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バーベキュー再開
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長いキスが終わるとネザメはへなへなとその場に座り込み、アキは脱力した彼から日傘を受け取った。
《シューカにご奉仕しなきゃな。翻訳役頼むぜスェカーチカ》
右手で傘を、左手でセイカの腕を抱き、シュカの元へと向かった。謝罪を受け入れる代償としてこき使われてやるのだろう、微笑ましいな。
「今度はネザメ様が放心なされてしまったが、一件落着でいいんだな? コンロに火をつけ直すぞ」
「あ、はい……申し訳ありませんでした。ご迷惑をおかけして……みんなも、ごめん。楽しい旅行にしようって話したのに……こんなことになっちゃって。原因は俺だよ、ごめんな」
「……問題ない、多少の衝突があってこそ人間は深いところで繋がれるとミフユは考えている。大丈夫だ鳴雷一年生、この旅行は有意義なものだし我々の結束はより──」
「原因はアイツじゃん。みっつんは何にも悪くない! ちょっとしたことで昔思い出してあんなに怯えるくらいイジメたアイツが悪いんじゃん!」
「……やめぇやハル、水月は許しとるしせーかは反省しとる。みんな目ぇ瞑っとる。空気悪しとるんは自分や」
「はぁ……!? アンタは、アンタらはまだ黙ってられんの? 俺無理、俺もう無理っ、水月あんなに怖がって、泣いて! やめてって! 土下座してた! 様付けでさ、殴らないでって、蹴らないでって泣いて……無理無理無理絶対無理! 大嫌いアイツ許せない!」
俺の情けないところを反芻しないで欲しい、恥ずかしい、顔が熱くなってきた。
「しぐ! アンタはどう? アイツ許せるの?」
「だ、って……そんな、ふ……言っちゃ、みぃくん、嫌がる……みぃくん、せーくん……大事、に、して、る……から」
「あっそう……ナナさん! ナナさんは?」
「いやあの子もあの子でかなり可哀想でな……そりゃさっきの水月見ると、なぁ……腹が立つのは分かるが、そんな……叩いたりはダメだろ?」
「……っ、このめん! アンタはどうなの、アンタみっつん大好き勢でしょ!」
全員俺大好き勢であって欲しいんだが。
「わ、分かんないっすよぉ! 今回スイッチ押しちゃったのは俺っすし……総合的なダメージで言えばくーっ……俺の元カレが与えちゃった方が上な気がするっすし」
「イジメは物理ダメージじゃなくて継続精神ダメージが本体なの!」
「んなこと言われてもぉっ……せんぱい特殊過ぎて、イジメっ子許して付き合ってるとかよく分かんなくてぇっ」
「……っ、そうだよみっつん! なんであんなヤツ! 別れちゃってよもう! アイツさえ居なけりゃみっつんあんなふうにならないのに!」
「なるよ。セイカが居なくなったら記憶喪失になる訳でもないんだから……何かの拍子には多分なったよ。ハル……お前に踏まれて思い出したこともあるしな、あの時はここまで酷くなかったけど」
「え……で、でも……アイツが居なかったらみっつんイジメとかなくて……」
「セイカが居ても居なくてもイジメられてたよ、俺はそういうヤツだった。実際セイカとは別々だった小学校の頃もイジメられてたしな」
「…………でもぉ」
「……昔俺を虐めてたセイカがあんなに弱々しく、俺に縋ってるんだ。最高の気分だよ。このまま飼い殺しにすればトラウマ克服出来そうだと思わないか? 別れて、追い出して、忘れようとしたって消えないトラウマなんだから……弱いうちに支配して克服しちゃわないとな」
「でもっ……」
「俺がセイカをどんなに好きかは前にも話したろ? ハルはキモいって言ってたっけ。うん……気持ち悪いくらい好きなんだ、だから別れろなんて言わないでくれよ」
ハルはとうとう黙り込んでしまった。
「……俺のこと大事に思ってくれてるのは伝わるよ、ありがとうなハル……愛してる。でも手ぇ上げちゃダメだぞ?」
「ごめんなさい……」
「謝るのは俺じゃなくてセイカだろ? まだ無理かな……無理ならいいよ、無理しなくて。大丈夫、俺はハルを愛してるからな、泣かないで……大好きだよ」
