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約束は性欲より弱い

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まだ体調が万全ではないから優しくする、その約束は性欲には勝てず俺はセイカを激しく抱いた。華奢な身体を抱き締めて杭を打つように彼の後孔を犯し、淫らな音を立てさせ、快楽に叫ぶ声を楽しんだ。

「あっあぁあっ!? ひっ、ぃっ、めぐれるゔぅっ! ぁ、ゔっ! ひぃんっ! んっ、ぁあぁっ! にゃる、がみぃいっ……し、りっ、壊れるぅぅっ!」

「はぁっ、あぁ……セイカ、セイカ、可愛い、セイカぁっ」

「……っ! なる、かみっ、ふへ……んぁああっ!? ぁ、ひっ、なるがみぃっ、にゃるかみっ、が、まんじょくしゅるまでっ、好きなだけぇっ、おれちゅかって……ぁゔっ! んっ、ぉ……んんんんっ!」

《はぁー泳いだ泳いだ……ぁ? 珍し、スェカーチカとヤってら》

可愛い台詞を吐いてくれるものの呂律が回っていない口を舌で犯しながら射精を遂げ、暑さを実感して上体を起こす。

「ふぅ……あれ、アキ戻ってたのか。頭ちゃんと乾かせよ」

ベッドの傍にクッションを置いてその上に座り、間近で俺達を眺めていたアキの頭を撫でる。しっとりと濡れたままの髪はとても滑らかで、艶のない髪をしたセイカとの健康状態の差は明らかだった。

(セイカ様やっぱりまだまだ不健康……その不健康な方に対しわたくしは何と乱暴な真似を)

