冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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二度目のお預かり

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昨日は紅葉邸に行った後、夜はアキとセイカ二人で眠った彼らを置いて一人部屋で眠った。瘡蓋が完成するまでは誰かと眠ろうとは思えない。

「おはようございます」

「……おはようございます」

水曜日の朝早く、ネイがやってきて呼び鈴を鳴らした。申し訳なさそうに微笑んで、背後に隠れていたノヴェムの手を握って軽く引っ張った。

《………………お兄ちゃん!》

ネイの背後からそぉっと顔を覗かせ、俺を見つけるとパァっと笑顔になってネイの手を振りほどいた。

《お兄ちゃん、どうぞ!》

ネイは後ろに回していた左手を突き出した、その手には花が握られている。濃いピンク色の元気な花だ。

「これは……マツバギク、かな? くれるの?」

「庭に生えてるんですよ、朝から摘んでいたんです」

「へぇ……そうなんですか。ありがとう、ノヴェムくん」

小さな子供が道端で拾ったものをプレゼントするというのはこの上ない好意の証だ。俺も幼稚園児の頃、花を毟ったり石を拾ったりして母に贈ったことがある。受け取ってもらったことないけど。

(汚っ……とか言ってたから道端のもん嫌いなのかなーと、じわじわ折り紙にシフトしていったんですよな。懐かしいでそ)

正直言ってその辺に生えてた花にはアブラムシとかついていそうで嫌なのだが、昔の俺の深い悲しみを思い出せば笑顔で受け取る以外の選択肢はない。

「飾らせてもらうね」

しかしあまり喜び過ぎるのもよくない、庭から花がなくなるまで持ってくるかもしれない。花を手折り過ぎてはいけないことを後で教えておかないと。

「ノヴェムをよろしくお願いします……すいません、一昨日見てもらったばかりなのに。もしアレでしたら家に放り込んでもらっても構わないので。ぁ、鍵はポストに入れてますから」

「いえ、お気になさらず……後その鍵の隠し方は危ないのでやめた方がいいですよ」

「そうですかね? 子供の頃は植木鉢の下から鍵を取って入ってたんですが……ぁ、そろそろ失礼します」

「ネイさんはもう行っちゃうんですか? 朝ご飯食べました?」

「はい、ノヴェムも朝食は取らせましたのでお気遣いなく。それでは」

「はい、さようなら。気を付けてください」

姿が見えなくなるまでノヴェムと共に笑顔で手を振り、玄関扉を閉めた。朝食の準備をしている母の隣で使っていないコップに水を汲み、茎を軽く洗った花を挿した。

「あら、どしたのその花。ドギツイ色してるわね」

「マツバギクでそ。ノヴェムくんが摘んできてくれたんです」

「へぇー、お花のプレゼント? 流石外国人って感じね」

「……そうですな」

俺もちっちゃい頃したんだけどなぁ、と覚えていない様子の母の笑顔にチクリと胸が痛む。

《ハイ、ノヴェムくん。朝ご飯食べた?》

《ハーイ、ユノ。ノヴェムごはん食べたよ》

「アキ達呼んでくる」

《ちょこふれーく、あまくておいし……お兄ちゃん? お兄ちゃんっ、まってぇ、どこ行くの。行っちゃやだぁ》

母と楽しげに話しているノヴェムを置いてアキの部屋へ行こうとすると、ノヴェムが慌てて追いかけてきた。

「ん? 一緒に行く? おいで」

ノヴェムを抱き上げようとした瞬間、腹の傷のことを思い出した。八歳の子供を抱くには腕力だけでは長時間保たない、身体を反らして胸や腹にもたれさせたり、骨盤に腕を乗せるようにして子供の体重を分散させるのが基本だ。

《お兄ちゃん? だっこぉ》

つまり、せめて瘡蓋が完成するまでの期間、俺は誰も抱き上げてやれない。

「ご、ごめん……お兄ちゃんちょっと今日はお腹が痛くて。抱っこは座ってる時だけで勘弁してくれないかな?」

《……? だっこ……だめ?》

日本語は全く分からないのだろうか、ノヴェムは首を傾げている。

「あい、あむ、ぽんぽんぺいん、べりーぺいん、だっこ、する……あうち。どぅーゆーあんだすたん?」

《お兄ちゃん……いたいの? どこいたいの? 大丈夫?》

心配そうにしている。何とか伝わったようだ。

「のーぷろぶれむ。ごー、まいぶらざーず、ぷちはうす」

《もー、お兄ちゃんったらぁ。ノヴェムとお兄ちゃんは兄弟じゃないよ、こんやくしゃだよ》

ニコニコと笑って手を繋いできた。抱っこは諦めてくれたみたいだし、心配ももうやめたみたいだ。俺、英語出来てるじゃん。

「出来てねぇよ」

寝起きのセイカに自慢してやったら一言でぶった切られた。

「……今日はガキ抱いてねぇんだな、前はコアラみたいに抱いて離さなかったくせに」

昨日はアキとコアラの動画見たのかな。

「そうだ鳴雷、知ってるか……コアラって意外と喧嘩激しいんだぞ」

喧嘩するコアラの動画見たんだな。

「今日はちょっとお腹が痛くて力が入らないんだよ」

「昨日もそれ言ってなかったか? 暑いからって服捲って寝たり、冷たいものばっかり食べたり飲んだりしちゃダメだからな」

腹が痛いと聞けば、まずは外傷ではなく冷やしたと思うよな。説明が難しいしそういうことにしおくか。

「はは……反省するよ」

「まぁ、でも、ちょうどよかったんじゃないか? ほら、昨日言ってたろ。俺か秋風に懐かせたいって」

「……なるほど! 俺が構わず他のヤツに構われたら、そりゃ俺より懐くよな」

セイカの思惑を悟った俺はぐっと拳を握った。

《またそのガキ居んのか》

「お、アキ。起きてたか」

《このおへや、こわい》

ノヴェムが俺の背後に隠れながらぎゅっと抱きついてきた。

「……この部屋怖いってさ」

「あー、まぁ……色々となぁ」

髑髏を始めとしてアキの部屋はおどろおどろしい装飾が多い。メタル系のバンドのポスターも子供には怖いものが多い。

《秋風、鳴雷まだ腹痛いらしいからガキ抱っこしてやってくれないか?》

《あぁ? あぁー、いいぜ。来いよガキ》

《ノヴェム、白いお兄ちゃんが抱っこしてくれるってよ。水月お兄ちゃんは今日ちょっと体調悪いから、こっちにしないか?》

ノヴェムは迷っている様子で俺を見上げる。

《お兄ちゃんのおとーと……なら、ノヴェムのおとーと!》

しかし、アキに向かって両手を広げた。アキは軽々と片手でノヴェムを抱き、空いた手に日傘を持った。

《スェカーチカは頼むぜ、兄貴》

「鳴雷、義足履かせて」

「あぁ」

四人でダイニングへと向かうと、朝食が用意されていた。

「ノヴェムくんにはこれあげて」

母は俺に透明の可愛らしい器に入った数粒のイチゴを渡した。

「アキ、これノヴェムくんに」

懐かせるには餌付けは最も有効な手段だ。俺はイチゴをアキに横流しした。

《ありがと兄貴、美味ぇ》

「あっこらアキのじゃないぞ!」

しかしセイカに翻訳を頼む前に渡してしまったため、アキが一粒食べてしまった。
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