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寂しがりな二人
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サンの家を出て自宅に到着、ダイニングに居るのは母だけだった。
「ただいまー、おやママ上お仕事は?」
「今日は土曜日、休みよ。夏休みだからって曜日感覚狂ってんじゃないわよ」
「あっ……あはは……そっか、土曜日……えっもう二十七日? うわぁー……」
「晩飯の時間まで連絡寄越さなかったことまだ許してないからね」
「ごめんなさい……」
「さっさとアキんとこ行ってあげなさい、寂しがってたわよ」
「あっ、うん」
ダイニングとウッドデッキを仕切る窓を抜け、離れ小屋へと走る。
「ただいま!」
アキは部屋に居た、筋トレもダンスもしていなかった、テディベアを抱いたセイカに抱きついている。ベッドの上で小さくまとまった二人には小動物へのものにも似た感情が湧いた。
「可愛ぅいぃい……! ごめんなアキぃ……」
俺の突然の帰宅に驚いて固まっている二人をまとめて抱き締める。一拍置いて、三本の腕と肘先数センチまでの腕が俺に絡む。
「にーにぃ?」
「あぁ、にーにだぞ」
「にーにっ……にぃに! にーに……! ぼく、寂しいする、したです。寂しいする、にーに、にーに言うする、したです。だから、にーに、言うするしたです」
寂しい時は遠慮なく言えと以前話した。だから昨日電話を寄越したのだと言いたいのだろう。
「ありがとうな。電話、嬉しかったよ」
アキからの電話がなければもっと長期間監禁されていたかもしれない。俺には寂しがりな弟が居るとこれで分かっただろうし、同じく寂しがりな弟であるサンはアキを気遣って俺を監禁したりしなくなるだろう。
「会いたかった……」
腕の力を緩め、顔を離し、アキの顔を見る。潤んだ瞳は白目まで赤い、また泣かせてしまったのか……俺は何度兄失格だと自覚すれば学習するのだろう──いや、いやいやいや、今回俺そこまで悪くなくない? サンが俺を監禁したのが悪いんであって、それまで塩対応気味だったサンが監禁するほど俺を想っていたなんて予想出来たはずがないし、今回アキを泣かせたことに関しては俺は悪くなくない?
「にーにぃ……にーに、たくさん、お家帰るするしない、やめる欲しいです。たくさん帰るするしない、ぼく一緒する、欲しいです」
「ごめんなぁ……こんな可愛い弟を置いて何日も家を離れたり、もうしないよ」
俺に抱きついて以来身動ぎ一つせずにいたセイカから手を離し、両手でアキの頬を包むように撫でる。
「にーに……」
赤い瞳からポロッと涙が一粒溢れる。俺の親指で止まったそれを軽く拭い、アキが目を擦らないようにアキの目尻にそっと唇を押し付ける。
「……にーに、にぃに悪いですっ……にーに、ぼく一人嫌いする、させるです。のに、にーにぼく一人するですぅ……にーに悪いですぅっ」
「あぁ……あぁ、ごめんなアキぃ……でも一人じゃなかったろ?」
「にぃにぃ……ぐすっ、ひっく……にーにっ、にーにぃ……にーに……」
「…………ごめんな」
俺を呼びながら泣き続けるアキを慰めること十数分、鼻を鳴らしながら次第に静かになっていったアキは気付けば眠ってしまっていた。
「アキ……? 寝ちゃったか?」
けれど彼の眠りは浅く、俺が名前を呼べば目を開いてまたポロポロと涙を溢れさせた。俺はアキを抱き締めたままベッドに寝転がり、彼を寝かしつけることにした。
「にーに……」
濡れた頬は幸せそうに緩んでいる。
「…………秋風寝たか?」
「すぐ起きちゃうけどな」
「……あの、さ……俺も寂しかった。全然帰ってこないから、何かあったんじゃないかってちょっと怖かったし」
結構なことがあったんだよなぁ。
「電話してすぐ帰ってきてくれて嬉しかった。こんなすぐ戻ってきてくれるんなら、もっと早くに電話かけさせればよかったなぁーって……はは、流石に鬱陶しいか? 俺ならともかく可愛い弟が主体なんだから鬱陶しくないよな?」
