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チョコレートフェア
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駅近くのカフェでのチョコレートフェア。注文を終えた俺達は他愛ない話に花を咲かせていた。
「夏休み始まったけど課題全っ然やってないな~。ほむらくんはやってるんだっけ?」
「はい、事前に立てた計画通りに進めております」
「真面目だなぁ……リュウはやってないよな?」
「数学は終わっとるよ、暇んなったから遊びに来てんやんか」
リュウはテスト勉強もろくにしていなかったから俺と同じ状況を期待していたが、かなりの量だったはずの数学の課題を終わらせているらしい。
「アレ答えと解説のファイルくれるやん」
「え、そうなの?」
「答え全部打ったらパス教えてくれるやん、そのパスで開けれるファイルあったやろ? っちゅうか説明されたやん」
「……聞いてなかったな」
なら適当に答えの欄を埋めてしまえば解答が手に入るということか? いや、姑息な真似は考えるまい。
「ほんでな、問五の解答がこれやねんけどな、誤字や思うねんな。この答えになれへんねん。水月どう思う? 俺計算間違えとるかなぁ」
リュウは肩がけの鞄からノートを引っ張り出し、真ん中辺りのページを開いて見せてくれた。どうやら問題と答えを書き写してきたらしい。
「……これどっちがまたはでどっちがかつだっけ」
「せーかぁ」
ちょっと記号を忘れただけなのに見限られてしまった。
「ちょっと待ってくれ。今問題読んでる」
「俺が誤字やと思うんがこれやねんけど」
「待ってくれってば今考えてるから」
リュウの相手はセイカに任せよう、っとそういえばアキも数学が得意だと聞いた。彼も話に参加出来るのではないだろうか。
「セイカ、アキも数学得意なんだろ? 混ぜてやれよ」
「そーなん? 知らんかったわ」
「集合と論理は記号も知らなかったよ、こいつが得意なのは三角関数とかその辺だ」
「へー、どういう習い方してんやろ」
「距離測るのに使うからとか何とか言ってたような…………あー、これ誤字だな……かつ、には6入らないだろ。または、なら……入るけど」
「やんな! いや絶対間違えてへん思てんけど答えちゃうとやっぱ不安やん?」
よく分からないが、解決したらしい。名前を呼ばれたことだけは理解しているアキは俺やセイカの顔を交互に見ている。
「数学の「または」って「少のぉてもどっちか片っぽ」やん。せやけど普段の「または」って「どっちか片っぽ」やん。ややこしない?」
「え……? えっと……ちょっと待ってくれ」
「数学の「または」やったらAまたはBにはAかつBも含まれとる訳やん。せやけどお使いとかで魚または肉買うて来い言われて両方買ってったら怒られるやん? 両方は使わんわ言うて」
「…………あぁ! あぁ……なるほど、うん。いや文脈で分かるだろ……」
「俺のおかん「または」なんか絶対使わんしな、せいぜい魚か肉どっちか買うてこい言うだけや」
「じゃあいいじゃん……」
「数学と国語にはもっと仲良ぉして欲しいねん、意味ちゃうことあったら困るやん。日常生活で「または」聞かんくても現国の文章で「または」出てきたら困るやろ? この「または」どっちの「または」やろーって」
「う、うぅん……? でもお前現国の成績酷いのそのレベルのミスじゃなくないか?」
「……文章の書き方が悪いねん。こん時のコイツの気持ちを考えて書けいう問題やのに、実は本文の中に書いとること探せやなんて、そんなん言うてもらわんと分からんやん。こないだせーかに教わってよぉやっと知ってんからその嘘」
「嘘って言うか……道徳じゃないんだから十割自分産の考え聞かれる訳なくない? って言う……」
難しい内容は聞き流して珍しく真面目な表情のリュウと、ずっと困り眉のままのセイカを眺めていると、注文したスイーツ達が席に届いた。
「届いたぞ~」
俺はブラウニー、リュウはパフェ、アキはクランチ、セイカはドーナツ、ホムラはタルト、そしてみんなで分けるようにとザッハトルテ……机の上が茶と黒にまみれている。
《チョコって色暗ぇよな、果物の彩やかさがチョコにも欲しいぜ》
《お前どうせ色分かんないからいいじゃん》
《今はサングラス外してるから分かるわ! 俺は弱視であって色弱じゃねぇの、むしろ色が重要なの!》
《あっ、そっか……ごめん、買い物行った時よく色分かんないって言ってるから》
《外行く時はサングラスかけてるからな》
《あー……えっ、お前ぼんやりとしか見えてない上に色もハッキリしない中俺の車椅子押して走ってんの? 怖……》
アキとセイカが何か話してる。味の感想かな?
