冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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砂浜でお昼寝

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髪型と服装によるところが大きいが、ハルは見た目だけなら超美少女。そんな彼が上半身裸になると、彼は男なのだから水着姿になれば自然なことだと頭では理解しているのに、強烈な違和感を抱いてしまう。

「気に入ってくれてよかったぁ。あっ、あとさ~、サンちゃんの髪も結んだげたんだよ俺! そろそろ下りてくると思うから見て見て~」

レイがそう話した数秒後、サンが階段を下りてきた。足首まである長い髪は肩にもつかないように整えられている。前髪はそのままで片目を隠している。

「サン、その髪ハルにやってもらったんだって? 似合ってるよ」

まずポニーテールにして、そこから髪を巻いてお団子にして、その髪を固定するために簪のような棒を刺したといった感じかな? 俺は髪を伸ばしたことがないのでヘアアレンジのことは全く分からない、そんな俺が想像出来るのはその程度のことだ。

「ほんと? なんか頭グラグラするんだよね」

「だろうね……雪だるまみたいになってるもん」

頭の上に全て乗せてしまうのと、頭から垂らしておくのとではやはり体感の重さは違うのだろうか。

「重い? ポニテにしとく?」

「んー、バランスいつもと違うだけで別に重くはないから大丈夫。それより水月、どう?」

後ろを向いたサンは上着などを羽織っていない、普段髪を下ろしている者の髪を上げた姿で一番注目すべきは、やはりうなじだろう。普段髪で隠れたそこのエロスは凄まじい……のだが、サンの場合はついつい背中の見事な彫り物に目が向いてしまう。

「……かっこいいね」

「そうなの?」

「セクシーじゃないの~? うなじだようなじ、みっつんの好きなうなじ~」

 ハルの俺への認識通り俺はうなじも好きなので、無理矢理刺青から視線をズラす。髪と呼ぶには細く短く、うぶ毛と言うにはしっかりし過ぎた、どっちつかずの毛が色っぽい。

「最高……! しゃぶっ、舐め、あの、ぺろぺろしたい」

「別に何してもいいけど」

「ウヒャホイ!」

「後でね」

「はぁーい!」

やがて全員が集まった。ハル以外に水着を二着持ってきている者は居ないようだ。

「よし、行こうか」

「待て。その前に少し聞きたいことがある、これをしたのは誰だ? いつやった?」

ミフユが盛り塩を指差しながら全員に尋ねると、リュウが手を挙げた。

「やったん俺です、昨日の晩にやりました」

「そうか、何故だ?」

「…………湿気が、酷かったんで。盛っとるんはここのんやなくて俺の持参した塩なんで……食塩効き悪いし」

「湿気? ミフユはあまり感じなかったが……炭はよく聞くし紅葉家でも活用することはあるが、塩を使うこともあるのか?」

「はぁ……まぁ」

歯切れが悪いな。邪魔にならない位置にある上、キッチンの塩を使ったものではないのなら特に気にすることはないと、ミフユは話を切り上げて玄関扉を開けた。海へと向かう道中の雰囲気は昨日より暗く、ぎこちない。