賢者タイムにより冷静になった頭は行為前にした約束を思い出し、冷や汗をかきながらそっと腰を引いた。

「んっ……ぁ、あっ……ぁんっ!」

萎えた陰茎に絶頂直後の敏感な腸壁を擦られ、ゴムの精液溜まりがぬぽんっと抜ける快感に喘いだセイカと目が合う。

「あ……セイカ、ごめんな? 優しくするって言ったのに……ゆっくり出来なくて」

罵られる覚悟をしながら謝ると、セイカは両腕を広げた。

「きて……」

「あ、うんっ」

俺はすぐにセイカに覆い被さって彼を抱き締めた、当然彼に体重がかからないよう気を付けながら。

「……大好き」

「ぁっ、俺も、俺も大好き……セイカ、怒ってないのか? 俺……自分で言ったことも守れなくて……」

「俺別にゆっくりして欲しくなかったぞ、鳴雷の好きなようにして欲しかった……鳴雷、すっごい興奮してたなぁ……ふへへへへ……嬉しかったぁ。だから別に、怒るとかない」

「……そっ、か。そうだな、俺が勝手に決めたんだもんな……」

「…………まだする?」

「うーん……セイカの体調が心配だから、また今度な。一緒にお風呂入ろう、そこで手コキでもしてくれよ」

「この頭でうろついて大丈夫か?」

セイカの髪や顔にはべっとりと俺の精液が塗り込まれており、乾き始めてカピカピになりつつある。

「……プール脇のシャワーで軽く流してからにしよっか」

お姫様抱っこをして一人用のシャワールームまでセイカを運び、その軽さにゾッとする。細い髪にこびりついた精液を流しながら、抜けて指に絡む髪の毛に罪悪感を覚える。

「結構抜けちゃうなぁ……ごめんな?」

「別に痛くないし、平気」

「そう? しっかし軽かったなぁセイカ、やっぱりもっと食べないとダメだな。母さんに言って量増やしてもらおうか」

「いいよ……手足ちょっとないんだから多少軽いのは仕方ないだろ」

「手足分考えても一割減るかどうかってとこだろ、セイカ今体重何キロだ? 十六歳の平均体重から一割引いたくらいがセイカの目標体重だ、いいな」

「…………最近欠損が盾にならなくなってきた」

「移動とかそういうのなら甘えてくれていいんだぞ、セイカ運ぶの好きだから」

体重を誤魔化すのに欠損を利用しようとするほど欠けた手足を悲観的に思わなくなったのはいいことだとは思うが、痩せ過ぎは許容出来ない。

「運ぶの好きって、お前こそ適当言い過ぎだ」

「いやいや本当に好きだよ。俺に持ち上げられて、俺に運ばれるしかないセイカ……俺が手を離しちゃったら落ちちゃうからじっとしてるしかなくて、俺がセイカの頼み聞かずに変なところに運んでも抗う術はそんなになくて、俺にされるがままのセイカ……」

緩く拳を握ってセイカの頬を指の背で撫でる。

「……最高。セイカ……セイカ、俺の、俺だけのセイカ……二度と他のヤツらにヤらせない、痛い思いもさせない、逃がさない、放さない、セイカは一生俺のものだ」

両手で頬を包むように撫でながら愛を語り、ゆっくりと背を曲げる。俺の意図を察したセイカは俺の首に腕を絡め、彼の方から唇を押し付けてきた。

「…………愛してるよ」

短いキスを終え、俺に抱きついて肩を震わせているセイカを抱き返し、初恋が叶った幸福に改めて浸った。




シャワーを浴びた後二人で風呂に入り、約束通り手で抜いてもらった。アキの部屋に戻ってアキが風呂を済ませるのを待ち、三人でベッドを狭く感じながら眠った。

「痛っ!? 痛たた……」

空が白んできた頃、背中を強打して目を覚ます。どうやらベッドから落ちてしまったようだ、アキに蹴り落とされた説が濃厚だが……まぁ、寝ている間のことに文句は付けないでおこう。

「…………よし」

昨晩、行為中にセイカに言われたことを思い出し、覚悟を決め、朝食を食べて仕事に行く母を見送った後俺は穂張興業に向かった。

(怖ぇえ! 昨日は緊張してただけだけどヤクザって聞いてからだとこっぅえええ!)

内心産まれたての子鹿のように震えながら、五階建てのビルの前に立つ。

「おいガキ、何してんだ」

社員と言うべきか構成員と言うべきか、ガラの悪そうな作業着姿の男に声をかけられた。

「あっ、あのぉ……俺、サンさんの、絵のモデルをしてまして」

「サンさんの……あー! あぁ! 聞いたわ、初めて人描く気になったとか何とか、へぇー、なるほど、おっとこ前だもんなぁそりゃ描きたくなるわ」

「そっ、それで、昨日フタさんに車でサンさんのところまで送ってもらって……お礼を渡そうと思ってたんですけど、昨日渡しそびれちゃったんで、今日改めて持ってきて……」

「へぇー律儀、フタさん今居るかな。ちょい待ってな、電話かけちゃる」

「あっ……ありがとうございますぅー」

よかった。見た目が怖くて声が大きくて態度が悪いだけで、気のいい人だった。

「あ、もしもし、お疲れ様です。フタさんに
客が来てまして……えーっと、お前名前は? ん、鳴雷って……え、知らない? おいガキ、知らねぇってよ」

「えっ!? そ、そんな、昨日会ったのに……」

なんてこった。サンに会う前にフタにお礼をして貸し借りをなしにしつつサンの好きな物だとかを聞けたらいいなと思って来ただけなのに、これじゃ俺は不審者じゃないか。ヤクザ事務所に来る不審者なんてもうカチコミだろ、勘違いされて殺されないうちに逃げた方がいいかな。

「っす、失礼しましたー……降りてくるってよ、フタさん人の名前覚えんの苦手だからな。顔見りゃ思い出すかもって言ってたわ」

「あ、そ、そうですか……」

よかった、疑われてはいないみたいだ。この超絶美形を忘れるとは思えないし、顔を合わせれば解決するだろう。
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