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おまけ
おまけ かの国の冬の寒さは
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アキ視点。アキくんが異父兄に依存するまでの独白。
神様は何もお間違えにならないそうだが、だとしたら俺が存在するのはおかしいから、神なんて存在しない。
一人が好きだ。
一人で居るということはつまり、殴ってくる相手が居ないということ。
一人で居るということはつまり、不毛な会話をする相手が居ないということ。
静かなのが好きだ。
静かということはつまり、奇襲を音で事前に察知出来るということ。
静かということはつまり、私のことが嫌いなのねと泣く声が聞こえていないということ。
雪は音を吸い、真白な俺を隠してくれる。月の夜に雪は眩しく輝いて俺の瞳を虐めるけれど、目を閉じてしまえばもう大丈夫。横たわってしばらくすれば冷たい暗闇が俺を覆う。
孤独で、静かで、冷たくて、暗くて、まるで墓の下のよう。なんて心地いいのだろう。家の中ではろくに眠れないのに、ここでなら眠れそうだ。眠ってしまおう、眠りたい、永く。
「アキ……? アキっ、アキ、アキぃっ! 嫌、嫌ぁっ! 起きてアキ、アキ!」
孤独でなくなった。
「あ、あぁ……こんなに冷えてっ、氷みたい……! 雪だるま作るだけって言ったじゃない! だから庭に出ていいって私……なんで雪の下に埋まっちゃうの!?」
うるさい。
「すぐミルクあっためるからね。暖炉の傍から離れちゃダメよ?」
熱い。
「……っ!? やだ目閉じないで! 怖いの……お願い、目閉じるなら喋ってて、黙ってるなら目開けてて……生きてるって教えてて」
眩しい。
「どうしてこんなことするの……今週この町で凍死した酔っ払いが何人居ると思ってるの。もう冬なんだから、寒いんだから……死んじゃうんだから、もう二度とこんなことしないで」
まるで墓から掘り起こされたよう、なんて居心地が悪いのだろう。眠れない、眠りたいのに、眠れない、眠らせて欲しい、永遠に。
暖炉の前で蹲り、俺の髪と同じ色の温かいものを啜る。温めた牛乳を飲むとホッとすると母が昔語っていた、俺はちっともホッとしない。母と感性が違うのは母と血が繋がっていないからだろうか。
「アンタのせいよぉっ! アンタがアキに酷いことばっかりするからっ、アキが凍死しようとしちゃったんじゃない!」
「俺がいつアキに何をした!」
「殴ったじゃない! 何回も何回もぉ!」
「あれはアキを鍛えてるんだ! 何回も説明しただろ!」
「そんなのやめてって何回も言ったじゃない私! 嫌よアキを殺人鬼にするなんて!」
「殺人鬼じゃない傭兵だ! 仕方ないだろ、アルビノは短命なんだから。名誉を得るには長い時間が必要だ、だがしかし傭兵として活躍すれば! 白い死神の名はアキのものになるかもしれない。燃えるだろ? 俺の子供が歴史に残るんだ。休ませてる暇なんかない、今日の分のメニューはこなさせないとな」
「ちょっと! アキは今凍えてて……!」
物音。多分、母が突き飛ばされでもしたのだろう。父の大きな手に掴まれて立たされ、答え合わせを見た。軍に所属したこともない父の独学の訓練が、今日も始まる。
訓練が終わった。全身の痛みと母の啜り泣く声、血が混じったミルクの味、煌々と輝く照明、何もかも不愉快で仕方ない。
「どうして……どうして普通の子に生まれてきてくれなかったの……普通の色をしてたら、学校にちゃんと通えて……あの人もおかしくならなくて……」
頬の内側の切り傷は治る前にまた新しく作られる。自分の血が調味料に使われていない食事や飲料を得ることは俺にはまだ出来ない。父からの殴打を避けるか受け流すか出来るようにならなければ。
