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運動場までストーキング (水月+ハル・リュウ・カンナ・シュカ・ネザメ・ミフユ)

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彼氏達に代わる代わる弁当を食べさせてもらう、幸せな昼食ももう終わりだ。カサネはまだ来ていない、今日は登校していないのだろう。

「鳴雷、俺運動場行ってくる」

「一人で平気か?」

「大丈夫、昨日も行ったし」

セイカは時々こうやって昼休みに俺の傍を離れる。今日ように運動場へ行ったり、カンナと共に図書室へ行ったり、一人で職員室に行って教師に質問をしたりしているようだ。

「行ってら~。さて……シュカ、おいで」

色気を意識して声を低く変え、これからの行為のための雰囲気を演出する。まぁシュカはあまりこういう雰囲気にうるさいタイプではないけれど、ある方が気分は上がるはずだ。

「……今日はいいです」

「えっ!? き、昨日もシてないのに?」

「疲れてるので」

「保健室で休んだ方がいいんじゃないか……?」

多少疲れている時ならリフレッシュにと行為をねだるのがシュカだ。それを断るなんて、尋常ではない。

「もはや救急車レベルの話か?」

「私を何だと思ってるんです……会長、私ここで少し休んでいても?」

「構わないよ。アイマスク使うかい?」

「いえ、眠りはしないのでお気持ちだけで」

シュカはソファの背もたれに身体を預けて腕を組むと目を閉じた。

「ミフユさん、シュカの具合分かります? 相当悪いと思うんですけど」

「…………脈拍、呼吸共に問題ない。体温も……多分、平熱だ。特に問題はないだろう」

手首、口元、額に順に手を当てて体調を確認したミフユは俺を真っ直ぐに見つめてそう言った。本人には可愛こぶるつもりなんて露ほどもないだろうに、俺を見上げる仕草はたまらなく愛らしい。シュカが心配なのに、口元が緩んでしまう。

「そうですか……」

「大袈裟だ、自惚れとも言える」

「いやっ、自分のセックスに自信があるとかじゃなくて! 普段のシュカと比べて様子がアレだからってだけで!」

「疲れればこうもなる、疲れたことがないのか? ほっといてやれ、傍で騒がれては休めない」

ついさっきまで俺にアーンをする権利を主張していたくせに、ミフユは俺を部屋から追い出した。デレとツンの切り替えが早い、ちょっと悲しい。

「やることないしセイカの様子でも見に行くか……お前らはどうする?」

「行く~」

「ぃ、く」

「暇やし着いてくわ」

彼氏達と運動場を覗きに行った。運動場には数える気を失うほどの生徒の姿があったが、セイカの小豆色の髪は目立つ。長袖で欠損を誤魔化したところですぐに見つけられる。

(ちなみに十二薔薇では昼休みや放課後、休日などに運動場や体育館の使用は自由となっておりまそ。ボールやハードルなどの道具の使用も申請すれば可能でそ。まぁ部活動が最優先ですから、昼休み以外で自由となるタイミングはあまりありませんが)

運動場の体育倉庫から出てきたセイカの手にはバットがあった。今日は素振りかな?

「俺が居ない間の彼氏の行動って気になるんだよなー」

「や、きゅう? する……の、かな」

「……ウォーキングやったらまだしも素振りなんかしてどないすんねやろ。野球なんか出来へんし、体育も参加せぇへんねんからやっても無駄ちゃうん」

「趣味なんじゃないの~? 昔はスポーツ万能だったとか言ってたし。スポーツ嫌いのりゅーと違って出来なくなっても好きなんだよきっと」

校舎の影から四人団子となってセイカを見守る。そのうちただバットを振っているセイカを眺めるのが暇になってきて、それぞれスマホを弄り始めた。

「……ぁ、こけた」

「セイカっ!?」

「落ち着きぃ、居らん間の行動見たいんやろ」

たまにバランスを崩して転ぶセイカの元へ走り出しそうになっては、その度にリュウに止められた。

「ん? 誰か来たよ~?」

「坊主だ。坊主の高校生は野球部って相場が決まってるよな」

「みーくん……へん、けん」

「話しかけられとんなぁ」

坊主頭の男がやってきた、何年生だろうか? セイカに話しかけている。

「ま、まさか……両手でバット握れもしねぇヤツが何やってんだよ的な絡まれ方をしているのでわ!?」

「なんかゾロゾロ来た~」

「全員坊主で見分けつけへんな」

セイカが推定野球部の連中に囲まれている。どうする? ネザメとミフユを呼んでくるか? 生徒会の権力を振るう時なのか?

「よし、ミフユさんを呼ぼう。生徒会副会長の権力で穏便に野球部を蹴散らすんだ」

「生徒会を何やと思てんねん」

「予算減らすとか言えば何とかなるだろ」

「流石にせんせーが最終チェックするだろうし~、無意味に減らした予算案出しても却下されるだけじゃな~い? それ分かんないほど野球部の連中バカじゃないっしょ」

クソ! 生徒の自主性を尊重しろよ教師共!

「しょうがない俺が超絶美形パワーで何とかしてくるか」

「その前に本当に絡まれてるのか確認した方がいいと思うな~」

ハルの提案で俺達はよりセイカに近い物陰へと移り、推定野球部連中とセイカの会話を盗み聞きすることに成功した。

「もうちょい背筋伸ばして……そうそうそう」

「振る時はもっと、えーっと、あぁ左分かんねぇ。おいサウスポーお前教えてやれ」

「ちょっと打ってみる? 片手なら軟球のがいいかな」

なんか親切にされてる。

「…………ガッツリ面倒見てもらってるわ」

「ほら~、乗り込む前に確認してよかったじゃ~ん。俺褒めなよ~みっつん」

「流石ハル……はぁ、悪かったのは俺の頭の治安か」

「や、俺も絡まれとる思たよ」

「ぼく、も」

「みんなさぁ~、もっと人間信じなよ~」

十二薔薇の民度を舐めていた。流石お坊ちゃま高校、その辺の悪意にまみれたクソガキ共とは人間としての格が違う。
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