冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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手作りハンバーグ

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ソファに座って軽いスキンシップと会話を楽しみ、恋人同士らしい時間を過ごせたと満足した。

「そろそろ配信の時間だから、みぃくんは一時間ちょっと一人で暇潰しててね。音入っちゃうからテレビ見たりゲームするならイヤホンとかつけて、外行くなら帰ってくるのは配信終わってからでお願い」

「一時間くらいカミアを眺めてればすぐだよ。アーカイブ後で見る予定だけど、生でも見たいな」

「えー? 退屈だと思うけどなー……ううん、そうだね、僕は娯楽の頂点☆ マジ神アイドルカミアだよ~☆ 最高に楽しい時間を過ごさせてあげるっ☆」

配信前だからかアイドルとしてのカミアに切り替え始めているようだ。可愛い。

「カミアさいこ……カミア最高ぉ~!」

手ぶらで声援を送りかけ、慌ててエアコンのリモコンを拾ってペンライトのように振り回す。

「応援ありがとっ☆ 水月くん☆」

「キャー! 認知嬉しい~! カミア~!」

「ふふ……緊張ほぐれたよ、ありがとう。配信始めるから静かにしててねっ」

赤いエプロンを着けたカミアはカメラとパソコン、スマホを弄り、キッチンに立ったカミアは目を閉じて深呼吸をした。

「映ってるー? じゃあ改めて……こんにちは! マジ神アイドルカミアだよ~! ぴょん、ぴょん」

両手を頭の上に乗せて、何だろう、うさぎの耳のつもりなのかな? 男子高校生とは思えない仕草だが、可愛い。少し前ハルに見せてもらったカミアの新曲にもああいう振り付けがあったような気がする。

(かわゆいゆいですなぁカミアどの)

エプロンは素晴らしいアイテムだ、これ一つで家庭的な可愛らしさが格段に上がる。前はしっかり隠れているのに後ろは紐だけというのもイイ、裸エプロンでなくともその良さはある。

(紐を腰で結ぶのでカミアたんの腰の細さが浮かび上がりますし、正面から見るとタイトスカートっぽさも良きです。かわゆい男の子が大きなリボン結びを身に付けているというのもっ! よき!)

料理の手際は素人そのものなのに、アイドルとして指先にまで注意を払って自分を魅力的に見せているのが分かる。これは俺が普段のカミアを知っているから分かるのだろうか。

「コメント見ようかな~……」

通常よりも時間をかけて料理を進め、ハンバーグを乗せたフライパンに蓋を被せたカミアはスマホを持った。焼き上がるまでコメント返信をするつもりのようだ。

(カメラの後ろに立ったのは正解でしたな、カミアどのがこっち見てお話してくれまそ。かわゆいゆいでそ)

カミアはファンからのコメントにしっかりとカメラ目線で返事をする。身振り手振りも混じえるから可愛さはもう、もう……! 奇声を上げそうだ。

(そろそろハンバーグ焼けたんじゃないでしょうか、厚み的にそろそろ焦げ始める頃だと思いまそ)

俺はカミアに向かって手を振り、彼が俺を見たのを確認してフライパンを指差した。

「……!」

カミアがスマホを置いてフライパンに向かった。

「わわわっ、焦げちゃう焦げちゃう。コメント見過ぎた」

火を止め、フライ返しを使って皿にハンバーグを移したカミアはハンバーグが焦げてはいなかったことに胸を撫で下ろした。ホッとしていると仕草で分かる、可愛い。

「あっためておいたチーズかけて……わ、美味しそう。付け合わせも盛っていくよ」

大皿に盛ったハンバーグと付け合わせをカメラに見せ、カミアは満面の笑みを浮かべる。ただ、アイドルらしい笑顔だ。先程俺の膝の上で見せてくれた緩んだ笑顔とは少し違う、あの笑顔は俺しか見られないのだと思うと今配信を見ているファン達に優越感を覚えた。

「完成しました! カミア特製ハンバーグ~! この後ゆっくりいただきます、配信はここまで! それじゃあみんな、まったね~! ぴょん、ぴょん」

また手をうさぎの耳に見立てたポーズで挨拶をしたカミアはカメラとパソコンを数秒弄るとふぅっと息をついた。

「終わったよー」

「終わったか、お疲れ様。食べるとこの配信はしないのか、需要ありそうなのに」

「ライブ近いのにこんなカロリー高いの食べれないよ、食レポの仕事も最近来てるのにさー」

ならもっとローカロリーな料理を選べばよかったのに。いや、俺を呼ぶ理由を作りたかったから高カロリーな料理を選んだのか? そう思っておこう。

「……食レポってアレちょっとしか食べずに捨ててるってマジ?」

「僕のはお母さんが食べてくれるよ」

「あぁ、お母さんジャーマネだっけ」

「あはっ、その言い方ちょっとムカつく」

「業界用語って聞いたんだけどな……」

「そんな言い方しないよー、ふふふっ」

配信中よりも幼く柔らかい笑顔、この笑顔は俺だけのものだ。

「ほらほら早く食べてよ、今日お母さん居ないんだからさ。食べる役はみぃくんだよ」

カメラの前に回ってカミアからフォークを受け取る。一口サイズにハンバーグを切り分け、溶けたチーズをハンバーグに絡めて口に運ぶ。

「……どうかな?」

不安げに俺を見上げるカミアに向き直り、微笑む。

「超美味しい! すごいな、初めてでこれか」

「レシピ通りにしただけ……って初めてじゃないんだってば! 調理実習でしたことあるの! もー……あっち持ってって食べてよ、キッチンで立ち食いなんて行儀悪いよ。国民的アイドルの手料理をそんな食べ方するなんてもったいないと思わない?」

アイドルのカミアらしい自信家な発言に頬が緩む。

「思う、胸焼けするほど可愛い国民的アイドルの料理は日本縦断して見せびらかしながら食べるべきだ。全国民の嫉妬をスパイスにな! どの辺でファンに刺されるか賭けようか、沖縄から北上な、俺は……んー、九州辺り」

「意味分かんないよもう……僕のファンはそんなことしない、そういうことあんまり言うと僕本気で怒るよ」

「ご、ごめんごめん……軽口が過ぎたな」

キッと俺を睨みつける大きな瞳からは確かに怒りを感じた。本心からファンを大切にしているとよく分かる、ますます惚れてしまうな。

「はー……カミアの手料理食えるとか俺多分前世で世界を七回救ったんだと思う」

「ダイニングで食べてってば!」

照れ隠しの大声を可愛らしく思いつつ、ハンバーグを持ってダイニングへ向かおうとしたが、カメラがまだ光っているのに気付いた。

「……なぁ、これまだ光ってるけどこういうもんなのか?」

「え? あっ、えっ、あぁっ!?」

スマホを確認したカミアの大声に血の気が引く。配信を終えられていなかったのか、俺もカメラに映ってしまったんじゃないか、カミアが熱愛発覚で炎上したらどうしよう、住所だとかが特定されたら何が起こるのだろう、彼氏達にまで被害が及ぶのだろうか──などと一瞬で様々な最悪の想像を始めた俺はその場で硬直し、カメラを止めるため走り出したカミアに押しのけられた。
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