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最後の日は撮影会
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アキの誕生日の翌日であり、帰宅前日である今日は、ハルとの約束がある。しかしそれは夜の話、朝と昼はこれまで通り海で遊ぼう。
「お前らの水着も今日で見納めかぁ……」
「その言葉そのまま返すっすよ、せんぱいの水着姿は今日までっすからいっぱい目に焼き付けるっす。フォルダにも焼き付けておきたいんすけど……いいっすか?」
「写真撮りたいのか? 水着の? うーん……まぁ、いいか。いいよ、ってかレイ、お前勝手に撮ってるだろ」
「勝手に撮ったのと許可得て撮ったのは味わいが違うんすよ」
テントを建て終わり、海に入る前に軽い準備運動をしているとレイにスマホのカメラを向けられた。さて、適当にピースでもするか。いや、もっとカッコつけたい。
「よし、撮れ」
俺はカメラに対して斜め四十五度に身体を傾けて立ち、振り返るようにしてカメラを見つめた。
「カッコいいっすせんぱい、全身余すとこなく撮っておきたいんで、T字のポーズしてもらえないっすかね」
「俺は3Dモデルか」
カッコよくないポーズなので不満はあるが、彼氏の要望は断れない。俺は腕を広げてT字のポーズを取り、前後左右から撮られた。
「水月くん、僕も撮っていいかい?」
「水月ぃ、俺も」
「みっつ~ん、俺も~」
「み、ぃ……くん……ぼく、も」
わらわらと彼氏達が寄ってくる。俺は彼氏達に囲まれ、要望を聞きながら様々なポーズを取り、無数のシャッター音を聞いた。
「これ水月撮れてる?」
「はい、綺麗に撮れていますよ、サン殿」
《秋風、こっちから撮ってくれ。こっちのがちゃんと顔映る》
《はいよ。スェカーチカ、自分は顔で惚れたミーハーとは違いますヅラしてる癖して兄貴の写真とか欲しがるんだな》
《鳴雷の顔の美醜はどうでもいいけど鳴雷の笑顔は好きなんだ、昔から……一回奪っておいて、そんなこと言う資格ないって分かってるけど、でも、好きなんだ》
自分では見返せないのにサンが俺の写真を撮るのは、フタに旅の思い出を語るためなのだろうかと考えてほっこりしていると、セイカを背負ったアキが妙にウロウロしているのに気が付いた。
「アキ、セイカ、そっち向いて欲しかったら呼んでくれたら俺向き変えるぞ?」
「……! う、うん……ごめん。ありがとう……」
「ポーズのリクエストもまだまだ受け付けてるぞ~」
海を背景にしたいと言われたり、岩場に腰掛けて欲しいと言われたり、テントの中で寝転がったところが撮りたいと言われたり──色んなリクエストを受けた。
「ふぅ……お前らいいのか俺ばっかり撮ってて、遊ぶ時間なくなっちゃうぞ?」
「え~せんぱいの写真は無限に欲しいっすよぉ」
「でも遊びた~い。みっつんの写真ならまたチャンスあるだろうし、今日はもう遊ぼっか」
「……それもそうっすね」
「あぁ、待て待てみんな。最後に俺のリクエスト聞いてくれよ」
頭上にハテナマークを浮かべる彼氏達に、俺は集合写真を撮らないかと提案した。そういえば撮っていなかったとミフユが失念を自責しつつ、三脚を用意してくれた。
「三脚もカメラも用意はあったのだが……すまない」
「いいっていいって。海バックね~。並びどうしよっかぁ、やっぱりみっつん真ん中だよねっ」
ハルに手を引かれて三脚の真正面へと誘われる俺のもう片方の腕には既にカンナが抱きついている控えめなくせして抜け目ない子だ。
「あっ……俺ここ!」
カンナに気付いたハルが慌てて俺の腕に抱きつく。
「ボクら後ろなの決まってるもんねぇ」
「そうですね……」
サンと歌見は高身長故の悲哀を話している。
「ず、ずるい……俺はここっす!」