「んんっ……! す、すごいです鳴雷さんっ、とろってしてます。なのに底はサクッとしてます」
「タルトはそういうものなんだよ。フルーツとかサツマイモ、カボチャなんかもタルトにされることがあるから、気に入ったんなら向こうに行ってもケーキ屋さんとかパン屋さんで探してごらん」
「はい、すごくすごく気に入りました。こんな美味しいもの教えてくださって……本当にありがとうございます鳴雷さん。僕すごく幸せです」
何でもかんでも「知らない料理です!」「美味しいです!」とはしゃぐホムラを母も気に入っていたようで、この頃は色んな変わった料理を作っていた。ホムラはよく母に料理名や作り方を教わっていた……どうしよう、ホムラがこの先デブになったら。
(こんなにかわゆいのに太ってしまったら国の損失でそ……いえ、ぽっちゃり程度ならむしろかわゆい……うぅむ)
まぁ俺の彼氏じゃないし、不健康な太り方でなければいいか。
「リュウ、パフェはどうだ?」
「めっさ美味いわ。よーさんあんのに味に飽きへんわぁ」
シェア用に注文したザッハトルテを除いた中ではパフェは最も量が多い。ソフトクリームを始めとして冷たいスイーツでもあるのに、リュウは一切ペースを落とさず美味しそうにパクパク食べ進めている。
(シュカたまという分かりやすい大食いに隠れがち、リュウどのも暇があればお菓子食ってますからなぁ。二人揃って全然太ってねぇのムカつきまそ)
太っていた過去があると今痩せていても太らない者への嫉妬が湧く。厄介だ。
「……なぁ、リュウ。最近シュカ連絡ないよな」
「ん? おぉ、せやの。俺元々鳥待とは個チャじゃ話しとらんからグルチャのことしか知らんけど、最近見んわ。既読もいっつも二個付いてへんしなぁ」
「既読? そっちは気にしてなかったな……」
シュカ個人に送ったメッセージに既読が付かないのは気にしていたが、グループの方の既読数は頭になかった。
「いっつも一個足らんのは多分ころのんやろ?」
「カミアは忙しいからなぁ」
「んで最近二個足りへん、増えたんは多分鳥待の分や」
「……どうしたんだろ、スマホ修理中とか?」
「さぁ……夏休み前、急に遊ぼ言われても出来へん言うてはったし、なんや忙しゅうしてはるんとちゃう?」
他人事だな。俺が気にし過ぎなのかな。シュカの住所は知らないし、メッセージの返信か登校日を待つしかないというのは、歯痒いものだ。
「夏休み始まったけど課題全っ然やってないな~。ほむらくんはやってるんだっけ?」
「はい、事前に立てた計画通りに進めております」
「真面目だなぁ……リュウはやってないよな?」
「数学は終わっとるよ、暇んなったから遊びに来てんやんか」
リュウはテスト勉強もろくにしていなかったから俺と同じ状況を期待していたが、かなりの量だったはずの数学の課題を終わらせているらしい。
「アレ答えと解説のファイルくれるやん」
「え、そうなの?」
「答え全部打ったらパス教えてくれるやん、そのパスで開けれるファイルあったやろ? っちゅうか説明されたやん」
「……聞いてなかったな」
なら適当に答えの欄を埋めてしまえば解答が手に入るということか? いや、姑息な真似は考えるまい。
「ほんでな、問五の解答がこれやねんけどな、誤字や思うねんな。この答えになれへんねん。水月どう思う? 俺計算間違えとるかなぁ」
リュウは肩がけの鞄からノートを引っ張り出し、真ん中辺りのページを開いて見せてくれた。どうやら問題と答えを書き写してきたらしい。
「……これどっちがまたはでどっちがかつだっけ」
「せーかぁ」
ちょっと記号を忘れただけなのに見限られてしまった。
「ちょっと待ってくれ。今問題読んでる」
「俺が誤字やと思うんがこれやねんけど」
「待ってくれってば今考えてるから」
リュウの相手はセイカに任せよう、っとそういえばアキも数学が得意だと聞いた。彼も話に参加出来るのではないだろうか。
「セイカ、アキも数学得意なんだろ? 混ぜてやれよ」
「そーなん? 知らんかったわ」
「集合と論理は記号も知らなかったよ、こいつが得意なのは三角関数とかその辺だ」
「へー、どういう習い方してんやろ」
「距離測るのに使うからとか何とか言ってたような…………あー、これ誤字だな……かつ、には6入らないだろ。または、なら……入るけど」
「やんな! いや絶対間違えてへん思てんけど答えちゃうとやっぱ不安やん?」
よく分からないが、解決したらしい。名前を呼ばれたことだけは理解しているアキは俺やセイカの顔を交互に見ている。