セイカが一人で電話をかけてきていたら刺されかねなかったが、鬱陶しさを感じることなんて絶対にない。腕枕をした手でアキの頭を抱き締めて、もう片方の手をセイカに伸ばしながら振り返る──
「……セイカ?」
──彼の頬もまたぬるいもので濡れていた。ほんの少しだけベタベタして、水ではないと分かるそれは俺の胸を締め付ける。
「鳴雷……あの、ごめんなさい……他のヤツとの時間、邪魔して。秋風、俺じゃ満足してくれなくて……ごめんなさい、俺がもっと、秋風に好かれられてたら…………俺なんかが、そこまで好かれる訳……ない、よな……ごめんなさい……」
「セイカっ」
慌てて起き上がり、すぐにセイカを抱き寄せる。
「……っ!? にーに? にーにっ?」
「あぁ、アキ、大丈夫、大丈夫……お兄ちゃんはここだぞ。大丈夫……寝てていいぞ。セイカ、セイカもこっち側来てくれないか?」
「……? うん……」
壁側からセイカ、アキ、俺の順で寝転がる。二人共に腕枕をしてやり、二人まとめて抱き締める。
「…………替えが効かないってことがあるだけで、アキはちゃんとすごくセイカが好きだと思うよ。信じてやってくれ」
「……うん」
俺が居ない間ちゃんと眠れていなかったのだろうか、それとも単に俺が帰ってきて安心しただけなのだろうか、二人共すぐに眠ってしまった。
(思ってたよりわたくしに依存してますなぁ、可愛いんですがここまでだと健康面が心配と言いますか……うーむ……まぁ今回みたいな監禁沙汰もう二度とないでしょうし、何日も帰れない場合のことなんて考えなくてもいいでしょう、いいですよな?)
俺を恋しく思うあまり泣いてしまった可愛い二人と久しぶりに色々なことが出来ると浮かれていたのに、二人して眠ってしまうとは……寝顔を楽しむのもイイが会話やスキンシップをもっと楽しみたかったな、なんてため息混じりにスマホを持つ。
(おや、レイどのから着信があったようですな。今かけ直したらアキきゅん起きちゃいますし、また後で……おや、サンさんからメッセが来ておりますな)
無事に家に着いたと伝えておいた方がいいかなと思いながらサンの芸術的なアイコンをタップする。
(……? 何これ、住所?)
住所らしき漢字と数字の羅列、それだけがサンからのメッセージで俺は数秒混乱した。
「ただいまー、おやママ上お仕事は?」
「今日は土曜日、休みよ。夏休みだからって曜日感覚狂ってんじゃないわよ」
「あっ……あはは……そっか、土曜日……えっもう二十七日? うわぁー……」
「晩飯の時間まで連絡寄越さなかったことまだ許してないからね」
「ごめんなさい……」
「さっさとアキんとこ行ってあげなさい、寂しがってたわよ」
「あっ、うん」
ダイニングとウッドデッキを仕切る窓を抜け、離れ小屋へと走る。
「ただいま!」
アキは部屋に居た、筋トレもダンスもしていなかった、テディベアを抱いたセイカに抱きついている。ベッドの上で小さくまとまった二人には小動物へのものにも似た感情が湧いた。
「可愛ぅいぃい……! ごめんなアキぃ……」
俺の突然の帰宅に驚いて固まっている二人をまとめて抱き締める。一拍置いて、三本の腕と肘先数センチまでの腕が俺に絡む。
「にーにぃ?」
「あぁ、にーにだぞ」
「にーにっ……にぃに! にーに……! ぼく、寂しいする、したです。寂しいする、にーに、にーに言うする、したです。だから、にーに、言うするしたです」
寂しい時は遠慮なく言えと以前話した。だから昨日電話を寄越したのだと言いたいのだろう。
「ありがとうな。電話、嬉しかったよ」
アキからの電話がなければもっと長期間監禁されていたかもしれない。俺には寂しがりな弟が居るとこれで分かっただろうし、同じく寂しがりな弟であるサンはアキを気遣って俺を監禁したりしなくなるだろう。
「会いたかった……」
腕の力を緩め、顔を離し、アキの顔を見る。潤んだ瞳は白目まで赤い、また泣かせてしまったのか……俺は何度兄失格だと自覚すれば学習するのだろう──いや、いやいやいや、今回俺そこまで悪くなくない? サンが俺を監禁したのが悪いんであって、それまで塩対応気味だったサンが監禁するほど俺を想っていたなんて予想出来たはずがないし、今回アキを泣かせたことに関しては俺は悪くなくない?
