
「ん~……」
「……あんまり話しかけない方がいいかな?」
「知らな~い」
「背中とかさすったら……吐くかなぁ」
「ほっとけば?」
サン、意外と冷たいとこあるよな……まぁ下手に構うのもよくないのだろうけど。
「みつきぃ……?」
気分が悪い時は心細くなるものだ。傍には居よう。
「はい、水月ですよ。フタさん、大丈夫ですか?」
「なんかねぇ……頭ぐらぐらして~、吐きそぉ……」
「何かして欲しいことあります?」
「ん~……? これ、枕低くてぇ……やだ」
もう一枚座布団を持ってこようか、使っていない座布団はどこだろうと辺りを見回すと膝に何かが乗った。
「んぁ~……ちょい、高い」
「あ……じゃ、じゃあこれくらいでどうです?」
足を伸ばしてみるとフタは俺の太腿に頭を置き直し、ゆっくりと頭を揺らして寝心地を確かめ始めた。
「ん~…………いい感じ」
「そうですか? よかった。ゆっくり休んでくださいね」
膝枕はアウトだろうか、セーフだろうか。この場合のアウトとは恋人同士なのかと疑われることだ。
(……机に隠れて見えなさそうですし、おつまみ持ってきたりするのはリュウどのの役目っぽいですし、トイレに立っても行くのは反対側……うむ! 見られる心配はありませんな)
膝枕がアウトだろうがセーフだろうが、見られなければ判定すら起こらない。安心した俺の耳にガシャンっと机に何かがぶつかった音が聞こえた。
「な、何っ?」
「ボクに聞かないでよ見えてないんだから」
「いや俺もサンが邪魔でそっち見えなくて……デカいからサン」
「……ん」
サンは身体を右側に傾けてくれた。机に並んだ多くのグラス、おつまみ、スナック菓子、机に額を置いているヒト。
(ヒトさんが頭をぶつけた音、だったんですかな?)
急に意識を失いでもしたのかと不安になったが、ヒトがゆっくりと頭を上げたのを見てホッと胸を撫で下ろした。
「……泣いてる?」
「え? 誰が?」
「ヒトさん……」
「マジ? あに」
サンがヒトに声をかけようとしたその時、ヒトが再び机に額を打ち付けた。
「……んで、なんでフタばっかり……俺だって、俺だってがんばっでるのにぃっ!」
大声を上げながら顔を上げ、また頭を落として机にガンッと額をぶつけた。リュウの祖父や父の様子を伺ってみたが、彼らは平気な顔で酒をあおっている。酔っ払いにはよくある行動なのだろうか。
「ヒトさんってお酒ダメなんじゃ……?」
「うん。フタ兄貴ならともかくヒト兄貴が間違えるとも思えないんだけどなぁ~」
「サンちゃん色々飲みたい言うてグラスよぉさん持ってこさせてちょっとずつ入れてもうてたやん」
リュウの祖父と父の後ろには日本酒や焼酎などの瓶が立ち並び、サンの前には多くのグラスがあり、サンの隣にヒトが座っている。ヒトのグラスとサンの前に並んだグラスは同じ見た目で、日本酒は水と同じく透明。間違えるのも仕方ない。
「ゆきやさんのクソやろぉ……ちくしょう……クソっ、死ね……ちくしょう…………クソ、水……」
フラフラと立ち上がったヒトはグラスを持たず、手ぶらのまま台所へ向かった。途中で戻ってくるか新しくグラスを持って来るか、心の中で賭けでもして暇を潰そうかな。
「……フタさんとヒトさん飲めないんじゃなかったっけ」
サンから聞いた情報をボーッと思い出していると、ヒトがこっそり水道水を汲んでくるところを目撃した。フタはサンが「兄貴はお酒ダメなんだ」とちゃんと断り、梅ソーダジュースをもらっていた。
「サン……晩ご飯の時もヒレ酒飲んでたなぁ、大丈夫かな」
いくら酒に強いからと言って大量に飲んでいい訳はない。注意しておこうかなと悩む俺の元にアキがやってきた。
「アキ? どうした?」
「……にーにぃ」
「ん?」
「えっちするです」
「ちょっ……! だ、大丈夫か……しーっ、な。しー……」
人差し指を立てて口に当てつつリュウの家族の様子を確認し、今のアキの発言が誰にも聞かれていないことを確認する。
「ふぅ……どこでしようか? 防音性の欠片もない造りの家だから青姦かなって思ってたけど、蚊に刺されそうだし……家広いし、空き部屋借りよっかな。リュウ呼んできてくれ、場所探してもらおう」
リュウを呼び付け、誰も来ないだろう空き部屋に案内してもらった。少々ホコリっぽかったが、障子を開け放って風を通すと随分マシになった。
「ほな、俺おとんらにお酌してくるわ」
「……俺は通訳係として残るぞ」
「その心は?」
「酔っ払い苦手……」
酔いを深めていく大人達と同じ空間に居るのは嫌だったらしいセイカを残し、リュウは彼らの元へ戻って行った。彼のコミュ力なら酔っ払いの相手もなんのその、なのだろう。
「いやぁ……尊敬するわぁ」
「にーにぃ、ぼくー……お尻? うずーうず、するです。にーにぃ、治すする、早くするです」
「すぐさま治療に移らせていただきますぅ!」
ローターを長時間入れっぱなしにしてあった後孔は普段以上に熱く、キツく、うねっていた。彼氏の実家の片隅で、別の彼氏と、それも弟と野性的なセックスに耽る。それは酷く背徳的な時間で、目の前のこと以外全て忘れてしまうような快楽に酔った。
アキの中に何発出したのだろう。浴室のタイルを汚す白濁液の量を見て思わず笑いそうになった。
「んっ……ん、ぅうっ…………はぁ……」
