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動かさなくても

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精液の匂いで発情させておきながら、おねだりを聞きたいがために釣り気分でセイカと向き合う。察しの悪いフリをしているとセイカは深いため息をつき、それまでの熱っぽい瞳とは違う呆れたような視線を俺に向けた。

「はぁ……わざとだろお前、性格悪いことするよな……」

「……何のことだ?」

真っ直ぐに俺を睨むジト目にたじろぎつつ、萌えつつ、聞き返す。

「…………勉強終わったらヤるんだと思ってた、から……ケツって言うか、腹って言うか……すっごい疼いてて。その……良ければ、セックス……したい、です」

「ヒャッホウ! 結構しっかり言ってくれたな嬉しいぞ!」

「言うまで粘るだろお前……」

「よく分かってるじゃないか。次は俺が待ってるっての気付かせないで、自然なおねだりが聞きたいなぁ」

「……お前が言わせようとしてるって分からなきゃ我慢するよ、多分」

「だから言わせたいんじゃないか」

俺の意図と分からずとも、焦れて恋しがってそれを素直に口に出来たなら、それはセイカが遠慮を捨てたということだ。俺はセイカにもっと甘えて欲しい、ワガママになって欲しい、まず自分を勘定から外すような自己犠牲的な考え方をやめさせたい。

「セイカ、俺はセイカにお願いされるの嬉しいんだ。負担とか、迷惑とか、そんなふうに考えられて遠慮されると寂しいんだよ」

「…………早く、しよう」

セイカは自ら服を脱ぎ始めた。俺はそんなセイカの手を掴んで止め、肩を抱いて唇を重ねた。

「ん……可愛いよ、セイカ。こんなに可愛いんだからセイカは愛されて当然なんだ、だからもっとワガママになってくれていいんだよ」

「……十分なってる」

「そうは見えないんだよなぁ……まぁ、ゆっくり分かってくれればいいよ。今はほら、セイカ、ベッドに……」

押し倒したセイカの服を脱がせていく。同時に義足も外し、膝から上で切断された短い左足を晒させる。

「…………お前も脱げよ」

「俺の裸見たい?」

「……別に」

顔ごと目を逸らしたセイカに微笑みかけながら服を全て脱ぎ、見た目重視で鍛えた筋肉の美を見せつける。

「…………ぁ、シャツくれよ」

「俺目の前に居るのに?」

「寝る時クマに着せる」

「……雑菌とかあるから一日以上はダメだからな、そういうの。特に夏場は」

雑に畳んだシャツを枕元に置き、その手でローションのボトルを取る。まずは俺の指を濡らし、セイカの会陰をくすぐる。

「んっ……は、やくっ……」

「前戯たっぷりしたいけど今日は焦らしちゃったからな、すぐ入れるよ」

ほぐす必要のない緩い穴にローションを注ぎ、人差し指と中指をゆっくりと沈めて柔く吸い付く腸壁にローションを塗り込んでいく。

「……っ、く……んっ、ふ……ぅ、あっ」

「顔隠さないで、よく見せて……」

空いている左手でセイカの両腕を押さえる。長さの違うセイカの両腕を同時に押さえるのにはコツがある、まず左手を頭に添わせるようにして右まで引っ張り、左手のひらに右腕の先端を乗せ、その上から押さえることで片手での両腕拘束が可能になる。

「ぁ……!」

艶やかな表情を隠せなくなったことでセイカの顔は更に赤くなる。わざと音を立てて掻き混ぜてやるとセイカは恥ずかしそうに顔を二の腕の下に潜り込ませようとした。

「ん、んんっ……ぁっ?」

手を引くと何の抵抗もなく指は抜けた、他の彼氏ならしゃぶりついてきて抜けた瞬間にはにゅぽんっと音がするだろう。

「鳴雷……」

「……セックス中は何て呼ぶんだっけ?」

「えっ? ぁ……み、水月」

「よく出来まし、たっ……!」

腰に右手だけを添え、一気に結腸口手前まで挿入する。ほとんど抵抗なく楽に入った、柔らかい肉に包まれている感覚はとても心地いい。

「んっ……くぅゔっ! ふっ……ぅう……水月、水月ぃ……も、顔隠さないから……手離して」

「あぁ、ごめんないつまでも押さえっぱなしで」

パッと手を離し、左手も腰に下ろす。両手でしっかりとセイカの腰を掴む。まだまだ痩せぎすだが入院していた頃に比べれば随分肉付きがよくなった、骨盤の気配が少し遠くなっている。