出遅れたレイは低身長を活かして俺の前に並んだ。髪が少し顎を隠す程度だ、ちゃんと身を縮めているし俺は許してやろう。
「あっ、俺もそっちにすればよかったかな」
「ハルせんぱい背はデカいから無理っすよ」
「それはほら~、頭互い違いに傾けりゃ映りはするじゃん?」
「……腕、あるほ……が、いい」
きゅっと俺の腕を抱き締め直したカンナを見てハルも俺の腕を抱き締め直し、満足そうに微笑んだ。レイは俺にもたれて後頭部を鎖骨にぐりぐりと擦り付けた、腕がもうワンセットあれば抱き締めてやれるのになぁ。
「腕あと十本くらい欲しいな……」
「生えるとこないっすよ」
「てん、く……こっち」
「俺隣入れてくれんのん? おおきになぁしぐぅ。とりり~ん、こっちゃ来ぃ」
「その呼び方やめてください」
カンナは隣に並んだリュウに腰を抱かれ、リュウはシュカの肩を抱こうとして手を払われていた。
「ええやんか写真撮る時くらい!」
「嫌ですよ、後で見返したらめちゃくちゃ仲良しみたいに見えるじゃないですか」
めちゃくちゃ仲良しだろお前ら。
「横~、立つ、するです。はるー、いいです?」
「アキくん? いいよいいよ~」
リュウとシュカのじゃれ合いを見ていたハルは満面の笑みを浮かべて了承しながら振り返り、アキにお姫様抱っこされているセイカと目を合わせてスンっと無表情に変わった。
「隣失礼するよ、歌見さん」
「あぁ……そういえばお前も結構背が高いな」
「水月くんには負けるけどね」
ネザメはリュウの背後から顔を出すと決めたようだ。
「全員ならんだな? ではタイマーをセットして……えぇと、十秒でいいか……」
「ミフユさんどこに並ぶんです?」
「む? ミフユはネザメ様のお隣に……むぅ、それでは見えないな……」
「天正さん顔隠れちゃいますよ」
「隠れへんわ!」
実際ミフユが前に立っても顔が隠れはしないのだろうが、隠れへんわは失礼ではないだろうか。
「よし……貴様ら、カメラを見ろよ」
ミフユはそう言いながら走ってリュウとシュカの二人のちょうど間の前に立った。背筋に僅かな冷たさと、肩に微かな重さを感じた直後、シャッター音が鳴った。
「お前らの水着も今日で見納めかぁ……」
「その言葉そのまま返すっすよ、せんぱいの水着姿は今日までっすからいっぱい目に焼き付けるっす。フォルダにも焼き付けておきたいんすけど……いいっすか?」
「写真撮りたいのか? 水着の? うーん……まぁ、いいか。いいよ、ってかレイ、お前勝手に撮ってるだろ」
「勝手に撮ったのと許可得て撮ったのは味わいが違うんすよ」
テントを建て終わり、海に入る前に軽い準備運動をしているとレイにスマホのカメラを向けられた。さて、適当にピースでもするか。いや、もっとカッコつけたい。
「よし、撮れ」
俺はカメラに対して斜め四十五度に身体を傾けて立ち、振り返るようにしてカメラを見つめた。
「カッコいいっすせんぱい、全身余すとこなく撮っておきたいんで、T字のポーズしてもらえないっすかね」
「俺は3Dモデルか」
カッコよくないポーズなので不満はあるが、彼氏の要望は断れない。俺は腕を広げてT字のポーズを取り、前後左右から撮られた。
「水月くん、僕も撮っていいかい?」
「水月ぃ、俺も」
「みっつ~ん、俺も~」
「み、ぃ……くん……ぼく、も」
わらわらと彼氏達が寄ってくる。俺は彼氏達に囲まれ、要望を聞きながら様々なポーズを取り、無数のシャッター音を聞いた。
「これ水月撮れてる?」
「はい、綺麗に撮れていますよ、サン殿」
《秋風、こっちから撮ってくれ。こっちのがちゃんと顔映る》
《はいよ。スェカーチカ、自分は顔で惚れたミーハーとは違いますヅラしてる癖して兄貴の写真とか欲しがるんだな》
《鳴雷の顔の美醜はどうでもいいけど鳴雷の笑顔は好きなんだ、昔から……一回奪っておいて、そんなこと言う資格ないって分かってるけど、でも、好きなんだ》
