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またまたバズった

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俺と俺の彼氏達がメンバーであるグループチャットに送信された、ハルの言葉。それは俺のフタへの劣情を一時的に吹っ飛ばした。

『みっつんまたバズってる!』

俺はスマホを握り締め、すぐにメッセージアプリを開いた。ハルが送ってきた画像はあるSNSのスクショだった。投稿主は見知らぬ他人、内容は「国宝通り越して星宝級イケメンがお化け屋敷で腰抜かしてイケメンにお姫様抱っこされてた」というもの。添付された画像、いや、三角のマークがあるからこれは動画なのか? それにはジュラ村のお化け屋敷ことラプトル研究所の出口から出てきたばかりの俺とフタが映されていた。

『肖像権とかないんか?』

『前も盗撮写真バスってたっすね』
『それ馴れ初めなんで盗撮に文句言いにくいっす』
『ってかこの人サンさんのお兄さんすか?』

『俺知らないかも』

『こわい人』

『サンさんのお兄さんすよ』
『前会ったっす』
『パッと見怖いっすけど悪い人じゃないっすよ』

『新カレってこと?』
『デートより先に挨拶欲しいかな』

『出よったわ先輩風』

『うるさい』
『え』
『待って』
『やばい』

ハルの謎の短文連投に緊張感が高まる。他の彼氏達もそうなのか、先程まで通知音が最後まで鳴らないうちに次の音が鳴っていたのに今は静かだ。

『みっつんなんか名前バレてない?』

ハルが送ってきたのは俺の盗撮写真のリプ欄のスクショだ。すぐに拡大し、読んでみる。

『人の理を無視したイケメン。1D100』
『メッシュ入ってる方なんかデカくない?』
『腰抜かしてる方のイケメンみぃくんじゃない?』
『みぃくんイケメン以外の知り合い居ないのか』

ホントだバレてる! 一旦画像を閉じ、彼氏達のやり取りを見に行った。

『なんで名前バレてるん?』

『クラスメイトとかのリプっすかね』

『アンタらカミアの配信見てないの!?』
『みっつん前放送事故で映っちゃったの!』

『たいへん』
『収まりそうだったのに』

いや、彼氏達のやり取りを見ていても仕方ない。俺はハルのスクショからSNSで該当する呟きを探し当て、実際のリプ欄を覗いてみた。

『みぃくんて誰?』
『カミアの友達、前に生配信の事故で映った』

そんな会話に貼り付けられていた画像は、カミアの料理配信の際に誤って映り込んだ俺のものだった。やはり何十人何百人があの時のスクショを持っているんだ。もう消せない、本屋で盗撮されたものも遊園地で盗撮されたもの。

『消してください。カミアの配信見てないんですか。みぃくんのスクショ、キャプチャは削除願い出てます』

カミアファンか? いい子のファンは民度が高いものだな、ありがたい。

『盗撮ですよね? 犯罪ですよ』

本ツイにもこういう指摘のリプが増えてきたな。消すかもしれないし、今のうちに動画を見ておこう。

(お姫様抱っこで出てきた後、下ろされて……腰抜かして、肩借りてひょこひょこ歩き去って……めっちゃカッコ悪っ! 消せぇ~! 消せぇ~! ぅうぅ……なんてものが晒されてしまったんでしょう、泣きそうでそ)

唯一の僥倖は俺が盗撮者側に居るからフタの刺青が映らなかったことだな。タトゥーへの偏見は薄れつつあるとはいえ、トライバルに比べて和彫りはまだまだ反社の雰囲気が強い。カミアに妙な疑いがかかるのは避けるべきだ。

『このお化け屋敷知ってる、ラプトルに食われかけるヤツ。そんな怖くないぞ、腰抜かすとかwww』
『放送事故の後の配信に一回出てたけど吐いてたもんなみぃくん。クソ雑魚メンタル』
『残念過ぎるイケメン』
『そういうところが可愛い。マジでカミアとコンビ組んでくれないかな』

好き勝手言いやがって。

『男二人で遊園地来てんの?』
『高校生なら男友達同士でもあるんじゃない?』
『みぃくんに彼女居たら病むけど絶対居る』
『顔良いからモテるけど色々情けないから長続きしないタイプ』

好き勝手言いやがってぇ!

(もう見るのやめよ……しかし、どうしましょう。しばらく身を潜めたいところですが、明日はコミケなので行かなきゃなら兵衛なんですよな。コミケに来るオタクとカミアのオタクって層被ってませんよな? 一応変装を……はぁあ……なんでわたくしがこんな目に、ただちょっと顔が良いだけなのに)

スマホを置いて深いため息をつく。

「みつきぃ? どったの? 痛い? なんかいや?」

「え……ぁ、いや、ちょっと、嫌なことあって」

「俺なんかした?」

フタは不安そうな表情で俺の顔を覗き込む。これは口癖なのだろうか、意図せず人を怒らせてしまうことが多いのか? 可愛いけれど、哀しい口癖だ。

「フタさんは悪くないですよ。その……盗撮されてて、しかもそれバズっちゃってて……やだなぁって」

「……全部分かんなかった」

「全部! す、すいません分かりにくい言い方しちゃって……えっと、俺、知らない人に勝手に写真撮られたんです」

「カッコイイもんね」

フタも俺の顔が好きなのだろうか……

「しかもそれ、いっぱいの知らない人に広められちゃって……げ、芸能人みたいに、色んな人に顔知られちゃったかもなんです」

ちょっと盗撮されてバズっただけなのに、芸能人みたいになんて言うのは恥ずかしかったけれど、この言い方ならフタも理解してくれただろう。

「へー。嫌なの?」

「すごく嫌です……俺、目立つの嫌なんですよ」

「……そっかぁ。どうしよっかぁ」

「どうしようもないですよ……一度ネットに出回った写真は消せないし、みんなが飽きて忘れるのを待つだけですね。それまで続報を入れないように……静かに、目立たず過ごすしか……」

深いため息をつくとフタは頭を撫でてくれた。

「……フタさん」

「んー?」

「撮られちゃった写真、フタさんと一緒の時のなんで……フタさんも色んな人にお顔知られちゃいました」

「マジぃ?」

「俺の頭で隠れてたりもしましたけど、映ってたのは映ってたので……しばらく気を付けてくださいね」

「んー……」

フタに言っても仕方ないだろう。サンに伝えておいて、出歩く時はサングラスやマスクで顔を隠すようフタに言い付けてもらうしかないかな。
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