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優勝賞品と罰ゲーム

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ビーチバレーは基本一チーム二、三人で行うそうだ。全員参加の六人対六人ではゴチャゴチャするし、コート内に居るのにボールに触れない者が出る。ぶつかって転んでしまう危険性もある。

「っちゅーわけでバラすで! 各チームのパワーバランスを整えて三人ずつ四チーム作んで」

「え……三人ずつ四チームって、俺も一人に数えるのか? 今立てもしないし、片手じゃトスもアタックも出来ないのに?」

「セイカが居ればアキにメタれる訳だし」

「せんぱい途中で向こう行っちゃったから知らないんでしょうけど、アキくん途中から狭雲くん完璧に避けて打てるようになってたんすよ」

「頑張ってウロウロしたんだけどなぁ……」

あまり役に立てなかったと落ち込むセイカの身体は泥まみれだ。波打ち際で這いずり回ればそりゃそうなる。

「ドロッドロじゃん、アンタ一回海で洗えば? ほら、連れてってあげ……みっつーん、みっつーん」

ハルはセイカの脇に腕を通して抱き上げようとしたが、腕力が足りず俺を呼んだ。俺はセイカを抱えて海に浸け、泥を洗い落とした。

「あーぁ顔にもついてる。目閉じて息止めろよ」

「ん」

綺麗になったセイカをまた波打ち際に座らせる。

「……ありがとうな、ハル」

俺の思いが通じたのか、カンナのおかげなのか、ハルはセイカに普通に接しようとしてくれている。声色が冷たく口調が強めなのは……無意識なのかな?

「年積はんは紅葉はんと組まはるんやね」

「うむ、後一人は適当に余った者を引き入れようと思う」

「紅葉はんどんくっさいけど年積はんはよぉボール拾われますし、バランスええ思いますわ」

「口を慎め無礼者め」

「すんまへん。ほいで、俺、このめん、霞染はあんまし実力差ない思います。水月がちょい強め、とりりんが水月より更にちょい強めや思います。ほいでアキくんがめっさ強い」

「うぅむ……」

チーム決めはこのままリュウとミフユに任せていいだろう。

「同じチームだったが歌見殿の実力はイマイチ分からないな。貴様ら彼にボールを渡さないようにしていただろう」

「はぁ、まぁ未知数ですし。狙うんやったら紅葉はんとこですわ。ほいで、しぐはまぁ……控えめな子ぉやからなぁ、そないボール拾われへん思います」

「ふむ……では鳥待と同じチームならバランスが取れるな」

パワーバランスを整える上で仕方のないことなのだが、誰が強いならまだしも誰は弱いという話になるのは嫌だな。カンナは少し離れたとこに居る、聞こえていないといいのだが。

「問題は秋風だ、どこに入れても強過ぎる」

「ゃ、実はアキくん目ぇあんまよぉないはずですねん。俺ら警戒してアキくん避けて打っとったけど……もしかしたらアキくん狙っとってもいけとったかもしれません」

「む、アルビノの者の多くは視力障害を持つと聞く……それを狙うのか。うむぅ……」

「帽子にゴーグル……視界も狭いはずです。せやからアキくんには拾てくれるチームメイトが必要。そこで拾うん苦手な子ぉ入れたらちょうどよぉなる思うんです」

勝負の世界は残酷だなぁ。ただの遊びなんだけどなぁ。

「アキくん、サンちゃん、せーかでチーム組んでもらいましょ。盲人用卓球なんかと違うてこのボールには音鳴るもんなんか入ってまへん、サンちゃんはボールの位置分かれへんし、せーかは分かっとっても素早く取りに行けまへん。点取られた後の反撃でアキくんは必ず点取ってくるやろうけども……往復になる訳やから、一発でも防いだら勝てるいう訳ですわ。防御力ゼロの攻撃特化チーム! どう思います?」