「普通の子が欲しかった……母親が泣いてるのに見もしないような子、嫌……どうして……私のこと好きじゃないの? アキ……私が本当のお母さんじゃないから? ねぇ……アキぃ……」
幼い頃は母が泣いていたら頑張って慰めていた覚えがある。でも、アンタがまともな色を持ってないから、他の子みたいに普通に生きてくれないから、だから泣いているのだと、アンタのせいなんだと繰り返し言われて、じゃあ俺が目の前に居たらいつまで経っても泣き止まないなぁと思って、慰めるのをやめて──それから、なんだっけ、何かあったっけ? 何もなかったっけ、きっかけなんかないか。
髪も肌も雪のような色をした俺は、幼い頃は当たり前に持っていたはずの両親への愛情まで雪みたいに冷め切って白紙に戻してしまった。
雪にずっと触れていると指先から少しずつ感覚が麻痺していく。
昔は学校のみんなと仲良くしたかった、遊びに混ぜて欲しかった、寂しいのが嫌だった、父に訓練をやらされるのも嫌だった、母に愛されるため色が欲しかった。
でももう今は、何もいらない。死にたいとも消えたいともあんまり思わない。何もない。
何も、いらなかったのに。
母は俺を連れて父から逃げた。その頃には俺は父からの攻撃を受け流せるようになっていたから口内に傷はなく、日本食を美味しく食べられた。勝手に増えた家族は俺を殴ることはなく、勝手に俺の心に入り込んだ。
「真っ白……綺麗だなぁ。瞳孔まで赤いのか、アニメとは違うな……すごく可愛いよ」
母が忌み嫌った色素のない身体を、存在を知ったばかりの兄はあっさりと受け入れて褒めた。
「ずっと遮光カーテン閉めてると朝が来た感じしないなぁ」
母は開けっ放しにしていたことが多かった遮光カーテンを自室につけて閉め続けて、電灯は俺がサングラスを外していられる照度を保ってくれた。
「つ、強いんだな……でも、アキはお兄ちゃんが守るからな!」
俺の格闘能力を知ってもなお、彼は何かにつけて俺の前に立った。鈍臭いくせに、見た目重視の役立たず筋肉しか持っていないくせに、俺を守ろうと必死になっていた。
あぁ、そうか。
俺は愛されているのか。俺は、色素を持たないまま愛されることが出来たのか。俺は誰かを愛することも出来たのだ。幼い頃は当たり前に出来ていて、いつの間にか失ったものを、俺は異国の地でまた手に入れた。
一悶着あったけれど、大量に彼氏を持つ異常性欲者の兄は弟である俺にも発情し、俺を恋人としても愛してくれた。セックスは気持ちよくて、愛し合っている実感もあって、すぐに気に入った。兄の恋人達も俺を可愛がってくれたから、俺も彼らと積極的にスキンシップを図った。複数プレイも楽しかった。
幸せだった。
でも、代わりに怖いものと苦手なものがたくさん出来た。
一人が嫌いだ。
一人で居るということはつまり、抱き締め合う相手が居ないということ。
一人で居るということはつまり、誰とも会話が出来ないということ。
静かなのが嫌いだ。
静かということはつまり、自分の身動ぎの音や秒針の音がよく聞こえるということ。
静かということはつまり、俺の名を呼ぶ優しい声が聞こえていないということ。
あれほど好んでいた孤独が、耐え難い苦痛になった。
本物の太陽のように眩くはなく、肌を焼きはせず、ただ温かく健やかな気持ちにさせてくれる俺だけの太陽。彼が離れてしまうと俺の世界は暗くなり、寒くなり、音が消える。
俺の目を休ませてくれた優しい暗闇が、大好きな人の顔を見る楽しさを知った今の俺には苦し過ぎる。
全てを麻痺させてくれた愛おしい寒さが、人の体温に慣れた今の俺には痛過ぎる。
嫌なものから逃げられた証拠だった静けさが、人に名を呼ばれる喜びを知った今の俺には空虚過ぎる。
一日中一人きりでも寂しさなんて感じたことがなかったのに、今は一時間でも一人にされると心細さが涙となって溢れる。
