冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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ラーメンを作ろう!

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アキが俺の誘いを断り続ける理由をセイカは知っている。俺はセイカを問い詰めて、おそらく体調に関連する理由だろうというところまでは分かった。

「ごめんな、セイカ。聞き出そうとして。アキが隠したいんならそれを尊重するよ、アキとの約束守ってやってくれてありがとう」

「……そんな、俺は」

感謝を遠慮しながらもセイカの口角は確かに上がっていた。

「みっつ~ん! お待たせ~!」

どん、と俺にぶつかるようにして抱きついた者の声を聞いた瞬間、セイカの口角は下がり、彼は身を縮めて蹲ってしまった。

「ハル……」

「色んなケアに時間かかっちゃってさ~……みっつんもせっかく綺麗な肌してるんだから~、保湿くらいはしなよ~?」

「肝に銘じておくよ」

カミアのライブ前日にハルの家に泊まったことがある、今彼が着ているのはその際に着ていた物と同じだ。もこもこしていて、上は長袖下は短パン、女の子らしさのあるデザインだ。

「……やっぱりその寝間着可愛いなぁ、また見られてよかったよ」

「え? あっ、そっか、そういえばカミアのライブ前に見せてたね~。覚えててくれたの? えへへ……」

「髪下ろしてるのもなんか久々だし新鮮だなぁ……すっぴんもレアだし」

「や~だノーメイクの顔そんな見ないで~」

ハルは両手で顔を隠したが、すぐにそれをやめて俺をじっと見つめた。すっぴんもちゃんと褒めて欲しいのだろう。

「メイクしてなくても可愛いよ、眉毛ほとんどないからだいぶ印象変わるけど……後アレだな、アイメイクないと目力の強さちょっと下がって、他のとこにも目が行きやすくなったっていうか……鼻筋の通った美少年だなって改めて思った」

「え~? 眉毛って、もぉー……見ないでってばぁ」

「いつもより男の子っぽくて、なんかすごく……イイな。無防備感っていうか、素を見せてくれてる感? 俺はハルにとって特別なのかなーって」

「特別だよ~当たり前じゃん! ぁ……ってなると素顔みんなに見せちゃダメじゃん。ナナさん! 記憶消して!」

「数分ぶり二度目の記憶消去依頼に驚きを隠せない」

きゃぴきゃぴはしゃぐハルを愛でつつ、横目でセイカの様子を確認する。俯いてからピクリとも動いていない、まるで自分はここに居ないとでも言うように。けれどそれが通用するのは一部の両生類や爬虫類だけだ。

「皆さん揃いましたね」

「秋風くんがお風呂に行ってしまったよ」

「そうですか、でも言います。皆さん、お腹空いてません?」

空いている。バーベキューをしたとはいえ、たくさん肉を食べたとはいえ、アレは昼間のこと。しかも先程たっぷり運動したばかり。食べ盛りの年頃である俺の腹が減るのは当然のことだ。

「せやなぁ、腹減ったわ」

「俺も減ったかも~」

「ボクも」

「俺も」

「ですよね。年積さん」

これが皆の総意だ、とシュカは訴える。明日の準備でもしているのか、トマトを輪切りにしていたミフユは深いため息をついた。

「まだ眠るには早い、我慢しろと言うのも酷だな。仕方ない、ラーメンでも作るか?」

「ラーメン! いいな、食べたい。もう口がラーメンしか受け付けない」

「俺醤油がいいな~」

「俺塩がええ」

俺は豚骨がいいな。おや? そういえば言い出しっぺのシュカはラーメンが嫌いだったはずだ。

「ラーメンは嫌です」

「どうしてだい?」

「嫌いなんですよ」

「博多出身のくせに」

「水月のせいで余計嫌いになりそうですよ。全く博多って聞くとあなた方東京人はラーメンラーメン……ラーメン以外知らないんですか!」

「俺ぁ博多聞いたら明太子のが先出るなぁ」

「あなた大阪でしょ、今はコイツら東京人の話をしてるんですよ」

「水月ぃ、とりりんがはみごにしよる……」

まぁ確かに〇〇なら〇〇だろう、みたいな決め付けはよくないよな。俺も昔はデブならピザが好きだろうと言われたがピザは好きだな……コーラも好きだ、ラーメンはこってり豚骨がいいし、揚げ物は何でも大好きだ。あれ……? 何の話してたっけ?

「なんか色々考えてたらお腹空いてきた……ミフユさん、インスタントラーメンとかあるんですか? 早く作りましょうよ」

「ネザメ様も口にするかもしれんのにインスタント食品なぞここに持ち込む訳がないだろう」

インスタント食品は企業努力の結晶だからそこらの手作りより絶対美味いんだぞ。

「ちゃんと生麺がある、具材もな。ミフユは出汁をとるから鳴雷一年生は具材の準備を頼めるか」

「出汁ってそんな本格的な……俺達もっと手早く食べたいんですけど。麺だけでもいいし……」

「豚足を一晩煮込むなど言わん。煮干しと昆布と鰹節だ、煮干しのワタ取りなどは事前に済ませてあるしすぐに済む」

「はぁ……」

煮干しと昆布かぁ、それでも一時間くらいはかかるんじゃないのか? 粉末出汁とか使おうよ。

「十二人前だぞ! 早く食べたいならさっさと取り掛かれ!」

「はっ、はい!」

「ぁ、俺も何か手伝うっす!」

「ほな俺も」

「……! ぼく、も」

「じゃあボクも~」

料理が出来る者も出来ない者も、彼氏達は全員キッチン周辺に集まった。いや、全員ではない。セイカはソファの上で蹲ったままだ。

「あの、具材ってどれ使うんですか」

「ラーメンの具材も分からんのか? 焼豚、卵、ほうれん草だ、ネギと海苔はそれぞれ好みで入れろ」

「す、すいません…………あの、それって冷蔵庫のどの辺に」

「あぁもう!」

ミフユは冷蔵庫を勢いよく開けると使う具材を全て出してくれた。十二人分となるとかなりの量だな、シュカが最低三人前平らげることを計算に入れているのなら十四人前か。

「チャーシュー……厚み、これくらいかなぁ。いや、こんなもん……?」

「肉先切るん? 普通野菜からちゃうん」

「肉生じゃないからいいんじゃないすか?」

「まな板もいっこあるからそっちでしよーよ同時並行的にさ~」

「た、まご……茹で……」

「あぁ、そうか。ラーメンの卵って煮卵だもんな。一人一個でいいのか? 鍋みっちみちだな……これ全部後で殻向くのか、面倒臭いな……」

「ネギも切らなきゃっすね、俺ネギいらないっすけど」

「ボク欲しいなぁ」

俺がチャーシューの厚みで悩んでいる間に彼氏達は他の具材の準備を進めていく。頼りになる彼氏達だと惚れ直すと同時に、自分の要領の悪さにため息をついた。
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