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発言の印象は人による

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大阪に着いた! とドキドキワクワクしながら荷物を持って新幹線を降りる。しかし、駅内では別の県……いや、府らしさなどは感じない。

「あれ……ここもしかしてエレベーターないのか?」

リュウの実家があるのは大阪の真ん中の方の都会などではなく、端っこの方の高いビルなどがないところだ。この駅もそれほど大きなものでも、新しいものでもない。

「しょうがないなぁ……セイカ、車椅子ごと運ばれるのと別々に運ばれるのどっちがいい?」

「別々」

即答だな。

「よし、じゃあアキ、車椅子頼むよ」

セイカの脇に手を通して立ち上がらせ、お姫様抱っこで運んでやろうとするとセイカは抱かれるのを嫌がる犬猫のように手を突っ張った。

「セイカ……? どうしたんだ? 首に手回してくれよ」

「秋風がいい」

「え……い、いやいやいや何心配してんだよ、俺に任せてくれよ。俺だってほら、筋肉たっぷり安定感抜群」

「秋風がいい」

「落とさないって! 信用してくれよ大丈夫だって!」

「秋風がいい」

「アキはほら、さっきイっちゃったから手に力入らなかったりするかも」

「秋風がいい」

決して譲らない強靭な意志のこもった視線で真っ直ぐに射抜かれ、俺は泣く泣くセイカを手放し車椅子とセイカの鞄を持って階段を下りた。

《兄貴が運んでやりたそうにしてたぜ?》

《秋風がいい……》

《そうかい、嬉しいぜお姫様。クマ落とすなよ》

新幹線内で一度絶頂を迎え、今もローターを後孔内に仕込んであるというのに、アキは平気な顔でセイカを抱いて下りてくる。

「お……? 水月~ぃ、こっちや~!」

改札を抜けてすぐ元気な声で呼ばれた。ぶんぶんと大きく手を振っている金髪の美少年は、ご存知俺の彼氏のリュウだ。チャームポイントは上京しても抜けない方言とドMなところ。

「リュウ!」

「よぉ来たなぁ、水月。アキくんにせーか、なんや久しぶりな気ぃするわ」

「ぁ……うん、久しぶり、天正」

《おひさ~。下ろすぜスェカーチカ》

アキは車椅子にセイカを座らせ、ポンポンと頭を撫でた。セイカは照れくさそうにテディベアを抱き締め、俯きながらもアキを見上げる。

「……っ、そういう可愛いの俺にもくれよぉ!」

「おわっ、なんやいきなり……急に大声出さんといてぇや水月ぃ、びっくりするわ」

「あ、あぁ……ごめん。アキには照れ顔上目遣いとかいう破壊力抜群の仕草するくせに俺には呆れた顔ばっかして抱っこしようとしても突っ張るから……つい」

「な、鳴雷……? 俺が悪いの? ごめんなさい……俺何したっけ、直すから教えて……?」

あぁしまった、セイカに謝らせてしまった。セイカは何も悪くないのに。

「あぁごめんなセイカ、俺にも上目遣いして欲しくて狂っただけだから気にしなくていいんだ。急に奇声上げたり変態発言したりお触りしたりするから俺には可愛いメス顔してくれないんだよな……」

「メス顔て……そんなん言うからやで、なぁせーか。っちゅうかあっついからはよ俺ん家行こ、歩きながら話すで」

「そ、そんな顔してない……」

「あぁ悪い。道案内頼むよ。いいか、メス顔には二種類あるんだ。一つはナカイキとかした後の、雌の快楽味わってる顔……もう一つは男にキュンとときめいた時の顔だ! セイカはアキに後者の顔ばっか見せてるアキズルいぃぃ……どーせ俺はスマートなイケメンじゃありませんよ変態ハンサムこと変サムですよちくしょう!」

セイカとリュウは困ったように互いの顔を見合わせる。

「……別に秋風そこまでスマートじゃないぞ? ロシア語だからお前ら分かってないだけで、だいぶ変態発言多いって言うか……鳴雷と同じくらいだって」

「じゃあ何でアキにはスマートなイケメンにときめいた顔するんだよ……」

「えぇ……分かんない、してるつもりないし」

「水月とアキくんやったら同じこと言うとっても印象ちゃうんちゃう? ほら……イタリアのおじさまが言うたらナイスなナンパやけど、日本のおっさんやったらキッショいセクハラみたいな」

「……みたいなって言われても意味分からんぞそのたとえ」

「あー……」

「分かってるし共感されてる!? じ、人種差別だぁ……! 俺は所詮極東の猿ってことかよセイカぁ!」

「そ、そんな酷いこと言ってないし俺も日本人だし秋風も半分日本人だろ! でも、何だろ。秋風にケツ触られながら弾力について語られても「もぉ~」で済ませられるけど、鳴雷にされると生々しいって言うか……鳴雷は興奮の仕方が気持ち悪いって言うか、秋風はそうじゃないから……」

生々しい? 生々しい!? そんな感覚的なこと言われても改善のしようがないじゃないか。

「で、でも何よりは……その、鳴雷相手だと緊張して、照れちゃって……照れ隠しで、その、やな態度取っちゃってる…………ごめんなさい。鳴雷が好きだから……その、素直に、なれなくて」

「ンギャワユイッ! どんどん蔑んだ目で見てくれ! アキにはメス顔晒してくれ! NTR感あって興奮するしな……! ふぅ……」

《何の話してるか知らねぇけどそろそろ終わったっぽいな、兄貴今度は何をイカレてたんだ?》

《……俺が秋風にときめいた顔してるって難癖つけられてたんだよ、そんなつもりないのに》

《そんな話してたのか。まぁしゃーない、スェカーチカが俺に向けてくれる可愛い顔は、独り占めしたくなる魅力がたっぷりだ。兄貴としちゃ欲しくてたまらねぇんだろうぜ、俺はもちろん渡す気はないがな》

《そんな顔してないのに……》

「……その顔ぉ! 見たか? 見たかリュウ! 今のセイカのメス顔を!」

ビシッと人差し指を突き付けるとセイカはビックゥッと大きく身体を跳ねさせ、目を見開いた。

《スェカーチカがびっくりしてんだろうがバカ兄貴!》

「えぇ、知らん、俺信号見とった」

「信号なんか見なくてもピヨピヨ鳴るだろ? もぉ~、証拠だったのになぁ~…………ま、いいや。今日のメインはお前……」

同じ家に住んでいるのだから、セイカをときめかせてあの顔を俺に向けてもらうのはいつでも出来る。今はリュウに構おう。そう思ってリュウの腰を抱
こうとしたのだが、その手を他でもないリュウによって払われてしまった。

「……ぇ」

シュカならともかく、Mっ気が強く俺に逆らうことの少ないリュウに手を払われるなんて、それも久しぶりに会う今日に拒否されるなんて、予想していなかった。

「…………地元やねん。変な噂立つんは困る、すまんけど友達の距離感で頼むで」

「あ、あぁ……悪い。配慮が、足りずに……」

「さっきは人居らんかったから止めんかったけど、あんまり変なこと大声で言うんもやめてな。ウチでも。俺ん家防音のぼの字もあれへんから」

「あぁ、うん……」

旅行だからとはしゃぎ過ぎてしまった。未知の地への旅行であると同時に、リュウのご両親に初めて会う日でもあるのだ。まともな人間ぶらなければ。
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