吐くまで殴られても泣いたりしなかったのに、兄に放ったらかしにされると幼子のように泣いてしまう。
寝ている間に父が奇襲を仕掛けてくるかもしれないからと眠れないだけだったのに、今は眠っている間に兄がどこかへ行ってしまうんじゃないかと不安で眠れないのも重なった。兄に抱きついて眠っても、父に研ぎ澄まさせられた警戒心は兄の寝返りや寝言にまで反応した。
寂しいし不安だから兄の体温を感じながら眠りたいのに、寝相が悪く寝ながらよく喋る兄は共に寝るのに向いていなかった。
その点、兄の彼氏の一人の元自殺志願者はよかった。手足に欠損があり精神面が不安定な彼は、テディベアを抱いている姿が愛らしいからとスェカーチカと呼ぶことにした彼は、癇癪を起こしたり錯乱したりすることはあったが、それ以外ではとても大人しく静かな人間だった。
抱き合って共に眠っても彼は朝まで身動ぎ一つせず、寝言もイビキもなく、呼吸音すら微かで、体温と俺に絡みつく足りない手足の感触だけを俺に与えてくれた。彼と共になら眠れた。彼は俺の大切な友人でありながら、大切な睡眠導入剤でもあった。
大切なものが増えていくほど、寂しさの苦痛が大きくなった。あまりの辛さに兄に八つ当たりをしたこともあった、今は幸せだけれど全てが寒さによって麻痺していた昔の方が楽だったから。でも昔には戻りたくない。でも寂しいのが辛いのは嫌だ。
だから改めて寂しさに慣れようとしたこともあったけれど、兄は俺が孤独に慣れるほど俺を一人にはしておかなかった。慣れるまでの道のりの途中、寂しさのあまり泣いてしまう辺りでいつも兄はやってきた。
慣れないと辛いのに、依存したくなかったのに、兄はどこまでも俺に優しく接した。
だいすきなにーに、どうかどこにも行かないで。最愛の兄貴、ずっと傍に居て俺を寂しくさせないで。
存在しないと論じたはずの神にさえ祈らずにはいられない。中毒性のある甘く粘っこい愛情は、きっととうに致死量を超えている。
神様は何もお間違えにならないそうだが、だとしたら俺が存在するのはおかしいから、神なんて存在しない。
一人が好きだ。
一人で居るということはつまり、殴ってくる相手が居ないということ。
一人で居るということはつまり、不毛な会話をする相手が居ないということ。
静かなのが好きだ。
静かということはつまり、奇襲を音で事前に察知出来るということ。
静かということはつまり、私のことが嫌いなのねと泣く声が聞こえていないということ。
雪は音を吸い、真白な俺を隠してくれる。月の夜に雪は眩しく輝いて俺の瞳を虐めるけれど、目を閉じてしまえばもう大丈夫。横たわってしばらくすれば冷たい暗闇が俺を覆う。
孤独で、静かで、冷たくて、暗くて、まるで墓の下のよう。なんて心地いいのだろう。家の中ではろくに眠れないのに、ここでなら眠れそうだ。眠ってしまおう、眠りたい、永く。
「アキ……? アキっ、アキ、アキぃっ! 嫌、嫌ぁっ! 起きてアキ、アキ!」
孤独でなくなった。
「あ、あぁ……こんなに冷えてっ、氷みたい……! 雪だるま作るだけって言ったじゃない! だから庭に出ていいって私……なんで雪の下に埋まっちゃうの!?」
うるさい。
「すぐミルクあっためるからね。暖炉の傍から離れちゃダメよ?」
熱い。
「……っ!? やだ目閉じないで! 怖いの……お願い、目閉じるなら喋ってて、黙ってるなら目開けてて……生きてるって教えてて」
眩しい。
「どうしてこんなことするの……今週この町で凍死した酔っ払いが何人居ると思ってるの。もう冬なんだから、寒いんだから……死んじゃうんだから、もう二度とこんなことしないで」
まるで墓から掘り起こされたよう、なんて居心地が悪いのだろう。眠れない、眠りたいのに、眠れない、眠らせて欲しい、永遠に。
