冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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二度目のお風呂

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セイカにお姫様抱っこをし、やや強引に浴場へと運ぶ。断りなく抱き上げて連れてきてしまったけれど、彼は扉を開けたりなど協力してくれていたし、きっと俺と二人きりの時間を楽しもうとしてくれているに違いない。

「下ろすぞ」

「ん……」

脱衣所でセイカを下ろし、バスローブを脱ぎ捨てる。もそもそと服を脱いでいるセイカをじっと見つめる。

「……ちょっとくらい待てよ」

「見てるだけだよ、急がないで」

ぎこちない、危なっかしい脱衣は庇護欲を煽るのはもちろん嗜虐性まで引き出す。複雑な欲望や衝動は生物として最も単純な欲求へと、性欲へと昇華する。

「セイカ……はぁ、イイ」

乱交の際、一発分はセイカのためにとっておいた。しかし散々行為に励んだからある程度触れ合わなければ勃つほど興奮は出来ないと思っていた、しかし脱いでいる姿を見ただけで俺は……流石だ、セイカ。流石俺の初恋。

「んっしょ……脱げた」

シャツを脱いで右腕の断面を晒す。ズボンを下ろし、自前の足をズボンから抜く。

「…………鳴雷ー、ズボン脱がして義足外して運んでくれ」

「鳴雷、じゃないだろ?」

楽をしようとねだってみただけだからか、セイカは嫌そうな顔をすると何も言わず自力でズボンを脱ぎ切った。

「セ、セイカぁ、みちゅきたんくれよみちゅきたん!」

「二度と言わない……」

「なんでぇ!? 新しいデフォじゃないのぉ!?」

「……恥ずかしい、バカっぽいし。一回一回の消費カロリー重過ぎ……体温上がり過ぎて痩せこける」

「こけっ……!? い、いや、何回も言っていけば慣れる! カロリーオフ!」

下着まで脱ぐとセイカは俺の横をすり抜け、スタスタと浴場へ向かう。

「分かった分かったもうねだらないからぁ! 義足濡らしたくないんだろ? 外せよ俺が運ぶからぁ!」

「多分錆びないと思うし……」

「錆びる錆びるもうすんごい勢いで錆びる!」

情けなく喚いてセイカを止め、むすっとした表情の彼の義足を外させていただいた。

「一人で入ればよかった」

「そんなこと言うなよー、みちゅきたんとお風呂えっちしてくれるんだろ?」

「…………」

「なんて冷めた目! えっ……し、してくれるよな? セイカ……俺もう臨戦態勢なんだけど」

「冷たい水でもかけろよ」

本当にする気がなくなってしまったのだろうか。もしそうなら仕方ない、セイカの言う通り冷水をかけるかセイカを見ながら抜かせてもらうかしよう。

「はぁ……」

落ち込みながらもセイカを抱え、彼を浴室へと運ぶ。浴室用の椅子に座らせ、シャワーヘッドを座っていても手の届く位置へ下ろし、後二つあるシャワーの元へ行こうとすると、手首を掴まれた。

「……セイカ?」

「す、する……どこででも、いつでも、何回でも……鳴雷が言うならセックスするからっ、行かないで……き、嫌わないでっ。ごめんなさい生意気言って……」

「…………セイカぁ、もぉ……俺怒ってないしセイカのこと嫌ってもないぞ? セイカのこと好きだから、ちょっと冷たくされただけで落ち込んじゃっただけだ。そんな泣きそうな顔するなよ……そんなふうにも言うな、したいって思ってくれた時だけ俺の誘いに乗ってくれたらいいよ」

掴まれていない方の手でセイカの頭をくしゃくしゃと撫でる。

「鳴雷が……鳴雷が誘ってくれたら、俺いつでもしたくなるから……だからぁっ」

「あぁ……ありがとうな、嬉しい……泣かないで」

「……抱いてくれる?」

「もちろん! 俺そうしたいってずっと言ってたろ?」

「うん……ごめん、ごめんなさい……勝手に、なんか、面倒臭いことして……」

「いいよぉ、そういうのが可愛いんだから」

頭を撫でていた手で後頭部を支え、唇を重ねる。何度も何度も、舌は入れず唇を触れ合わせるだけの、音が鳴るのを繰り返し繰り返し。

「んっ……ん、鳴雷……じゃあ、面倒臭いこと言えなくなったら、俺に興味なくなる?」

「面倒臭いことって要するに、嫌いになっただろとかそういうヤツだよな? なら、それ言わなくなったってことは、俺に愛されてるって絶対的な自信を持ったってことだよな? 最高だよそれ、すっごい嬉しい」

