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朝からどろどろに甘やかされて
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翌朝、朝食を食べるためダイニングに移動する際、俺は腰が立たなくなったリュウを抱えた。この行動を怪しみそうな義母はまだ起きてきていない、セーフ!
「面倒かけさせやがって」
「水月がいっぱいするからやんか。それに、オナホの運搬は持ち主の仕事やで?」
「うるせぇ自立型オナホ、自分で動け」
なんて暴言を辛うじて吐いてはいるが、ついリュウの腰をさすったり、喘がせ過ぎて枯れた喉のため飲み物を与えたりしてしまう。もっと態度もSになりきらなければいけないのに。
「にーに、てんしょー、お早う御座います」
「おー、おはよぉアキくん。せーかもおはようさん」
「……おはよう」
テディベアを抱えたセイカは眠そうにしながらフラフラと歩き、席に着いた。しばらく椅子に座ってボーッとした後、テーブルに着く際はテディベアをソファに置けという母の言いつけを思い出したのか立ち上がってソファに向かった。
(そういえばセイカ様、昨日リュウどのが口走っちゃった欠損羨ましい発言聞いてましたよな。小さい声でしたがセイカ様止まってましたし絶対聞こえてたはず……えぇ、これフォローわたくしがするんですか?)
せっかくリュウとセイカは仲良くなれそうだったのに、大ポカをやらかしてくれたものだ。
「天正」
「んー? なんやせーか」
「……別にぃ?」
「なんやの」
テディベアを置いて席に戻ったセイカは意味もなくリュウを呼び、ニヤニヤと笑っている。
(あら……? もっとなんかこう、バカにしやがってみたいにメラメラムカムカしてる感じだと思ってたんですが……セイカ様機嫌良さげですぞ)
片手片足を失いどうしても制限されてしまう行動を補助してやるだけで「惨めだ」と泣くこともあるセイカが、羨ましがられて不快感を顕にしないとは不思議なこともあるものだ。バカにしやがってと怒ると思っていた。
「鳴雷、今日出かけるんだよな?」
「…………あっ、うん。夏休み前から約束してて」
「天正は今日帰るのか?」
「他人ん家に二日連続泊まるんはあかんねん。昼頃にでも帰ろぉか思とるよ」
「……もう少しゆっくりしていけよ。今日は鳴雷が居なくて、秋風と二人きりでさ……別にそれでもいいんだけどコイツ筋トレに集中すると構ってくれなくなるし……天正が居たら、俺…………ぁ、もちろん嫌ならいいんだ……居てくれたら俺の事故当時のこと詳しく教えてやるよ。興味ないか? 手足切らなきゃやべぇ怪我ってどんなもんなのか」
「…………ええのっ?」
「うん」
リュウは目を輝かせて何度も頷いている。セイカの微笑みには優越感が見て取れる。まさか、羨ましがられて気持ちよくなっているのか? 本心から羨む訳がない、バカにしているに違いない……とひねくれた受け止め方をするのがセイカだと俺は思っていた。
「わ……! おおきにせーかぁ、前からずーっと興味あってん。せやけど聞いて思い出させたらやぁかなぁ思てなぁ」
「……興味本位でからかうみたいに聞かれるのは嫌だけど、天正みたいな感じならいいよ。話すとスッキリしたりもするし」
