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どこが好き?

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自宅に戻り、脱衣所でため息をつく。濡れたタオルで汗を拭って部屋着に着替え、香水を一吹き。

「……OK」

彼氏達はアキの部屋に居るようなので、俺ももちろんそこへ向かった。

「お待たせ~」

「よぉ着替えるやっちゃのぉ」

「着替えてるの俺だけじゃないだろ」

「そらアキくんは見るからに暑そうやし、せーかは砂まみれなっとったから着替えんの分かるわいな。水月はそもそも普段からよぉ着替えとる」

愛しい彼氏達に汗臭いと思われたくないし、外出時と室内で服を変えるのは当然のことだ。部屋の中でデニムを履いていたらくつろげない。

「色んな俺が見られてお得だろ?」

「そら……まぁ、そやけど」

リュウはぽっと頬を赤く染めて俯き、声を小さくしていった。

「兄様、兄様もやはり嬉しいものなのですか? 鳴雷さんのお色直しは」

「お色直しはなんか違うだろ……俺は別に、鳴雷の服装なんかどうでもいい」

「なんだとセイカ、聞き捨てならないな。この緩いTシャツから覗く胸元の男の色気を感じないのか?」

「ほらほら兄様っ、鳴雷さんの大サービスですよ」

《たまんねぇな! 今すぐ逆レと洒落込みたいぜ!》

アキははしゃいでくれているし、リュウも顔を赤くしたまま小さな声で「たまらん」と呟いてくれているのに、セイカは顔色も表情も変わらない。

「胸より腰派か? このむっつりスケベめ。いいだろう、この魅惑の腰つきとヒップを楽しむがいい!」

「カッコええわぁ、たまらん……!」

《どうしたんだよ兄貴さっきからエロいポーズばっかり取りやがって襲って欲しいのか欲しいんだろ正直に言いやがれ!》

膝立ちになって腰をひねり、スタイルの良さを強調してみるも、やはりセイカの反応は鈍い。

「…………自信なくなってきたんだけど」

「水月は手ぇもええで、筋浮いて血管浮いて、指長ぉて全体的に大きゅうて、男らしゅうてカッコええわぁ」

「セイカ~、ほらほら、おてて」

「足もええなぁ。やっぱり男らしい大きさやし、指の形もカッコええねん。爪も綺麗やし、土踏まずもしっかりしとる。何より長ぉて、スタイルええねんけどモデルさんみたいに蹴ったら折れそうな足はしてへん。カッコええ男の足や、踏まれたいわぁ踏んで欲しいわぁ踏んでくれへんかなぁ」

「セイカ~、足フェチか?」

《なんてったって顔だぜ顔! えげつなく綺麗だし、兄貴は表情コロコロ変わるから見てて飽きない。ヤってる時の興奮顔なんか最っ高だぜ、こんな美形を発情させられてるっつー優越感もあるしな!》

「アキはどこか褒めてくれた感じなのかな……? まぁ、俺の一番自信のあるところは顔なんだけど……」

アキがどこを褒めてくれたのか、そもそもリュウの流れに乗ったのかどうかも分からないので、とりあえず顔を見せつけてみた。するとセイカは照れるでも呆れるでもなく笑い出した。

「な、何が面白かったんだ?」

「いや、何言ってるか分かってねぇくせにバッチリだなって……秋風ちょうどお前の顔のプレゼンしてたから」

流石兄弟、と思っておこう。

「…………兄様、照れませんね。最後の日ですし恋バナなるものをしてみたかったのですが……鳴雷さん、本当に兄様を惚れさせられているんですか?」

「俺が一方的に惚れてるだけなのかもしれないと思ってきた」

「そっ、そんなことないっ……」

「では兄様っ、鳴雷さんのどこが好きなのですか?」

「もうちんこ出したれ水月。一発でもヤっとるんならそれにメロメロやろ」

「やめろよほむらくんまだ中学生なんだぞ!」

たとえ俺の巨根にメロメロになっていようとも、いきなり出したらドン引きするだけでポッと頬を染めたりなんてしないだろう。いや、シュカならしそうだな。

「兄様は好きでもないお方と付き合っているのでしょうか……」

「すっ……す、好き、だよ。ちゃんと」

「どんなところが?」

「………………せっ、性格?」

「なるほど」

「それでいいの!? ほむらくんそれでいいの!? もうちょいっ、なんかさぁっ……聞きたくない?」

「兄様だけでなくほとんど面識のなかった僕を救い、居候させ、時々勉強まで見てくださり、兄らしく振る舞ってくださった鳴雷さんの内面の素晴らしさは分かっているつもりです」

「あ……そぉ? 照れるなぁ……ハハ」

兄弟同士の恋バナなんてもっと下世話なものだと思ってしまっていたから、性格なんていうざっくりした返答に満足したホムラについ驚いてしまったが、そういえば彼はそもそもそういう子だった。

「ほむらくんは好きな子ぉ居んの? 兄さんのん聞くんやったら自分も言わんとなぁ」

「居ません」

「即答やな……クラスにええなって子ぉ居らん?」

「居ません」

「……好きなタイプは?」

「特にありません」

誤魔化している訳ではなく、事実なんだろうな。

「つまらん子ぉやなぁ……アキくん、アキくんは水月のどこ好きなん? せーか、聞いたってや」

「…………顔と、あの……アレ、だってさ」

「正直やなぁー。まぁ水月の彼氏半分くらいはそれやと思うで」

「……にわか共め」

セイカ、たまに古参ヅラするよな。可愛いからいいけど。

「てんしょー、てんしょー、何好きです? ぼくです」

「……アキくんの好きなとこ聞いてはるんかな? せやなぁ、ニコニコ可愛いとこやけど……たまに見せる雄っぽい表情がたまらんのよなぁ。水月より力強いし、せーか絞め落とせる技術もあるし……いっぺん真面目に痛めつけられてみたいわぁ」

「…………鳴雷が天正はドMだって言ってたのよく分かんなかったんだけど、今よーく分かったわ」

《スェカーチカ、天正がなんて言ったのか八割方分かんなかった》

「はいはい翻訳な」

呆れ顔のセイカが翻訳を終えるとアキは満面の笑みを浮かべてリュウに抱きついた。

「わっ……と、ふふ、せやせや、その顔や。可愛ええのぉアキくんは。お、何ぃ、ちゅーもしてくれんの。ほんっま可愛ええわぁー……」

頬にキスを受けて上機嫌なリュウの背後に自然に回ったアキは、リュウの首にぎゅっと抱きついた……のかな?

《痛めつけるってのはあんま趣味じゃねぇから、意識落とさずずーっと息苦しいのやってやるよ。声も出せねぇだろ?》

リュウの顔はすぐに真っ赤になり、アキの腕を掴んで足をバタバタと振り始めた。

《死にそうな感じがするからどんなドMだろうが本気で抵抗しちまうんだよな。大丈夫だ、苦しいだけだから。息もギリギリ出来てるだろ?》

「お、おい……アキ?」

やめさせた方がいいのではと迷いながらも手を伸ばすと、アキはあっさりリュウを解放した。リュウは咳き込むこともなく首に手を当て、何度か深呼吸をした後、アキを見つめた。

「すごい……全然尾ぉ引かんとあんだけの苦痛……天才や、アキくん……水月、今の絞め技マスターしてぇや」

「無茶言うなよ」

断りつつも俺はリュウが「もう一回」ではなく俺に覚えてもらいたがったのを嬉しく思っていた。
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