冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
上 下
944 / 2,136

ホラー映画の絵面

しおりを挟む
サンが髪を洗い終え、ようやく全員が湯船に浸かった。しかしハルがサンの髪持ちからカンナを解放するため、サンの髪をまとめるためのタオルを取りに一旦脱衣所へ戻った。

「巻くよ~、サンちゃん。痛かったら言ってね」

「うん、ありがとうハルちゃん」

ハルは手際よくサンの髪をまとめてタオルに包んだ。サンの頭の上のタオルの膨らみはハルよりも大きく、少々不自然に見えた。

「カンナちゃんもありがとうね、持っててくれて」

「……!」

無遠慮に肩を組まれたカンナは小さく首を横に振る。どういたしまして的なことを伝えたいのだろうか。

「……? カンナちゃん、ボクはアンタの様子見えてないから声出してくれないと分かんないよ」

「ぁ……ごめ……な、さい」

「なんで謝るの? ボクありがとうって言ったんだよ、さっき頭動かしたよね? 振動は伝わってきたよ、なんて返事してくれたの?」

「ぇ、と……気に、しな……で。って……」

「気にしないで? そっか、いい子だね。水月の次に可愛い」

サンはカンナを抱き寄せ、手の甲で頬をふにふにと弄んだ。髪をまとめたことで厳つい刺青が丸出しになっており、ハルとは別の緊張感を周りに与えているが、密着されているカンナは比較的リラックスしているように見える。服が湯の浮力でめくれてしまわないかを気にしつつも、サンのスキンシップに応えている。

「え~、サンちゃん俺はぁ?」

「じゃあその次」

「えぇ~」

「ふふっ、冗談だよ。水月の次はほぼ横並びかな~、みんないい子だよね。フユちゃんとかも」

突然話題に出されたミフユは大きな丸い瞳を更に大きく見開いた。

「ミフユ……ですか?」

「色々お世話してくれただろ? ちっちゃいのにえらいよねぇ」

「……ミフユは十六歳ですよ」

「水月と同い歳?」

「いえ、一歳上のはず……ぁ、鳴雷一年生はもう誕生日を迎えたのだったな。むぅ……同い歳です」

不満げな顔だ。誕生日を迎えたから半年くらいは同い歳だなんて細かく考えなくてもいいと思うのだが……それだけミフユの中で俺よりも歳上というのは大切なことなのだろうか。

「ボクからしたら十歳も下なんだからちっちゃいって言ってもよくない?」

「…………はい」

釈然としていない顔だが、身長ではなく年齢が理由だと言われてはそう答えるしかないだろう。

「あ、そうそう。ナナくん」

「はい」

「さっきハルちゃん女の子っぽくて緊張するって話してたよね」

「聞こえてましたか……後半みっともない話になったので聞かなかったことにして欲しいんですけどね」

「ボクは?」

「……へっ?」

「ボクのが髪長いよ、ボクにも緊張する?」

サンは女性というより怪異レベルの長髪だし、ガタイが良過ぎるのでハルと違ってあまり女性らしくは見えない。裸になると髪より刺青の方が目立つから、そっちの意味でなら緊張する。

「えっと……あんまり。背が高いからですかね」

「女の子っぽくない? そう……別にそういうの目指してる訳じゃないけど、違うって言われるとそれはそれで、なーんかなぁ~……」

「俺も結構背ぇ高くな~い?」

「俺よりは小さい」

ハルと歌見の差は十センチちょっとだったかな。

「まぁそだけど……ぁ、言っとくけどさぁ、俺も別に女の子目指してる訳じゃないよ~? 姉ちゃん多いからセンスが女子寄りで~、メンズよりレディースのが似合うってだけで~……でもみっつんにはお姫様扱いして欲しいかも~?」