暖炉の前で蹲り、俺の髪と同じ色の温かいものを啜る。温めた牛乳を飲むとホッとすると母が昔語っていた、俺はちっともホッとしない。母と感性が違うのは母と血が繋がっていないからだろうか。
「アンタのせいよぉっ! アンタがアキに酷いことばっかりするからっ、アキが凍死しようとしちゃったんじゃない!」
「俺がいつアキに何をした!」
「殴ったじゃない! 何回も何回もぉ!」
「あれはアキを鍛えてるんだ! 何回も説明しただろ!」
「そんなのやめてって何回も言ったじゃない私! 嫌よアキを殺人鬼にするなんて!」
「殺人鬼じゃない傭兵だ! 仕方ないだろ、アルビノは短命なんだから。名誉を得るには長い時間が必要だ、だがしかし傭兵として活躍すれば! 白い死神の名はアキのものになるかもしれない。燃えるだろ? 俺の子供が歴史に残るんだ。休ませてる暇なんかない、今日の分のメニューはこなさせないとな」
「ちょっと! アキは今凍えてて……!」
物音。多分、母が突き飛ばされでもしたのだろう。父の大きな手に掴まれて立たされ、答え合わせを見た。軍に所属したこともない父の独学の訓練が、今日も始まる。
訓練が終わった。全身の痛みと母の啜り泣く声、血が混じったミルクの味、煌々と輝く照明、何もかも不愉快で仕方ない。
「どうして……どうして普通の子に生まれてきてくれなかったの……普通の色をしてたら、学校にちゃんと通えて……あの人もおかしくならなくて……」
頬の内側の切り傷は治る前にまた新しく作られる。自分の血が調味料に使われていない食事や飲料を得ることは俺にはまだ出来ない。父からの殴打を避けるか受け流すか出来るようにならなければ。
「普通の子が欲しかった……母親が泣いてるのに見もしないような子、嫌……どうして……私のこと好きじゃないの? アキ……私が本当のお母さんじゃないから? ねぇ……アキぃ……」
幼い頃は母が泣いていたら頑張って慰めていた覚えがある。でも、アンタがまともな色を持ってないから、他の子みたいに普通に生きてくれないから、だから泣いているのだと、アンタのせいなんだと繰り返し言われて、じゃあ俺が目の前に居たらいつまで経っても泣き止まないなぁと思って、慰めるのをやめて──それから、なんだっけ、何かあったっけ? 何もなかったっけ、きっかけなんかないか。
髪も肌も雪のような色をした俺は、幼い頃は当たり前に持っていたはずの両親への愛情まで雪みたいに冷め切って白紙に戻してしまった。
雪にずっと触れていると指先から少しずつ感覚が麻痺していく。
昔は学校のみんなと仲良くしたかった、遊びに混ぜて欲しかった、寂しいのが嫌だった、父に訓練をやらされるのも嫌だった、母に愛されるため色が欲しかった。
でももう今は、何もいらない。死にたいとも消えたいともあんまり思わない。何もない。
何も、いらなかったのに。
母は俺を連れて父から逃げた。その頃には俺は父からの攻撃を受け流せるようになっていたから口内に傷はなく、日本食を美味しく食べられた。勝手に増えた家族は俺を殴ることはなく、勝手に俺の心に入り込んだ。
「真っ白……綺麗だなぁ。瞳孔まで赤いのか、アニメとは違うな……すごく可愛いよ」
母が忌み嫌った色素のない身体を、存在を知ったばかりの兄はあっさりと受け入れて褒めた。
「ずっと遮光カーテン閉めてると朝が来た感じしないなぁ」
母は開けっ放しにしていたことが多かった遮光カーテンを自室につけて閉め続けて、電灯は俺がサングラスを外していられる照度を保ってくれた。
「つ、強いんだな……でも、アキはお兄ちゃんが守るからな!」
俺の格闘能力を知ってもなお、彼は何かにつけて俺の前に立った。鈍臭いくせに、見た目重視の役立たず筋肉しか持っていないくせに、俺を守ろうと必死になっていた。
あぁ、そうか。