「……っ、ゔ……なるかっ、ぁ、水月っ、水月……もうそこ入れるのっ?」

「お腹が疼いてるんだろ?」

「そう、だけどぉっ……んっ、く、ぅ、ゔぅっ……! ぁ、あっ! 揺するのぉっ、だめ……!」

イジメっ子共に売春をさせられたセイカを買った変態親父共はどいつもこいつも短小だったようで、後孔全体はとても緩いのに結腸口は緩くない。陰茎で丁寧に小突いてセイカをその気にさせ、快楽を送ってやらないと開いてくれない。

「お、なかのっ、奥ぅっ……とちゅとちゅって、ゃだっ、だめ、ぁあぁああっ……! 水月、水月ぃっ……」

「また顔隠してる……それダメだって言ったろ?」

「あっ、ごめんなさい、ごめんなしゃっ、ぁんっ! 突くのっ、ゆっくり突くのぉっ、だめ、だめっ、じわじわくるっ、来ちゃうっ、イっちゃうっ!」

腕の置き場がないのかセイカはやはり顔を隠してしまった。しかし、俺が上体を倒して顔を近付けると彼の両腕は俺の首に回った。

「……可愛いことするなぁ、セイカは……セイカ、ちょっと口閉じてくれ、舌噛むと危ないから」

「くっ、ちぃっ? んっ……!」

きゅっと口を閉じたセイカの背に腕を回し、素早く持ち上げつつ起き上がる。セイカはとても軽く、対面座位に移るのは簡単だった。

「あっ……!? ぁ、あぁあああっ!」

「んっ、自重で入っちゃったな……痛くないか? ふふ……奥、すごくキツい……気持ちいいよ」

対面座位に移ると同時にセイカの結腸口をぐぽっ、と開かせて亀頭がその奥へ押し入った。足をピンと伸ばし、精液を漏らし、口と目を大きく開いて硬直してしまったセイカの頬や鼻先にキスを繰り返しながら愛を囁いた。

「はっ、ぁ、ああぁっ……イっちゃっ、た……ゃ、あぁっ……待って、待ってぇっ、まだ気持ちぃっ、まだ気持ちぃからぁっ、動かないでっ、またイっちゃう……!」

「動いてないよ?」

俺は少しも動いていない。セイカが姿勢を崩さないように優しく抱き締めているだけだ。それなのにセイカは動かないでと懇願しながらヘコっヘコっと不器用に腰を揺らし、ほどなくして二度目の絶頂を迎えて仰け反った。

「あっ、あぁあっ! イっちゃうっ! イっぢゃうぅっ! イっ、ん、くっ、ぅううぅっううんっ!」

「んっ……! キツ……締め付ける上に震えるなんて、やってくれるよなぁ」

「ふっ、ふぅっ、ふゔぅうぅっ……! だめぇ……動い、ちゃっ……また、イっちゃう、やだ、やぁあ……!」

「俺は動いてないよ、セイカが腰揺らしちゃってるんだ。可愛いなぁ」

「とめ、ひぇええっ……」

そう言われても、腰を強く掴んだところで完全に動きを止めるのは不可能なのだ。そもそも腰の揺れを止めたところでセイカの腸壁は、特に結腸の奥は、うねって俺の陰茎を自らしゃぶっている。

「ザーメンマスクがここまで効くとは……セイカ、匂いフェチに磨きがかかったんじゃないか?」

実験気分でセイカの顔に先程まで履いていてまだほんのりと温かい下着を差し出してみた。

「何、しっ……んんっ! んっ……」

セイカは俺の首に絡めていた左手で俺の下着をひったくり、股間部分に鼻を押し付けて大きく息を吸った。

「……っ、ふ……」

射精こそなかったものの一瞬強くなった後孔の締め付けと腸壁の痙攣は明らかに絶頂した証拠だった。
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