「数学の「または」って「少のぉてもどっちか片っぽ」やん。せやけど普段の「または」って「どっちか片っぽ」やん。ややこしない?」
「え……? えっと……ちょっと待ってくれ」
「数学の「または」やったらAまたはBにはAかつBも含まれとる訳やん。せやけどお使いとかで魚または肉買うて来い言われて両方買ってったら怒られるやん? 両方は使わんわ言うて」
「…………あぁ! あぁ……なるほど、うん。いや文脈で分かるだろ……」
「俺のおかん「または」なんか絶対使わんしな、せいぜい魚か肉どっちか買うてこい言うだけや」
「じゃあいいじゃん……」
「数学と国語にはもっと仲良ぉして欲しいねん、意味ちゃうことあったら困るやん。日常生活で「または」聞かんくても現国の文章で「または」出てきたら困るやろ? この「または」どっちの「または」やろーって」
「う、うぅん……? でもお前現国の成績酷いのそのレベルのミスじゃなくないか?」
「……文章の書き方が悪いねん。こん時のコイツの気持ちを考えて書けいう問題やのに、実は本文の中に書いとること探せやなんて、そんなん言うてもらわんと分からんやん。こないだせーかに教わってよぉやっと知ってんからその嘘」
「嘘って言うか……道徳じゃないんだから十割自分産の考え聞かれる訳なくない? って言う……」
難しい内容は聞き流して珍しく真面目な表情のリュウと、ずっと困り眉のままのセイカを眺めていると、注文したスイーツ達が席に届いた。
「届いたぞ~」
俺はブラウニー、リュウはパフェ、アキはクランチ、セイカはドーナツ、ホムラはタルト、そしてみんなで分けるようにとザッハトルテ……机の上が茶と黒にまみれている。
《チョコって色暗ぇよな、果物の彩やかさがチョコにも欲しいぜ》
《お前どうせ色分かんないからいいじゃん》
《今はサングラス外してるから分かるわ! 俺は弱視であって色弱じゃねぇの、むしろ色が重要なの!》
《あっ、そっか……ごめん、買い物行った時よく色分かんないって言ってるから》
《外行く時はサングラスかけてるからな》
《あー……えっ、お前ぼんやりとしか見えてない上に色もハッキリしない中俺の車椅子押して走ってんの? 怖……》
アキとセイカが何か話してる。味の感想かな?
「んんっ……! す、すごいです鳴雷さんっ、とろってしてます。なのに底はサクッとしてます」
「タルトはそういうものなんだよ。フルーツとかサツマイモ、カボチャなんかもタルトにされることがあるから、気に入ったんなら向こうに行ってもケーキ屋さんとかパン屋さんで探してごらん」
「はい、すごくすごく気に入りました。こんな美味しいもの教えてくださって……本当にありがとうございます鳴雷さん。僕すごく幸せです」
何でもかんでも「知らない料理です!」「美味しいです!」とはしゃぐホムラを母も気に入っていたようで、この頃は色んな変わった料理を作っていた。ホムラはよく母に料理名や作り方を教わっていた……どうしよう、ホムラがこの先デブになったら。
(こんなにかわゆいのに太ってしまったら国の損失でそ……いえ、ぽっちゃり程度ならむしろかわゆい……うぅむ)
まぁ俺の彼氏じゃないし、不健康な太り方でなければいいか。
「リュウ、パフェはどうだ?」
「めっさ美味いわ。よーさんあんのに味に飽きへんわぁ」
シェア用に注文したザッハトルテを除いた中ではパフェは最も量が多い。ソフトクリームを始めとして冷たいスイーツでもあるのに、リュウは一切ペースを落とさず美味しそうにパクパク食べ進めている。
(シュカたまという分かりやすい大食いに隠れがち、リュウどのも暇があればお菓子食ってますからなぁ。二人揃って全然太ってねぇのムカつきまそ)
太っていた過去があると今痩せていても太らない者への嫉妬が湧く。厄介だ。
「……なぁ、リュウ。最近シュカ連絡ないよな」
「ん? おぉ、せやの。俺元々鳥待とは個チャじゃ話しとらんからグルチャのことしか知らんけど、最近見んわ。既読もいっつも二個付いてへんしなぁ」
「既読? そっちは気にしてなかったな……」
シュカ個人に送ったメッセージに既読が付かないのは気にしていたが、グループの方の既読数は頭になかった。
「いっつも一個足らんのは多分ころのんやろ?」
「カミアは忙しいからなぁ」
「んで最近二個足りへん、増えたんは多分鳥待の分や」
「……どうしたんだろ、スマホ修理中とか?」
「さぁ……夏休み前、急に遊ぼ言われても出来へん言うてはったし、なんや忙しゅうしてはるんとちゃう?」
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