後孔をヒクヒクと震わせて精液を吐き出したアキはくったりと俺にもたれ、目を閉じた。流石のアキもあれだけイけば体力が尽きるのかな? なんて思っていた俺はやっぱりまだまだアキのことを理解出来ていない、そう思ったのは風呂を上がり用意された寝室に入るなりセイカを背に乗せて腕立て伏せを始めたアキの姿を見た時だった。
「……筋トレすんの? マジ? あんなにヤったのに? 俺下半身周り力入れるとプルプルするんだけど」
「筋トレしないと寝れないって……風呂は俺が入る時に一緒に軽くシャワー浴びるってさ」
「そ、そうか……ちゃんと髪乾かせって言ってやってくれ。俺ちょっとリュウとかの様子見てくるから」
もう眠ってもいい時間帯だが、せっかくの旅行だしアキはまだ眠らないみたいだ。俺も酔っ払いの相手は苦手だが、リュウとサンとフタの様子を見たい。
「失礼しま~す……」
もしリュウが眠がっていたら連れ出してやらないとな、なんて考えていたけれど大人達に囲まれたリュウは楽しそうに笑っていた。眠そうになんてしていないし、酔っ払いの相手を苦痛にしている様子もない。
「……フタさん? 大丈夫ですか?」
二つ折りにした座布団を枕にしてフタは横になっていた。眠りはしていないようだ。時折苦しそうに唸りながら寝返りを打っている。
「なぁ……サン、フタさんどうしたんだ?」
「梅ジュースと梅酒間違えちゃったんだよ。フタ兄貴は飲むとすぐ吐くからなぁ……ぁ、でも今日は吐いてないや。寝込んでるだけ」
「苦しそう……何杯飲んだの?」
「一口」
「一口でこれ!?」
フタの一口がどれほどの大きさかは知らないし、酒をどれくらい飲めば人間がどうなるのかなんで全く知らないけれど、たった一口で寝込むなんて物理的におかしいと思う。
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「なっとるやろがい、って訳だ。まぁ確かにこの上ない証拠だね」
酔い潰れた恋人を介抱する、一度体験してみたかったシチュエーションだ。俺はフタの隣にそっと正座をした。
「フタさん、大丈夫ですか?」
とはいえ、リュウの家族が居るこの部屋ではあまり恋人らしいことは出来ない。
「ん~……」
「……あんまり話しかけない方がいいかな?」
「知らな~い」
「背中とかさすったら……吐くかなぁ」
「ほっとけば?」
サン、意外と冷たいとこあるよな……まぁ下手に構うのもよくないのだろうけど。
「みつきぃ……?」
気分が悪い時は心細くなるものだ。傍には居よう。
「はい、水月ですよ。フタさん、大丈夫ですか?」
「なんかねぇ……頭ぐらぐらして~、吐きそぉ……」
「何かして欲しいことあります?」
「ん~……? これ、枕低くてぇ……やだ」
もう一枚座布団を持ってこようか、使っていない座布団はどこだろうと辺りを見回すと膝に何かが乗った。
「んぁ~……ちょい、高い」
「あ……じゃ、じゃあこれくらいでどうです?」
足を伸ばしてみるとフタは俺の太腿に頭を置き直し、ゆっくりと頭を揺らして寝心地を確かめ始めた。
「ん~…………いい感じ」
「そうですか? よかった。ゆっくり休んでくださいね」
膝枕はアウトだろうか、セーフだろうか。この場合のアウトとは恋人同士なのかと疑われることだ。
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膝枕がアウトだろうがセーフだろうが、見られなければ判定すら起こらない。安心した俺の耳にガシャンっと机に何かがぶつかった音が聞こえた。
「な、何っ?」
「ボクに聞かないでよ見えてないんだから」
「いや俺もサンが邪魔でそっち見えなくて……デカいからサン」
「……ん」
サンは身体を右側に傾けてくれた。机に並んだ多くのグラス、おつまみ、スナック菓子、机に額を置いているヒト。
(ヒトさんが頭をぶつけた音、だったんですかな?)
急に意識を失いでもしたのかと不安になったが、ヒトがゆっくりと頭を上げたのを見てホッと胸を撫で下ろした。
「……泣いてる?」
「え? 誰が?」
「ヒトさん……」
「マジ? あに」
サンがヒトに声をかけようとしたその時、ヒトが再び机に額を打ち付けた。
「……んで、なんでフタばっかり……俺だって、俺だってがんばっでるのにぃっ!」
大声を上げながら顔を上げ、また頭を落として机にガンッと額をぶつけた。リュウの祖父や父の様子を伺ってみたが、彼らは平気な顔で酒をあおっている。酔っ払いにはよくある行動なのだろうか。
「ヒトさんってお酒ダメなんじゃ……?」
「うん。フタ兄貴ならともかくヒト兄貴が間違えるとも思えないんだけどなぁ~」
「サンちゃん色々飲みたい言うてグラスよぉさん持ってこさせてちょっとずつ入れてもうてたやん」
リュウの祖父と父の後ろには日本酒や焼酎などの瓶が立ち並び、サンの前には多くのグラスがあり、サンの隣にヒトが座っている。ヒトのグラスとサンの前に並んだグラスは同じ見た目で、日本酒は水と同じく透明。間違えるのも仕方ない。
「ゆきやさんのクソやろぉ……ちくしょう……クソっ、死ね……ちくしょう…………クソ、水……」
フラフラと立ち上がったヒトはグラスを持たず、手ぶらのまま台所へ向かった。途中で戻ってくるか新しくグラスを持って来るか、心の中で賭けでもして暇を潰そうかな。
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