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再び車へ

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歌見が歳上らしさを見せる形で振り分けは終わり、俺は車に乗る前にレイを連れてトイレに向かった。理由は当然、玩具の挿入だ。

「もう少しほぐれてた方がいいかな」

下着を汚す程度ならまだしも、もしも車のシートに染み出したりしてはいけないので、ローションはほとんど使えない。なのでそれぞれに使う玩具を咥えさせ、唾液で濡らさせている。

(玩具咥えた美少年のお尻をぐちゅぐちゅっと……はぁあたまりませんぞ! もうギンッギンですぞ! 一発ヤって……いえ、我慢、我慢ですぞ!)

俺の指はローションボトルに突っ込んで濡らしておいた、この量なら下着も汚れないだろう。

「んっ、んぅっ、んんんっ……んんっ!」

ほぐし終えたので指を後孔から抜き、くぱぁっと開かせて具合を確認する。

「いい感じ。バイブ貸せ」

レイが持ってきた極太のディルドではなく、俺が持ってきた小さめのバイブを挿入し、下着を履かせた。

「んっ、ふ……ぅうっ……せんぱぁいっ、微妙に弱点外さないで欲しかったっす……イきたいっすよぉっ」

壁に手をつくのをやめて身体を起こしたレイはほぐしている最中の手つきに文句をつけた。

「イっちゃダメなんだから外すに決まってるだろ」

「トイレではいいじゃないっすかぁ」

文句を言いながらもレイは粘るつもりはないようで自らズボンを履いた。

「俺ドライでイけるっすから、匂いの心配も車汚す心配もないっすよ?」

しかしトイレを出て車へ向かう道中、しつこく絶頂をねだった。

「だ~め。俺もリュウも我慢してるんだ、聞き分けろ」

「いじわるぅ……リュウせんぱいはそういう性癖で、せんぱいは……あ、俺せんぱいのしゃぶってあげるっすよ?」

「ダメだったらダメ。向こう着いたら優先的に抱いてやるから」
(わたくしったら何言ってんでしょう、優先的に抱いてやる……!? でゅふふふやっべぇわたくしこんなこと言っても許される男になったんですな)

レイは納得がいっていなさそうな顔をしつつも車に着くと肉体関係を知らしめるような話はやめた。運転手に俺達の関係を隠しているのは分かってくれているようだ。

「あっ、みっつん! みっつん、みっつん俺の隣座ってくれるよねっ? サンちゃんがこのめんがいい……?」

車のシートは三列、一列目二列目は二席だが、三列目は三席ある。俺がその真ん中に座れば俺の隣に座る彼氏を二人に出来るが、残り一人が何だか可哀想だ。隣は一人だけ選ぶべきだろう。

「俺の隣に座ったら下半身をまさぐるぞ?」

運転手に聞こえないよう小声で、下品だと分かっていながらも短く伝えた。

「えっ、ぁ……ぅ、い、いいよ! 俺っ、俺、今回で、その……みっつんと、その……シ、シたいなって……思って、来たから」

「…………本当に?」

大きく息を吸い、見開いてしまった目の開き具合を整え、生唾を飲み、堪え切れない嬉しさや必死さを可能な限り抑えて、奇妙になってしまった声色で尋ねた。

「う、うん……だから、みっつんの隣に座らせて……?」

「あぁ、それでいいか? サン、レイ」

「ボクはいいよ。水月に触られたい訳でも触られたくない訳でもないし」

「……入れた上で触られたらもう本当に我慢出来なくなっちゃうんで、そっちのが助かるっす」

ハルはパァっと笑顔になり、俺の腕に抱きついた。

「俺一番後ろに座ろうと思うんだけど」

「OK!」

ハル、俺、レイ、サンの順に車に乗り込み、シートベルトを締めると車は走り出した。

「今度は三台並んでるじゃん、同時に着けるね。あの~、ここからはもう別荘まで直ですか~? まだパーキングとかに停まったりします~?」

「別荘まで停車は致しませんが、緊急の用事が出来れば最寄りの施設に向かいますのでご遠慮なく仰ってください」

「ありがと~ございま~す」

そう運転手に礼を言った溌剌さはどこへやら、ハルは俺を見上げて頬を赤らめた。何も言わずもじもじとしている。サンがレイや運転手に話しかけ続けているから車内に気まずい沈黙は訪れないけれど、俺には悩みがあった。

(……本当に触っていいんですかな?)

もしハルが男性恐怖症を克復しきれずに、俺が触れた瞬間に怯えてしまったら、車中どころか旅行中ずっと気まずいかもしれない。

「これがピアス? へぇ……本当に貫通してるんだ、すごいね」

「ひぁっ、う……爪でカチカチしないで欲しいっすぅっ」

「こんなにたくさん空けてる知り合い居なくてさ、初めて触るよ」

チラリと前の様子を伺うと、レイがサンに耳を調べられていた。ピアスが珍しいのだろう、サンは自身の手首を掴むレイの手を無視して弄り回している。今バイブを動かすのはよくないな、サンはレイに快感を与えたい訳じゃないから手加減なんてしないし、レイならバイブの振動が弱くてもピアスを弄られれば絶頂するだろう。

(サンさんのお胸をもみもみして誤魔化しと暇潰しを……いやでも、ハルどのをずっと無視するなんて出来ませんしな。手を繋ぐくらいならわたくしから動いても大丈夫でしょうか……)

自分の太腿に置いていた手をゆっくりと持ち上げたその時、ハルに手を掴まれた。もう怯えたのかと驚いたのは一瞬、その手がハルの太腿に移されて困惑した。

(えっえっえっえっ太腿触らせていただいている? 怯えては……ない、ですよな?)

ハルは俺の手を掴んでいる方とは反対の手で俺の指をつまんで引っ張り、手を広げさせ、太腿をしっかりと掴ませた。俺の手に手を重ね、揉ませた。

「……っ、ど、どう? みっつん……たの、しい?」

「…………すごく」

正直、太腿の感触を楽しむレベルまで至れていない。ハルの反応、一挙一動を観察するので忙しい。手汗が気になる。

「俺ね、みっつん。みっつんが俺のことすごく丁寧に扱ってくれるの、すごく嬉しい。他の子みたいにえっちなこと全然出来ないのに……みっつんは乱暴なことしない、俺がベッドで裸で寝転がってたって……きっと、ううん絶対、俺がヤダって言ったら何もしないでくれるもんね」

買い被り過ぎだ、見抜きを懇願するくらいはする。

「…………大丈夫、大丈夫、大丈夫」

俺の手を強く握りながら同じ言葉を繰り返す。その言葉はきっと、ハル自身に向けたものだ。頭で理解したものを恐怖症に教えている、いや、押し付けているのだ。

「……っ、さ、触って……足以外でもいい、好きなとこ。触って、いっぱい……ずっと大事にしてくれてたら、ずっとそのままだもん。無理矢理でも慣れさせて……お願い、俺も触られても大丈夫なようになりたい」

俺が危険ではないことを頭だけでなく身体にも染み込むくらいに主張しろと、そういうことか。性欲を暴走させがちな雄という生き物に対し、無茶を言ってくれる。だがこの程度の無茶通せなければハルの彼氏でいる資格はない、そういうことだろう。
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