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嘘をつくのは下手

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アキもセイカも俺とのスキンシップを断った。怒らせてしまったのか、それとも二人で居る時間が長過ぎて二人共が俺から互いに乗り換えたのか。後者だったら俺の脳は跡形もなく破壊されてしまう。

《兄貴ら風呂入ってきたのか? そんな匂いがするぜ》

「お風呂入った? って」

「え? あ、あぁうん……入ったけど」

《俺も入りたい、犬と遊んで結構汗かいたんだよ。今風呂入れるよな?》

「俺達もそろそろ風呂入りたいんだけど、今大丈夫かって」

「今はカンナが入ってるから、カンナが上がったらかな」

サンの髪の手入れには結構時間がかかった。カンナももう風呂から上がっていていい頃だと思う。

「アキ、お風呂、お兄ちゃん、一緒入るするか? 温泉、しよう!」

「いや、です」

「えっ……な、何もしないぞっ? えっちなことしない! お兄ちゃんもう頭も身体も洗っちゃったから、えっと……眺めるだけ! 湯船浸かって眺めるだけだから!」

アキは首を傾げてセイカの方を見る。セイカが呆れ顔で翻訳をするとアキはまた「いやです」とキッパリ言い切った。

「なんでぇ……? セイカっ、セイカは一緒にお風呂入ってくれるよなっ?」

「お前もう入ったんだろ?」

「いいじゃん何回入っても。ほら、アキは気分じゃないって言って出てっちゃったけどさ、セイカはアキに付き添ってあげただけだろ? だからセイカはもしかして気分じゃなくないのかなって、俺とシてくれるかなって思って……ちょっと体力温存してきたんだよ」

距離を詰め、セイカの右膝に腕を置き、彼の左手首を掴んで引いて手の甲にキスをする。

「……他の奴らと散々ヤってきたんだろ?」

「セイカの分残してきた。セイカがしたくないって言うなら……そうだなぁ、お風呂覗きの許可くれよ、セイカで抜きたい。ほら、どうしても今晩はカレーが食べたいってなる時あるだろ? もうカレーの口になっちゃったとか言うだろ? アレだよ、セイカの……何、ちんちん……? セイカのちんちんになっちゃったんだよ」

「その言い方はもう俺のそれじゃん」

「セイカ、良ければ俺とお風呂えっちしてください」

真っ直ぐにセイカの目を見つめてそう頼むと、彼は顔を赤らめて小さくとだが確かに頷いた。

「な、鳴雷が……そう言うなら」

「っしゃあっ! でもセイカ、違うだろ?」

「……へっ?」

「鳴雷、じゃないだろ? ほら、昼間……な? 俺……あの呼び方されたいなぁ」

セイカの太腿に頭を置いて甘えるようにセイカを見上げる。

「ぅ……う、歌見っ、耳閉じてろっ、お願いします……き、聞かないで」

「え……? あ、あぁ、分かった」

どんどんセイカの顔が赤くなっていく、そろそろ耳まで染まりそうだ。

「……っ、あ……み、みっ…………みちゅきっ、たん……が、俺と……し、したいんだったら、うん……分かっ、た。ぉ、お風呂えっち……? する、み、みちゅ……みちゅきっ、たん……と、します……」

萌え死にそう。

「くっ……この世の、全てがここに……俺の宝が、ここにっ……! ここがラフテルやったんやぁ……」

「なんでエセ関西弁なんだ」

「あっ、歌見ぃっ、おまっ、き、聞くなって! 俺ぇっ!」

「いや耳を手で塞ぎはしたんだ、見てただろ? ただその……手の防音性能が思ったより低くて」

「忘れろ! 忘れろよぉ! 鳴雷もだ! ちくしょう恥ずかしい……」

《スェカーチカ? どうしたんだ?》

《なんでもないっ!》

涙目で照れているセイカの顔も最高だ、先程のえっち承諾台詞と共に永久保存版として発売しよう。ちなみに購入権利は俺にしかない。

「……お、時雨くん来たぞ」

「ぅへへ、購入特典はセイカ様の……あ、カンナ、おかえり。お疲れ様。アキ、お風呂入っておいで」

たっぷり温まった様子のカンナは真っ直ぐに俺の方へやってきて抱擁をねだった。可愛いおねだりには当然応え、リンゴのようなほっぺに愛撫とキスもしてやった。

「カンナちゃん上がったの? おいで」

「ぅん……みぃくん、また……あと、で」

サンに呼ばれてカンナは彼の元へ。アキはさっさと風呂に向かった。セイカと一緒に入る気もそもそもなかったようで、セイカとの間にすら会話はなかった。

「セイカと入りたがるかと思ってたよ」

「俺も。やっぱり外国は一人風呂文化なのかな?」

「アキきゅんわたくしと入るの大好きなはずでそ、温泉ですって言ってしょっちゅう誘ってくれましたからな」

他の彼氏達に聞こえないよう小声で口調を戻す。

「そしてわたくしと入ってはスリスリちゅっちゅ、ちんちんにぎにぎ……あんなに積極的で可愛かったのにぃっ! 嫌です、嫌です!? 嫌ですって言われたぁ! 反抗期ぃいぃいぃいぃ……おーいおいおいおい、おーいおいおいおい……ぉぃぉぃぉぃ……」

「変な泣き方するな」

「秋風……その、今日はちょっといつもと違うから、気にしなくていいよ。すぐ元に戻るから……」

「戻らないかもしれないじゃないですかぁ!」

「大丈夫だよ、戻るよ……」

「なんでそんなこと言えるんです? わたくしよりアキきゅんを理解していると? そりゃそうでしょうとも言語的に……ぅうぅ……本当に大丈夫なんですよな? 信じますぞセイカ様

「……うん、大丈夫……もうしばらく我慢して」

何となくでアキの機嫌を察しているだとかではなさそうな、妙にハッキリとした言い方が気になる。

「セイカ……何か知ってるのか? アキが距離取ってる理由」

「へっ? い、いや、そんな、知らないっ、知ってる訳ないじゃん」

「……頼むよセイカ、ちょっとふざけて話してるから分かんなかったかもしれないけど、俺かなり落ち込んでるんだよ……アキに色々断られたこと。ただの気分じゃなくて、アキが俺の誘い断る理由がハッキリしてるんなら、教えてくれ」

セイカはしばらく黙っていたが、見つめ続け「頼む」と何度も呟く俺に根負けしたようで、話してくれた。

「秋風に言うなって念押しされてる。だから……ダメ、言わない。しばらくしたら元に戻るから、我慢してくれよ」

しかし、その内容までは教えてくれなかった。

「……理由がちゃんとあるんだな? で、アキはそれを俺に教えたくない……と。そっか……誕生日が近いのに関係あるか?」

「え? 関係ない、けど……」

「そっか、じゃあ体調とかか?」

「……秘密なんだ、約束したんだよ」

違うではなく言わないという答え。なるほど、体調か。アキは体調が悪い……そしてそれを俺に隠している。犬と遊べて俺と触れ合えない体調の悪さとはどういうものなのか想像が付かないが、ここまで分かればセイカを問い詰める必要はもうない。

「そっか、分かった。もう聞かないよ」

秘密を守り切ったと思っているセイカは酷く安心した顔になった。
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