「ごめんなさい……ごめんなさい、ちょっと、一人にして……一人で、考える」
「……うん、いつでも俺のとこに帰ってきてくれ」
ひょこひょこと庭の隅へ向かい、そこで蹲ったハルの元へ犬が走る。先程の俺のように顔を舐められているようだ、一人で考える時間は与えられそうにないな。
「…………上手いな。そんな小賢しい打算的な理由で狭雲と付き合ってる訳じゃないくせに」
「嘘はついてませんよ、弱々しいセイカに嫌な萌え方してるのは事実ですから」
「そんな自分が嫌なくせに、あんなふうに言って……だから嘘つきじゃなくて上手いって言ってるんだ、単に好きってのが一番デカいくせに」
「なーんか嘘つきって言われるより上手いって言われた方が、タチ悪いヤツっぽくないですか?」
「お前はタチ悪いだろ、こんな何人も惚れさせて」
「勃ちは抜群ですよ、でなきゃ何人も相手出来ませんから」
歌見は呆れたとため息をつき、それから笑い出した。
「急に下ネタに変えやがって……ったくこのバカ。ふふふっ……さ、肉食おう肉、まだ全然食べてないからな」
「…………あっ米」
リュウが米の元へと走り出す。騒動中コンロの火はミフユが止めていたが飯盒炊爨と燻製器はそのまま放置されていた。嫌な予感がする。
「みぃ、くん……」
「ん? 俺ならもう大丈夫だよ、カンナ。心配かけたよな、ごめん……あぁ、可愛い……可愛いなぁカンナ、俺の癒し……ジュースくれるか? ん、ありがと」
カンナが持っていたコップを受け取り、オレンジジュースを啜る。カンナは氷入りの冷たいジュースが入ったコップを持ち続けてすっかり冷えた手を俺の頬に当てた。
「お……冷たくて気持ちいいな、本当に癒しだ……はぁ最高。あ、レイ、燻製器見に行くのか? 用事終わって、その気になってくれてたら来てくれ、さっきのとこで待ってる。セックスしようぜ! カンナもするか?」
「ぷぅ太、近……から、ゃ……」
「じゃあぷぅ太寝たり離れたりしたら、な。また後で、カンナ」
カンナにキスをし、燻製器の元へと向かうレイとサンを見送り、通りすがりに歌見の尻を揉んで手を叩かれ──ようやく立ち上がったネザメの頬にキスをして再びへたり込ませ、ミフユにしっかり怒られた。
《シューカにご奉仕しなきゃな。翻訳役頼むぜスェカーチカ》
右手で傘を、左手でセイカの腕を抱き、シュカの元へと向かった。謝罪を受け入れる代償としてこき使われてやるのだろう、微笑ましいな。
「今度はネザメ様が放心なされてしまったが、一件落着でいいんだな? コンロに火をつけ直すぞ」
「あ、はい……申し訳ありませんでした。ご迷惑をおかけして……みんなも、ごめん。楽しい旅行にしようって話したのに……こんなことになっちゃって。原因は俺だよ、ごめんな」
「……問題ない、多少の衝突があってこそ人間は深いところで繋がれるとミフユは考えている。大丈夫だ鳴雷一年生、この旅行は有意義なものだし我々の結束はより──」
「原因はアイツじゃん。みっつんは何にも悪くない! ちょっとしたことで昔思い出してあんなに怯えるくらいイジメたアイツが悪いんじゃん!」
「……やめぇやハル、水月は許しとるしせーかは反省しとる。みんな目ぇ瞑っとる。空気悪しとるんは自分や」
「はぁ……!? アンタは、アンタらはまだ黙ってられんの? 俺無理、俺もう無理っ、水月あんなに怖がって、泣いて! やめてって! 土下座してた! 様付けでさ、殴らないでって、蹴らないでって泣いて……無理無理無理絶対無理! 大嫌いアイツ許せない!」
俺の情けないところを反芻しないで欲しい、恥ずかしい、顔が熱くなってきた。
「しぐ! アンタはどう? アイツ許せるの?」
「だ、って……そんな、ふ……言っちゃ、みぃくん、嫌がる……みぃくん、せーくん……大事、に、して、る……から」
「あっそう……ナナさん! ナナさんは?」
「いやあの子もあの子でかなり可哀想でな……そりゃさっきの水月見ると、なぁ……腹が立つのは分かるが、そんな……叩いたりはダメだろ?」
「……っ、このめん! アンタはどうなの、アンタみっつん大好き勢でしょ!」
全員俺大好き勢であって欲しいんだが。
