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ピアス選び

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ベッドに押し倒したレイと唇を重ね、舌を絡める。柔らかい舌に混じる硬い感触に気付き、口を離す。

「せんぱい……?」

「忘れてたよ、舌ピアスもあったんだったな。これもつけられたヤツか?」

「……はい」

「外せ」

仰向けでは誤飲の危険があるため起き上がらせ、舌を突き出して指でピアスを外す光景をじっくりと眺め、唾液にまみれた銀色のリングを受け取った。

「き、汚いっすからそんな見ないで欲しいっす……」

「銀色の輪っかばっかりだな、アイツそういう趣味なのか?」

「さぁ……? しばらく一緒に居たんすけど、センスとか趣味とかは分かんないっすね。バイクは改造してるし服も小物もブランドもんばっかっすけど、イマイチ統一性がないっていうか、くーちゃんの意思を感じないっていうか」

「ふぅん……?」

「せんぱいもっすよね、服のセンスはいいんすけど日によってジャンルバラバラで、これが好きって感じのはないみたいな」

「あー……」

母に服を選んでもらっているせいだ。母はファッションに造詣が深く、様々なジャンルに精通している。着せ替え人形で楽しむように俺に色んな服を買ってくれる、自分にはどうしても似合わない男物を自分と同クラスの顔で着こなせる俺を重宝しているように思える。

「まぁ、どんな服でも似合うからな、俺は」

正直に母に全て任せ切りだと言うのは恥ずかしくて、超絶美形を利用して誤魔化した。

「あの、せんぱい、舌ピはすぐ塞がっちゃうんでつけときたいんすけど……自分の持ってるんで取ってきていいっすか? 洗浄とか消毒もするんでちょっとお待ちいただくことになるんすけど」

「あぁ、待ってるよ」

舌の再生は早いからというのを理由に元カレが用意したピアスをつけるんじゃないかと内心ヒヤヒヤしていたが、レイは脱いだズボンのポケットからピアスを取り出した。元カレはレイが元々つけていたものを外させて自分の物をつけさせたのか……歪んだ独占欲を感じる。

「ちょっと待っててくださいっす、洗面所お借りしてくるっすー!」

レイはピアス片手に全裸で寝室を出ていった。放置された俺はベルトを緩めてズボンを脱ぐ準備を整え、服を捲って腹を見てみた。

(アザとかはありませんな……青アザになるのって何日か経ってからでしたっけ。ということはちょうど旅行のタイミングで顔がアザまみれに? うわぁ……写真は撮る係になりまそ)

海近くの別荘なら当然水着に着替えることも多いだろう、腹に痛々しいアザがあれば彼氏達の気分が盛り下がりそうだ。おのれ形州。

「ただいま戻りましたっすせんぱい、ついでに他のピアスも全部つけてみちゃったんすけど、どうっすかね……」

「可愛いよ、見せてくれるか?」

「はいっす!」

満面の笑みを浮かべたレイはベッドの上で膝立ちになり、ピアスを見せてくれた。元カレがつけさせた物とは違い、全て金色だ。

「耳の、ギザギザしてて雷みたいだな。舌のは……ハートか? あはっ、可愛い。似合ってるぞ」

「へへへ……」

「レイは金色のが好きなのか?」

「雷も月も黄色っぽいイメージないっすか? でも黄色のアクセってちょっとアレなんで、金色かなーって……でも月って割と銀色のイメージもある気がするっすし、水も金か銀で言ったら銀な気がしてきて……ぅー、悩むっす」

「……俺の名前イメージ? この雷も?」

「はいっす! 臍ピは雫型なんすよ、ほらほら。水月の水要素っす! 月は左耳の耳たぶの方っすよ、せんぱい右耳ばっか見るんすから……ピアスは左右対称にはしないものなんす、ちゃんと両方見て欲しいっすよ」

「そっか……そっかぁ、ふふふっ、俺の……あぁもう可愛いなぁっ! お仕置きするって言ってるのにこんな可愛いとこばっか見せられたら甘やかしちゃうよ……」

筋肉のない身体を強く抱き締めて、裸の時間が長いからか俺よりもひんやりとした肌の触り心地を楽しむ。

「……元カレのこと好きだった時も、こういうピアスの選び方したのか?」

嫌われそうな言動だと分かってはいたけれど、思い付いてしまったら抑えられなかった。

「してないっすね……名前的に何も連想出来る物がなかったから、思い付かなかったんだと思うっす。せんぱいは属性多いっすよ~、水に雷、月だってゲームによっちゃ属性になるっすよ? 逆にコーデ迷うっす!」

元カレへの嫉妬心を利用してお仕置きプレイへのやる気を出そうとしたが、逆に優越感が湧いてしまった。

「ふふっ、ややこしい名前でごめんな? レイは木芽だから思いっきり木属性だなぁ……麗は綺麗ってだけじゃなくて、うららかとかそういうのもあるから……なんか春っぽいよな、太陽さんさんな原っぱみたいな。レイと居るとそんな気分になるよ、すごく落ち着く、癒される……」

骨太なようで華奢とは言い難いが、痩せているから俺よりもずっと細い身体に甘えるように抱きついて胸に顔を繰り寄せる。シンプルなリング型の金色の乳首ピアスを間近で眺める。

「……レイが居ないと不安になっちゃうよ、二度と俺から離れないでくれよ?」

「もちろんっすよ」

レイの腕がきゅっと俺の頭を抱き締める。俺はレイの背に回していた腕を解き、手のひらで背中をゆっくりと撫で、細い腰をなぞり、柔らかい尻をそっと揉んだ。

「ひあっ……!」

「相変わらず柔らかいしデカい尻だなぁ、メス化が顕著ですごくエロい。他の男に開発されてきたってのが気に入らないけど……」

右手で尻を揉みながら左腕で肩を抱き、ゆっくりと押し倒す。再び仰向けになったレイと改めて唇を重ね、舌を絡め、先程とは少し感触の違うピアスのアクセントも楽しむ。

「んっ、ん……んぅっ、ん……ひぇんはぁい……んんっ!」

俺に尽くそうと器用にうねる舌を吸い、ピアスの手前を甘噛みしてやる。レイの手足が身体に絡み付いてきた。

「んぁっ、はっ……せんぱい、せんぱいぃ……好き、好きっ……」

「……抱きつき過ぎだぞ? キスどころか顔も見れないよ」

「見な、いでっ……」

声が震えている、鼻を啜る音がした、泣いているようだ。

「せんぱい、せんぱいっ……せんぱい、来てくれて、嬉しかった……取り返してくれて、ありがと…………幸せ、すごく幸せっ……せんぱい、怪我したのにぃ、幸せなの……」

「……うん、幸せになって欲しくて頑張ったんだから、それでいいんだよ。俺の怪我は気にしないで」

「大好き、大好きぃっ……だい、すき……」

啜り泣くレイの頭を撫で、尻を揉むのをやめて強く抱き締める。お仕置きプレイはやっぱりまだ早いんじゃないかな……勝手に甘々イチャラブプレイに変えるべきかな。

「せんぱい、せんぱいに何かあったら、俺頑張る。せんぱい攫われたら絶対助けに行くっすから!」

「俺攫われることないと思うけど……元カレとかも居ないし。ふふっ……でも嬉しいよ、ありがとうな、愛してるよ……」

グダグダ悩むところが男らしくないんだ、俺は。迷うくらいなら変えてしまえ。イチャラブ開始!
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