「にーにぃ……にーに、たくさん、お家帰るするしない、やめる欲しいです。たくさん帰るするしない、ぼく一緒する、欲しいです」
「ごめんなぁ……こんな可愛い弟を置いて何日も家を離れたり、もうしないよ」
俺に抱きついて以来身動ぎ一つせずにいたセイカから手を離し、両手でアキの頬を包むように撫でる。
「にーに……」
赤い瞳からポロッと涙が一粒溢れる。俺の親指で止まったそれを軽く拭い、アキが目を擦らないようにアキの目尻にそっと唇を押し付ける。
「……にーに、にぃに悪いですっ……にーに、ぼく一人嫌いする、させるです。のに、にーにぼく一人するですぅ……にーに悪いですぅっ」
「あぁ……あぁ、ごめんなアキぃ……でも一人じゃなかったろ?」
「にぃにぃ……ぐすっ、ひっく……にーにっ、にーにぃ……にーに……」
「…………ごめんな」
俺を呼びながら泣き続けるアキを慰めること十数分、鼻を鳴らしながら次第に静かになっていったアキは気付けば眠ってしまっていた。
「アキ……? 寝ちゃったか?」
けれど彼の眠りは浅く、俺が名前を呼べば目を開いてまたポロポロと涙を溢れさせた。俺はアキを抱き締めたままベッドに寝転がり、彼を寝かしつけることにした。
「にーに……」
濡れた頬は幸せそうに緩んでいる。
「…………秋風寝たか?」
「すぐ起きちゃうけどな」
「……あの、さ……俺も寂しかった。全然帰ってこないから、何かあったんじゃないかってちょっと怖かったし」
結構なことがあったんだよなぁ。
「電話してすぐ帰ってきてくれて嬉しかった。こんなすぐ戻ってきてくれるんなら、もっと早くに電話かけさせればよかったなぁーって……はは、流石に鬱陶しいか? 俺ならともかく可愛い弟が主体なんだから鬱陶しくないよな?」
セイカが一人で電話をかけてきていたら刺されかねなかったが、鬱陶しさを感じることなんて絶対にない。腕枕をした手でアキの頭を抱き締めて、もう片方の手をセイカに伸ばしながら振り返る──
「……セイカ?」
──彼の頬もまたぬるいもので濡れていた。ほんの少しだけベタベタして、水ではないと分かるそれは俺の胸を締め付ける。
「鳴雷……あの、ごめんなさい……他のヤツとの時間、邪魔して。秋風、俺じゃ満足してくれなくて……ごめんなさい、俺がもっと、秋風に好かれられてたら…………俺なんかが、そこまで好かれる訳……ない、よな……ごめんなさい……」
「セイカっ」
慌てて起き上がり、すぐにセイカを抱き寄せる。
「……っ!? にーに? にーにっ?」
「あぁ、アキ、大丈夫、大丈夫……お兄ちゃんはここだぞ。大丈夫……寝てていいぞ。セイカ、セイカもこっち側来てくれないか?」
「……? うん……」
壁側からセイカ、アキ、俺の順で寝転がる。二人共に腕枕をしてやり、二人まとめて抱き締める。
「…………替えが効かないってことがあるだけで、アキはちゃんとすごくセイカが好きだと思うよ。信じてやってくれ」
「……うん」
俺が居ない間ちゃんと眠れていなかったのだろうか、それとも単に俺が帰ってきて安心しただけなのだろうか、二人共すぐに眠ってしまった。
(思ってたよりわたくしに依存してますなぁ、可愛いんですがここまでだと健康面が心配と言いますか……うーむ……まぁ今回みたいな監禁沙汰もう二度とないでしょうし、何日も帰れない場合のことなんて考えなくてもいいでしょう、いいですよな?)
俺を恋しく思うあまり泣いてしまった可愛い二人と久しぶりに色々なことが出来ると浮かれていたのに、二人して眠ってしまうとは……寝顔を楽しむのもイイが会話やスキンシップをもっと楽しみたかったな、なんてため息混じりにスマホを持つ。
(おや、レイどのから着信があったようですな。今かけ直したらアキきゅん起きちゃいますし、また後で……おや、サンさんからメッセが来ておりますな)
無事に家に着いたと伝えておいた方がいいかなと思いながらサンの芸術的なアイコンをタップする。
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