「なかなか卑劣なヤツだな貴様。素晴らしい、それならパワーバランスが保てるな」

ホント酷いな。

「よっしゃみんな、チーム決定や! 発表すんで! 第一チーム! とりりん、しぐ、このめんや!」

そこそこ強い、弱い、弱め、バランスはいいな。

「第二チーム! 水月、ハル、歌見の兄さん!」

ちょっと強い、弱め、よく分からないけど多分強め、のチームか……どうなんだろう。勝てるかなぁ。

「第三チーム! 俺、紅葉はん、年積はん!」

「参謀としても期待しているぞ」

普通、ポンコツ、万能タイプ、まぁバランスは取れているな。

「第四チーム! アキくん、サンちゃん、せーか!」

「異議申し立て! 狭雲 星火、異議申し立てするぞ! 秋風の一人チームに等しいだろこんなもん。犬! ウチに犬寄越せ!」

「……どないします? 年積はん」

「ふむ……そうだな、メープルはトスだけなら人間以上だが、メープルと完全に息を合わせられるのはミフユだけだ。付け焼き刃にしかなるまい、許可する」

「ええって、せーか」

「よしっ……!」

セイカは拳を強く握った。犬をそんなに信頼しているのか。

「ほな第一チーム第二チーム、早速試合や」

早速俺のチームからか。一番警戒すべきはシュカだな、精一杯頑張ろう。

「じゃ、みっつんアタッカーね」

「いいけど……先輩はどうです?」

「……俺球技苦手なんだ」

「ぇ」

ミフユ達に強めと判断されていた歌見が実は弱めかもしれないだと? これはピンチだ。

「年積さん! 優勝チームには賞品があるべきかと」

「む、そうだな。あった方が楽しめるかもしれん。どういったものがいい?」

「私は美味しい食事を求めます」

「……みぃくん、独り占め」

「俺マッサージして欲しいっす。肩と首重点的に」

シュカチームは嬉々として優勝賞品の要望を出した。

「もう優勝する気満々だなシュカ、俺は全彼氏からの水着御奉仕を要求する!」

「じゃあ俺敗者のヘアアレンジ自由権~」

「んー……じゃあ後片付けサボっていい権」

俺達のチームは言い終わった。次はお前らの番だぞとリュウを見つめる。

「ほな俺は水月の椅子になる権利や」

「ミフユは、ネザメ様に褒めていただきたいです。鳴雷一年生にも……」

「じゃあ僕は水月くんを抱く」

微笑ましく彼氏達の願望を聞いていたが、突然負けられない戦いへと変わった。気合いを入れ直さなければ。

「……鳴雷に座り天正によしよししてもらいつつ犬を撫でながら秋風と話す権」

「んー……水月の顔の型取りたい。石膏像作りたいな、顔だけでいいからさ」

セイカがアキに何かを伝え、アキがセイカに何かを伝える。

「……スイカを棒で殴りたいって言ってる」

「スイカ割り……か?」

「ビーチの定番っすね、海の遊び方調べてたんすか? アキくん」

「ふむ……スイカか、別荘にはあるはずだ。出来ないことはないな。よし、総当たり戦で一番勝ちが多かったチームが優勝、優勝チームには貴様らが今言った褒美を与える。それでいいな?」

全員が「おー」と腕を突き上げる。正確にはカンナやセイカは少し遅れて、恥じらいながら。

「ネザメさんの優勝だけは絶対に防ぐ……! 俺はタチだ、みんな頼むぞ」

「……水月が抱かれるとこちょっと見たいな」

「うそぉん!? 本気で頼みますよ!」

「いや本気でやる、本気でやるけどな、負けてもそんなに……なぁ?」

「ミフユさん罰ゲーム! 罰ゲームも欲しいです! フナムシ掴み取りとかどうですか!?」

勝負においてモチベーションは大事だ、優勝賞品にあまり興味がないなら罰を用意しよう。

「何言ってんだ水月ぃ!」

「ふむ……いいだろう、では最下位チームはそれで」

「何てことすんのみっつん!」

「負けなきゃいいんだ負けなきゃ!」

俺は絶対的な攻め様でいたいし、フナムシなんて見たくもない。絶対に負けられない戦いが、今始まる!
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