冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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身軽になったのでお出かけの約束を

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昼食を食べ終えたらレイを抱きたい。しかし問題は多い、まずは場所だ。サンの家が一番近いがまだサンにろくに手を出せていないのにベッドだけ貸してくれなんて言えない、ただでさえ勝手に包丁を持ち出しているのにこの上まだ借りるなんてとてもとても……

「レイ、ピアスもうやめちゃうのか?」

「それはそれでくっ……形州意識してるみたいで嫌っすし、俺普通にピアス好きなんでつけるっすよ」

「そっか。じゃあ……そこに投げちゃったの拾ってくるよ」

「あ、アレはいいんすよ。くーちゃんにつけられたヤツっすから」

聞けばレイが先程投げたピアスは攫われ監禁されている間に元カレが新たに贈り、つけさせられた物なのだそうだ。

「無理矢理抱くこともなく、ピアスをつけさせるって……筋金入りだな、同じ変態として尊敬の念を抱くよ」

「変態の自覚あったんすか」

ピアスのついた耳は当然可愛らしい、耳を飾ろうという意思含めて。しかしピアスを外し、ピアス穴がちゃんと見えるというのもなかなかイイ。本来人間にはなかった穴だというのが余計に唆る。

「……めっちゃ見るっすね。せんぱいもピアス結構好きなんすよね? いつか、せんぱいが選んだピアスつけてみたいっす。一緒にお買い物デートしましょーっす、俺もう自由に外出出来るっすから」

「そうか……そっかぁ、レイもう自由に外出られるんだな。そっか、そっか……いっぱい出かけような」

「はい!」

レイの何の憂いもない笑顔は久しぶりだ、顔や腹の鈍痛が気にならなくなる。

「そういえばリュウせんぱい、ピアス嫌だったんすか? 意外っす」

「嫌や嫌や言うてんのに水月に無理矢理空けられたいねん……病院とかやなくピアッサーで無理矢理がええわ」

「……あー」

元カレにそこまで言っていたら危なかったな。

「兄貴はピアスってどう思う?」

「ヒト兄ぃにぜってぇちぎられるからやだ」

「そっか……フタ兄貴にも恋人作れるチャンスだったのにな」

「ボスとそっくりの彼氏やだ~」

「……フタさんも男性大丈夫な方なんですか?」

「…………サンちゃん?」

「知らないよ、フタ兄貴はボクと違って子供作れとか言われてなかったし……まだ童貞だっけ?」

「どうてーって何?」

「流石にヒト兄貴か弟分に風俗くらいは連れて行かれてるかな……とにかくそんな感じでふわっとしてるから、男でも女でも歳下でも上でもフタ兄貴と上手く行きそうな人居たらとりあえず紹介したげてよ」

「一日に二件も紹介依頼が……俺交友関係狭いので無理だよ」

彼氏は十二人も居るが、友達と呼べる者はリアルには居ない。改めて言うと寂しくなってくるな。

「水月は無理かぁ、他の子は? 坊ちゃんかフタ兄貴に紹介出来そうな知り合い居る?」

「友達居ません」

「知り合い居ないっす」

「俺の友達全員水月の彼氏やねん」

「居ないです……」

みんな俺と同じなのか、なんか安心した。

「ボクも個人的な知り合いは皆無だしなぁー……兄貴、ボクみたいに恋人と幸せな人生送りたかったら自分で何とかしてね」

「おー……羨ましいけどあんまし興味ねぇなー」

「坊ちゃんはまぁいいだろ、ボクらが面倒見る理由はない。自分で頑張ってもらおう」

二件とも「自分で頑張れ」という身も蓋もない結論が出た、一旦話題がなくなって数秒間肉が焼ける音だけを聞いた。全員が「話題はないのか」と聞くように互いの顔を見回す中、レイが思い出したように口を開いた。

「そういえば狭雲くん、美容院行く約束してたっすよね? お出かけ自由なんでいつでもいいっすよ、いつにするっすか? 旅行前がいいっすよね」

「へっ? ぁ、その話は……なし、で。お金ないし……」

セイカの髪はイジメっ子に切られたのかストレスのあまり自分でちぎったりしたのか、不揃いのまま不格好に伸びてボサボサになっている。入院していた頃よりはマシになったが、他の彼氏達のように髪に艶がある訳ではない。

(わたくし的には不健康そうなバラバラ髪もイイのですが、セイカ様は繊細で色々気にしちゃいますからなぁ……美容院行きたくなるのも当然でそ)

よし、可愛い彼氏のためだ。俺が身銭を切ろうじゃないか。

「美容院代くらい俺が出すよ」

「え……で、でもっ、衣食住揃えてもらっただけで申し訳ないのに、美容院なんて……そんな、行かなくても死なないようなのに金使わせるなんて……」

「可愛い彼氏が更に可愛くなろうとしてるんだ、これは投資だよ。最終的に利益を得るのはおーれ、だから気ぃ遣うな」

「かわっ……!? ぅ……で、も…………と、投資って言うならっ、木芽にピアスとか買ってやれよ。損確定だろ俺なんかに投資したら……」

本当にそう扱われたら酷く傷付いてしまうくせに、セイカは彼氏達の中で最下位のように振る舞う。そういうところも可愛いけれど、度が過ぎると困る。

「鳴雷が頑張って働いた金、何にも出来ない俺なんかに使っちゃダメだろ……」

「セイカが居なけりゃ俺はアキと深い会話が出来ないよ。翻訳は特殊技能、大事な仕事。家事で金銭は発生しないけど、誰もやらなかったら困るのと同じ。セイカにはご褒美をもらう権利がある」

「…………毎日、ちゃんと人間らしく生活させてもらってる」

「そんなの当然だろ? セイカは人間なんだから。いつもアキと話させてくれてありがとうのお礼を、ちゃんとした形で受け取って欲しいんだ。美容院代払わせてくれ、服とかアクセも欲しいなら俺が買ってあげる」

両手を握って目を見つめてもまだセイカは躊躇っている様子だ、なら心底からの想いを伝えるしかない。

「水月のものフォルムになってくれよセイカぁ~……あのクソ女が知らない、俺のためだけに可愛くなったセイカが早く見たいんだよ」

「ク、クソ女……?」

「……あぁ、悪い、セイカのお母さんな。それとセイカをイジメた連中もだ」

お義母さんなんて呼んでやらない。

「そいつらの頭の中にセイカが居るなんて許せない、セイカを思い出す度に使用料として生爪一枚を要求したい。セイカは俺だけのセイカだ、アイツらとお揃いのセイカじゃ嫌……セイカが考えるオシャレ、俺に見せて?」

「…………うん、それで……鳴雷だけのものだって、見ても分かるようになるなら、気が引けるけど……お金、貸して、鳴雷」

奢ってと言えばいいのにと思いつつ、貸してがセイカにとっての最大限なんだろうなと愛おしく思って微笑む。

「もちろん!」

一体どんな変身を遂げるのだろう、今から楽しみだ。今のセイカを先に写真に残しておいた方がいいな。
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