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大阪観光のもう一グループは

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リュウの家族と話していたアキとセイカを呼び、リュウの家族に再度挨拶をしてから玄関へ向かった。前髪の一部を湿らせているリュウは既に靴を履いている。

「すごく気まずかった……」

「せやろなぁ、すまんことしたわ。堪忍なセイカ」

「あぁ、いや……ぁ、クマ、部屋に置いてきちゃった」

「あー、クマさんは置いて行こう? な? お土産とか色々買うだろ? 大荷物になっちゃうよ」

渋々と言った様子でセイカは頷き、靴と義足を履いた。

「……鳴雷、俺歩いて行っちゃダメ? 歩いた方がリハビリになるって医者が言ってたし、ずっと座ってたらただでさえない筋肉が余計に落ちちゃう」

「えー……」

セイカが歩けない場所やセイカが疲れた時は彼をおぶらなければならない。車椅子に座らせている方がよっぽどマシだ。それに車椅子は買った物などを置いたり引っ掛けたりしやすい。

「一応持ってかないか? ほら、足痛めたりとか何かあった時のためにさ」

「邪魔じゃない?」

「セイカが座らないなら買った物とか座らせとくよ」

「……買い物カート替わりかよ。そっか、うん……じゃあそうする」

納得してくれたようだ。俺は一安心し、リュウと共に外へ出た。殴り付けてくるような日差しが苦しい。

「山下りたら更に暑いんだろうなぁ……」

コンクリートではなく土の上だということ、木陰があるということ、街に出たらそれらが一気に失われる。

「わ、ぁっ……! あ、秋風ぇ……」

《だから言っただろうが、こんな砂利坂道スェカーチカの繊細な御御足には合わねぇって》

セイカは坂道で転びかけてアキに抱えられていた。

「車椅子乗る?」

「車椅子で坂道行くの怖いからやだ……」

お姫様抱っこをされているセイカはリュウの提案を嫌がり、アキの首にぎゅっと抱きつく。俺がおんぶでもしていたら遠慮してすぐに降りたがるくせに、アキには随分甘えているじゃないか。

(やっぱりわたくしには虐めた負い目みたいなのを未だに感じてらっしゃるのでしょうか)

その点アキには、むしろ普段通訳をしてやっているという恩がある。甘えやすいのにも納得だ。俺はどうしたらセイカにリラックスしてもらえるのだろう。

「電車乗んで」

「あぁ、うん……なんか、この辺はあんまり大阪っぽさないなぁ」

「大阪ぽさてなんやねん」

「……何だろう」

なんて中身のない話をしながら電車に乗る。あまり混んでいない。

「どこ行くんだっけ?」

「新世界。ほんまは天王寺くらいにしたかってんけど、まぁもう一グループの方が大人やし大丈夫やろ、昼間やし」

「……治安悪いのか?」

「いや、今はそうでもあれへんやろけど……おとんにもおかんにも、がっこのせんせーにまで脅されとったからなぁ……あんま行きたないんよ」

「へぇー……大阪の子はみんなあの辺で遊んでるもんだと思ってたよ、アキバみたいな感じでさ」

「どれかっちゅうと歌舞伎町ちゃうん」

それは……リュウが気乗りしないのも無理はないな。俺も歌舞伎町案内しろとか言われても困るし嫌だもん。

「まぁジャンジャン横丁くらいで勘弁してもらうわ」

「何それ」

「商店街。狭ぁて長ぁて安ぅて美味いねん」

「おっ、それだよそれ、大阪っぽさ! B級グルメの街だよな」

「……合うとんねんけど何か腹立つなぁその言い方」

「えっなんで。ごめん」

駅を過ぎる度乗車率が段々と増えていく。リュウに着いて電車を降り、駅を出るとリュウの家周りとは様変わりした街の様子が広がっていた。

「この辺で待ち合わせしとってんけど……どこやろ」

何となく誰だか分かっている待ち合わせ相手を探してキョロキョロと首を回すリュウより先に、俺は彼らを見つけてしまった。とても、目立っていたから。

「どこ行こうとしてんだてめぇ!」

「喉乾いたから自販機に~……」

「さっき買って俺の鞄に突っ込んだだろクソバカが! いい加減にぶち殺す……ちょっと待ってくださいアイツどこ行ったんだクソっ! なんなんだよてめぇらは!」

二メートル弱の男が二人騒いでいたら、そりゃ目立つ。そっと指を差すとリュウは照れくさそうに笑い、彼らの元へ走った。

「すんませんお待たせしました~」

「早く探して……あ、あぁ、いえ、そんなに待っていませんよ。さっきの電車で着いたばかりです。えぇと、天正さん……でしたね」

フタの胸ぐらを掴んで揺さぶっていたヒトは慌てて表情を整えた。

「……こんにちは」

「鳴雷さん、あなたも来ていたんですね。天正さんをサンにご紹介いただいたそうで、ありがとうございます。サンは旅行が好きですから地元の方に案内していただけるというのは本当に」

「サンちゃん……? あっ、ヒト兄ぃ、サンちゃん居ないから俺探してくる」

「待て待て待て行くな! てめぇはじっとしてろ!」

「サンさん居ないんですか?」

「サンは好奇心旺盛ですぐにどこかに行ってしまうんです……すみません、すぐ電話をかけますから」

ヒトはスマホを取り出し、隅の方へ避けた。ヒトに手を離されたフタは俺を見つけてパァっと笑顔になる。

「みつきぃ! みつき居るじゃん!」

満面の笑顔で俺に抱きついたフタは刺青隠しのためなのか薄手のパーカーを着ている、ちなみにヒトはいつも通りスーツ姿だ。

「あ、はい……俺も大阪旅行中なんです。弟……アキ達も一緒ですよ」

「そうなんだぁ~。みつきの弟……あれ? サンちゃん居ない。ちょっと待っててね、探してくる」

俺からするりと腕を離し、フラフラと人混みの中へ消えていく。

「その場から動かず手を挙げて杖を鳴らすか指を鳴らすか何かして……あっフタ! 鳴雷さんフタ捕まえてください! 早く!」

あまりにも自然で素早い動きだったため見守ってしまっていた。俺は慌ててフタを追い、ヒトの前に連れてきた。

「居ましたか、よかった……ありがとうございます。サンには留まるように言っているので、探すのを手伝っていただけますか? 手を挙げて音を鳴らすよう言っているので、直ぐに見つかると思います」

「みつき一人で来たの~?」

「分かりました、サンさんを……え? ゃ、弟達と一緒です。そこの黒いのが弟ですよ」

「うわ真っ黒~…………あれ、サンちゃん居ない、探してくる」

すっとどこかへ行こうとするフタの手をヒトが引っ掴む。

「…………鳴雷さん」

「は、はいっ、俺フタさんと手繋いでおきましょうか!」

「……あなたと約束してから一度も殴っていませんよ、今日も……コイツがどれだけウロウロしても、コイツのせいで電車に乗り遅れても」

「あっ……ありがとう、ございます? 我慢強いですねっ、流石です。その調子でお願いします!」

満足そうに微笑んだヒトはフタを俺に任せてサンを探し始めた。リュウもセイカも辺りを見回している、けれど俺はサンの捜索に全力を注げない。気を抜けばフタは俺の手を振りほどいてどこかへ行ってしまう。手のかかる人だ。
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