よく居る「もう私のこと嫌いなんでしょ!」系の恋人は「そんなことないよ」以外の言葉を予想してはいないし、認めない。でもセイカは違う、本当に不安になって、確かめようと言葉をねだる。そんな面倒なことをさせてしまったから嫌われたのではとまた不安になり──の無限ループ。可愛い、

「大好きだよ、セイカ」

「…………うん」

「セイカは? 俺のこと好き?」

「……うん、好き」

「嬉しい。じゃあ……」

脇腹をするりと撫で下ろし、尻を鷲掴みにする。

「……っ、か、身体っ、身体洗ってからでもいい? 犬と遊んだりして、結構汗かいてさ……鳴雷には、不潔なの触って欲しくない」

「俺はちょっとくらい汗臭い方が興奮するんだけどなぁ……分かった、洗い終わるの待ってるよ」

「うん……冷えるから、お湯浸かってて」

「ありがとう、優しいな」

「そんな……そんなことない、俺なんか……最低だ」

「俺の好きな人のことそんなふうに言わないでくれよ」

黙ってしまったセイカの頭を撫で、額にキスをし、彼の言う通りに湯船に浸かった。広過ぎる浴槽の縁に肘をついて一メートル弱先のセイカを眺める。

(わたくしの家のお風呂でしたらもーっと間近で観察出来ますのに)

小豆色に染めた髪が白い泡に覆われていく。セイカが赤色が好きだったとは知らなかった、そういえば中学時代は毛先だけ染めていたっけ? ホムラは小遣いすら渡されていなかったのにセイカはあの程度のオシャレすら認められていたということは、セイカが俺を虐めた件のしわ寄せがホムラにあったということだろうか? 自由にさせていると厄介事を起こすかも、と?

「……なぁセイカ、ホムラくんから電話とかあったか?」

「ない……忘れたんじゃないかな、あっちでの暮らしが楽しくて……そうならいいな、ホムラには幸せになって欲しい」

「いいお兄ちゃんだな」

「……お前に言われてもな」

「えぇ? 俺兄としてはいいとこないぞ? 弱いし、泣かすし……ヤってるし」

楽しくて電話をかけるのを忘れているのならいいのだが、向こうでも電話をかけることすら出来ない窮屈な暮らしをしている可能性はゼロではない。こちらから電話をかけてみてもいいかもな。何時頃なら出るだろう、昼頃かな。

「……なぁ、鳴雷。相談いい?」

「なになに?」

「秋風の誕生日プレゼントなんだけど……」

「あぁ、セイカはレイと先輩と出かけた時に買ってきたんだっけ?」

「……うん。俺は……俺は完成品買おうとしたのに、手作りの方が気持ちが伝わるっすーとか言って……強引に、キット買われて……お金出してもらってるからあんまり強く逆らえなくて……でも俺、もう手片っぽしかないから手作りなんか……出来なくて。だから……鳴雷、鳴雷手先器用だろ? 代わりに作ってくれないか……? 頼むよ、お礼は俺に出来ることなら何でもするから」

何でもする、なんて魅力的な言葉だろうと思ってしまうが、そもそもセイカは元から割と何でもしてくれる。嫌がる素振りを見せても「そっかぁ」と落ち込んでみせれば慌てて縋り付いて「やる!」と言う、さっきもそうだった。

「うーん……いいけどさ、セイカからのプレゼントならセイカが作るべきなんじゃないかな? ま、一回見せてくれよ。もしかしたらどうにか片手でも出来るかもしれないし」

「……出来ないと思うけど」

「出来なくても! 一応手は出せよ、俺一人では作らないからな」

「…………うん」

さて、レイと歌見は一体どんなものを買わせたのか。隻腕に配慮してくれたと信じたいな。
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