「わ、分かんないっすよぉ! 今回スイッチ押しちゃったのは俺っすし……総合的なダメージで言えばくーっ……俺の元カレが与えちゃった方が上な気がするっすし」
「イジメは物理ダメージじゃなくて継続精神ダメージが本体なの!」
「んなこと言われてもぉっ……せんぱい特殊過ぎて、イジメっ子許して付き合ってるとかよく分かんなくてぇっ」
「……っ、そうだよみっつん! なんであんなヤツ! 別れちゃってよもう! アイツさえ居なけりゃみっつんあんなふうにならないのに!」
「なるよ。セイカが居なくなったら記憶喪失になる訳でもないんだから……何かの拍子には多分なったよ。ハル……お前に踏まれて思い出したこともあるしな、あの時はここまで酷くなかったけど」
「え……で、でも……アイツが居なかったらみっつんイジメとかなくて……」
「セイカが居ても居なくてもイジメられてたよ、俺はそういうヤツだった。実際セイカとは別々だった小学校の頃もイジメられてたしな」
「…………でもぉ」
「……昔俺を虐めてたセイカがあんなに弱々しく、俺に縋ってるんだ。最高の気分だよ。このまま飼い殺しにすればトラウマ克服出来そうだと思わないか? 別れて、追い出して、忘れようとしたって消えないトラウマなんだから……弱いうちに支配して克服しちゃわないとな」
「でもっ……」
「俺がセイカをどんなに好きかは前にも話したろ? ハルはキモいって言ってたっけ。うん……気持ち悪いくらい好きなんだ、だから別れろなんて言わないでくれよ」
ハルはとうとう黙り込んでしまった。
「……俺のこと大事に思ってくれてるのは伝わるよ、ありがとうなハル……愛してる。でも手ぇ上げちゃダメだぞ?」
「ごめんなさい……」
「謝るのは俺じゃなくてセイカだろ? まだ無理かな……無理ならいいよ、無理しなくて。大丈夫、俺はハルを愛してるからな、泣かないで……大好きだよ」
「ごめんなさい……ごめんなさい、ちょっと、一人にして……一人で、考える」
「……うん、いつでも俺のとこに帰ってきてくれ」
ひょこひょこと庭の隅へ向かい、そこで蹲ったハルの元へ犬が走る。先程の俺のように顔を舐められているようだ、一人で考える時間は与えられそうにないな。
「…………上手いな。そんな小賢しい打算的な理由で狭雲と付き合ってる訳じゃないくせに」
「嘘はついてませんよ、弱々しいセイカに嫌な萌え方してるのは事実ですから」
「そんな自分が嫌なくせに、あんなふうに言って……だから嘘つきじゃなくて上手いって言ってるんだ、単に好きってのが一番デカいくせに」
「なーんか嘘つきって言われるより上手いって言われた方が、タチ悪いヤツっぽくないですか?」
「お前はタチ悪いだろ、こんな何人も惚れさせて」
「勃ちは抜群ですよ、でなきゃ何人も相手出来ませんから」
歌見は呆れたとため息をつき、それから笑い出した。
「急に下ネタに変えやがって……ったくこのバカ。ふふふっ……さ、肉食おう肉、まだ全然食べてないからな」
「…………あっ米」
リュウが米の元へと走り出す。騒動中コンロの火はミフユが止めていたが飯盒炊爨と燻製器はそのまま放置されていた。嫌な予感がする。
「みぃ、くん……」
「ん? 俺ならもう大丈夫だよ、カンナ。心配かけたよな、ごめん……あぁ、可愛い……可愛いなぁカンナ、俺の癒し……ジュースくれるか? ん、ありがと」
カンナが持っていたコップを受け取り、オレンジジュースを啜る。カンナは氷入りの冷たいジュースが入ったコップを持ち続けてすっかり冷えた手を俺の頬に当てた。
「お……冷たくて気持ちいいな、本当に癒しだ……はぁ最高。あ、レイ、燻製器見に行くのか? 用事終わって、その気になってくれてたら来てくれ、さっきのとこで待ってる。セックスしようぜ! カンナもするか?」
「ぷぅ太、近……から、ゃ……」
「じゃあぷぅ太寝たり離れたりしたら、な。また後で、カンナ」
カンナにキスをし、燻製器の元へと向かうレイとサンを見送り、通りすがりに歌見の尻を揉んで手を叩かれ──ようやく立ち上がったネザメの頬にキスをして再びへたり込ませ、ミフユにしっかり怒られた。
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