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他の部屋を覗こう

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荷物などを各々の寝室と決めた部屋に移し終え、歯磨きも終えた。後は眠って朝を待つだけだ。こんな人数が集まるなんてとても珍しいことなのだから、ボードゲームやカードゲームもやりたかったのだが、それはまた明日以降だな。

「シュカ、まだ寝ないのか?」

「なんだか目が覚めてしまって……少し読書してから寝ます。明るいと眠れませんか?」

「いや、俺ちょっと出てくるよ。また後でな」

彼氏達の様子が見たくなった俺は参考書を読むシュカを置いて寝室を出た。足音を立てないようそっと歩き、扉を慎重に開け、他の寝室を覗く。訪問ではなく覗きなのは、俺が居ない間の彼氏達の過ごし方を見てみたいからだ。

(ここは……ハルどの、カンナたん、リュウどののお部屋ですな)

同級生同士の仲のいいグループだ。リュウとハルはベッドの上に座っているが、カンナは床に膝をついて……あぁ、ウサギのぷぅ太の様子を見ているのか。

「ぷぅ太、夜ケージの中走ったりするかも……うるさかったら、ごめんね?」

カンナの発声が比較的しっかりしている。比較対象を普段のカンナではなく他の彼氏達に変えればまだまだたどたどしい話し方だが、俺への照れや緊張がなければこんなものなのか。付き合って結構経つのに未だに初々しくて嬉しいような、リラックスさせてやれなくて悔しいような。

「いいよ~全然、多分姉ちゃん達のがうるさいし気になんないと思う。マジうるさいからね、なんか夜遅くまでガサゴソドタドタやってんのよ~」

「俺もかまへんよ、そない神経質な方ちゃうし」

「……ありがとう」

ケージの扉を閉めて立ち上がったカンナもベッドに乗った。

「じゃ、並びどうするか決めよっか」

「ぼく真ん中」

「真ん中がええのん? 暑いで、クーラー効いとる言うても夏場やし」

「……てんくんとも、はるくんとも、隣がいい」

なんて可愛らしい。ハルとリュウの反応はどうだ?

「何それキュンキュンする~! 超可愛いんですけど! や~ん真ん中使って真ん中で寝て~!」

「ほんま可愛ええのぉしぐは。ええでええで好きなとこで寝ぇ。他なんかこれがええっちゅうもんあるか?」

俺と概ね変わらない。二人ともカンナには甘くなってしまうようだ。

「……背向けないで、こっち見て寝てて欲しい」

「分かった!」

「俺寝相あんまよぉないねんけど……頑張るわ」

「そろそろ寝る?」

「も少し話したい……かな」

「よっしゃ話そ」

カンナ、めちゃくちゃ甘やかされてる。カミアいわく昔のカンナは大人をも手玉に取り、何でも思い通りにしてしまうような、そしてそれを当然と考えているようなクソガキ……いや、万能感に溢れて実力も伴っていたすごい子供だったらしい。今俺はその片鱗を垣間見ているのかもしれない。

「今日楽しかった……お肉、美味しかった。みぃくんと……きもちよかった。ラーメン、美味しかった」

「せやなぁ、しかも明日は海やで。今日より楽しいかもしれんわ」

「そだね~。しぐしぐプール休んでたけど泳ぐのはどーなの?」

「……教えて欲しい、かも」

「ゃん可愛い。超超教える超教える~」

カンナの水着はやっぱり火傷が見えないようにウェットスーツみたいな感じなのかな。

「……はるくん、せーくんと……仲良く、する?」

「へっ?」

「今日、叩いた後……すごく、居心地悪かった。ぼく、あれ、やだ」

「……もう叩かないよ。態度悪くならないようにも気を付ける、空気悪くしてるのは……その、分かってた、反省もしてる……でも仲良くは無理。だってアイツが水月を……! 水月、信じらんない、なんで自分虐めたヤツなんか……理由聞いたよ、何回か聞いたけどさ、でも……理解出来ない。ねぇりゅー、アンタ割と仲良く出来てるみたいだけど、なんで?」

「昔話やと……河童とか山姥とか明らかに人殺しとるようなヤツでも、改心したいうてエエヤツなって許されることままあんねん。まぁ、そういうことやな」

「……意味分かんない。しぐはセイカと仲良くしたいの?」

「雰囲気悪いのやだから仲良くしてて欲しい。ぼくは、みぃくんが居れば……でも、てんくんもはるくんも好き。優しくて、好き。せーくんも、ぼくに優しい……だったら、仲良くしても……いいかも?」

カミアの言っていたことが感情で理解出来てきたぞ。俺が今まで見てきた控えめなカンナの姿は俺への照れや緊張が作り出していたんだな。

「え~……しぐって結構ワガママだね~」

「…………嫌い?」

「んなことないけどぉ!」

「ぼくのために、せーくんと仲良くしてくれる?」

「え~……」

「……おねがいっ★」

「頑張る! ハッ……!? な、なんでやる気になったの俺……分かんない、分かんないけど頑張りたい……」

カンナとカミアのあの星アタック何アレ? 異能力?