「ね、ねぇ~……マジでさぁ、湿気が理由?」

「ぉん」

「……あぁそう」

ハルが勇気を出して聞いてくれたものの、真実は分からなかった。砂浜に着き、テントを立て、シートを敷く。彼氏達が次々に海に飛び込んでいく中俺はテントに残った。

「悪い、俺ちょっと眠いから仮眠してから行くよ」

「えー? 俺は行くっすよ?」

「歳上のくせに体力すごいな……」

「歳上って言わないで欲しいっす」

酔い潰れると深く眠れるものなのか、二日酔いには至らなかったらしいレイと歌見は海へと走った。

「リュウ! お前もちょっと寝ろよ、今なら俺の添い寝付きだぞ」

「おー……ちょっと寝よかな」

「ハルー! シュカー! レイと先輩溺れないようにちょっと見といてくれー!」

「は~い!」

二人は眠そうには見えなかったが、念のためにそう頼むとハルは大声で返事をしながら手を大きく振ってくれた。シュカはその後ろで小さく手を振った。

「元気いっぱいなハルもいいけど照れ臭そうにしてるシュカもイイなぁ……」

甲乙つけがたいとニヨニヨしている俺の隣ではリュウが既にその身を横たえていた。俺もその隣に寝転がり、腕を伸ばす。

「リュウ、おいで」

ぽんぽんと二の腕を叩くとリュウは照れを誤魔化すように微笑み、俺の腕に頭を乗せた。もう片方の腕で彼を抱き寄せ、素肌の感触と明確に伝わる体温を楽しむ。

「……なぁリュウ。非科学的なことでも否定したりしないって約束するからさ、なんでレイの写真消したのかとか、レイに塩かけたのかとか、盛り塩したのかとか……教えてくれないかな?」

心地よさそうに目を閉じていたリュウが目を見開く。かなり渋っていたが、根気強く何十分も聞き続けると彼は深いため息をついて口を開いた。

「…………理解と恐怖はそれを招くんや」

だが、その内容は俺の求めていた答えではなかった。

「あぁ……怖い話してると寄ってくるってのはよく聞くよ。そういうこと言いたいのか?」

理解の方は、某TRPG的に考えればよさそうだ。神話技能を得ると正気度を失う、というアレ。完全に当てはめてしまうとリュウの正気度が俺より遥かに低いことになってしまうので、その辺はまぁゲームと現実の差ということになるのかな。

「それ、ってのは? 名前呼んじゃダメ系のヤツ?」

「んや、理解と恐怖の対象……そん時そん時でちゃうよ」

「ふぅん……? じゃあリュウが何も説明せずコソコソやってるのも、スマホのバグとか酔っ払ってたからとか言ってたのも、俺達をヤバいのに関わらせないため?」

リュウはしおらしく頷いた。

「……ありがとうな。ごめんな詮索するようなことして、リュウの気遣い無駄にしちゃった。でもこのままじゃリュウが変な奴みたいにみんなに思われちゃうから、手伝えることあったら俺に言ってくれ。理由説明せずにやることだけ聞いて手ぇ動かすだけならセーフだろ?」

「まぁ……」

「うん、じゃあ約束、次何かあったら手伝わせてくれ」

頷いたリュウの微かな笑みは、肩の荷が少し下りた者のそれに見えて、俺の提案は正解だったのだと嬉しく思った。

「ほなな水月ぃ、早速頼みがあんねんけど」

「何だ?」

リュウは起き上がり、自分のプールバッグを漁った。そして一枚の紙を取り出した。漢字の大のような形をしている。

「昨日作っといてん。これでこのめん撫でて、海に流したって。水月の方が自然に出来る思うわ。変にこのめんに厄祓いや言うたら怖がってもうて悪化してまうからな」

手ならともかく紙で身体を撫で回して不審がられるなって難易度高くない?

「……レイやっぱヤバいのか? 撮っちゃって……アレよくなかった感じ?」

「別にほっといても死なん思うけど、せっかくの旅行中に嫌な思いするん嫌やろ?」

怪我をしたり熱を出したりするかもしれない、ということだろうか。

「分かった。ぁ……そういえばさ、一日目……アキとセイカ夜中に外で遊んでたけど、アレは大丈夫だったのか?」

「庭は敷地内やし、メープルちゃん居ったし、そもそも危ないん海だけやから大丈夫やよ」

「そっか……」

敷地内というのは結界だとか、吸血鬼は招かれないと中に入れないとか、そういう観点で考えると何となく理解は出来る。

「何でメープルちゃん?」

「そういう手合いは吠えられるん嫌いなんよ。人間でも悪いこと考えとる時に吠えられたらビクゥなるやろ?」

「確かに……こっそりケツ揉もうと思ってる時にメープルちゃんに見つめられてるの気付くと、気まずいって言うか、ちょっとなんか、アレだもんな」

俺の腕の中でくすくすと笑うリュウの表情が普段よりも幼く見えた。家を出る時などは疲れたような顔をしていた気がする、僅かながらに俺に情報を共有して気を抜けたのなら嬉しい。
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