以前セイカは手足が欠損した姿も俺が気に入ってくれているようだから、この手足も愛される個性だと思おうとしている──的なことを話してくれた。似たようなことなのだろうか、他人に羨ましがられるようなものなのだと優越感に浸って笑顔になれるほど、セイカは前向きになれているのだらうか。だとしたら嬉しい。
「……でも、タダじゃないぞ。ここに予定よりも長く残る以外にも、条件がある」
「なんや?」
「…………あれまたやって欲しい」
セイカは頬を赤く染めて俯き、これまでとは違う小さな声で絞り出すように呟いた。
「どれぇ」
「……っ、あの……ぇ、ええこって……言いながら、頭撫でるヤツ」
「手コキして欲しいん?」
「ちっ、違うっ! そっちはいい!」
リュウは何を求められているのか全く分かっていないようだ。
「無自覚かよ……怖。リュウ! よしよしして欲しいだけだよ、優しくして欲しいんだ、甘えさせて欲しいんだよ、そうだろ? セイカ」
「ハッキリ言うなよぉっ!」
「えー……?」
「……でも、ありがとう……そうだよ、バカみたいだろっ、ガキっぽいだろ、図々しいよなっ、でも、でも俺、アレ……もう一回」
リュウの左腕がセイカの首に巻き付く、右手が優しく頭を撫でる。リュウの唇がセイカの耳に掠る。
「よぉ言えたなぁ、えらいわぁ」
俺に対して発せられたことのない、脳を蕩かすような優しい声。
「そない真っ赤んなって……恥ずかしかったなぁ、よぉ言えたで。すごいすごい、並のもんには出来んわ。せーかはえらい、頑張ったなぁ……ええ子やよ、ええ子ええ子……」
「……っ、ふ……だめになるぅ……」
外野として聞いているだけでもバブゥー! と叫んでリュウに抱きつきたくなるのに、頭を撫でられ耳元で囁かれているセイカは夢見心地だろう。俺なら失禁しているかもしれない。
「あかんよぉなってまうん? ふふ、だーいじょうぶやよ……人に甘えられへん方があかんよぉなってまうからな。甘えさせてー言えるせーかは大丈夫。一人で立つんだけがえらいんとちゃうよ、周りにちゃんとして欲しいこと言えるんもえらいんよ。せーかはええ子や、ええ子ええ子……よしよししたろなぁ」
「ハマるぅ……無理、天正なしじゃもう無理……住んで……」
親からの愛情に飢えていたセイカには特に効いているのかもしれない。今まで俺のハーレムを乗っ取りかねないのはアキだけだと思っていたが、リュウも十分にその可能性を有している。危険だ。俺ももっと顔以外の魅力を磨かねば。
「面倒かけさせやがって」
「水月がいっぱいするからやんか。それに、オナホの運搬は持ち主の仕事やで?」
「うるせぇ自立型オナホ、自分で動け」
なんて暴言を辛うじて吐いてはいるが、ついリュウの腰をさすったり、喘がせ過ぎて枯れた喉のため飲み物を与えたりしてしまう。もっと態度もSになりきらなければいけないのに。
「にーに、てんしょー、お早う御座います」
「おー、おはよぉアキくん。せーかもおはようさん」
「……おはよう」
テディベアを抱えたセイカは眠そうにしながらフラフラと歩き、席に着いた。しばらく椅子に座ってボーッとした後、テーブルに着く際はテディベアをソファに置けという母の言いつけを思い出したのか立ち上がってソファに向かった。
(そういえばセイカ様、昨日リュウどのが口走っちゃった欠損羨ましい発言聞いてましたよな。小さい声でしたがセイカ様止まってましたし絶対聞こえてたはず……えぇ、これフォローわたくしがするんですか?)