自分では見返せないのにサンが俺の写真を撮るのは、フタに旅の思い出を語るためなのだろうかと考えてほっこりしていると、セイカを背負ったアキが妙にウロウロしているのに気が付いた。
「アキ、セイカ、そっち向いて欲しかったら呼んでくれたら俺向き変えるぞ?」
「……! う、うん……ごめん。ありがとう……」
「ポーズのリクエストもまだまだ受け付けてるぞ~」
海を背景にしたいと言われたり、岩場に腰掛けて欲しいと言われたり、テントの中で寝転がったところが撮りたいと言われたり──色んなリクエストを受けた。
「ふぅ……お前らいいのか俺ばっかり撮ってて、遊ぶ時間なくなっちゃうぞ?」
「え~せんぱいの写真は無限に欲しいっすよぉ」
「でも遊びた~い。みっつんの写真ならまたチャンスあるだろうし、今日はもう遊ぼっか」
「……それもそうっすね」
「あぁ、待て待てみんな。最後に俺のリクエスト聞いてくれよ」
頭上にハテナマークを浮かべる彼氏達に、俺は集合写真を撮らないかと提案した。そういえば撮っていなかったとミフユが失念を自責しつつ、三脚を用意してくれた。
「三脚もカメラも用意はあったのだが……すまない」
「いいっていいって。海バックね~。並びどうしよっかぁ、やっぱりみっつん真ん中だよねっ」
ハルに手を引かれて三脚の真正面へと誘われる俺のもう片方の腕には既にカンナが抱きついている控えめなくせして抜け目ない子だ。
「あっ……俺ここ!」
カンナに気付いたハルが慌てて俺の腕に抱きつく。
「ボクら後ろなの決まってるもんねぇ」
「そうですね……」
サンと歌見は高身長故の悲哀を話している。
「ず、ずるい……俺はここっす!」
出遅れたレイは低身長を活かして俺の前に並んだ。髪が少し顎を隠す程度だ、ちゃんと身を縮めているし俺は許してやろう。
「あっ、俺もそっちにすればよかったかな」
「ハルせんぱい背はデカいから無理っすよ」
「それはほら~、頭互い違いに傾けりゃ映りはするじゃん?」
「……腕、あるほ……が、いい」
きゅっと俺の腕を抱き締め直したカンナを見てハルも俺の腕を抱き締め直し、満足そうに微笑んだ。レイは俺にもたれて後頭部を鎖骨にぐりぐりと擦り付けた、腕がもうワンセットあれば抱き締めてやれるのになぁ。
「腕あと十本くらい欲しいな……」
「生えるとこないっすよ」
「てん、く……こっち」
「俺隣入れてくれんのん? おおきになぁしぐぅ。とりり~ん、こっちゃ来ぃ」
「その呼び方やめてください」
カンナは隣に並んだリュウに腰を抱かれ、リュウはシュカの肩を抱こうとして手を払われていた。
「ええやんか写真撮る時くらい!」
「嫌ですよ、後で見返したらめちゃくちゃ仲良しみたいに見えるじゃないですか」
めちゃくちゃ仲良しだろお前ら。
「横~、立つ、するです。はるー、いいです?」
「アキくん? いいよいいよ~」
リュウとシュカのじゃれ合いを見ていたハルは満面の笑みを浮かべて了承しながら振り返り、アキにお姫様抱っこされているセイカと目を合わせてスンっと無表情に変わった。
「隣失礼するよ、歌見さん」
「あぁ……そういえばお前も結構背が高いな」
「水月くんには負けるけどね」
ネザメはリュウの背後から顔を出すと決めたようだ。
「全員ならんだな? ではタイマーをセットして……えぇと、十秒でいいか……」
「ミフユさんどこに並ぶんです?」
「む? ミフユはネザメ様のお隣に……むぅ、それでは見えないな……」
「天正さん顔隠れちゃいますよ」
「隠れへんわ!」
実際ミフユが前に立っても顔が隠れはしないのだろうが、隠れへんわは失礼ではないだろうか。
「よし……貴様ら、カメラを見ろよ」
ミフユはそう言いながら走ってリュウとシュカの二人のちょうど間の前に立った。背筋に僅かな冷たさと、肩に微かな重さを感じた直後、シャッター音が鳴った。
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