俺は愛されているのか。俺は、色素を持たないまま愛されることが出来たのか。俺は誰かを愛することも出来たのだ。幼い頃は当たり前に出来ていて、いつの間にか失ったものを、俺は異国の地でまた手に入れた。
一悶着あったけれど、大量に彼氏を持つ異常性欲者の兄は弟である俺にも発情し、俺を恋人としても愛してくれた。セックスは気持ちよくて、愛し合っている実感もあって、すぐに気に入った。兄の恋人達も俺を可愛がってくれたから、俺も彼らと積極的にスキンシップを図った。複数プレイも楽しかった。
幸せだった。
でも、代わりに怖いものと苦手なものがたくさん出来た。
一人が嫌いだ。
一人で居るということはつまり、抱き締め合う相手が居ないということ。
一人で居るということはつまり、誰とも会話が出来ないということ。
静かなのが嫌いだ。
静かということはつまり、自分の身動ぎの音や秒針の音がよく聞こえるということ。
静かということはつまり、俺の名を呼ぶ優しい声が聞こえていないということ。
あれほど好んでいた孤独が、耐え難い苦痛になった。
本物の太陽のように眩くはなく、肌を焼きはせず、ただ温かく健やかな気持ちにさせてくれる俺だけの太陽。彼が離れてしまうと俺の世界は暗くなり、寒くなり、音が消える。
俺の目を休ませてくれた優しい暗闇が、大好きな人の顔を見る楽しさを知った今の俺には苦し過ぎる。
全てを麻痺させてくれた愛おしい寒さが、人の体温に慣れた今の俺には痛過ぎる。
嫌なものから逃げられた証拠だった静けさが、人に名を呼ばれる喜びを知った今の俺には空虚過ぎる。
一日中一人きりでも寂しさなんて感じたことがなかったのに、今は一時間でも一人にされると心細さが涙となって溢れる。
吐くまで殴られても泣いたりしなかったのに、兄に放ったらかしにされると幼子のように泣いてしまう。
寝ている間に父が奇襲を仕掛けてくるかもしれないからと眠れないだけだったのに、今は眠っている間に兄がどこかへ行ってしまうんじゃないかと不安で眠れないのも重なった。兄に抱きついて眠っても、父に研ぎ澄まさせられた警戒心は兄の寝返りや寝言にまで反応した。
寂しいし不安だから兄の体温を感じながら眠りたいのに、寝相が悪く寝ながらよく喋る兄は共に寝るのに向いていなかった。
その点、兄の彼氏の一人の元自殺志願者はよかった。手足に欠損があり精神面が不安定な彼は、テディベアを抱いている姿が愛らしいからとスェカーチカと呼ぶことにした彼は、癇癪を起こしたり錯乱したりすることはあったが、それ以外ではとても大人しく静かな人間だった。
抱き合って共に眠っても彼は朝まで身動ぎ一つせず、寝言もイビキもなく、呼吸音すら微かで、体温と俺に絡みつく足りない手足の感触だけを俺に与えてくれた。彼と共になら眠れた。彼は俺の大切な友人でありながら、大切な睡眠導入剤でもあった。
大切なものが増えていくほど、寂しさの苦痛が大きくなった。あまりの辛さに兄に八つ当たりをしたこともあった、今は幸せだけれど全てが寒さによって麻痺していた昔の方が楽だったから。でも昔には戻りたくない。でも寂しいのが辛いのは嫌だ。
だから改めて寂しさに慣れようとしたこともあったけれど、兄は俺が孤独に慣れるほど俺を一人にはしておかなかった。慣れるまでの道のりの途中、寂しさのあまり泣いてしまう辺りでいつも兄はやってきた。
慣れないと辛いのに、依存したくなかったのに、兄はどこまでも俺に優しく接した。
だいすきなにーに、どうかどこにも行かないで。最愛の兄貴、ずっと傍に居て俺を寂しくさせないで。
存在しないと論じたはずの神にさえ祈らずにはいられない。中毒性のある甘く粘っこい愛情は、きっととうに致死量を超えている。
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