せっかくリュウとセイカは仲良くなれそうだったのに、大ポカをやらかしてくれたものだ。
「天正」
「んー? なんやせーか」
「……別にぃ?」
「なんやの」
テディベアを置いて席に戻ったセイカは意味もなくリュウを呼び、ニヤニヤと笑っている。
(あら……? もっとなんかこう、バカにしやがってみたいにメラメラムカムカしてる感じだと思ってたんですが……セイカ様機嫌良さげですぞ)
片手片足を失いどうしても制限されてしまう行動を補助してやるだけで「惨めだ」と泣くこともあるセイカが、羨ましがられて不快感を顕にしないとは不思議なこともあるものだ。バカにしやがってと怒ると思っていた。
「鳴雷、今日出かけるんだよな?」
「…………あっ、うん。夏休み前から約束してて」
「天正は今日帰るのか?」
「他人ん家に二日連続泊まるんはあかんねん。昼頃にでも帰ろぉか思とるよ」
「……もう少しゆっくりしていけよ。今日は鳴雷が居なくて、秋風と二人きりでさ……別にそれでもいいんだけどコイツ筋トレに集中すると構ってくれなくなるし……天正が居たら、俺…………ぁ、もちろん嫌ならいいんだ……居てくれたら俺の事故当時のこと詳しく教えてやるよ。興味ないか? 手足切らなきゃやべぇ怪我ってどんなもんなのか」
「…………ええのっ?」
「うん」
リュウは目を輝かせて何度も頷いている。セイカの微笑みには優越感が見て取れる。まさか、羨ましがられて気持ちよくなっているのか? 本心から羨む訳がない、バカにしているに違いない……とひねくれた受け止め方をするのがセイカだと俺は思っていた。
「わ……! おおきにせーかぁ、前からずーっと興味あってん。せやけど聞いて思い出させたらやぁかなぁ思てなぁ」
「……興味本位でからかうみたいに聞かれるのは嫌だけど、天正みたいな感じならいいよ。話すとスッキリしたりもするし」
以前セイカは手足が欠損した姿も俺が気に入ってくれているようだから、この手足も愛される個性だと思おうとしている──的なことを話してくれた。似たようなことなのだろうか、他人に羨ましがられるようなものなのだと優越感に浸って笑顔になれるほど、セイカは前向きになれているのだらうか。だとしたら嬉しい。
「……でも、タダじゃないぞ。ここに予定よりも長く残る以外にも、条件がある」
「なんや?」
「…………あれまたやって欲しい」
セイカは頬を赤く染めて俯き、これまでとは違う小さな声で絞り出すように呟いた。
「どれぇ」
「……っ、あの……ぇ、ええこって……言いながら、頭撫でるヤツ」
「手コキして欲しいん?」
「ちっ、違うっ! そっちはいい!」
リュウは何を求められているのか全く分かっていないようだ。
「無自覚かよ……怖。リュウ! よしよしして欲しいだけだよ、優しくして欲しいんだ、甘えさせて欲しいんだよ、そうだろ? セイカ」
「ハッキリ言うなよぉっ!」
「えー……?」
「……でも、ありがとう……そうだよ、バカみたいだろっ、ガキっぽいだろ、図々しいよなっ、でも、でも俺、アレ……もう一回」
リュウの左腕がセイカの首に巻き付く、右手が優しく頭を撫でる。リュウの唇がセイカの耳に掠る。
「よぉ言えたなぁ、えらいわぁ」
俺に対して発せられたことのない、脳を蕩かすような優しい声。
「そない真っ赤んなって……恥ずかしかったなぁ、よぉ言えたで。すごいすごい、並のもんには出来んわ。せーかはえらい、頑張ったなぁ……ええ子やよ、ええ子ええ子……」
「……っ、ふ……だめになるぅ……」
外野として聞いているだけでもバブゥー! と叫んでリュウに抱きつきたくなるのに、頭を撫でられ耳元で囁かれているセイカは夢見心地だろう。俺なら失禁しているかもしれない。
「あかんよぉなってまうん? ふふ、だーいじょうぶやよ……人に甘えられへん方があかんよぉなってまうからな。甘えさせてー言えるせーかは大丈夫。一人で立つんだけがえらいんとちゃうよ、周りにちゃんとして欲しいこと言えるんもえらいんよ。せーかはええ子や、ええ子ええ子……よしよししたろなぁ」
「ハマるぅ……無理、天正なしじゃもう無理……住んで……」
親からの愛情に飢えていたセイカには特に効いているのかもしれない。今まで俺のハーレムを乗っ取りかねないのはアキだけだと思っていたが、リュウも十分にその可能性を有している。危険だ。俺ももっと顔以外の魅力を磨かねば。
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