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本番と洒落込もうか

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手や足が当たって倒してしまい、硬化中のシリコンが零れるなんてことはあってはならないので、筒は棚の上に移した。

《んじゃ本番と洒落込もうぜ兄貴》

「ん? 脱いで欲しいのか?」

アキは俺の服を引っ張っている。脱いで欲しいのだろうと察し、アキと同じ生まれたままの姿になってやるとアキは嬉しそうに笑って抱きついてきた。

「おっと……ふふ、おいで」

俺はベッドの真ん中に座り、伸ばした足の間にアキの膝をつかせて、首に抱きつかせて、髪を梳き頬を撫で耳をくすぐり、愛でた。

「にーにぃ、ぼくー……にーに、好きです! だいー、すき! にーにぃ、しばー……らつ? えっちする、出来ないする、ごめんなさいです」

「しばらく、かな? あぁ……いいんだよアキ、気にしてくれてたのか? いいんだよそんなの……お兄ちゃんのこと嫌いになったんじゃなくてよかった」

安堵のため息をついたその時、聞き取れない言語が聞こえてきて驚いてそちらを見れば、ベッドの縁に頭を乗せたセイカが棒読み翻訳を行ってくれていた。

(……生首みたい)

それは声には出さず、喋る生首に礼を言い、またアキを愛でる。首筋にキスをし、くすぐったがったアキが身をよじるのが、彼を抱き締めた腕に伝わってきて心地いい。

「んぅ……にーにぃ、えっちするです」

「うんうん、してるぞ~」

《そのデケェの突っ込んでくれつってんだよぉ。いいだろ兄貴ぃ、我慢してたんだからさ》

「……鳴雷、その……入れて欲しいって」

だろうと思った。アキは積極的で、少しせっかちだ。手や口での触れ合いよりも腹の奥を揺さぶられたがる。

「んー……じゃあ、アキ、ちょっと待っててくれるか?」

「だ!」

「だ、かぁ。そっかそっかぁ……ふぅうん、かわゆいぃ……」

アキが最近俺を避けていたのは後孔に切り傷が出来たからだと浴場で聞いた。間違った自慰をしてしまったのだ、素早く快楽を得たがるアキの性格が裏目に出た。焦らしてトロトロになった後孔を穿たれる快感を教えてやれば、自慰のやり方も変わるかもしれない。

「……返事が一文字の言語可愛くない?」

「あははっ、そうっすねぇ、きっとアキくんが言うからっすよ」

「そうかなぁ。セイカ~、ロシア語ではいって言って」

「……だ」

呆れた顔をしながらもちゃんと頼みを聞いてくれるところ、本当に好きだ。

「セイカも可愛いぞ! レイ、お前も言え」

「俺ロシア語分かんないっすよ? だ……で、いいんすか? 発音とか違ったりしません?」

「可愛い……!」

「水月くん水月くん、だー」

「ネザメさんも可愛いですぅ! 分かった……俺の彼氏はみんな可愛いんだ!」

なんてノロケていたら待ち切れなくなったアキに押し倒されそうだ、待ってくれている間にさっさと準備しなければ。

「ネザメさん、拘束具持ってきてましたよね?」

「うん、全部持ってきてみたよ」

「前、アキ縛られてみたいって言ってたんですよ。その時は俺身体を縛ることしか出来なくて、手足を拘束出来ないならいいって断られちゃったんですけど……今日は、ガッチガチのギッチギチに拘束しちゃいましょう!」

「いいっすねぇ! 誕生日なんすから、アキくんはじっとしてるだけで気持ちよくなって欲しいっすもんね。アキくんもみんなに御奉仕して欲しいってことは、そういうのがいいってことっしょうし」

「緊縛もいいけど、アキは多分身動き取れなくなったところを責められてみたいってだけで、縄に興味があったとは少し違うと思うから……ネザメさん、今回は縄以外の拘束具でギッチギチにしましょう」

「うんうん、滾るねぇ」

温和な笑顔を浮かべるネザメの亜麻色の瞳に嗜虐的な鈍い光が宿る。

「秋風くんは身体が柔らかいから拘束具が使いやすいよねぇ。硬い子は腕を後ろに回して縛るだけでも痛がってしまうから。これ使ってみようか」

「これは……?」

「アームバインダーだよ」

細長い三角のような形をした黒い袋型の革製品だ。ベルトも付いている。

「秋風くん、腕を後ろに回してくれるかい?」

ベッドの上で膝立ちになったアキは腕を後ろに回し、組まずにそのまま伸ばした。ネザメはアキの肩にベルトを引っ掛け、三角形の布にアキの腕を入れ、布の上からベルトで腕を拘束していく。

《おー……すげぇ、指も動かせねぇな。肩外してもこりゃ抜けらんねぇな。腕が包まれちまってんのが凶悪だ》

「……抜けられそうにないって」

「だろう? 気に入ってくれたかな? ここを締めれば完、成っ……だよ」

最も肩に近いベルトを締めると完成らしい。非力なネザメにとっては大変だったのか、手をぷるぷると揺らしている。

「痛くないかい?」

「痛いー、する、しないです」

「よかった。水月くん、目隠しやギャグはどうする?」

「せっかくアキに合わせて暗くしてるんですから、目隠しはなしにしましょう。その方がいいよな、アキ。ギャグも……やめとこっか。お話したいもんな、久しぶりだし。足は拘束しましょうか、アキも手足拘束されたいって言ってたし……」

「そうかい、じゃあ見た目の統一感を重視して……これはどうかな?」

アームバインダーと同じく黒色の革で作られたベルトを俺に見せた。膝を曲げた状態で固定する物らしい。

「このベルトは8の字になるんだよ。足首と太腿に巻けば足を伸ばせなくなるんだ」

「……手錠みたいな感じですね?」

「そう……なるね? 狭雲くん、秋風くんに足を曲げるよう言っておくれ」

《秋風、膝曲げろ》

《足も縛るんだよな、楽しみ~》

拘束しようという時にニコニコ笑っていられると雰囲気が出ないけれど、楽しんでいるのなら何よりだ。俺はアキの頭を撫でた後、痛くないかと聞きながら足を拘束した。

《……あはっ、イイねぇ……腕は前に回せねぇし、足は伸ばせねぇ。そんで兄貴にヤられちまう、と……最っ高! だな》

「めちゃくちゃ楽しみにしてる」

「そ、そっか……アキはなんていうか、オープンだなぁ……」

情緒や雰囲気は崩されてしまうけれど、この明るくオープンで積極的なところがアキの魅力だ。
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