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砂浜でイタズラ

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波の音を聞きながら砂浜に横たわるのはこんなにも心地いいことなのかと眠気を煽られつつ、リュウに「まさかお前に霊感があったとは思わなかった」と軽口を叩く。

「ないで」

「え? でも」

「幽霊なんか見えへんもん」

でも日没後の海を忌避したり、写真を撮ってしまったレイへの対処は、ホラー物で見かける霊能力者っぽかった。首を傾げているとリュウは続けた。

「お祓いとかも出来ひん。せやなぁ……水月らみんなと知らんとこ行って、俺だけすぐ地図買える権利があるっちゅう感じかなぁ」

分かりにくいたとえ話だ。

「水月が言うような霊感ある人やったら地図買わんでも道分かって行きたいとこ行けるんちゃう? 俺は地図買えるだけ。水月らは地図買われへん、知らん街ウロウロして遊んどる。俺は水月らの探検気分壊さんように一人で地図見て、行ったアカンとこそれとなーく避けさせとる……っちゅう感じ」

「なるほど……? 買う、ってことは何か代償が必要……くらいまで考察伸ばしてもいいのか?」

「来てすぐお参りしたやろ? アレ。新しい土地に来たらまず挨拶すんねん。アレがたとえ話で言う地図買うんにあたるんよ」

「俺らもお参りしたけど」

「水月は店の人に顔覚えてもろただけやね。よそもんには売ってくれへん感じちゃう?」

確かにリュウはそういう余所者に厳しい相手でもスルリと懐に入り込み、仲良くなって商品を売ってもらえそうなヤツだ。

「なるほどなー……」

最初は下手だと思ったリュウのたとえ話だが、ちゃんと理解出来た。上手いと思い直した訳ではないが。

「じゃあこれからも道案内頼むよ、任せっきりにすることになっちゃって悪いけど」

「ん」

夕暮れまでに海から上がれだとか、写真を消せだとか、そんなふうに理由のない指示がリュウからあった場合は何も聞かず従うべきと頭の中にメモを残す。

「……長々話しちゃってごめんな、おやすみ」

「おやすみ、水月ぃ」

目を閉じたリュウの頭を撫でる。くしゃくしゃと髪をかき混ぜ、耳の形を手のひらで探る。リュウはくすぐったそうに身を縮めて笑い、幸せそうに枕にしている俺の腕を掴んだ。

(……リアルの幽霊話って信じない派なんですよな、わたくし)

数学の天才のリュウが論理的に説明するから感心してしまったけれど、信じ切っていい話とは思えない。まぁ、リュウを嘘つきや狂人呼ばわりするつもりも、他の彼氏達にリュウから聞いた話を言いふらすつもりもなければ、リュウに渡された紙でちゃんとレイを撫でようとも思っているけれど、この世に妖怪や幽霊が存在するなんて信じない。

(しししし信じませんぞそそそそそそんなものの存在は。ここここ怖いとかそそそそういう話ではなななななくてですなっ、ひひひ非科学的だと言ってるんでそ)

鳥肌が立つ。髪の長い女の存在を背後に妄想してしまい、思わず目を閉じる。すると今度は目を開けたら目の前に居るのではなんて考え始めてしまって、目を開けられなくなった。

(聞かなきゃよかった聞かなきゃよかった聞かなきゃよかった何も聞かなきゃよかった!)

リュウは奇行が多いのだと自分を無理矢理納得させるべきだったと後悔しながら、俺は震えたまま眠りについた。



特に怖い夢を見ることもなく目を覚ます。視界にはテントとリュウと砂浜以外何も映らない。ホッと胸を撫で下ろし、リュウの枕にしている腕の角度を変えてしまわないよう気を付けつつ首を起こして海で遊ぶ彼氏達の様子を見た。

(……特にお変わりはないようですな)

無事で何よりという安心と同時に、俺が居なくても平気で遊んでるんだなと少し寂しくなる。ハーレム主なのにどっかりと構えられない、情けない俺の拗ねた視線は当然リュウへと向かう。

「…………」

俺の二の腕に頭を乗せ、柔らかそうな金髪を潮風に揺らし、薄い胸を上下させて静かに寝息を立てるリュウ。彼は現在上半身裸だ、ラッシュガードもパーカーも着ていない。俺の視線は自然と薄紅色の突起に釘付けになる。

「……んっ」

乳首と乳輪の区別もつかない程ふにゃふにゃのそれをきゅっとつまむ。リュウが微かに声を漏らし、俺は慌てて手を引っ込めた。リュウが起きる様子はない。俺は深く息をつき、イタズラを続けた。

「……っ、う……ん、んんっ……ん、ふ……」

乳輪の薄紅色と肌のペールオレンジの境目をなぞるように指でくるくると円を描く。ぷっくりと乳首が膨れてきたら、その側面をスリスリと撫でてみる。どんどんと乳首は尖り、弄りやすくなっていく。

「んんっ……!」

すっかり硬くなった乳首をピンッと弾いてやると、リュウは身を縮めて寝返りを打った。俺に背を向けるのではなく、俺の方を向いた。

(わたくしがイタズラしてるって分かってないんでしょうか、それともイタズラして欲しいんでしょうか)

下側から引っ掻くように乳首を揺らす。リュウは丸めた身体をピクピクと反応させ、短いまつ毛を震わせた。快感と困惑が混じった表情が愛らしい。

「んっ、ふ、んんっ……ぅ、んっ、んんぅっ……」

優しくつまんでくりくりと弄ぶ。俺の二の腕を掴むリュウの手の力が少しずつ強くなっていく。くい込んだ爪の痛みが心地いい。

「……っ、くぅんっ!?」

ぎゅっと強くつまんで引っ張ってやると、リュウは一際大きな声を上げてとうとう目を開けた。俺は腕枕をしている左腕で素早くリュウの頭を抱き、唇を重ねた……いや、そんな綺麗な表現は正しくない。強引に舌をリュウの口にねじ込んで犯したのだ。

「んっ、んぅっ……!? んっ、んんんっ!」

寝起きの頭には処理出来ない情報と快感の量だろう。俺はリュウが困惑している隙に身体を起こし、リュウに覆い被さった。

「ん、ぅ、んん……ん、ふ……んっ……ふ、ぁ……?」

乳首を優しくこね回しながらねっとりと執拗に口腔を舐め回し、驚きと困惑が入り混じっていたリュウの瞳がとろんと蕩けた頃、口を離した。

「ぃ、ひゅ……きぃ?」

開いたままの口が、俺の口と唾液の橋が繋がったままの口が、微かに動く。俺の名前を呼ぶ。

「……おはよう、リュウ」

まだ状況を理解していないだろうリュウに微笑みかけると、彼は幸せそうに緩んだ笑顔を返してくれた。
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