「てんくん」

「俺は仲良ぉやれとるやろ?」

「うん、はるくん、せーくんと仲良くしたり……さーさんの髪遊んだり、色々する、から……てんくん、ぼく寂しくさせないで。明日、はるくんどっか行っても、てんくんはぼくと一緒」

「おー……まぁ、ええよ。水月どうせあんま来やんしなぁ。寂しいもん同士傷舐め合おうやないの」

ウッ、罪悪感。カンナの強さも堪能したし、罪悪感に襲われたし、他の部屋に移ろうかな。あんまり一部屋ばっかり見ていたら他の部屋の彼氏達が寝入ってしまうかもしれないし。

(さてさてお次は、早寝しそうなネザメちゃまとミフユたんのお部屋ですぞ)

もう寝ていそうだなと薄々考えていたが、その予想は外れた。ネザメはベッドの上でストレッチを行っていたのだ。

「んっ……」

ベッドにぺたんと座り、大きく開脚し、身体を横に倒して手で爪先に触れる。体育の授業でマット運動の前にやらされる柔軟体操はあんな感じだったな。

「背を押しますよ、ネザメ様」

「んんっ……!」

しかしエロい声だな。目をぎゅっと閉じているのもイイ。

「ネザメ様、次は腕を後ろに……」

ミフユはネザメの背後に回り、ネザメの両手首を持って背後へと引っ張った。

「うっ……んっ、んんっ……! 痛、いよっ、ミフユ……」

目を瞑ってみようか、いや、今本格的に勃つのはまずいからちゃんと柔軟体操だということを目で理解しておこう。そう考えて目を開いたのに、ミフユは電動マッサージ器を持っていた。

「では最後にマッサージを行います」

「……必要かい?」

「はい。ネザメ様は別の用途に使いがちですが、こちらはマッサージ器ですので。近頃ネザメ様の身体には多少の柔軟では取り切れない疲れ凝りが見受けられます。ので、これでほぐします」

「分かったよ、好きにしておくれ」

ミフユはまずネザメの肩に電動マッサージ器を押し当てた。やはり普通のマッサージのようだ。しかし、背中のマッサージを終えた後、様子が変わった。

「ではネザメ様、仰向けになってください」

「……はいはい」

「はいは一回です」

「…………はい」

仰向けになったネザメの腹にマッサージ器を押し当てたのだ。あまり詳しくないが、腹筋にもマッサージは必要なのか?

「んっ……! ぅう……お腹がぶるぶるするよ」

「我慢してください」

下腹に丹念に押し当てられるマッサージ器具はマッサージ以外の意味を孕んでいるように見える。ミフユの手つきが妙にいやらしいような……俺の目がおかしいのか?

「ん、んんっ……! ミフユっ、本当にこれ……必要なのかい? 肩やふくらはぎなら分かるけれどっ、お腹なんて僕疲れてないよ……!」

「自分では気付けないものです」

「……んっ、んん……で、もぉっ」

「ではひとまずお腹は終わりにしましょう」

ネザメがほっと息をつく暇もなく、ミフユはネザメの足の付け根にマッサージ器具を押し付けた。

「ちょっ……とぉっ、ミフユ、そこはっ……!」

「歩く、立つ、座る、全ての動作において動く箇所です。多少の不快は我慢してください」

「不快、というかっ……快、というかぁ…………振動がっ……」

腹筋よりはまだマッサージの必要性がありそうだが、絵面がもうそういうプレイだ。

「んっ……く、ぅうっ……!」

「……反対側も行います」

「ミフユっ……んっ、うぅ……! ぅ、あっ……!」

そういうプレイなんだろうか?

「終わりました。お疲れ様です、ネザメ様」

「はぁ……はぁ……もう、ミフユ……それ嫌だよ。反応してしまった……」

ミフユが立ち上がるとネザメの股間に作られたテントが俺にも見えた。上体を起こしたネザメはため息をついてそれを眺めている。

「マッサージでそんな……欲求不満なのでは? いつまでも意地を張って鳴雷一年生の誘いを断っているからですよ」

「……僕が抱きたいんだもの」

「とにかく、それはミフユが早急に処理致しますので脱いでください」

ネザメは不満そうにズボンを脱ぎ、下着を下ろした。ミフユはマッサージ器をネザメの会陰に押し当て、ヴヴヴと音を鳴らし、ネザメの陰茎を根元まで一気に飲み込んだ。

「ぅあっ……!」

マッサージ器をただ押し当てるだけでなく手でぐりぐりと動かし、その上じゅぼじゅぼと音を立てて頭を上下に振って長いストロークでのフェラチオ……ネザメはあっという間に射精を果たし、それを飲み干したミフユは顔色一つ変えず口元を拭った。

「ふぅ……ふぅ…………ミフユ」

「ホットミルクを作ってまいります。道具の消毒と、うがいも行いますので少しかかります。ちゃんと服を着てくださいね」

まずいっ。

「むっ……鳴雷一年生、何をしている」

ミフユが部屋を出ようとしたので慌てて扉から離れたが、自分の寝室に逃げ込むだけの時間はなく見つかってしまった。俺はホットミルクを作りに行くミフユに着いていきながら覗いていたことの白状と謝罪を行った。

「全く覗きなどと人間の風上にも置けぬ行為を……深く反省しろ。だが、都合がいい、説明の手間が少し省けた」

「説明……?」

「ネザメ様にも貴様に抱かれる幸せを知って欲しい。しかしネザメ様は強情だ。ので、自分はネザメ様が自ら貴様に抱かれる気になるよう、ミフユが抱かれ慣れて以降新たに性感帯となった身体の外側から刺激出来る部位をマッサージ器で刺激している。ネザメ様は少し抜けていてな、本当にただのマッサージだと思っているので気付かれずに開発が可能だ」

「…………マジ、すか」

まさかミフユがそんな方向性の協力をしてくれていたなんて。彼氏の開発は全て自分で行いたいという願望はあるものの、ネザメだけは彼に嫌がられないやり方が思い付かなかった。ミフユがやってくれていて助かった。

「ありがとうございます……! それしか言えません」

騙すなんて多分俺には出来なかった。途中で罪悪感に耐えられなくなっていただろう、ネザメの幸せのためだと確信し罪悪感を覚えないミフユだからこそ出来たことだ。俺はネザメを騙していることに対して非難など出来る立場にない、ただ拍手を送ろう。
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