「してるつもりだよ、ハル姫様」

「や~ん超王子な顔面~、好きぃ~」

また俺の腕を抱き締める手足の力が強くなった。ヤバい、勃つ……昔見たアニメの拷問シーンでも脳内再生しておくか。

「…………目指してなかったのか、めちゃくちゃ意外だ」

「やはり歌見殿は固定観念が強いのでは?」

「そ、そうなのか? これがジェネレーションギャップか……」

世代はあまり関係ないと思う、俺もハルは女性的なところが多いと感じているから。見た目だけの話ではなく、セイカへの対応とかも。

「……そういえばレイは髪まとめないんだな」

レイは後ろ髪だけは腰まで届く長さがあるが、ハルやサンのようにタオルを使ってまとめたりはせず首にくるんと巻いて湯船に浸からないようにしている。

「頭にタオル巻くと菌繁殖するって前どっかで聞いたんすよね」

「えっ……!?」

「ゃ、誰がどこで言ってたか覚えてないんでそんな気にしなくていいと思うっすよ。俺は伸びてるとこ少ないっすし、そんなしっかり巻かなくても大丈夫ってだけっすから」

「上がったらヘアケア調べ直そ……」

ハルはすっかり落ち込んでしまったが、サンは全く何も気にしていないように見える。聞こえていなかったのかと思えるくらいに。

「……そ、そろそろ上がろうか? のぼせちゃうしな」

早く調べ直したいだろうハルを気遣ってそう言うと、全員が頷いてくれた。

「ぼ、く……残る、ね」

「あ、そっか。カンナちゃんまだ頭とか洗ってないんだっけ。ごゆっくり~、上がったらボクのとこ来てね。水月どうせ来てくんないだろうし、もうしばらくアンタ可愛がりたい」

「……ぅん」

脱衣所へと向かう彼氏達を見送り、全員出ていってから立ち上がるカンナに手を貸した。

「俺は居てもいいだろ?」

「ぅん……で、も……み、くん、ふや……ちゃ……」

「ふやけないよ」

「…………みぃくん、先に……れ、乾か……て、くれ……な……?」

カンナはそう言いながらズルンと頭皮を剥──いや、カツラを外した。頭皮から再現されたこのリアルなカツラは外している姿が心臓に悪い。

「分かった。ドライヤー当てていいのか?」

「ぅん……あと、ね……ぼくの、かば……から、けしょ、す……とか……持って、き……欲し……」

「化粧水? 保湿用か? 分かった、すぐ持ってくるよ」

「……ろ、いろ……ごめ、ね?」

「いいよ、カンナに頼られて嬉しい。じゃ、ゆっくりしておいで」

焼け爛れた跡が目立つ額にキスをして、カツラ片手に浴場を出た。脱衣所で悲鳴が上がったのは言うまでもないだろう。

「びっ……くりしたわぁ、それヅラやんな?」

「すごいですね、ちゃんと毛穴から髪が生えてますよ。本物の人間の頭の皮みたいです」

「だからびっくりしたんだよ~」

「皮剥ぎ系の殺人鬼……」

「時雨一年生のウィッグか? 何故持って出てきたんだ」

俺は濡れたカツラを先に乾かしておいて欲しいとカンナに頼まれたことを説明した。多分、俺に浴場で待たせるのを申し訳なく思っての行動だろうとも。

「ふむ……ペット用乾燥機を使うか? ここに運び込んであるんだ。高温過ぎも低温過ぎもしないし、普通のドライヤーを使うよりいいと思うぞ」

「いいかもですね、使わせてもらっていいですか?」

「うむ、しかし適当に置いては型崩れなどの恐れがあるな……型崩れをするような物なのかは分からないが、分からないからこそ慎重にならねば」

考え抜いた俺とミフユはタオルを人間の頭サイズに丸め、カツラをそれに被せてペット用乾燥機に入れるという結論を出した。

「生首が乾燥機に……」

「日常系サイコホラー」

「こんな絵面放送禁止やろ」

いいアイディアのはずなのに、他の彼氏達には好き放題言われてしまった。
しおりを挟む
感想 492

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。

とうふ
BL
題名そのままです。 クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

真面目な部下に開発されました

佐久間たけのこ
BL
社会人BL、年下攻め。甘め。完結までは毎日更新。 ※お仕事の描写など、厳密には正しくない箇所もございます。フィクションとしてお楽しみいただける方のみ読まれることをお勧めします。 救急隊で働く高槻隼人は、真面目だが人と打ち解けない部下、長尾旭を気にかけていた。 日頃の努力の甲斐あって、隼人には心を開きかけている様子の長尾。 ある日の飲み会帰り、隼人を部屋まで送った長尾は、いきなり隼人に「好きです」と告白してくる。

処理中です...